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甘味飲料、炭酸飲料、野菜・果物ジュース、砂糖入りコーヒーによるうつ病リスク上昇と、ブラックコーヒーによるうつ病リスク低下を確認




飲料とうつ病の関連について~甘味飲料、炭酸飲料、野菜・果物ジュース、砂糖入りコーヒーによるうつ病リスク上昇と、ブラックコーヒーによるうつ病リスク低下を確認~(2024年5月17日、国立精神・神経医療研究センター)

国立精神・神経医療研究センターによれば、甘味飲料、炭酸飲料、野菜・果物ジュース、砂糖入りコーヒーによるうつ病リスクが高くなり、ブラックコーヒーによるうつ病リスクが低くなることがわかりました。

今回の研究のポイントは2つ。

1.野菜・果物それ自体はうつ病に予防的に働くことが先行研究で示されていますが、野菜・果物ジュースを飲むと逆にリスクが高くなる

野菜・果物およびフラボノイド豊富な果物とうつ病との関連について果物およびフラボノイドの豊富な果物にうつ病発症リスク低減を確認(2022年11月15日、国立がん研究センター)によれば、果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取量が多いほど、うつ病が発症するリスクが低いことがわかっています。

その理由としては、果物が持つ抗酸化作用などの生物学的作用によりうつ病の発症に対して予防的に働いた可能性が考えられるそうです。

また野菜ならびに関連栄養素の摂取量と、うつ病との間には関連がみられなかったそうです。

今回の研究では、野菜・果物ジュースを飲むと逆にうつ病リスクが高くなることから、果物と果物ジュースには何らかの違いがあり、それがうつ病リスクに影響を与えることが予想されます。

2.コーヒーにおいて砂糖入りコーヒーはうつ病リスクが高くなり、ブラックコーヒーではうつ病リスクが低くなる

これまでの研究において、甘味飲料に含まれる糖分が神経細胞の増殖や分化のために必要な物質(脳由来神経栄養因子)を減少させることや炎症を引き起こすことで甘味飲料はうつのリスクとなり、コーヒーや緑茶は、カフェインなどの抗酸化作用や抗炎症作用からうつに対して予防的に作用すると考えられています。

今回の研究において、甘味飲料の摂取量が多いとうつ病のリスクは高く、緑茶はうつ病のリスクが低いことが報告されたことはこれまでの先行研究と同様の結果でした。

コーヒーでは砂糖入りか、ブラックで飲むかでうつ病への影響が異なる可能性があることがわかりました。

■まとめ

60歳未満の人がコーラやジュースなど砂糖入り飲料やダイエットコーラなど人工甘味料入り飲料を1日1杯以上飲むとうつ病のリスクが上がる!によれば、イギリスの「UKバイオバンク」というデータベースを使い、18万8千人以上の人の飲料摂取(何をどれだけ飲むか)と、うつ病や不安障害との関係を調べたもので、11年以上にわたって参加者を追跡し、年齢によって飲み物の影響がどう違うかを分析したところ、60歳未満の人がコーラやジュースなど砂糖入り飲料(SSB)やダイエットコーラなど人工甘味料入り飲料(ASB)を1日1杯以上飲むと、うつ病のリスクが上がり(SSBで14%、ASBで23%リスク増)、60歳未満の人が純粋なフルーツ/野菜ジュース(PiS)やコーヒーを飲むと、うつ病のリスクが下がるという結果が出ています。

同じような結果が出ているものもあれば、野菜・果物ジュースのように違った結果が出ているものもあります。

最近の研究では、食べ物によって腸内細菌叢が変化し健康(体も心も)に影響を与えることがわかってきていています。

今後はその人の腸内環境と体の心の健康状態を比較しながら、食べ物と飲み物を改善することにより、生活習慣病やうつ病リスクを下げる予防医学になっていくかもしれませんね。







魚介類の摂取量がうつ病リスク・不定愁訴の発生に関係!




