「鉄といかにうまく付き合うか」が健康長寿のカギ? 鉄不足だけではない鉄と健康の話

鉄というと、どんなイメージがありますか?

「鉄分が不足すると貧血になる」
「鉄分をしっかり摂った方がいい」

そんなイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。

私自身も鉄について調べるときは、これまで「鉄不足」という視点から見ることが多くありました。

ところが最近、京都大学「鉄蓄積が細胞老化を惹起する ―老化細胞の細胞死回避の一環としての鉄蓄積」という研究発表を読んでいて、非常に印象に残った言葉がありました。

岩井一宏特命教授の、

「鉄といかにうまく付き合うか」は、成長、健康長寿の両方の観点から今後の重要な課題である

というコメントです。

「鉄は不足しないように摂るもの」と考えていましたが、どうやらそれだけではないようです。

■老化した細胞に「鉄」がたまっていた

2026年、京都大学の研究グループは、老化細胞と鉄の関係について興味深い研究成果を発表しました。

研究グループが調べたところ、老化細胞では「リソソーム」と呼ばれる細胞内の小器官に、反応性の高い二価鉄(Fe2+)が蓄積していました。

さらに、このFe2+の蓄積を抑えると、細胞の大型化や炎症性因子の産生など、老化細胞に特徴的な性質が大きく抑えられました。

一方で、鉄が蓄積しているにもかかわらず、老化細胞は簡単には死にません。

研究では、リソソームへのコレステロール蓄積によって膜を守ったり、鉄によって酸化されやすい多価不飽和脂肪酸(PUFA)を脂肪滴に隔離したりすることで、鉄依存性の細胞死「フェロトーシス」を回避していることも示されました。

つまり老化細胞では、鉄を特定の場所に蓄積しながら、その鉄によるダメージを避けて生き延びる仕組みが働いているというのです。

今回の記事では詳しいメカニズムには深入りしませんが、興味深いのは、鉄の蓄積が単なる老化の結果ではなく、老化細胞らしい性質そのものに関わっている可能性が示されたことです。

■考えてみると「鉄過剰」の話は以前からあった

今回の研究を読んでいて思い出したのが、HAKURAIDOUでも以前、病気と鉄過剰の関係を取り上げたことがありました。

過去記事では、C型肝炎やNASHなどで鉄が過剰に蓄積する場合があり、肝臓に蓄積した鉄と酸化ストレスや炎症との関係について紹介していました。

過去記事:肝臓の健康(ウコン・脂肪肝・NASH)|#ためしてガッテン(#NHK)

ここで、鉄についての見方が少し変わってきます。

■不足しても困る。蓄積しすぎても困る

鉄は私たちの生命維持に欠かせない栄養素です。

不足すれば鉄欠乏になり、さらに進めば鉄欠乏性貧血につながることがあります。

一方、過去にHAKURAIDOUで紹介した肝臓の話では「鉄の過剰な蓄積」が問題になりました。そして今回の研究では、「老化した細胞のどこに鉄が蓄積し、それが細胞老化とどう関係するのか」が研究されています。

ここまで見てくると、鉄については単純に「多い方がいい」「少ない方がいい」と考えるものではなさそうです。

ただし今回の京都大学の研究が対象としているのは、単純な鉄の摂取量ではなく、老化細胞のリソソームに蓄積するFe2+です。したがって、この研究だけから「老化を防ぐために鉄を控えた方がいい」と考えることはできません。

→ 鉄分の多い食品・鉄分不足からくる症状 について詳しくはこちら

■だから「鉄といかにうまく付き合うか」

ここまで見てくると、最初に紹介した岩井一宏特命教授の、「鉄といかにうまく付き合うか」という言葉がとてもしっくりきます。

そう考えると、大切なのは、「鉄を摂るべきか、減らすべきか」ではなく、「鉄といかにうまく付き合うか」。

「鉄分不足」という言葉をよく耳にするため、鉄は「不足しないように摂るもの」だと思いがちです。

しかし今回の研究を知って、鉄は必要量だけでなく、どこに、どんな形で存在し、身体の中でどのように扱われるかまで研究されていることがわかりました。

私にとって今回最も興味深かったのは、まさにこの点でした。

そしてこれからは、単純に体内の鉄が「多い・少ない」だけでなく、

・どのような形の鉄なのか
・身体のどこに存在しているのか
・どのように貯蔵されているのか
・どのように利用されているのか
・年齢や健康状態によってどう変わるのか

といったところまで研究が進んでいくのでしょう。

そう考えると、大切なのは、

「鉄を摂るべきか、減らすべきか」ではなく、「鉄といかにうまく付き合うか」。

今回の研究で最も印象に残ったのは、まさにこの点でした。

■補足:栄養の「正解」は一生同じとは限らない

そして、この話は鉄だけに限らないのかもしれません。

例えば中高年では、肥満やメタボリックシンドロームを防ぐために「食べ過ぎないこと」が重視されます。

ところが高齢になって食が細くなれば、今度は低栄養やたんぱく質不足、筋肉量の減少、フレイルなどが問題になります。

同じ人でも、ライフステージが変われば栄養上の課題も変わることがあります。

さらに、性別、月経、妊娠・出産、病気などによっても必要な栄養や注意すべきことは変わってきます。

「○○は健康にいいからたくさん摂ろう」と一方向に考えるのではなく、今の身体に何が必要なのかを考える。

今回の研究を知って、「鉄といかにうまく付き合うか」という問いは、そんな栄養との向き合い方を考えるきっかけにもなるのではないかと思いました。

【参考文献・参考資料】

Yanatori I, et al. Safe lysosomal sequestration of ferrous iron is mediated via cholesterol shielding and drives senescence and ferroptosis resistance. The EMBO Journal. 2026.

京都大学「鉄蓄積が細胞老化を惹起する ―老化細胞の細胞死回避の一環としての鉄蓄積」. 2026年.
京都大学 研究発表資料

HAKURAIDOU「肝臓の健康(ウコン・脂肪肝・NASH)|#ためしてガッテン(#NHK)」.







