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豆乳・豆腐でエストロゲン過剰になる?大豆イソフラボン・エクオールと更年期の関係

これまで当サイトでは、閉経によるエストロゲン低下と慢性炎症、コレステロール、エクオールと更年期症状、毛髪などについて、さまざまな研究を紹介してきました。

そのため、私自身、「閉経後のエストロゲン低下に伴ってさまざまな変化が現れ、大豆イソフラボンやエクオールについてはその働きを補う可能性から研究されている」という理解を持っていました。

ところが最近、SNSで「豆乳や豆腐などの大豆製品を摂ることでエストロゲンが過剰になる」という趣旨の情報を目にしました。

これまで調べてきた方向とはかなり違います。

ただ、自分の理解と違う情報だからといって、すぐに「間違っている」と決めることもできません。

もしかすると、自分たちがこれまで見てきた情報にも偏りがあったのではないか?

そこで今回は「大豆は良い」「大豆は悪い」のどちらかを決めるのではなく、改めて、

大豆イソフラボンやエクオールにエストロゲン様作用があることと、「エストロゲン過剰になる」ことは同じなのか?

というところから調べ直してみます。

■更年期は「エストロゲン過剰になる時期」?

まず押さえておきたいのが、更年期に女性ホルモンがどう変化するのかです。

日本産科婦人科学会は、更年期障害の主な原因について、女性ホルモン(エストロゲン)が大きくゆらぎながら低下していくことと説明しています。

さらに加齢による身体の変化、精神的・心理的な要因、家庭や職場などの社会的要因が複合的に影響するとされています。

つまり、

更年期=単純にエストロゲンが足りない

とだけ考えるのも正確ではありませんが、

更年期=エストロゲンが過剰になっている

と一般化するのも、現在の標準的な説明とは異なります。

実際、更年期障害に対するホルモン補充療法(HRT)は、少量のエストロゲンを補充する治療です。特に、ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗などの症状に有効とされています。

■では、大豆イソフラボンとは?

ここで大豆の話につながります。

大豆には「イソフラボン」という成分が含まれています。

イソフラボンにはホルモン作用と非ホルモン作用があり、大豆と女性の健康との関係で注目されてきた成分です。

このため、

大豆イソフラボンにはエストロゲンに似た作用がある
↓
エストロゲンが増える
↓
エストロゲン過剰になる

と連想したくなります。

でも、ここには一つ飛躍があります。

「エストロゲン受容体に作用すること」と「自分の体内で作られるエストロゲンの量が増えること」は同じ意味ではありません。

「エストロゲン様作用」という言葉を、そのまま「エストロゲンが増える」と置き換えないことがポイントです。

■エクオールって何?

もう一つ、更年期の話で最近よく登場するのが「エクオール」です。

大豆イソフラボンの一つであるダイゼインは、腸内細菌によって代謝され、エクオールという物質になることがあります。

エクオールにもエストロゲン様作用があり、とくにエストロゲン受容体β(ERβ)への作用が注目されています。

ただし、誰でも同じようにエクオールを作れるわけではありません。エクオールを産生できるかどうかには個人差があることが知られています。

ここでも、

エクオールにエストロゲン様作用がある
=エクオールを摂るとエストロゲン過剰になる

とは、そのまま結びつけられません。

■エクオールは更年期に悪いものなの?

むしろエクオールは、更年期症状との関係から研究されてきた成分です。

複数の臨床試験で、更年期症状に対するS-エクオール摂取の効果が検討されています。一方ですべての症状に効く万能な成分という意味ではなく、効果については引き続き研究が必要な領域です。

ここで大切なのは、

エストロゲンに関係するもの=危険

でも、

エストロゲンに似た働きがあるもの=更年期に必ず良い

でもないことです。

作用の仕組み、摂取量、対象となる人、症状などを分けて考える必要があります。

■ホルモンパッチも「エストロゲン過剰」とは限らない

更年期に処方されるホルモンパッチについても似ています。

日本産科婦人科学会によると、HRTには飲み薬だけでなく、貼り薬、塗り薬、腟錠など複数のタイプがあります。

通常はエストロゲンと黄体ホルモンを組み合わせますが、子宮摘出後など条件によって治療方法が異なります。主治医と相談して適切な治療法を選択することが推奨されています。

したがって、

・豆乳を飲んでいる
・エクオールを摂っている
・ホルモンパッチを使用している

という3つの事実だけから、

「自分はエストロゲン過剰だった」

と判断することはできません。

処方されているHRTを自己判断で中止するのではなく、気になる症状があれば処方した医師に相談することが大切です。

■「豆乳を飲むと体温が下がる」のは甲状腺の話?

