「Health」カテゴリーアーカイブ

アトピー患者さんに朗報!?牛脂石けんが黄色ブドウ球菌を優先的に減らす研究結果




牛乳石鹸共進社が発表した研究成果によれば、石けん素地(脂肪酸ナトリウム)の種類や組成によって、善玉菌(表皮ブドウ球菌)より悪玉菌(黄色ブドウ球菌)を優先的に減らす傾向があることがわかりました。特に牛脂由来の組成でその傾向が確認されました。

■背景

肌にはいろいろな細菌が住んでいます。

そのバランスが崩れると、肌トラブルにつながることがあります。

表皮ブドウ球菌:いわゆる「善玉菌」。肌を健やかに保つのに役立つとされる菌。
黄色ブドウ球菌:いわゆる「悪玉菌」。アトピー性皮膚炎などとの関連が指摘される菌。

石けんは汚れを落とすだけでなく、洗うときにこれらの菌と直接触れます。

そこで、石けんの主成分である「脂肪酸ナトリウム」(油脂をアルカリで処理してできる成分)が、肌に住む細菌(皮ふ常在菌)にどのような影響を与えるかを調べました。

■結果

●カプリン酸ナトリウム、パルミトレイン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムなどは、善玉菌(表皮ブドウ球菌)より悪玉菌(黄色ブドウ球菌)を優先的に減らす傾向がありました。

●ラウリン酸ナトリウムは両方の菌に殺菌作用を示しました。

●牛脂を原料にした石けんに多い脂肪酸の組み合わせ(特にオレイン酸ナトリウムが多い組成)では、善玉菌をあまり減らしにくく、悪玉菌を優先的に減らす傾向が確認されました。

●一般的な界面活性剤(合成洗剤の成分)との違い

比較した一般的な界面活性剤では、同じ条件で明確な殺菌作用はほとんど見られなかったことから、この「善玉菌を残しつつ悪玉菌を狙うような選択的な作用」は、石けん素地(脂肪酸ナトリウム)に特徴的な性質の可能性が高い。

■まとめ

牛脂ベースの石けんは、悪玉菌を優先的に抑えつつ善玉菌へのダメージを抑えやすい傾向があることがわかりました。

【アトピー患者の約70%に見られる黄色ブドウ球菌】肌が弱いから菌が増える?それとも菌が肌を悪くする?アトピーと黄色ブドウ球菌の本当の関係で紹介した「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024」によれば、アトピー性皮膚炎患者の病変部皮膚では、健常者の皮膚と比較して黄色ブドウ球菌が高頻度に分離されることが古くから知られています。

また「肌が弱いから菌がつく」がベースにあり、そこに「菌がついてさらに肌を悪くする」が重なっています。

そのため、対策のためには、「肌を守る(保湿+適切な清潔+炎症コントロール)」ことが大事なんですね。

アトピー性皮膚炎患者さんにとって、牛脂ベースの石けんで悪玉菌を優先的に抑えられる可能性が示されたのは、今後の選択肢として期待できる結果と言えそうです。

ただし、実際の肌での効果や使い方については、さらに検証が必要です。

→ アトピー性皮膚炎とは|アトピーの症状・原因・改善方法・予防 について詳しくはこちら







「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

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クレアチン完全ガイド|効果・飲み方・Q&Aを論文ベースでわかりやすく解説




最近SNSで目にする機会が増えた「クレアチン」について調べました。

■ クレアチンとは?