和洋女子大の鈴木敏和教授らの研究によれば、魚介類を食べた量とうつ病リスクには逆相関がみられ、不定愁訴(病気の原因を特定できないが、身体の不調を感じる状態。精神的な疾患に隠れている場合もある)の発生に魚介類摂取量が関係していることを示唆する結果が出たそうです。

不定愁訴、うつ病、またはその両方のスコアが高い参加者は、スコアが低い参加者と比較して、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、ビタミンD、ビタミンB12の摂取量が低く、魚介類の摂取量も少ないことが分かりました。

注目すべきは、不明瞭な愁訴とうつ病の両方のスコアが高いグループの魚介類摂取量は、スコアが低いグループの1/4だったことです。

【参考リンク】

■まとめ

魚介類を多く食べる人はうつ病の発症率が低くなる傾向|オメガ3(EPA・DHA)が多いと発症率が低くなる|国立がん研究センター・慶応義塾大学で紹介した国立がん研究センターと慶応義塾大学のチームが「トランスレーショナル・サイカイアトリー」に発表した疫学調査によれば、魚介類を多く食べるグループは、そうでないグループに比べてうつ病の発症率が低くなる傾向にあることがわかっています。

今回の研究で注目するポイントは不定愁訴の発生も魚介類摂取量と関係することが示唆されたこと。

オメガ3に含まれるEPA・DHAが多いとうつ病の発症率が低くなる傾向にあることから、魚介類を積極的に食べることがうつ病や不定愁訴予防につながることが期待されます。

国民一人一日当たり魚介類と肉類の摂取量の推移|水産庁
国民一人一日当たり魚介類と肉類の摂取量の推移|水産庁

参考画像:水産物の消費動向|水産庁(スクリーンショット)

オメガ3の美肌効果|オメガ3を摂取するとなぜ美肌になるのか?で紹介した麻布大学の守口徹教授によれば、オメガ3は青魚などの魚から摂るのが一番効率よいそうですが、水産庁による国民一人当たりの魚介類と肉類の摂取量推移によれば、平成18年には初めて肉類の摂取量が魚介類を上回り、21年には肉類と魚介類の摂取量が上回り、その差が拡大しているそうです。

【関連記事】

オメガ3を摂取するためにも積極的に魚介類を摂取しましょう。

→ オメガ3脂肪酸|オメガ3の効果・効能・食べ物(オイル)・ダイエット について詳しくはこちら







「約15分9秒」の運動を習慣化することでメンタルに良い影響がある/アシックス




「約15分9秒」の運動が、精神にポジティブな影響をもたらす スポーツがメンタルにおよぼす効果に関する研究成果について(2022年3月31日、アシックス)によれば、自身が日ごろから行っている運動を1日あたり「約15分9秒」実行すると、精神状態にポジティブな影響を与える可能性があるそうです。

運動をしない期間は、「自信」が20%、「ポジティブさ」が16%、「エネルギッシュさ」が23%、「ストレスに対処する能力」が22%低下しました。

この研究によれば、わずか1週間の運動不足が心の状態を低下させ、また通常の運動習慣に戻ると心の状態が回復することが分かったそうです。

ADHDがかなり重い人でも1日に1回20分程度の運動を続ければ、気持ちを明るくし、やる気の向上につながる!?で紹介した米ジョージア大学のパトリック・オコーナー教授らのチームによれば、ADHDがかなり重い人でも1日に1回20分程度の運動を続ければ、気持ちを明るくし、やる気の向上につながるそうです。

■運動とやる気の関係

ポケモンGOはうつ病の改善につながる可能性がある!?や<自宅で長時間は危険>スマホの使用時間と位置情報の分析でうつ病診断ができる可能性がある!?で紹介した、米ノースウェスタン大の研究グループによれば、うつ病になると自宅に引きこもってスマートフォンを長時間使用する傾向があるそうです。