「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

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もし、

なぜこういう考え方になるのか

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健康診断で「貧血なし」でも鉄不足? 原因不明の不調とフェリチンの関係を最新研究から考える

SNSで「フェリチン」についての投稿が話題になっていました。

「健康診断ではいつも異常なしだったのに、フェリチンを調べたら一桁だった」

「ヘモグロビンは正常に戻ったのに、疲労感などの不調が残っている」

「うつのような気分の落ち込みがあり、調べてみたらフェリチンが低かった」

「妊娠前や妊娠中こそフェリチンを調べた方がいいのでは?」

といった体験談です。

私が興味を持ったのは、「原因不明の不調が続いている人の中に、ヘモグロビンだけを調べていたため、鉄不足を見つけられていない人がいるのではないか?」という可能性です。

そこで今回は、フェリチンとは何なのか、気分や疲労、妊娠との関係、そして「健康診断では異常なし」という人でもフェリチンを調べる意味があるのかについて、国内外の研究や最新の診療指針から調べてみました。

■そもそもフェリチンとは?

鉄というと、多くの人が「血液を作る栄養素」というイメージを持っていると思います。

確かに鉄はヘモグロビンを作るために必要で、ヘモグロビンは全身へ酸素を運ぶ重要な役割を担っています。

しかし、私たちの身体には、すぐに使っている鉄だけでなく、必要になったときのために蓄えている鉄があります。

ここで関係してくるのがフェリチンです。

フェリチンは鉄を貯蔵するタンパク質で、血清フェリチンを測ることで、身体にどれくらい鉄が蓄えられているのかを推定できます。

いわば、

・ヘモグロビン=鉄を使って作られ、酸素を運ぶタンパク質
・フェリチン=身体に蓄えられている鉄の量を知る手がかり

と考えるとイメージしやすいかもしれません。

WHO guideline on use of ferritin concentrations to assess iron status in individuals and populationsでも、血清・血漿フェリチンは鉄の貯蔵状態を調べる重要な指標とされています。

■鉄不足はいきなり「貧血」になるわけではない

ここが今回の話の大きなポイントです。

鉄が不足すると、最初からヘモグロビンが低下するとは限りません。

日本の鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の診断・診断基準では、鉄不足が進んでいく流れを、

身体に蓄えている鉄(貯蔵鉄)が減る
↓
血清鉄が減る
↓
さらに進むとヘモグロビンが低下する
↓
鉄欠乏性貧血として表面化する

と説明しています。

つまり、ヘモグロビンが低下して「貧血」と診断される前に、身体に蓄えている鉄がすでに減少している時期があるのです。

これを「潜在性鉄欠乏」などと呼びます。

そう考えると、「健康診断で貧血ではなかった」と「身体に十分な鉄が蓄えられている」は必ずしも同じ意味ではないことがわかります。

■日本にも「貧血のない鉄欠乏」という考え方がある

これは海外だけの話ではありません。

日本鉄バイオサイエンス学会の鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の診断指針では、

「貧血なし+血清フェリチン12ng/mL未満」

を潜在性鉄欠乏の診断基準としています。

同学会は、貯蔵鉄欠乏を調べる指標として最も重要なのが血清フェリチンであるとしています。

一方、WHOのフェリチンガイドラインでは、健康な成人について15µg/L(ng/mL)未満を鉄欠乏のカットオフ値としています。

さらに日本の診療指針でも、30ng/mL未満を使う研究について紹介されています。

つまり、「12」「15」「30」など複数の数字が出てくるのは、単純にどれかが間違っているというより、目的や対象によって鉄欠乏を拾う基準について議論が続いているためです。

■貧血ではなくても、疲労感と関係する可能性がある

では、ヘモグロビンが正常なら身体には何も起こらないのでしょうか?

興味深い研究があります。

貧血にはなっていないものの鉄欠乏がある成人を対象とした鉄補充と疲労・身体能力についてのシステマティックレビューでは、18のランダム化比較試験、合計1,170人が分析されています。

結果として、鉄補充によって主観的な疲労感が改善する可能性が示されました。一方、身体能力などすべての指標が改善したわけではありません。

ここから考えられるのは、「貧血になる前の鉄不足でも、人によっては体調に影響している可能性がある」ということです。

これは今回SNSで多く見られた、「Hbは正常だけど、なんとなく調子が悪い」という体験談を考えるうえでも興味深いポイントです。

■鉄は「血液」だけでなく脳でも使われている

SNSでは、フェリチンとうつ症状との関係についても多く語られていました。

鉄はヘモグロビンを作るだけの栄養素ではありません。

脳では髄鞘形成やエネルギー代謝にも関係し、さらにセロトニンやドーパミンなどのモノアミン系神経伝達物質の合成にも関係しています。2026年のIron deficiency and depression: evidence of critical risk periodsでも、こうした生物学的なつながりが整理されています。

そのため、「鉄不足 → 脳機能への影響 → 気分や認知機能への影響」という可能性が研究されています。

実際、鉄欠乏とうつ症状の関連を示している研究もあります。

「鉄不足の人は必ずうつになる」というような単純な関係ではありませんが、気分の落ち込みや強い疲労などを考える際の身体的要因の一つとして鉄の状態を見るという考え方には興味深いものがあります。

■フェリチンと妊娠の関係は特に重要

そしてSNSの話は、妊娠前、妊娠中、産後の女性へと広がっていました。

これは医学的にも重要なテーマです。

妊娠すると、

・母体の血液量が増える
・胎児が成長する
・胎盤が作られる
・出産時に出血する

などによって鉄の需要が大きくなります。

日本産婦人科医会の「妊産婦の鉄欠乏性貧血」によると、妊娠期間全体で追加される鉄需要は約1,000mgに達します。

ここでも重要なのがフェリチンです。

妊娠初期にはHbが正常でも、すでに貯蔵鉄が少なくなっている女性がいます。そのまま妊娠が進むと、胎児や胎盤、母体の血液量増加に必要な鉄需要に追いつけず、妊娠後期になって貧血が表面化する可能性があります。