大豆についてはもう一つ、「甲状腺機能に悪影響を与えるのではないか」という議論があります。

2019年に発表された、大豆摂取と甲状腺機能について18報を対象としたシステマティックレビュー・メタ解析では、fT3、fT4には有意な変化がなく、TSHはわずかに上昇したものの、その臨床的な意味は不明とされています。

また、別のレビューでは、甲状腺機能が正常でヨウ素摂取が十分な人については、大豆食品・イソフラボンが甲状腺機能に悪影響を及ぼすことを示す証拠は乏しいとまとめられています。

一方、甲状腺機能低下症では、大豆食品が甲状腺ホルモン薬の吸収に影響し、必要量に影響する可能性などについて検討されています。

つまり、

「大豆と甲状腺はまったく関係ない」

と切り捨てるのも適切ではありません。

しかし、

「豆乳や豆腐を食べる → 甲状腺機能が低下する → 体温が下がる」

と誰にでも当てはまる因果関係として扱うのも難しいのです。

■体の不調を「エストロゲン過剰」だけで説明しない

さらに注意したいのは、更年期には非常に多様な症状が現れることです。

日本産科婦人科学会は、

ほてり・のぼせ・発汗
めまい・動悸
頭痛
肩こり
腰や背中の痛み
関節痛
冷え
疲れやすさ
気分の落ち込み
イライラ
不眠

などを更年期障害の症状として挙げています。

しかも2026年の「女性のヘルスケアに関するガイダンス」では、更年期症状として捉えられがちな症状について、甲状腺機能低下症など鑑別を必要とする疾患も取り上げています。

だから、「最近疲れる」「冷える」「関節が痛い」「髪が気になる」といった変化を一つの原因だけで説明するのは難しいのです。

→ 更年期障害の症状・原因・チェック|40代・50代の更年期の症状 について詳しくはこちら

■「エストロゲンに似た働き」から「エストロゲン過剰」へ飛ばない

今回調べてみて、一番大切だと思ったのはここです。

健康情報では、

大豆を食べる
↓
イソフラボンを摂る
↓
エストロゲン様作用がある
↓
エストロゲンが過剰になる
↓
体調が悪くなる

と、一続きの説明のように感じてしまうことがあります。

しかし、一つひとつは別の問題です。

特に、

「エストロゲン様作用がある」ことと「体内のエストロゲン量が過剰になる」ことは分けて考える必要があります。

同じように、

「自分が豆乳を飲んでいた時期に体調が悪かった」ことと「豆乳がその体調不良の原因だった」ことも同じではありません。

自分自身の体験はとても重要な情報です。

ただ、体験から原因を特定するときには、もう一段階の検証が必要になります。

■まとめ

大豆イソフラボンやエクオールにはエストロゲン様作用があります。

しかし、それだけを理由に、

「豆乳や豆腐を食べるとエストロゲン過剰になる」

と考えることはできません。

更年期についても、現在の標準的な医学では、エストロゲンが大きくゆらぎながら低下していくことが更年期障害の主な原因とされ、必要に応じて少量のエストロゲンを補うHRTも行われています。

一方、大豆と甲状腺機能のように、条件によって注意して考える必要がある問題もあります。だからこそ、「大豆は健康に良い」「大豆は危険」とどちらか一方に決めてしまうのではなく、何が分かっていて、どこから先はまだ分からないのかを分けて考えることが大切です。

SNSなどで「これが原因だったのか」と思える健康情報に出会ったときには、

「この『→』は本当につながっているのかな?」

と一度立ち止まってみる。

その小さな疑問が、健康情報と上手に付き合うための一つの手がかりになりそうです。

【参考文献・参考情報】

日本産科婦人科学会「更年期障害」
日本産科婦人科学会ほか「女性のヘルスケアに関するガイダンス」
Otun J, et al. Systematic Review and Meta-analysis on the Effect of Soy on Thyroid Function. Scientific Reports. 2019.
Messina M, Redmond G. Effects of soy protein and soybean isoflavones on thyroid function in healthy adults and hypothyroid patients: a review of the relevant literature. Thyroid. 2006.

【関連記事】

エストロゲンには抗炎症作用があり、閉経でそれが失われると慢性炎症が広がり、病気のリスクが高まる!
エストロゲン低下と慢性炎症の広がりについての記事では、閉経を炎症バランスが変化する転換点として紹介しています。
なぜ閉経以降女性ホルモン(エストロゲン)が減少すると、高コレステロール血症の女性が急増するの?
エストロゲン低下と脂質代謝についても記事にしてきました。
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エクオールと毛髪については、閉経後女性200人の横断研究を取り上げ、エクオール産生者で毛髪密度や細毛化、白髪について良好な関連が見られた一方、因果関係は分からず、サプリで白髪が減ることを示した研究でもないときちんと留保しています。
エクオールの効果|エクオールを作れる人、作れない人の違いとは?|#世界一受けたい授業
体脂肪・内臓脂肪面積・動脈硬化…エクオールに生活習慣病リスク低減の可能性 50代・60代の閉経期女性の味方!
エクオール産生能と体脂肪、内臓脂肪、動脈硬化などとの関連も紹介していますが、ここでも中心にあるのは「エストロゲンが減少する閉経期」という文脈です。
フリーアナウンサーの勝恵子さんはHRT(エッチアールティー)とエクオールと運動で更年期症状を改善
HRTについても、勝恵子さんの記事では、本人がエストロゲン値の低下を確認した後、医師と相談しながらHRT、エクオール、運動を取り入れている事例として紹介しています。

乳糖不耐症の症状は○○をすることで軽くすることができる!