うつ病患者は外出する気力がなくなり、憂鬱(ゆううつ)な気分を紛らわすため、一人でインターネットやゲームをすることにより、スマホの使用場所は自宅など極めて少ない地点に限られていたそうですが、今回の実験でわかったように、運動をすることは気持ちを明るくし、やる気の向上につながるのですね。

仕事の合間に運動をするとモチベーションや生産性がアップするという研究結果によれば、仕事の途中でエクササイズを行なうと、やる気が戻るそうです。

運動することはやる気を出すだけでなく、脳の認知能力を高める効果もあります。

有酸素運動をすると、頭も体もスマートになる!?によれば、モントリオール大のアニルニガム博士によれば、有酸素運動のレベルを30秒ほどの短いスパンで緩急変えて交互に行うトレーニングを週2回、これをエアロバイクを使って行い、他にウェイトトレーニングを同じく週2回実践してもらい、4カ月の後に認知機能を含み計測したところ、認知能力の改善、腹囲・太ももの脂肪の減少、インスリン感受性がアップ(このことで血糖値を下げることが期待される)という結果が出たそうです。

実は、運動する時間も短くてよいそうで、たった10分の軽い運動でも脳の働き軽やかに-筑波大で紹介した筑波大学の征矢(そや)英昭教授らの研究によれば、わずか10分間の運動でも、脳の認知機能を高める効果があるそうです。

■まとめ

運動する目的としては体の健康をイメージする人も多いと思いますが、実は心の健康にも役立つんですね。

「最近運動してない」「自信がなくなった」「心が落ち込む」「エネルギッシュさがない」「ストレスを感じる」という人は1日15分9秒の運動を習慣化してみては?







「夜寝る前にはちみつをなめると虫歯になる?それとも虫歯になりにくい?」について調べてみた!




「夜寝る前にはちみつをなめると虫歯になる?それとも虫歯になりにくい?」について調べてみたいと思います。

検索するといろんな歯医者さんが「はちみつを食べると虫歯になる?ならない?」をテーマにブログを書いているのですが、虫歯の原因になるという人もいれば、虫歯になりにくいという人もいて、どっちかわからないので、はちみつを寝る前になめることが虫歯(う蝕)にどの程度影響するかを論文ベースで改めて調べてみたいと思います。

1. はちみつの成分と虫歯の関係

はちみつは主に糖(グルコース、フルクトースなど)で構成されており、理論的には虫歯の原因となる可能性があります。

虫歯は、口腔内の細菌(特に Streptococcus mutans)が糖を発酵させて酸を産生し、歯のエナメル質を溶かすことで発生します(Loesche, 1986, Microbiology Reviews)。

したがって、はちみつを摂取すると、糖が口腔内に残留し、細菌の活動を促進する可能性はあります。

しかし、はちみつには抗菌作用(特にメチルグリオキサールや過酸化水素による)があり、S. mutans の増殖を抑制する可能性が示唆されています(Molan, 1992, Bee World)。

この抗菌作用が虫歯のリスクをどの程度軽減するかは、研究によって結論が分かれます。

2. 寝る前の摂取と虫歯リスク

寝る前に糖を含む食品を摂取すると、唾液分泌が夜間に減少するため、口腔内の糖や酸が長時間歯に接触し、虫歯リスクが高まるとされています(Dawes, 2003, Journal of Dentistry)。

はちみつも糖を含むため、寝る前になめる場合、口腔内に糖が残留する時間が長くなり、虫歯のリスクが理論上増加します。

一方で、はちみつの抗菌作用により、単純な砂糖(スクロース)ほど虫歯のリスクが高まらない可能性があります。

ある研究では、はちみつがスクロースや他の糖類と比較して S. mutans のバイオフィルム形成を抑制する効果が報告されています(Nassar et al., 2012, Caries Research)。