クレアチンは、筋肉のパフォーマンス向上や筋力アップをサポートする、科学的にも最も研究が進み、効果と安全性が強く支持されているサプリメントの一つです。

体内で主に肝臓・腎臓などで作られるほか、肉や魚などの食事からも少し摂ることができますが、サプリメントで補うことで筋肉内の貯蔵量を20〜40%ほど増やすことができます。

役割はいわば「エネルギーの予備バッテリー」。

激しい運動をすると体内のエネルギー(ATP)が急速に消費されますが、クレアチンがそれを素早く再充電してくれます。

これにより、筋トレで「あと1〜2回頑張る」力や、ダッシュ・ジャンプなどの瞬発的なパフォーマンスをサポートしてくれます。

■ 主な効果

●瞬発力・筋力・パワーの向上

特に30秒以内の全力運動(筋トレ、スプリントなど)で大きな効果を発揮します。

●筋肉量(除脂肪体重)の増加

トレーニングと組み合わせることで、効率的な筋肉作りに貢献します(※使い始めに水分の保持による軽い体重増加が見られることがあります)。

●疲労回復のサポート

運動後のダメージ軽減や回復促進にも役立つとされています。

●高齢者・中高年の筋肉減少(サルコペニア)対策

筋トレと併用することで、足腰の衰えを防ぎます。

また、最近の研究では、45〜65歳の中高年において、運動をしていなくてもクレアチン補給で除脂肪体重や筋力の維持・向上が期待できることが示されています(ただし、運動と組み合わせた方がより効果的です)。

●脳のコンディション維持

記憶力や情報処理速度などの認知機能の一部指標で改善が報告されています。

特に睡眠不足時やベジタリアンの方、中高年で効果が示唆されており、最近の研究でも中高年で選択的な認知・記憶の改善が見られています。筋肉への効果ほど一貫して強いわけではありません。

■ よくあるQ&A

Q. 筋トレしない日も飲むべき?

A. はい、毎日飲むのが基本です。

クレアチンは「飲んですぐ効く」ものではなく、筋肉の中に常に貯めておくことで効果を発揮します。

休む日も少しずつ消費されるため、毎日3〜5gを継続して飲むことが大切です。

Q. ローディング(大量摂取)は必要?

A. 必須ではありません。

最初に大量(1日約20gを5日間ほど)摂って一気に貯蔵量を満タンにする「ローディング」という方法もありますが、お腹が張る場合もあります。

毎日3〜5gをコツコツ飲み続けても、約1ヶ月で同じ満タン状態になります。

Q. いつ飲むのがベスト?

A. 飲み忘れにくい「食後」や「トレーニング後のプロテインと一緒」がおすすめです。

糖質やタンパク質と一緒に摂ると筋肉への取り込みがわずかに促進される可能性が報告されています。

ただし、毎日継続することが最も重要で、時間は厳密でなくても大丈夫ですので、毎日続けやすいタイミングを決めましょう。

Q. 女性や高齢者でも効果はあるの?

A. もちろんあります。

女性のボディメイクやスポーツパフォーマンス向上、高齢者の立ち上がりや歩行能力の維持など、幅広い年代・性別で効果が認められています。

特に中高年(45〜65歳)では、運動をしていない場合でも除脂肪体重や筋力の向上が期待できるという研究結果も出ています。

Q. 副作用や注意点は? 太ったりしない?

A. 健康な人にとっては非常に安全です。

飲み始めに1〜2kgほど体重が増えることがありますが、これは筋肉内に水分が引き込まれるためで、体脂肪が増えたわけではありません。また、水分はしっかり摂るようにしましょう。

持病がある方や腎機能に不安がある方は医師にご相談ください。

【関連記事】

Q. 食事だけで足りますか?

A. 必要量を摂るのは難しいです。

肉や魚から摂れる量は1日1〜2g程度で、加熱調理でも一部失われます。

効率よく効果を得るにはサプリメントでの補給が現実的です。

標準的な維持量は1日3〜5gですが、中高年や認知機能を意識する場合は5〜10gを使用した研究もあります。

■まとめ

クレアチンは飲めば勝手に筋肉がつく「魔法の薬」ではありませんが、適切なトレーニング、バランスの良い食事、十分な睡眠という土台の上に使うことで、最高のパフォーマンスを引き出してくれる「心強いサポートツール」です。

国際スポーツ栄養学会(ISSN)でもその効果と安全性は高く評価されており、中高年では運動なしでも筋肉量や認知機能のサポートが期待できるという最新の知見も増えています。