このため日本産婦人科医会も、「Hbだけでは判断しにくい場合に、フェリチンを調べて鉄欠乏状態を把握するアプローチが有用」と説明しています。

■産後の疲労や気分と鉄不足

産後についても興味深い研究があります。

日本産婦人科医会の解説では、産褥期の貧血と、

・産後うつ
・疲労
・育児意欲の低下
・母乳哺育の問題

との関連を示した研究が紹介されています。

さらに、産後の鉄欠乏に治療介入することで、うつ症状や疲労、育児への意欲が改善したとするランダム化比較試験も紹介されています。

2025年の周産期うつと微量栄養素についてのシステマティックレビューでも、鉄、ビタミンB12、亜鉛などと周産期うつとの関連が研究されています。現時点では鉄についての結果は完全には一致していませんが、研究が続けられている分野です。

つまり産後の心身の不調を考える際には、心理社会的な支援とともに、鉄欠乏など身体側の要因について確認する視点も持っておくということです。

■「海外ではフェリチン40以下では妊娠してはいけない」はどう考える?

SNSでは、

「アメリカではフェリチン40以下では妊娠してはいけない」

「フェリチン50以下は鉄欠乏性貧血」

といった数字も紹介されていました。

これを調べると、少し違った景色が見えてきます。

例えば米国産科婦人科学会(ACOG)のAnemia in Pregnancyは、妊娠に伴って鉄需要が増加することや妊娠中の貧血のスクリーニング・管理を扱っていますが、「40未満では妊娠してはいけない」という基準ではありません。

重要なのは「妊娠禁止になる数字」を探すことよりも、「妊娠すると大量の鉄が必要になるため、妊娠する前や妊娠初期から鉄の状態を把握しておく意味がある」という点なのだと思います。

■そして2026年、ASHが鉄欠乏の診断基準を見直した

ここで非常に興味深い動きがありました。

2026年、米国血液学会(ASH)がAmerican Society of Hematology 2026 guidelines for diagnosis of iron deficiencyを発表しました。

ASHは、鉄欠乏がありながら何カ月、何年も診断されずに過ごしている人がいることを問題として挙げています。

症状として、

・疲労
・脱力感
・めまい
・集中困難

なども示しています。

そして今回のガイドラインでは、これまでより高いフェリチン値を診断基準に使う方向が示されました。

ASHのガイドライン概要では、成人、月経のある人、妊娠中の人について、フェリチン30ng/mL以下を鉄欠乏の診断基準とし、高リスクの場合には50ng/mL以下という閾値を検討できるとしています。

これは今回のSNSで出てきた疑問を考えるうえで非常に興味深い変化です。

日本では日本鉄バイオサイエンス学会が潜在性鉄欠乏をフェリチン12ng/mL未満としています。一方、WHOは健康な成人について15ng/mL未満、2026年のASHは成人、月経のある人、妊婦について30ng/mL以下を採用しています。

「正常値は一体いくつなの?(鉄欠乏と判断するフェリチン値はいくつなの?)」と感じますが、この違いそのものが、鉄欠乏をどの段階で見つけるかという医学上の議論が動いていることを示しているともいえそうです。

■健康診断で異常なし。でもなんとなく調子が悪い

ここまで調べて、最初の疑問に戻ります。

今回SNSでの体験談を読んで、私たちが最も興味を持ったのは、

原因不明の不調が続いている人の中に、ヘモグロビンだけを見ていたため、貧血になる前の鉄不足を見つけられていない人がいるのではないか?

という点でした。

日本でも「貧血になる前の潜在性鉄欠乏」という状態が明確に示されています。

貧血ではない鉄欠乏の人を対象とした臨床試験でも、鉄補充によって疲労感が改善する人がいることが報告されています。

そしてASHが2026年に新しい鉄欠乏診断ガイドラインを作り、より早く正確に鉄欠乏を見つける方向を打ち出したことも、この問題を考える材料になります。

そこで、「健康診断では異常なし。でも原因の分からない不調が続いている」という場合、特に月経量が多い人、月経のある女性、妊娠を希望している人、妊娠中・産後の人など鉄不足の可能性が考えられるケースでは、医療機関で相談してフェリチンを含めた鉄の状態を確認することが、原因を探る一つの手がかりになる可能性があります。

■フェリチンだけでは判断できない場合もある

フェリチンには一つ特徴があります。

身体に炎症や感染症があると、鉄の貯蔵量とは別にフェリチンが上昇することがあります。

そのためWHOは、感染や炎症がある場合、炎症マーカーも併せて評価することを推奨しています。

日本の鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の診断指針でも、フェリチンに加えてTIBCやTSATなどを鉄欠乏の評価に利用できるとしています。特に炎症などによってフェリチンの解釈が難しい場合、TSATが参考になります。

つまり、「フェリチンだけを調べればいい」という話というより、これまでヘモグロビンだけでは見えていなかった鉄の状態を、フェリチンなどを加えることでより詳しく見てみるという考え方です。

■■では、フェリチンが低かったらどうすればいい?

フェリチンが低いということは、身体に蓄えられている鉄が少なくなっている可能性があります。

では、フェリチンを改善するにはどうしたらよいのでしょうか。

基本的な考え方は、

1.鉄を補う
2.鉄を吸収しやすくする
3.なぜ鉄が減ったのか原因を探す

の3つです。

■鉄を含む食品を意識する

日本鉄バイオサイエンス学会の食事療法の指針では、鉄の摂取量を増やす場合の目安として1日13~15mgを挙げています。

鉄には、肉や魚などに多く含まれる「ヘム鉄」と、野菜、豆類などに含まれる「非ヘム鉄」があります。

同学会の指針では、赤身の肉や魚などのヘム鉄は比較的吸収されやすく、植物性食品などに含まれる非ヘム鉄は、ビタミンCなどと一緒に摂ることで吸収を高められると説明しています。

例えば、

・赤身肉
・魚
・大豆・豆類
・緑黄色野菜
・ナッツ・種子類
・鉄を強化した食品

などを普段の食事に取り入れる方法があります。

Kingston and Richmond NHS Foundation Trustも、肉、豆類、緑色野菜、ナッツ・種子類、豆腐、鉄強化シリアルなどを鉄の供給源として紹介しています。