ただし、この研究は in vitro(試験管内)のものであり、実際の口腔環境での効果は限定的かもしれません。

3. 口腔衛生の影響

寝る前にはちみつをなめた後、歯磨きやうがいを行えば、口腔内の糖残留が減少し、虫歯リスクは大幅に低下します(Stookey, 2008, Journal of Dentistry)。

逆に、歯磨きせずに寝ると、はちみつの糖が歯に付着したままになり、虫歯のリスクが高まる可能性があります。

■結論

夜寝る前にはちみつをなめると虫歯になる?虫歯になりにくい?という質問については、虫歯になる可能性と虫歯になりにくい可能性の両方の可能性があります。

虫歯になる可能性:はちみつは糖を含むため、寝る前になめた場合、歯磨きせずに寝ると虫歯のリスクが上昇する(Dawes, 2003; Loesche, 1986)。

虫歯になりにくい可能性:はちみつの抗菌作用により、スクロースほど虫歯のリスクは高くない可能性があるが、完全にリスクを排除するわけではない(Molan, 1992; Nassar et al., 2012)。

大事なことは寝る前にはちみつを摂取したら、きちんと歯磨きやうがいをすることで虫歯のリスクを最小限に抑えられるということ(Stookey, 2008)。

はちみつの種類(特にマヌカハニーなど抗菌作用が強いもの)によって虫歯リスクが異なる可能性があるが、どの種類でも口腔ケアは必須なので、しっかりとケアしていきましょう。

【参考リンク】

【補足】

Almasaudi, 2021, Evidence-Based Complementary and Alternative Medicineの内容を基に、はちみつを寝る前になめることと虫歯の関係について、先の回答を膨らませて詳細に説明します。

はちみつを寝る前になめると虫歯になるか?論文ベースの詳細な検討

1. はちみつの成分と虫歯リスクの基本メカニズム

はちみつは主に糖類(グルコース、フルクトース、スクロースなど)で構成されており、約80%が糖、20%が水分、その他にビタミン、フラボノイド、フェノール酸、酵素などが含まれます(Almasaudi, 2021)。糖は口腔内の細菌、特に Streptococcus mutans によって発酵され、酸を生成することで歯のエナメル質を脱灰し、虫歯を引き起こす可能性があります(Loesche, 1986, Microbiology Reviews)。寝る前に糖を含む食品を摂取すると、夜間の唾液分泌量の減少により、口腔内の糖や酸が長時間歯に接触し、虫歯リスクが高まるとされています(Dawes, 2003, Journal of Dentistry)。

しかし、Almasaudi (2021) の論文によれば、はちみつには強力な抗菌作用があり、S. mutans を含む多くの細菌に対して抑制効果を発揮します。この抗菌作用は、以下のような複数の要因によるものです:

高い浸透圧:はちみつの高糖濃度(水分活性0.562~0.62)は細菌の水分を奪い、増殖を抑制します。

低いpH(3.2~4.5):酸性環境は S. mutans の最適増殖pH(6.5~7.5)よりも低く、細菌の活動を抑制します。

過酸化水素(H₂O₂):グルコースオキシダーゼ酵素により生成され、殺菌作用を持ちます。はちみつを30~50%希釈するとH₂O₂濃度が最大となり、5~100 μg/g(0.146~2.93 mM)の範囲で抗菌効果を発揮します。

ポリフェノール化合物とフラボノイド:フェノール酸(例:カフェ酸、没食子酸)やフラボノイド(例:アピゲニン、ガランギン)は、 S. mutans のバイオフィルム形成やDNA合成を阻害します。

ビーディフェンシン-1:抗菌ペプチドで、特にマヌカハニー以外の蜂蜜で S. mutans や他の細菌の増殖を抑制します。

これらの成分は、はちみつが単なる糖溶液(例:スクロース)とは異なり、虫歯のリスクを軽減する可能性を示唆しています(Nassar et al., 2012, Caries Research)。