【参考文献】

  • Kreider RB, Kalman DS, Antonio J, et al. International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine. Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2017;14:18. doi:10.1186/s12970-017-0173-z
  • Antonio J, Candow DG, Forbes SC, et al. Common questions and misconceptions about creatine supplementation: what does the scientific evidence really show? Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2021;18(1):13. doi:10.1186/s12970-021-00412-w
  • Antonio J, et al. Part II. Common questions and misconceptions about creatine supplementation: what does the scientific evidence really show? Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2025;22(1):2441760. doi:10.1080/15502783.2024.2441760
  • Kreider RB, Gonzalez DE, Hines K, et al. Safety of creatine supplementation: analysis of the prevalence of reported side effects in clinical trials and adverse event reports. Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2025;22(sup1):2488937. doi:10.1080/15502783.2025.2488937
  • Hultman E, Söderlund K, Timmons JA, et al. Muscle creatine loading in humans. Journal of Applied Physiology. 1996;81(1):232-237.(ローディングと維持用量の基礎研究)
  • Chun J, Liu Y, Kibler GL, et al. Effects of creatine supplementation with and without exercise and diet intervention on body composition, cognitive function, and markers of health in middle-aged and older adults. Journal of the International Society of Sports Nutrition. 2026;23(sup1):2716273. doi:10.1080/15502783.2026.2716273
  • Forbes SC, Candow DG, et al. 各種メタ解析・レビュー(高齢者や女性を対象としたものを含む)(例:サルコペニア関連の系統的レビュー多数)







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リリー・フランキーさん、禁煙後に体重14kg増で極度の脂肪肝に!禁煙をして太りやすくなる理由とは?




リリー・フランキー、元日から禁煙もまさかの14kg増「極度の脂肪肝になって。健康というのは難しい」(2026年9月11日、ENCOUNT)によれば、リリー・フランキーさんは、タバコをやめた後、体重が14kg増えて、脂肪肝になったそうです。

→ 脂肪肝とは|脂肪肝の症状・原因・治し方 について詳しくはこちら

禁煙をして太りやすくなる理由としては、1)食べ物がおいしくなるから、2)ストレスを食べることで解消しているから、と思っていましたが、実は別の理由も考えられます。

スイスのチューリヒ大学病院の研究(2013年)によれば、禁煙後に体重が増える原因は、必ずしも食事量が増えることだけではないようです。

禁煙した人の腸内細菌の構成が変わり、肥満の人に見られるような細菌のバランスに近づくことが報告されています。

その結果、同じ量の食事からより多くのエネルギーを体が吸収しやすくなり、脂肪として蓄積されやすくなる可能性がある、と考えられています。(注:論文ではFirmicutesとActinobacteriaが増え、BacteroidetesとProteobacteriaが減る変化が観察されました。)

その後のマウスを使った研究でも、禁煙後の腸内細菌の変化が体重増加に関わっていることが示されています。

■【補足】チューリヒ大学病院の研究について(2013年、PLOS ONE)

禁煙で太ってしまうのは肥満型腸内細菌が増えていることが原因!?|スイスのチューリヒ大学病院で紹介したスイス・チューリヒ大学病院のGerhard Rogler教授らのグループが、禁煙した10人を約9週間追跡し便を調べた研究(Biedermannら、2013年)によれば、食事量はほぼ変わらなかった(本人申告と記録)ものの、平均で約2.2kg体重が増え、腸内細菌の構成が大きく変わったことがわかりました。

重要なポイントは、1)Firmicutes(ファーミキューテス)とActinobacteria(アクチノバクテリア)が増えたこと、2)Bacteroidetes(バクテロイデス)とProteobacteria(プロテオバクテリア)が減ったこと。

論文によれば、「この変化は、肥満の人とやせた人を比べたときの腸内細菌の違いと似ている」と指摘されていて、「体重増加と禁煙の関係を説明する可能性がある」としています。