→ 鉄分の多い食品・鉄分不足からくる症状 について詳しくはこちら

■「何を食べるか」と同時に「どう吸収するか」

鉄は食べればすべて吸収されるわけではありません。

ビタミンCは特に非ヘム鉄の吸収を助けます。一方、お茶などに含まれるポリフェノール・タンニンなどは食事中の鉄の吸収を低下させることがあります。

つまり、鉄を含む食品+ビタミンCを含む野菜や果物という組み合わせも一つの方法です。

以前ハクライドウで紹介した「海外では小麦粉やシリアルなどを鉄強化している」という話も、ここにつながってきます。

■鉄欠乏が確認された場合には鉄剤という方法もある

食事だけで十分に回復できない鉄欠乏性貧血では、医療機関で鉄剤による治療が行われます。

日本鉄バイオサイエンス学会は基本的に経口鉄剤を第一選択とし、経口鉄剤が飲めない場合などには静注鉄剤という選択肢も示しています。

American Gastroenterological Associationの2024年のClinical Practice Updateでも、経口鉄は1日1回までとし、人によっては隔日投与の方が耐えやすく、吸収も同程度になる可能性があること、経口鉄でフェリチンが改善しない場合や吸収が期待できない場合には静注鉄を検討するとしています。

興味深いのは、鉄剤を使った場合、ヘモグロビンとフェリチンが同じ速度で回復するとは限らないことです。

日本鉄バイオサイエンス学会によると、経口鉄剤ではヘモグロビンは通常6~8週間で正常化することが多い一方、フェリチンはそれより後から徐々に上昇します。そして鉄剤を終了する時期について「貧血が治癒し、かつ血清フェリチン値が正常化したとき」としています。

これは今回SNSにあった、「鉄剤でHbは正常になったけれどフェリチンが低いままだった」という体験談を考えるうえでも興味深いポイントです。

■もう一つ大切なのが「なぜ鉄が減ったのか」

鉄を補給すると同時に考えたいのが、そもそもなぜ鉄が不足したのかという原因です。

鉄欠乏の背景には、

・月経、特に過多月経
・妊娠・出産
・食事からの鉄摂取不足
・消化管からの出血
・消化管での鉄吸収の低下

などがあります。British Society of Gastroenterologyも、鉄補充と同時に原因を調べることが重要だとしています。特に男性や閉経後女性で原因不明の鉄欠乏性貧血がある場合には、消化管疾患を含めて原因検索が重要になります。

つまり、「フェリチンを上げることそのものを目的にするのではなく、「なぜ鉄の貯金が減ったのか」を考えながら、必要な鉄を補っていく。」という考え方が大切です。

食生活を整えることで改善できる人もいれば、鉄剤による治療が必要な人もいます。そして出血などが続いている場合には、その原因への対応も必要になります。

だからこそ、まずフェリチンを測ることで、「自分には鉄の貯金がどれくらい残っているのか」を知ることが、次に何をするかを考える一つの出発点になるのではないでしょうか。

■実はハクライドウでは10年以上前からフェリチンを追っていた

今回SNSでフェリチンが話題になったことをきっかけに、ハクライドウの過去記事を調べ直してみました。

すると私たちは、10年以上前から、

・隠れ貧血
・フェリチン不足
・疲労や不眠
・気分との関係
・スポーツパフォーマンス
・鉄を含む食品
・海外の鉄強化食品

などについて記事を書いていました。

関連記事:

疲れ・頭痛・不眠など原因不明の体調不良の原因は鉄不足?/隠れ貧血/フェリチン(貯蔵鉄)不足チェック/鉄不足解消法
NHK「あさイチ」「ためしてガッテン」新型鉄不足(フェリチン不足)で肌荒れ、不眠、うつ状態、疲労感?
血液中のフェリチン値が低い「貧血」と診断されたスポーツ選手は、入賞の可能性が低くなる|愛媛県体育協会
フェリチンを多く含む食品・食べ物・サプリ
鉄分を強化した小麦粉で鉄欠乏症・貧血を予防している国がある!|#たけしの家庭の医学
当時は「隠れ貧血」としてテレビ番組などで紹介されていたものが、10年以上経ってSNS上で、「健康診断では問題がなかったのに、フェリチンを測ったら非常に低かった」という当事者の体験として、再び注目されているように見えます。

そして、そのタイミングで2026年のASHの新しいガイドラインが発表されました。

10年以上前から追ってきたテーマと現在の医学の動きが、ここでつながったのは非常に興味深いところです。

■まとめ 「フェリチンを測る」という選択肢を知っておく

今回調べて分かったことをまとめると、

・ヘモグロビンが正常でも、鉄の貯蔵量が減っている「潜在性鉄欠乏」は存在する
・フェリチンは身体に蓄えられている鉄を把握する重要な指標になる
・貧血のない鉄欠乏でも、鉄補充によって疲労感が改善する人がいることが研究で示されている
・鉄は脳機能や神経伝達物質にも関係しており、鉄欠乏と気分・うつ症状との関係について研究が続けられている
・妊娠では鉄需要が大きく増えるため、妊娠前・妊娠中・産後の鉄の状態を考えることは重要
・日本でもHbが正常な段階の「潜在性鉄欠乏」という考え方がある
・2026年のASHガイドラインでは、成人、月経のある人、妊婦の鉄欠乏についてフェリチン30ng/mL以下という新しい診断基準が示された

疲労、頭痛、不眠、気分の落ち込み、集中力低下などには、さまざまな原因があります。

フェリチンがそのすべてを説明するわけではありません。

ただ、「健康診断では異常なし。でも、なぜか調子が悪い」というとき、原因を探すための選択肢として、「フェリチンを含めて鉄の状態を調べる必要はありませんか?」と医療機関で相談することは、一つの手段になりそうです。

これまで見ていなかった情報を一つ加えることで、原因を探す手がかりが増えるかもしれない。

フェリチンを測る意味は、「すべての答えを見つけること」ではなく、「原因を探すための窓を一つ増やすこと」なのではないでしょうか。

【参考文献・資料】

World Health Organization. WHO guideline on use of ferritin concentrations to assess iron status in individuals and populations. Geneva: WHO; 2020.