2. 寝る前のはちみつ摂取と虫歯リスク:論文の視点からの評価

Almasaudi (2021) の論文では、はちみつの抗菌作用が S. mutans を含むグラム陽性菌やグラム陰性菌(例:MRSA、緑膿菌)に対して有効であると報告されています。特に、はちみつの低いpHとH₂O₂生成は、口腔内の細菌増殖を抑制する重要な要因です。 S. mutans は虫歯の主要な原因菌であり、バイオフィルムを形成して歯に付着し、酸を産生しますが、はちみつのポリフェノール化合物(例:ガランギンはペプチドグリカン合成を阻害)やH₂O₂はバイオフィルム形成を妨げる可能性があります(Alandejani et al., 2008; Maddocks et al., 2013)。

しかし、寝る前にはちみつをなめると、口腔内の糖が残留し、夜間の唾液分泌減少により洗い流されにくい状態が続きます。Almasaudi (2021) は、はちみつの高浸透圧や抗菌成分が細菌の増殖を抑制すると述べていますが、口腔環境では唾液や食物残渣による希釈が起こり、H₂O₂の生成効率や抗菌効果が低下する可能性があります(Molan, 1992)。例えば、はちみつを希釈するとグルコースオキシダーゼが活性化しH₂O₂を生成しますが、口腔内ではこの希釈が不十分で、抗菌効果が最大限に発揮されない場合があります。

Nassar et al. (2012) の研究では、はちみつが S. mutans のバイオフィルム形成を in vitro で抑制したものの、実際の口腔環境では糖の残留時間が抗菌効果を上回る可能性があると示唆されています。したがって、寝る前にはちみつを摂取した場合、抗菌作用が虫歯リスクを完全に相殺する保証はありません。

3. はちみつの種類による違い

Almasaudi (2021) は、はちみつの抗菌効果が花蜜の産地、蜂の種類、加工方法に依存すると強調しています。例えば:
マヌカハニー:メチルグリオキサール(MGO)含量が高く、H₂O₂以外の非過酸化物系抗菌作用が強い。 S. mutans に対する効果も他の蜂蜜より顕著である(Al-Nahari et al., 2015)。

その他の蜂蜜:H₂O₂やビーディフェンシン-1に依存し、マヌカハニーほど強力ではない場合がある。たとえば、アルモハニーはH₂O₂に依存するが、カタラーゼ存在下では効果が低下する(Sherlock et al., 2010)。

マヌカハニー(UMF 10~20)は、 S. mutans に対して10~50%濃度で完全な増殖抑制を示し、殺菌効果を持つことが報告されています(Al-Nahari et al., 2015)。一方、一般的な蜂蜜(例:サウジアラビア産)は細菌静止効果にとどまる場合があります。したがって、寝る前にはちみつをなめる場合、マヌカハニーのような高抗菌力の蜂蜜は虫歯リスクを軽減する可能性が高いですが、一般的な蜂蜜ではリスクが残ります。

4. 口腔衛生の重要性

Almasaudi (2021) の論文では、はちみつの抗菌作用が創傷治療や感染症管理に有効である一方、口腔内での具体的な応用については言及が限定的です。しかし、Stookey (2008, Journal of Dentistry)によれば、糖を含む食品を摂取した後、歯磨きやうがいを行うことで口腔内の糖残留を除去し、虫歯リスクを大幅に低減できます。はちみつの粘性が高いため、歯に付着しやすい性質があり、寝る前に摂取した場合は特に口腔ケアが重要です。

論文では、はちみつのフェノール化合物やフラボノイドが抗炎症作用を持ち、創傷部位の炎症を抑えるとされていますが、口腔内では炎症よりも糖による酸産生が虫歯の主要な問題です。したがって、はちみつの抗菌作用に頼るだけではなく、摂取後の口腔ケアが虫歯予防の鍵となります。

