がん光治療(近赤外線でがんを壊す新治療法)の治験が始まる|米国立保健研究所など


【目次】




■がん光治療(近赤外線でがんを壊す新治療法)

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by Martin Fisch (画像:Creative Commons)

がん光治療:夏にも治験 米で承認 舌、咽頭対象

(2015/5/7、毎日新聞)

がん細胞だけが持つたんぱく質に結びつく性質がある「抗体」に、特定の波長の近赤外光を当てると化学反応を起こす化学物質を付けて患者に注射する。体外や口腔(こうくう)内から患部に近赤外光を照射すると化学反応が起き、がん細胞を破壊できる。マウスなどの実験で安全性と効果を確認した。

米医薬ベンチャーと小林久隆・米国立衛生研究所(NIH)主任研究員らのチームが、体の外から光(近赤外線)を当てて、がん細胞を破壊する新たながん治療の治験を始めるそうです。

計画によると、手術や放射線治療、抗がん剤などの治療法で治らなかった舌がん、咽頭(いんとう)がんなどの患者が対象。

近赤外光自体は体に害はないので、患者への負担が少ない新しい治療法になることが期待されています。

■がん光治療の仕組み

Killing Cancer Cells with the Help of Infrared Light – Photoimmunotherapy

Near-infrared photoimmunotherapy uses an antibody–photoabsorber conjugate that binds to cancer cells. When near-infrared light is applied, the cells swell and then burst, causing the cancer cell to die. Photoimmunotherapy is in clinical trials in patients with inoperable tumors.

日本でも治験が始まる!#がん光免疫療法(#近赤外線光免疫療法)とは?簡単にわかりやすく!によれば、「がん光免疫療法(近赤外線光免疫療法:Near Infrared Photoimmunotherapy, NIR-PIT)」は、がん細胞に結合する抗体と近赤外光を吸収して化学反応する特殊な色素を組み合わせた抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate, ADC)を使用し、近赤外光が照射されると、がん細胞が膨潤して破裂し、がん細胞が死滅するという治療法です。

  1. がん細胞だけが持つたんぱく質に結びつく性質がある「抗体」に、特定の波長の近赤外光を当てると化学反応を起こす化学物質を付けて患者に注射する。
  2. 体外から患部に近赤外光を照射。
  3. 化学物質の化学反応によって、がん細胞を破壊する。

■がん光治療の動物実験に成功

がん光治療 転移に効果 免疫機能を活性化 

(2016/8/18、毎日新聞)

がんが生体で増殖し続けるのは、がんの周りに「制御性T細胞」という細胞が集まり、異物を攻撃する免疫細胞の活動にブレーキをかけて守っているためだ。

 チームは、制御性T細胞に結びつく性質を持つ「抗体」に、特定の波長の近赤外光を当てると化学反応を起こす化学物質を付け、肺がん、大腸がん、甲状腺がんをそれぞれ発症させた計70匹のマウスに注射。体外から近赤外光を当てた結果、約1日で全てのマウスでがんが消えた。光を当てた約10分後には制御性T細胞が大幅に減り、免疫細胞「リンパ球」のブレーキが外れて、がんへの攻撃が始まったためとみられる。

小林久隆・米国立衛生研究所(NIH)主任研究員らの研究チームによれば、がん細胞を免疫の攻撃から守っている仕組みを壊し、がんを治す動物実験に成功したそうです。

■がん光治療、アメリカで効果確認

<がん光治療>国内で治験へ 舌・咽頭など 米で効果確認

(2017/10/18、毎日新聞)

光を当ててがん細胞を破壊する新たながん治療法について、米ラッシュ大などが米国内で実施した最初の治験の結果がまとまり、頭頸(とうけい)部がんの患者8人中7人でがんが縮小したことが分かった。

欧州臨床腫瘍学会で発表された治験の結果によれば、近赤外光を患部に当てると、薬剤が結びついたがん細胞の細胞膜を破壊するがん光治療で患者8人中7人でがん縮小したことがわかったそうです。

日本でも年内の治験の実施を目指すそうです。




■がん光免疫療法の治験が日本でも3月に始まる

がん光免疫療法将来、がんの8~9割の治療が可能に/確実に効果が期待できる仕組み――開発・治験の2氏に聞く

(2018/1/13、毎日新聞)

近赤外光と新たに開発した薬剤を使ってがんを治療する「がん光免疫療法」の治験が、日本で3月に始まることになった。

島津製作所、がん光免疫療法に関する計測技術について米国国立がん研究所と共同研究契約を締結

がん光免疫療法に関する計測技術について米国国立がん研究所と共同研究契約を締結

(2018/1/15、島津製作所)

「NIR-PIT」は、NCIの小林久隆主任研究員が中心となって開発している治療手法で、正常細胞を傷つけることなくがん細胞のみを狙い撃ちし、短時間でがんを破壊するための手法です。がん細胞のみに結合する抗体と近赤外光を吸収して化学反応する特殊な色素を組み合わせた抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate, ADC)を注射し、近赤外光を照射してがん細胞のみに集積したADCを反応させることで、がん細胞を選択的に破壊することができます。

島津製作所は、米国国立衛生研究所に所属する米国国立がん研究所(National Cancer Institute, NCI)と5年間のCRADA(Collaborative Research and Development Agreement、NIHなどの米連邦政府研究機関と民間企業等の共同研究契約)を締結し、「がん光免疫療法(Near Infrared Photoimmunotherapy, NIR-PIT)」の安全性や治療効果を評価・改善するための計測技術の研究開発を共同で実施すると発表しました。

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■まとめ

がんの治療法には、1)外科、2)抗がん剤、3)放射線、そして第4の治療法として期待されている「がんペプチドワクチン療法」がありますが、今回の光(近赤外線)を使った治療法も今後注目を集めるかもしれません。

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