日本鉄バイオサイエンス学会「鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の診断・診断基準」。潜在性鉄欠乏を「貧血なし・血清フェリチン12ng/mL未満」と定義。

Powers JM, et al. American Society of Hematology 2026 guidelines for diagnosis of iron deficiency. Blood Advances. 2026. doi:10.1182/bloodadvances.2025015950.

American Society of Hematology. Diagnosis of Iron Deficiency: What You Should Know. 2026. 成人、月経のある人、妊婦についてフェリチン30ng/mL以下を診断基準とし、高リスク集団では50ng/mL以下を考慮できるとする概要資料。

Houston BL, et al. Efficacy of iron supplementation on fatigue and physical capacity in non-anaemic iron-deficient adults: a systematic review of randomised controlled trials. BMJ Open. 2018;8:e019240. doi:10.1136/bmjopen-2017-019240.

日本産婦人科医会「妊産婦の鉄欠乏性貧血 -産科編-知識のアップデートとより良い診療を目指して」。

Ubom AE, et al. FIGO good practice recommendations on anemia in pregnancy, to reduce the incidence and impact of postpartum hemorrhage. Int J Gynaecol Obstet. 2025;171(3):993-1007. doi:10.1002/ijgo.70529.

American College of Obstetricians and Gynecologists. Anemia in Pregnancy. Practice Bulletin No.233. Obstet Gynecol. 2021, reaffirmed 2024.

Islam N, et al. A Systematic Review of the Correlation Between Micronutrient Levels and Perinatal Depression. Nutrients. 2025;17(21):3479. doi:10.3390/nu17213479.

Rajkumar RP. Iron deficiency and depression: evidence of critical risk periods. Front Psychiatry. 2026;17. doi:10.3389/fpsyt.2026.1770460.







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麻婆豆腐の豆腐はなぜ下茹でするの?おいしくなる5つの理由

麻婆豆腐を作るとき、「豆腐って、そのまま入れちゃダメなの?」と思ったことはありませんか?

実は麻婆豆腐をおいしく作るコツのひとつが、豆腐をあらかじめ下茹でしておくことです。

先日Xで「麻婆豆腐の豆腐を下茹でする理由」を紹介したところ、11万回以上再生されました。

その投稿はこちら
意外と「やっているけれど、理由までは知らない」という人が多いのかもしれません。

豆腐を下茹でする理由は、大きく5つあります。

1.豆腐の余分な水分を抜く

豆腐にはたくさんの水分が含まれています。

そのまま麻婆豆腐に加えると豆腐から水分が出て、せっかく作った麻婆餡の味が薄くなってしまうことがあります。

下茹ですることで豆腐から余分な水分が抜け、仕上がりが水っぽくなりにくくなります。

2.豆腐が崩れにくくなる

麻婆豆腐では、豆腐を入れたあとに餡と一緒に煮込みます。

そのときに困るのが、

豆腐がボロボロに崩れてしまうこと。

豆腐を下茹ですると適度に水分が抜け、豆腐が締まります。

そのため、鍋の中で混ぜたり煮込んだりしても、形を保ちやすくなります。

絹ごし豆腐を使うときには特にうれしいポイントです。

3.麻婆餡の味がなじみやすくなる

余分な水分が抜けた豆腐は、そのまま入れた冷たい豆腐と比べて、麻婆餡と一体感が出やすくなります。

よく「味が染み込む」と表現されますが、豆腐の中心まで調味料がどんどん浸透するというより、

豆腐から余計な水分が出て餡を薄めてしまうのを防ぎ、熱い豆腐と餡がなじみやすくなる

と考える方がわかりやすいでしょう。

4.豆腐の食感がよくなる

豆腐を下茹ですると、余分な水分が抜けて豆腐が少し締まります。

そのため、そのまま使ったときとは違う、なめらかさを残しながらもしっかりとした食感に仕上げることができます。

「同じ豆腐なのに、麻婆豆腐にすると食感が違う」

というお店の麻婆豆腐には、こうしたひと手間が関係していることがあります。

5.鍋の温度を下げないため

実は、これも大事なポイントです。

冷蔵庫から取り出したばかりの冷たい豆腐を、そのまま熱々の麻婆餡に大量に加えると、鍋全体の温度が一気に下がります。

すると再び温まるまで時間がかかり、仕上がりにも影響します。

あらかじめ豆腐を下茹でして温めておけば、熱い状態で麻婆餡に加えることができます。

つまり下茹では、

豆腐の水分調整だけでなく「温度をそろえる」という意味もあるのです。

■麻婆豆腐の下茹では「ちょっとしたひと手間」に見えて理にかなっている

まとめると、麻婆豆腐の豆腐を下茹でする理由は、

1)余分な水分を抜く
2)豆腐を崩れにくくする
3)麻婆餡となじみやすくする
4)食感をよくする
5)冷たい豆腐で鍋の温度を下げない

という5つ。

料理のレシピには、「豆腐を下茹でします」とだけ書かれていることがあります。

でも、「なぜ、そのひと手間をするのか?」がわかると料理は急に面白くなります。

下茹でというほんのひと手間にも、ちゃんとおいしくなる理由があるんですね。

■じゃあ、麻婆豆腐の豆腐は本当に下茹でが必要なの?