5. 論文に基づく追加の考察:抗生物質との相乗効果

Almasaudi (2021) は、はちみつと抗生物質の併用による相乗効果を強調しています。たとえば、マヌカハニーとテトラサイクリンやリファンピシンを組み合わせると、 S. mutans やMRSAのバイオフィルムを効果的に除去し、抗菌効果が高まります(Jenkins & Cooper, 2012; Müller et al., 2013)。この知見は、口腔内での S. mutans バイオフィルム対策に応用可能かもしれませんが、寝る前のはちみつ摂取に抗生物質を併用することは現実的ではありません。代わりに、はちみつの抗菌成分(H₂O₂、ポリフェノール、ビーディフェンシン-1)が単独でどの程度 S. mutans を抑制できるかが重要です。

6. 実践的なアドバイス

Almasaudi (2021) の論文と他の研究を総合すると、以下のような実践的なアドバイスが導かれます:

少量の摂取:寝る前にはちみつをなめる場合、小さじ1杯程度(約5g)に抑える。糖の総量を減らすことで虫歯リスクを軽減。

高抗菌力のはちみつを選択:マヌカハニー(UMF 16以上など)は、MGOやポリフェノール含量が高く、 S. mutans に対する抑制効果が強い。

口腔ケアの徹底:はちみつをなめた後、すぐに水でうがいするか、可能であれば歯磨きを行う。フッ素入り歯磨き粉を使用するとエナメル質の再石灰化が促進される(Stookey, 2008)。

頻度の制限:毎晩はちみつをなめる習慣は避け、週に数回程度に抑える。頻度が高いほど糖の暴露時間が増え、虫歯リスクが上昇。

はちみつの品質に注意:加工や加熱によりH₂O₂やポリフェノールが失われる場合があるため、生(非加熱)の高品質なはちみつを選ぶ。

7. 結論:虫歯になるか、ならないか?

Almasaudi (2021) の論文を基に、はちみつを寝る前になめることの虫歯リスクを評価すると、以下の結論が得られます:
虫歯になる可能性:はちみつは糖を含むため、寝る前になめた後、歯磨きやうがいをせずに寝ると、口腔内の糖が S. mutans によって酸に変換され、虫歯リスクが上昇する(Dawes, 2003; Loesche, 1986)。特に、一般的な蜂蜜(マヌカハニー以外)では抗菌効果が限定的な場合がある。

虫歯になりにくい可能性:はちみつの抗菌成分(H₂O₂、ポリフェノール、ビーディフェンシン-1、低pH)は S. mutans の増殖やバイオフィルム形成を抑制し、スクロースや他の単純な糖よりも虫歯リスクを軽減する(Nassar et al., 2012; Almasaudi, 2021)。特にマヌカハニーは高い抗菌力を持つ。

口腔ケアが決定的:はちみつの抗菌作用は虫歯リスクを軽減するが、完全に防ぐわけではない。寝る前にはちみつを摂取した後、適切な口腔ケアを行うことで、虫歯リスクをほぼゼロに近づけられる(Stookey, 2008)。

8. 論文の限界と今後の研究

Almasaudi (2021) の論文は、はちみつの抗菌作用を創傷治療や感染症管理の観点から詳細に解説していますが、口腔内での S. mutans に対する具体的な効果や、寝る前の摂取に関する直接的なデータは不足しています。Nassar et al. (2012) のような研究も in vitro に基づいており、実際の口腔環境(唾液流量、食物残渣、歯磨き習慣など)を反映した臨床研究が必要です。今後、以下のような研究が虫歯リスクの評価に役立つでしょう:

はちみつの種類(マヌカハニー vs. 一般蜂蜜)による S. mutans 抑制効果の比較。

寝る前のはちみつ摂取後の口腔内pHや糖残留時間の測定。

口腔ケアの有無による虫歯発生率の長期追跡。

最終回答

はちみつを寝る前になめても、適切な口腔ケア(歯磨きやうがい)を行えば虫歯のリスクは非常に低い。はちみつの抗菌作用(H₂O₂、ポリフェノール、ビーディフェンシン-1、低pH)は S. mutans の増殖を抑制し、スクロースよりも虫歯リスクを軽減する。特にマヌカハニーは高い抗菌力を持つ(Almasaudi, 2021)。しかし、口腔ケアを怠ると、はちみつの糖が口腔内に残留し、虫歯リスクが上昇する(Dawes, 2003)。少量の摂取、高抗菌力のはちみつ選択、摂取後の口腔ケアが虫歯予防の鍵である。







血液透析患者においてグラノーラの摂取による血圧の低下や腸内環境の改善を確認/カルビーと順天堂大学の研究




カルビーと順天堂大学の共同研究によれば、血液透析患者においてグラノーラの摂取による血圧の低下や腸内環境の改善を確認したそうです。

【参考リンク】

■背景

●至適血圧(脳卒中や心臓病、腎臓病などの臓器障害のリスクを最小限に抑える理想的な血圧の値)を超えて血圧が高くなるほど心血管疾患や慢性腎臓病の進展および死亡リスクが高くなることが知られています。

●近年腸内環境が高血圧の発症や進展に関与していることも報告されています。

●血液透析患者では、高血圧を合併していることが多く1日6g以下の塩分制限に加え、電解質異常の発症抑制のために果物や野菜の摂取も制限されるため、食物繊維が不足しやすく慢性的な便秘症状を抱えている患者が多くいます。

つまり、血液透析を受けている患者さんは、腎臓の機能が低下していて塩分や果物・野菜の摂取を厳しく制限する必要があるため、食物繊維が不足して腸内環境が悪化し、便秘症状を抱えていて、腸内環境の悪化は高血圧にも関与していることがわかっていることから、塩分が少なくなおかつ食物繊維が多い食品を摂るのが良いのではないかと考えられます。

シリアルは塩分含有量が少なく、βグルカンなどの水溶性食物繊維やポリフェノールが豊富に含まれており、減塩、そして腸内環境の改善や抗炎症作用に寄与することが期待されるそうです。

これまでに11名の血液透析患者を対象とした試験では、朝食をグラノーラに置き換えることで、血圧および腸内細菌由来尿毒素であるインドキシル硫酸(IS)の低下、便性状の改善を報告されています(H Nagasawa, et al; J Pharmacol Sci. 2021) 。

今回の研究では、血液透析患者がグラノーラを朝食に8週間食べたときの効果を調べること。特に、血圧、腸内環境、尿毒素(インドキシル硫酸:IS)、便の状態などをチェックしました。

■結果

●安全性

グラノーラを食べても、血液検査で異常は見られませんでした。透析患者でもグラノーラは安全に食べられることが確認されました。

●血圧と塩分摂取量の低下
グラノーラを食べたことで、推定される塩分摂取量が減り、収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)が下がりました。これは、これは塩分の摂取制限による降圧効果がもたらされた可能性が考えられます。

●腸内環境の改善
血中のインドキシル硫酸(IS)が減少し、ISを作る腸内細菌(インドール産生菌)も減りました。これは、グラノーラに含まれる食物繊維の補給が腸内環境の改善を介して腸内細菌由来の尿毒素ISの産生量低下に繋がった可能性が考えられます。

腸内細菌叢解析では、α多様性(Simpson指数、Observed species)が向上し、Blautia菌やNeglecta菌が増えました。Blautia菌は高血圧患者では低下していることが報告されており、減塩による降圧効果に加えて、Blautia菌などの腸内細菌による降圧効果がある可能性も示唆されました。

■まとめ

血液透析患者においてグラノーラの摂取は、塩分を抑えながら、食物繊維が補給できることで、腸内環境が改善し、また心血管疾患の危険因子の低減に寄与する可能性が期待されます。