サンプル数が少なく(禁煙者10人)、短期の観察なので「決定的な証拠」までは言えませんが、「食べすぎ以外の要因がある」ことを示唆した重要な研究です。

論文では、この変化が肥満の人に見られる腸内細菌のバランスに似ていることから、同じ量の食事からより多くのエネルギーを吸収しやすくなる可能性が指摘されています。

■【補足】Nature誌に掲載されたマウスの研究(2021年)

2021年にNature誌に掲載されたマウスの研究(Fluhrら、ワイツマン科学研究所)では、さらに強く腸内細菌の関与が示されています。

タバコの煙にさらしたマウスを禁煙させると、体重が増え、抗生物質で腸内細菌を減らすと、禁煙後の体重増加が抑えられました。

禁煙したマウスの腸内細菌を、煙を吸ったことのないマウスに移植すると、体重が増えました。

腸でエネルギーをより効率よく取り込むような変化が起きていることがわかります。

つまり「禁煙すると腸内細菌のバランスが変わり、同じ量の食事からより多くのエネルギーを吸収しやすくなる」という考えが、動物実験でも支持されています。

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■まとめ

禁煙後に太りやすくなる主な理由は、次の複数が重なっていると考えられています。

味覚・嗅覚が回復する → 食べ物がおいしく感じられ、つい食べすぎてしまう。

ストレス解消の手段が変わる → タバコの代わりに食べ物でストレスを解消しやすくなる。

代謝が少し落ちる → ニコチンが持っていた代謝を上げる効果が消える。

腸内細菌のバランスが変わる → 同じ食事量でも、体がエネルギーをより効率よく吸収し、脂肪として蓄えやすくなる

■脂肪肝を改善するには?

1)【家庭料理の視点から】現在の体重の約7%減少させると脂肪肝が改善する!で紹介した肝臓外科医の尾形医師によれば、脂肪肝(脂肪肝炎)を治すポイントは食べ方を変えて体重を減らすことで、具体的には現在の体重の約7%を減少させると、脂肪肝が改善することがわかっているそうです。

→ 脂肪肝とは|脂肪肝の症状・原因・治し方 について詳しくはこちら

2)間食をやめること

【あさイチ】女性が注意したい脂肪肝の原因(甘いものの食べ過ぎ)|オリーブオイルと脂肪肝|肝臓を守る方法は「おさかなすきやね」によれば、甘いもの(糖質)の摂りすぎも脂肪肝の原因となり、間食は食べ物の選び方次第では問題ないと思いますが、比較的おやつには糖質が多いですよね。

糖質は肝臓で体のエネルギー源である中性脂肪に合成されるので、適量の摂取は必要ですが、食べすぎは脂肪肝になってしまいます。

また、飲み物にも注意が必要で、甘い飲み物も脂肪肝の原因となるのですが、脂肪肝の人は水を飲まない人が多い傾向にあるそうです。

→ 脂肪肝とは|脂肪肝の症状・原因・治し方 について詳しくはこちら

【関連記事】

■まとめ

禁煙は体にいいことですが、太ってしまって脂肪肝になると、他の病気のリスクが高くなってしまいます。

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この考え方の全体像(意味のハブ)

この記事で触れた内容は、以下の概念記事の一部として位置づけられています。

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ラスカー賞受賞!柳沢正史教授の研究はなぜすごい? ししおどしモデルでわかる睡眠と覚醒