ここまで読むと、

「だったら毎回、豆腐を下茹でした方がいいんじゃない?」

と思いますよね。

ところが、料理研究家のリュウジさんは「バズレシピ」の動画の中で、「豆腐は湯通しとかいらないんですか?」という質問に対して、「やらなくていい」と答えています。

リュウジさん自身も「散々試した」といい、中華料理人にも確認したうえで、

・最終的に水分が抜けるのは、鍋で煮るのと同じ
・下茹でによって崩れにくくなる効果はある
・それ以外では、仕上がりに大きな差はない

という趣旨の説明をしています。

これ、かなり興味深い話です。

つまり、「豆腐を下茹ですることには理由がある」ことと、「下茹では必須である」ことは別問題なんですね。

麻婆豆腐を煮込む工程でも豆腐は加熱され、水分も抜けていきます。

そのため家庭料理として考えれば、

豆腐をきれいな形に仕上げたい、食感を締めたいなら下茹でする。そこまで求めなければ、そのまま煮てもいい。

くらいに考えるのが実用的なのかもしれません。

料理の工程には「昔からそうするから」ではなく、それぞれ理由があります。

一方で、その理由を理解すれば、「この工程は今回必要なのか?」と自分で判断できるようになります。

これこそ料理がおもしろいところですよね。







「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

この街を初めて訪れた方へ

この記事は、例えるなら「ばあちゃんの料理教室(ハクライドウ)」という街の中の「ひとつの家」です。

この街には、生活・料理・健康についての記事が、
同じ考え方のもとで並んでいます。

ここまで書いてきた内容は、
単発の健康情報やレシピの話ではありません。

この街では、
「何を食べるか」よりも
「どうやって暮らしの中で調整してきたか」を大切にしています。

もし、

なぜこういう考え方になるのか

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この話が、全体の中でどこに位置づくのか

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「人の生活を、断定せず、文脈ごと残す」
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「ガンバレルーヤ」のよしこさん、先端巨大症と診断されていた!「鼻が大きくなった?」が病気のサインだった。先端巨大症とは?成長ホルモンが全身に及ぼす影響

「鼻、大きくなってない?」

もし久しぶりに会った人から突然こんなことを言われても、多くの人は病気を疑わないのではないでしょうか。

2026年11月2日に放送されたテレビ番組で、お笑いコンビ「ガンバレルーヤ」のよしこさんが、2018年に患った「先端巨大症」について振り返りました。

報道によると、よしこさんは当時、先輩芸人から鼻が大きくなったことを指摘されたり、自分でも顎が出てきたことに気づいたりしていたそうです。

その後、人間ドックを受けたところ、下垂体に腫瘍が見つかり、「先端巨大症」と診断されたといいます。

私は「先端巨大症」という病名をほとんど知らなかったので、いったいどんな病気なのか、論文や近年の医学的コンセンサスをもとに調べてみました。

■先端巨大症とは?

先端巨大症(acromegaly)は、簡単にいえば、成長ホルモン(GH)が長期間にわたって過剰に分泌される病気です。

多くの場合、脳の下側にある「下垂体」にできる腺腫が原因となります。

成長ホルモンが過剰に分泌されると、肝臓などでIGF-1(インスリン様成長因子1)が増加します。

このGHとIGF-1が長期間過剰になることで、骨や軟部組織をはじめ、代謝やさまざまな臓器に影響が及びます。

流れを簡単にすると、

下垂体の腫瘍など
↓
成長ホルモン(GH)が過剰に分泌される
↓
IGF-1が増加する
↓
骨・軟部組織・代謝・臓器などに影響する

という病気です。

■なぜ手足や顎が大きくなるの?

「成長ホルモン」という名前の通り、GHは私たちの成長と深く関係しています。

ただし、大人になってからGHが過剰になっても、子どものように身長が伸び続けるわけではありません。

成人ではすでに骨の成長板が閉じているため、子どものように身長が大きく伸びるのではなく、手足の骨や顔の骨、軟部組織が厚くなる方向に変化が現れます。

・手や足が大きくなる
・指が太くなる
・靴のサイズが変わる
・顎が前に出る
・鼻や唇が大きくなる
・顔つきが変化する

など、手足や顔の骨、軟部組織が徐々に大きくなったり、厚くなったりする変化として現れます。

「先端巨大症」という名前から手足の先だけが大きくなる病気のように思えますが、実際には顔や舌、皮膚、関節などにも変化が現れ、全身に影響が及ぶことがあります。

■実は「見た目が変わる病気」だけではない

先端巨大症という名前だけを見ると、

「手足や顔が大きくなる病気なのかな?」

と思ってしまいます。

しかし医学的に重要なのは、むしろ全身に影響する病気だということです。

2026年に発表された合併症に関するコンセンサスやレビューでは、先端巨大症では糖代謝、心血管系、呼吸器、骨や関節など、幅広い問題に注意する必要があると整理されています。

たとえば、

・高血圧
・糖尿病などの糖代謝異常
・心血管系の問題
・睡眠時無呼吸症候群
・骨や関節の問題

などです。

つまり先端巨大症は、

「顔や手足が大きくなる病気」というより、成長ホルモンとIGF-1が長期間過剰になることで全身に影響が及ぶ病気

と考えた方が実態に近そうです。

■なぜ本人がなかなか気づかないの?

先端巨大症が早期に発見されにくい理由の一つが、変化の緩やかさです。

顔が突然変わったり、一晩で手が大きくなったりするわけではありません。

何年もかけて少しずつ変化していきます。

過去の研究やレビューでは、最初の徴候や症状が現れてから診断まで数年を要し、5~10年ほど経過していた例があることも報告されています。

毎日鏡を見ている自分自身や、毎日会っている家族ほど、小さな変化には気づきにくいかもしれません。

一方で、久しぶりに会った人なら、

「なんだか顔つきが変わった?」

「鼻が大きくなった?」

と気づく可能性があります。

今回紹介されたよしこさんの「鼻デカくなってない?」と周囲から指摘されたというエピソードは、実は先端巨大症という病気の特徴を考えるうえで、とても象徴的な話なのかもしれません。

■昔の写真や「指輪・靴」がヒントになることも

顔の変化だけではありません。

たとえば、

「昔使っていた指輪が入らなくなった」

「大人になってから靴のサイズが大きくなった」

といった変化も、この病気を疑うヒントになり得ます。

体重の変化や加齢によっても外見や体格は変わるため、もちろんこうした変化だけで先端巨大症と判断することはできません。

しかし、「昔と比べてどう変わったか」という時間軸で身体を見ることが、病気を発見するきっかけになる場合があります。

スマートフォンに何年分もの写真が残る現在では、昔の顔写真と現在の顔写真を見比べることも、変化に気づく一つのきっかけになるかもしれません。

■先端巨大症はどうやって調べるの?

