脳内の「やる気スイッチ」発見|腹外側線条体のD2-MSNの機能障害が意欲低下を引き起こす|慶應義塾大学


参考画像:脳内にある、やる気のスイッチを発見-意欲障害の治療法探索が可能に-(2017/2/2、慶應義塾大学)|スクリーンショット




■脳内の「やる気スイッチ」発見|腹外側線条体のD2-MSNの機能障害が意欲低下を引き起こす|慶應義塾大学

脳内にある、やる気のスイッチを発見-意欲障害の治療法探索が可能に-

(2017/2/2、慶應義塾大学)

研究グループは、脳の特定部位である線条体(注 1)の損傷によって意欲障害を起こす頻度が高い臨床結果を参考にして、線条体を構成する一つの細胞集団、ドパミン受容体 2 型陽性中型有棘ニューロン(注 2)(以下 D2-MSN)に注目しました。

<中略>

研究の結果、線条体の腹外側(注 4)の障害で、かつ、その領域のわずか 17%の細胞死によって意欲障害が起こることが分かりました(図 1)。

慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の田中謙二准教授、三村將教授、生理学教室の岡野栄之教授、北海道大学大学院医学研究科の渡辺雅彦教授、防衛医科大学校の太田宏之助教、大学共同利用機関法人自然科学研究機構 生理学研究所の佐野裕美助教らの共同研究グループは、腹外側線条体のD2-MSN(ドパミン受容体2型陽性中型有棘ニューロン)の機能障害が意欲低下を引き起こすことをマウスによる実験で明らかにしました。

今後は、やる気スイッチが故障した意欲障害モデルを用いて治療法を確立していくことを目指すそうです。




■まとめ

ニュースで「やる気スイッチ」が発見されたということが話題になっていたので、「どのようにしたらやる気スイッチを押すことができるのか」ということがわかる研究だと思い込んでいました。

そこで、今回は「やる気スイッチ」を押す方法はわからなかったので、何かにのめりこんでいる状態になる方法について紹介したいと思います。

Mihaly Csikszentmihalyi:ミハイ・チクセントミハイ: フローについて

(Feb 2004、TED Talk)

ミハイ・チクセントミハイ(Mihaly Csikszentmihalyi)が提唱する「フロー体験」とは、時間を忘れるほどのめりこんで没頭する状態であると解釈しました。

フローの状態を体験するには、チャレンジ(難易度)が平均よりも困難で、スキル(能力)も平均以上のものが求められている時に体験できるそうです。

参考画像:Mihaly Csikszentmihalyi:ミハイ・チクセントミハイ: フローについて(Feb 2004、TED Talk)|スクリーンショット

何かにチャレンジする際に、あまりにやさしすぎると気持ちがたるんでしまったり、退屈だったり、やる気そのものがなくなってしまうでしょう。

また、そのチャレンジがあまりに難しすぎると、心配になったり、不安な気持ちになってしまうでしょう。

つまり、自分の挑戦の度合いと自分の技術の高さがどの程度かを把握することができれば、この「フロー」への入り口を見つけることができるということです。

毎日毎日何かに没頭するように努力をしている人は、おそらく自身が掲げるチャレンジと自分が磨いたスキルが一致した状態が続いているということではないでしょうか?

自分がやりたいことが何かがわからないという人がいると思いますが、誰しもが自分がやりたいことにすぐに気づいたわけではないでしょう。

何かをやっているうちに、技術が身につき、少しずつ難易度の高い課題にチャレンジし続けた結果、知らぬ間に没頭していたという人のほうが多いのではないでしょうか。

つまり、もしあなたが何かにのめりこみたいと考えるならば、まず少しでも興味のあることにチャレンジをして、すぐにあきらめることなく、少しでもいいから技術を磨いて、自分の能力にあったチャレンジを行なえば、そのフローの状態を体験できるはずです。

そして、それでも興味が続かないという場合には、別の興味のあることに移っていけば、自然と自分がやりたいことが見つかるのではないでしょうか。

このやり方はきっと子供の教育にも活かせることだと思います。

成功する人が共通して持つ「グリット」という能力とは?によれば、心理学者のAngela Lee Duckworth(アンジェラ・リー・ダックワース)氏が成功に必要なものとして提唱したのが、「グリット」と呼ばれる物事を最後までやり遂げる力です。

IQの高さより自己鍛錬が大事によれば、持って生まれた才能(IQの高さ)よりも継続して努力することの方が学業の成績がのびるという結果が出たそうです。

それでは、どのようにすれば子供の時に「物事を最後までやり遂げる力」を育てることができるのでしょうか。

アンジェラ・リー・ダックワース氏もその答えはまだ分かっていないようですが、グリットを持った子供を育てるために1番役立つと思われる考え方として「グロース・マインド・セット」を紹介しています。

「グロースマインド・セット」というのは、スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック博士が発展させた考えで、内容としては「知能は生まれつき固定されたものではなく、後天性のもの、努力を重ねることによって変えることができるものである」という考え方です。

ドゥエック博士の研究では、子供たちに脳と知能の発達について予め学習させ、知能は生まれつきのものではなく、挑戦し続けること、努力することによっていくらでも伸ばすことが可能であると教え込んだ後に難しい問題を解かせると、子供たちは難しい問題に対しても失敗を恐れず、自ら進んで挑戦しようとすることが分かりました。

才能は生まれつきのものではなく、挑戦し続けることによって伸ばすことができるという考えを教えると、子供は失敗を恐れず挑戦しようとするそうです。

つまり、子供には、適度な難易度のチャレンジを大人が見極めることができれば、フロー体験(物事に没頭する状態)を経験させることができ、「グロース・マインド・セット」を育てることにつながるのではないでしょうか。







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