筑波大学の柳沢正史教授(共同受賞者(ミニョー教授))と、臨床医学部門で中外製薬の研究者らも「ラスカー賞」を同時受賞されたニュースが話題です。

ラスカー賞は「アメリカのノーベル賞」とも呼ばれ、実際に歴代受賞者の多くがのちにノーベル生理学・医学賞を受賞している最高峰の賞です。

柳沢教授の研究がなぜこれほど絶賛されているのか、私たちの生活にどう関係するのか、詳しく調べてみました。

■「人はなぜ眠り、起きるのか」という最大の謎を解いた

私たちは毎日当たり前に眠り、朝になると目が覚めます。

しかし、「脳がどうやって『覚醒(起きている状態)』と『睡眠』を切り替えているのか」は、長年科学界の大きな謎でした。

柳沢教授は1998年、脳の中で覚醒状態を維持する神経伝達物質「オレキシン」を発見しました。

オレキシンは例えるならば「脳の覚醒スイッチ(電源ボタン)」です。

この物質が脳内で作られているおかげで、私たちは日中に途切れず起き続けていられます。

■「ナルコレプシー」の原因を特定した

「ナルコレプシー」は、日中に突然、自分の意志とは関係なく強烈な眠気に襲われて眠り込んでしまったり、感情が動いた瞬間に体の力が抜けて倒れてしまったりする難病(睡眠障害)です。

かつては「気の持ちよう」や「怠け」と誤解されることも多かったこの病気ですが、柳沢教授らは「脳内のオレキシンが極端に不足している(覚醒スイッチが壊れている)」ことが原因だと突き止めました。

これにより、病気のメカニズムが分子レベルで解明されました。

【参考記事】

日中に著しい眠気を感じる病気「過眠症(ナルコレプシー)」に関連した新しい遺伝子を発見|東大教授らのグループ(2008年)

過眠症は日本人の約600人に1人が発症し、日中に激しい眠気を感じたり、突然全身が脱力したりする病気。遺伝的な原因とストレスなど周囲の環境が発症の原因と考えられているが、詳しい仕組みは不明で、根本的治療法もない。

■私たちの「睡眠薬」の常識を劇的に変えた

この発見は、単なる基礎研究にとどまらず、私たちの医療や生活に直接役立っています。

従来の睡眠薬(ベンゾジアゼピン系など)は、脳全体の活動を強引に抑え込んで眠らせるタイプが多く、依存性や翌朝のふらつきなどが課題でした。

オレキシンを応用した新しい睡眠薬(ベルソムラ、デエビゴなど)は、オレキシンの働き(覚醒スイッチ)をブロックすることで、「脳を強引に眠らせるのではなく、起きている状態を解除して自然な眠りに導く」という全く新しいタイプの不眠症治療薬が誕生しました。

さらに現在では、逆にオレキシンの作用を補うことでナルコレプシー患者を根本治療する新薬の開発も進んでいます。

■「睡眠と覚醒の切り替え」=ししおどしモデルで解説

柳沢正史教授はメディアなどで目に見えない脳内の「睡眠と覚醒の切り替え」を視覚的にイメージできる例えとして、「ししおどし」で解説されています。

「ししおどし」の仕組みは、竹筒に水が溜まり、重くなると「カタン」と傾いて水を吐き出し、また元に戻る仕組みです。

柳沢教授はこれを脳の仕組みに例えています。

竹筒の中に溜まる「水」 = 眠気(睡眠負債)

竹筒の向き = 脳の状態

竹筒が上を向いている状態 =「覚醒(起きている状態)」

竹筒がカタンと下を向く =「睡眠への切り替え」

起きている間、脳にはチョロチョロと水が溜まるように「眠気」が蓄積されていきます。

水(眠気)が7〜8割ほど溜まり、ある限界を超えると、竹筒が重みに耐えかねて「カタン!」と下を向きます。

これが「睡眠に入った状態」です。

眠っている間に溜まった水(眠気)が流れ出て空っぽになり、軽くなった竹筒は再び上を向いて「覚醒」に戻ります。

ここで重要になるのが、柳沢教授が発見した「オレキシン」です。

●「オレキシン」の役割=ししおどしの「重し」

覚醒中、オレキシンは竹筒の上側に「重し(つっかえ棒またはストッパー)」として働いています。

起きている間に「水(眠気)」がどんどん溜まってきても、オレキシンという重しが竹筒を上向きで安定させているため、私たちは起きて仕事や活動を続けることができます。

そして夜になり、水(眠気)が満タン近くまで溜まって限界に達すると、オレキシン(重し)の働きが弱まり、たまっていた水(眠気)の重みで竹筒が「カタン」と下に傾き、一気に「睡眠状態」へとスイッチが切り替わり、眠りに入ります。