現在の国際コンセンサスでは、診断において重要なのが血液中のIGF-1です。

2024年の国際コンセンサスでは、先端巨大症に典型的な特徴がある人で、血液中のIGF-1が年齢別正常上限値の1.3倍を超えている場合、診断を確定できるとされています。

ただし、IGF-1の値は年齢、検査方法、栄養状態、肝臓や腎臓の状態などの影響を受けることがあります。そのため、数値だけを自己判断するのではなく、症状や身体的特徴なども含めて専門医が総合的に判断します。検査結果がはっきりしない場合には、同じ測定法によるIGF-1の再検査や経口ブドウ糖負荷試験などが検討されます。

血液検査などから先端巨大症が疑われる場合には、MRIなどの画像検査を行い、下垂体に腫瘍があるか、その大きさや周囲との位置関係などを確認します。

大まかには、

身体的特徴や症状などから疑う
↓
血液検査でIGF-1などを調べる
↓
必要に応じて追加のホルモン検査を行う
↓
MRIなどで下垂体を確認する

という流れです。

■「成長ホルモンが多いと、がんまでどんどん成長する」は本当?

今回紹介された番組の中で、よしこさんは、成長ホルモンが過剰になることとがんの成長についても触れていました。

ここは少し慎重に理解した方がよさそうです。

GH・IGF-1のシグナルには、細胞増殖を促す作用などがあることから、先端巨大症と悪性腫瘍との関係は長年研究されています。

一方、2026年の研究や解説論文では、GH・IGF-1が細胞増殖などに関与する生物学的根拠はあるものの、先端巨大症によって、がん全体のリスクが明確に高くなるのかについては、研究結果が一貫していません。がん全体では明確な増加を認めなかった研究がある一方、大腸がんや甲状腺がんなど、一部のがんとの関連を報告した研究もあります。

そのため、「成長ホルモンが出すぎると、体内にあるがんがどんどん成長する」と単純化して理解するのは避けた方がよいでしょう。

より正確には、GH・IGF-1には細胞増殖などに関わる作用があり、先端巨大症と悪性腫瘍との関連が研究されているものの、「体内にあるがんが一律に急速に成長する」とまでは言い切れないと理解するのがよさそうです。

■治療の目的は「腫瘍を取ること」だけではない

原因がGHを分泌する下垂体腫瘍の場合、手術は重要な治療選択肢になります。

しかし現在の治療目標は、単純に「腫瘍を取れば終わり」ではありません。

重要なのは、過剰になったGH・IGF-1を適切にコントロールし、それによって起きた全身の合併症についても管理していくことです。

ただし、GH・IGF-1が適切にコントロールされても、すでに生じた骨や関節などの変化が完全には元に戻らず、症状が残る場合もあります。その意味でも、早期に発見して治療を始めることが大切です。

治療法や経過によっては薬物治療などが必要になることもあります。

近年は治療方法や合併症管理の進歩によって、先端巨大症の予後は過去と比べて改善してきています。

だからこそ、できるだけ早く病気に気づき、適切な治療につなげることが重要になります。

■「ちょっとした変化」を見逃さないこと

今回、先端巨大症について調べてみて私が興味深いと思ったのは、病気そのものだけではありません。

「本人にとっては当たり前になってしまった変化を、周囲の人が先に発見することがある」

という点です。

鼻や顎などの顔つき。

指輪のサイズ。

靴のサイズ。

いびきや睡眠の変化。

糖代謝や血圧の異常。

一つ一つを単独で見れば、すぐに重大な病気を疑うような変化ではないかもしれません。

しかも身体は毎日少しずつ変わるため、自分自身では意外なほど気づきにくいものです。

だからこそ、「昔とは何か違う」という本人や周囲の小さな気づきが、病気を発見するきっかけになることがあります。

もちろん、顔つきが変わった、靴のサイズが変わったというだけで先端巨大症というわけではありません。

ただ、その変化が続いていたり、複数の特徴が重なったりして気になる場合には、自己判断せず医療機関に相談することが大切です。

「そんな病気がある」と知っているだけでも、いつか自分や家族の変化に気づく助けになるかもしれません。

【参考文献】
Consensus on criteria for acromegaly diagnosis and remission. Pituitary. 2024;27:7-22. DOI: 10.1007/s11102-023-01360-1
診断・寛解判定についてまとめた国際コンセンサス。
Consensus on acromegaly complications: an update Pituitary. 2026;29:76. DOI: 10.1007/s11102-026-01639-z
先端巨大症の合併症についてまとめた最新コンセンサス。
Acromegaly complications: an update. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 2026;111(Supplement 1):S51-S63. DOI: 10.1210/clinem/dgag114
心血管、代謝、骨、悪性腫瘍などの合併症をまとめたレビュー。
Cancer risk in acromegaly: reassessing the evidence and impact of biochemical control. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 2026;111(10):e2318-e2319. DOI: 10.1210/clinem/dgag230
先端巨大症とがんの関係について、近年の疫学研究と生化学的コントロールの関係を論じたCommentary(解説・論評)。
Long-term cancer risk in acromegaly: a population-based cohort study with 44 years of follow-up. European Journal of Endocrinology. 2026;195(1):138-151. DOI: 10.1093/ejendo/lvag121.