寝ている間に水(眠気)が完全に外へ流れ出ると、再び竹筒は上を向き、朝「覚醒」します。

●ししおどしのイメージでつかむ「睡眠障害」のメカニズム

・ナルコレプシー(過眠症)はオレキシン(重し)が脳内に全く存在しない状態です。

重しがないため、竹筒が非常にグラグラと不安定になります。

水(眠気)が少し溜まっただけで、日中の大事な場面でも突然「カタン」と筒が傾いて強い眠気に襲われてしまいます。

・不眠症(過覚醒タイプ)はオレキシン(重し)が強すぎたり、夜になっても重しが外れなかったりする状態です。

竹筒の中に水(眠気)が十分に溜まっていて体は疲れているのに、強力な重しのせいで竹筒が下に傾くことができず、眠りにつくことができません。

このように、「眠気の蓄積(水)」と「覚醒の維持(オレキシンという重し)」のバランスによって、一瞬で状態が切り替わるダイナミックな仕組みを表現したのが、柳沢教授の「ししおどしモデル」です。

●「ししおどしモデル」をさらにフカボリ

覚醒と睡眠の切り替え機構を「フリップフロップ・スイッチ(Flip-Flop Switch)」と呼びます。

回路が「ON(覚醒)」か「OFF(睡眠)」かのどちらか一方にしか安定して存在できない仕組みです。

「オレキシン」はフリップフロップの安定化因子です。

■まとめ

「人はなぜ眠り、起きるのか」という謎を解明しただけでなく、その研究が私たちの医療や生活に直接役立っているというのはすごいことですね。

【参考文献】

  • 1. Sakurai, T., Amemiya, A., Ishii, M., Matsuzaki, I., Chemelli, R. M., Tanaka, H., … & Yanagisawa, M. (1998).”Orexins and orexin receptors: a family of hypothalamic neuropeptides and G protein-coupled receptors that regulate feeding behavior”. Cell, 92(4), 573-585.
    (※ 柳沢教授らのグループによるオレキシンの発見論文)
  • 2. Chemelli, R. M., Willie, J. T., Sinton, C. M., Elmquist, J. K., Scammell, T., Lee, C., … & Yanagisawa, M. (1999).”Narcolepsy in orexin knockout mice: molecular genetics of sleep regulation.” Cell, 98(3), 365-376.
    (※ オレキシンノックアウトマウスがナルコレプシーを呈することを示し、病因を解明した論文)
  • 3. Saper, C. B., Chou, T. C., & Scammell, T. E. (2001).
    “The sleep switch: neurobiology of sleep onset and maintenance.” Trends in Neurosciences, 24(12), 726-731.
    (※ 覚醒・睡眠の「フリップフロップ・スイッチモデル」を提唱し、オレキシンがスイッチの安定化機構として働く概念を示した論文)
  • 4. Saper, C. B., Fuller, P. M., Pedersen, N. P., Lu, J., & Scammell, T. E. (2010).
    “Sleep state switching.” Neuron, 68(6), 1023-1042.
    (※ フリップフロップモデルとオレキシンの役割についての詳細な説)
  • 5. Wang, Z., Ma, J., Miyoshi, C., Li, Y., Sato, M., Ogawa, Y., … & Yanagisawa, M. (2018).
    “Quantitative phosphoproteomics identifies SIK3- substrates contributing to a homeostatic sleep need.” *Nature*, 562(7727), 439-443.
    (※ ししおどしの「水(眠気の蓄積)」の分子実体であるSNIPPs[リン酸化タンパク質]を同定した柳沢教授らの論文)







【関連記事】

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ADHDの子どもにEPAは効く?特に体内EPAが少ない子どもで効果大!




2019年に発表された質の高い臨床試験では、ADHD(注意欠如・多動症)の子ども・若者92人を対象に、オメガ3脂肪酸の一種である高用量のEPA(エイコサペンタエン酸 1日1.2g)を12週間摂取した場合の効果を、プラセボと比較しました。

その結果、全体として集中力の安定性はEPA群で有意に改善し(効果量ES=0.38)、特にもともと体内のEPAが少ない人では、集中力(反応時間)と注意力を持続させる力(警戒心)が大きく改善することがわかりました(それぞれES=0.89、0.83)。

一方で、衝動性についてはEPA群の方が改善しにくく、もともとEPAが多い人ではかえって効果が薄かったり、良くない影響が出る可能性も示されています。

■背景

ADHDの子どもは、一般の子どもに比べて血液中のオメガ3脂肪酸(EPAやDHA)が少ない傾向があることが知られています。

オメガ3は脳の働きに重要で、注意力や認知機能と関係があると考えられています。

これまでの研究では結果がバラバラでしたが、EPAをしっかり多めに摂る(1日500mg以上)と効果が現れやすい可能性がありました。

そこでこの研究では「もともとEPAが少ない人ほどサプリが効きやすいのでは?」という仮説を検証しました。

■結果

EPAグループの方がプラセボグループより「集中力の安定性」が有意に改善しました(効果量ES=0.38)。

特に重要なポイントとしては、元々EPAが低い人では、EPAを飲んだ人の方が集中力の反応時間が大きく改善(ES=0.89)、警戒心(注意力を保つ力)が改善(ES=0.83)するという結果が現れました。

逆に、元々EPAが高い人では、EPAを飲むと衝動性や他のADHD症状・感情面の改善がむしろ少なくなる傾向があった(効果が逆に出る可能性)ので注意が必要。

■まとめ

高用量のEPA(1日1.2g)は、ADHDの子ども・若者の注意力や警戒心を改善する可能性があり、特にもともと体内のEPAが少ない人で効果が大きいことが示されました。

この研究は「オメガ3がADHDに効くかも」という段階から、「誰に効きやすいか」を明らかにした点で意義があります。

ただし、もともとEPAが多い人では効果が期待しにくく、場合によってはマイナスに働く可能性もあるため注意が必要です。

また、この結果はADHDの標準治療(薬物療法や行動療法)の代わりになるものではなく、補助的な選択肢の一つとして考えてください。

EPAサプリを試す場合は、必ず医師に相談してください(特に子どもは量や安全性の確認が重要です)。

→ DHA・EPAの効果・効能・食品・摂取量 について詳しくはこちら

→ オメガ3脂肪酸の効果・効能・食べ物 について詳しくはこちら

【参考文献】

南極の宝石(オメガ3サプリメント)
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「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

この街を初めて訪れた方へ

この記事は、例えるなら「ばあちゃんの料理教室(ハクライドウ)」という街の中の「ひとつの家」です。

この街には、生活・料理・健康についての記事が、
同じ考え方のもとで並んでいます。

ここまで書いてきた内容は、
単発の健康情報やレシピの話ではありません。

この街では、
「何を食べるか」よりも
「どうやって暮らしの中で調整してきたか」を大切にしています。

もし、

なぜこういう考え方になるのか

他の記事はどんな視点で書かれているのか

この話が、全体の中でどこに位置づくのか

が少しでも気になったら、
この街の歩き方をまとめたページがあります。

▶ はじめての方は
👉 この街の歩き方ガイドから全体を見渡すのがおすすめです。

この街の地図を見る(全体像を把握したい方へ)

※ 無理に読まなくて大丈夫です。
 気になったときに、いつでも戻ってきてください。

この考え方の全体像(意味のハブ)

この記事で触れた内容は、以下の概念記事の一部として位置づけられています。

料理から見る健康

この街の考え方について

この記事は、
「人の生活を、断定せず、文脈ごと残す」
という この街の憲法 に基づいて書かれています。

この街の憲法を読む