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この街では、
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もし、

なぜこういう考え方になるのか

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「味のしない飴」って何のため?調べてわかった、味がないからこそ必要な人がいるという話

「味のしない?のど飴」という商品を見かけました。

パッケージには「香り控えめ」「甘さ控えめ」「すーっと、体感だけ。」と書かれています。

最初に思ったのは、「味がしない飴って、何のために舐めるんだろう?」という疑問。

飴といえば、甘かったり、フルーツやハーブの味がしたりするもの。

「おいしい」ということが、飴の価値だと思っていたからです。

ところが調べてみると、「味がしない」という特徴そのものに意味があることがわかってきました。

■唾液には「口を濡らす」以外の重要な役割がある

そもそも唾液は、単に口の中を濡らしているだけではありません。

唾液には、口の中の食べかすなどを洗い流したり、細菌が作った酸を中和したり、歯の再石灰化を助けたり、口腔粘膜を守ったりする働きがあります。

そのため唾液の分泌量が減少すると、口の中が乾くだけでなく、虫歯や口腔内のトラブルが起こりやすくなります。

特にシェーグレン症候群などでは唾液の分泌が低下し、口腔乾燥、食べにくさ、味覚の変化、虫歯、口腔カンジダ症などにつながることがあります。

もちろん、この商品そのものにシェーグレン症候群の治療効果や虫歯予防効果があるという話ではありません。

ただ、ここで一つ分けて考えておきたいことがあります。

カンロがこの商品を「シェーグレン症候群の患者向け」として販売しているわけではありません。

カンロの商品説明は、「味や香りを極力感じずにのどを潤したい方へ向けた」ものです。

一方で、シェーグレン症候群のように唾液分泌の低下や口腔乾燥を伴う病気について調べてみると、「口の中の潤いを保つ」ということが、単なる好みや快適さだけの問題ではない人たちがいることがわかります。日本リウマチ学会「シェーグレン症候群診療ガイドライン2025年版」でも、口腔乾燥に対する治療が扱われています。

ここを知ると、「味がしない飴」の見え方が少し変わってきます。

■甘くておいしい飴が、すべての人に最適とは限らない

では、なぜ「あえて味を弱くする」ことが価値になるのでしょうか。

たまに飴を食べるのなら、甘くておいしい方がうれしいでしょう。

でも、口の乾燥などを理由に、長時間、あるいは繰り返し口にする人ならどうでしょう。

ずっと甘い。

ずっと同じ味がする。

ずっと強い香りがする。

普通なら商品の魅力になるはずの特徴が、人によっては逆に負担になる可能性があります。

カンロの商品開発担当者への取材でも、口が渇く症状のある利用者から「味や匂いがなく、口を潤すのに最適」といった声が寄せられたことが紹介されています。

ここまで知ると、「味がしない飴なんて、何のためにあるの?」という最初の疑問に対する答えが見えてきます。

味がないからこそ使いやすい人がいるのです。

■「味がしない」は欠点なのか、それとも機能なのか

ここからが、私には特に面白く感じたところです。

一般的な飴の商品開発なら、

・おいしくする
・甘くする
・香りをよくする
・また食べたくなる味にする

といった方向へ進みそうです。

ところがカンロは、この商品では甘さや香りを極力抑える方向へ進みました。

通常の砂糖・水飴ではなく、甘味の少ない食物繊維のポリデキストロースをベースにして、「味のしない?」という特徴を意図的に作っています。

つまり、普通の商品なら「足したくなるもの」を、あえて削っているという商品なんです。

面白いのは、同じ特徴でも人によって評価が逆転することです。

「味がしなくて物足りない」という人もいれば、「味がしないから使いやすい」という人もいる。

商品の特徴そのものは変わっていません。

変わっているのは、その商品を使う人と使用目的です。

■万人に好かれることが、本当に良い商品なのだろうか

ここから商品づくりそのものについて考えさせられました。

商品を作るとき、

「もっとおいしくしよう」

「もっと機能を増やそう」

「もっとたくさんの人に気に入ってもらおう」

と考えがちです。

でも、別の方向もあります。

特定の人にとって必要のないものを、徹底的に削っていく。

すると万人受けはしなくても、ある人にとっては、「まさにこういうものが欲しかった」という商品になるかもしれません。

「味のしない飴」は、そのことをとてもわかりやすく教えてくれる商品だと思います。

■「何のためにあるかわからない商品」が、誰かには「なくなると困る商品」かもしれない

SNSでは変わった商品を見つけると、

「まずい」

「意味がわからない」

「誰が買うの?」

という反応が起こることがあります。

もちろん、それ自体は率直な感想なのでしょう。

でも、そのとき一度だけ、「これは誰のための商品なんだろう?」と考えてみると、見え方が変わるかもしれません。

自分には必要がない。

だから用途が理解できない。

でもそれは、「誰にも必要がない」こととはまったく違います。

むしろ万人においしい商品を目指すのではなく、ある人にとって余計な機能を削っていった結果、その人にとって非常に価値の高い商品になることもある。

「なんのためにあるかわからない商品」が、別の誰かにとっては「なくなると困る商品」なのかもしれませんね。

【参考リンク】

■「味のしない?のど飴」について

カンロ「ノンシュガー 味のしない?のど飴」商品ページ
カンロ自身が「味や香りを極力感じずにのどを潤したい方へ向けた」商品と説明しています。原材料は食物繊維(ポリデキストロース)、エリスリトール、ハーブエキスなどで、砂糖ゼロ・糖類ゼロです。

カンロ「ノンシュガー味のしない?のど飴」発売プレスリリース
2022年の「味のしない?飴」のテスト販売から現在の商品に至った経緯が詳しく書かれています。テスト販売を通じて「甘いものが苦手」「香りが気になる場面」など、従来とは違うニーズが確認され、2025年の商品展開につながったことが分かります。

■シェーグレン症候群・口腔乾燥について

日本リウマチ学会「シェーグレン症候群診療ガイドライン2025年版」
2025年4月発刊の最新ガイドラインです。「診断・治療方針の決定に有用な口腔検査」「口腔乾燥症状の改善に有用な治療」などが独立したClinical Questionとして扱われています。

【「シェーグレン症候群」の芸能人・有名人】#和田アキ子 さんは涙腺と唾液腺が炎症を起こす病気(自己免疫性疾患)で「常に水がないと生きていけない」







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このブログは、 テレビやニュースの健康情報を “ばあちゃんの台所レベル”まで落とし込み、 実際の料理と生活にどう使うかをまとめた記録です。本サイトでは、 栄養学・食事指導・健康情報を、 家庭料理の実践・調理工程・生活習慣という観点から再構成し、 再現可能な生活知として整理・記録しています。