「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」とは、骨がスカスカになり、骨折しやすくなる病気です。

骨粗しょう症は、転倒から骨折、寝たきりになる危険性が高まることで知られていますが、自覚症状に乏しく、骨折してはじめて病気に気づく人も少なくありません。

60代女性の3人に1人がかかるとされる骨粗鬆症であり、骨粗鬆症の潜在患者は1千万人以上といわれるそうですが、自覚症状に乏しいため、実際に治療を受けている人は1割程度なのだそうです。

こういう事情がありながらも、牛乳などの乳製品に含まれるカルシウムが健康に良いということは多くの方はしっているのですが、女性の99%がカルシウム不足であるのはなぜなのでしょうか?

その一つの理由に日本人は乳糖不耐症(牛乳や母乳に含まれる乳糖を消化・吸収する酵素のラクターゼが不足しているために、下痢や腹痛などの症状を引き起こす病気。)であるといわれていることが影響しているのではないでしょうか?

【関連記事】

その前にまず知っておく必要があるのが牛乳が苦手な人の中には「乳糖不耐症」と「牛乳アレルギー」があるということ。

どちらも腹痛や下痢といった症状が出るのは同じですが、そのメカニズムが違います。

乳糖不耐症は、乳糖(ラクトース)を消化吸収のため分解するラクターゼという消化酵素が不足するために起きる病気です。

牛乳アレルギーは、カゼインやβラクトグロブリンなどのタンパク質が原因でアレルギー反応を起こす食物アレルギーです。

【関連記事】

【参考リンク】

改めて「日本人は乳糖不耐症である」ということについて考えてみます。

ウワサ16 日本人のほとんどは、牛乳を飲むとおなかをこわす|Jミルクを参考にすると意外な事実がありました。

1)乳糖の摂取量と下痢発生に関するヒト試験(※1)によれば、乳糖を60g(1,200mL)摂取のグループでは50%以上の割合で下痢が起こりましたが、30g(牛乳700mL相当)摂取したグループでも下痢は起こりませんでした。

2)15歳以上の男女10,000人を対象とした調査(※2)では、牛乳を飲んでお腹がゆるくなったり、ゴロゴロしたり、張ったりする症状の自覚を持つ人について、「いつもそうなる」人は7%、「いつでもではないがなる」は13%、「たまになる」は29%でした。

【参考資料】

  • ※1 奥恒行, ヒトにおける乳糖の一過性下痢に対する最大無作用量とそれに及ぼす食べ方に関する研究, 牛乳栄養学術研究会委託研究報告書, 2001, 123-141.
  • ※2 一般社団法人J ミルク, 牛乳乳製品に関する食生活動向調査2013.

この2つを参考にすると、牛乳1,200mLを飲むと50%以上の割合で下痢が起こったものの、一度に1.2リットルの牛乳を飲むことはほとんどなく、また牛乳を飲んだからと言って、常にお腹がゆるくなったり、ゴロゴロしたり、張ったりする症状があるわけではないということです。

「飲み方・飲む量によって乳糖不耐症の症状に違いが出ることがあるの?」「乳糖不耐症の症状には個人差があるの?」「乳糖不耐症であっても常に症状が出るわけではないの?」といった疑問が出てきますよね。

この疑問を解決するヒントの一つに「腸内細菌叢」があります。

乳糖が小腸で分解されない場合でも、大腸に存在する乳酸菌やビフィズス菌などの有用腸内細菌が多い人では、乳糖が良く分解されて、不快症状が出にくいことが近年の研究により明らかになってきました。

有用腸内細菌が多い人は小腸で分解されなかった乳糖を大腸で分解することにより不快症状が出にくいということがあるそうです。

この研究を参考にすれば、腸内環境が改善されれば乳糖不耐症の症状は出にくいということなんですね。

牛乳摂取習慣と乳糖不耐症

「牛乳による不快な症状を自覚しやすい人は牛乳など乳製品を取らない、すると乳糖を摂取する機会がないために乳糖分解を助ける腸内細菌叢が形成されない、細菌による乳糖分解の助けもないために牛乳をのむと益々乳糖不耐症の症状が自覚されやすい。」という循環が成り立ってしまうためである。

乳糖不耐症を自覚している人は牛乳を避ける

→牛乳を避けることで乳糖分解を助ける腸内細菌叢が形成されない

→今回飲むと大丈夫かなと思って牛乳を飲むとやっぱり乳糖不耐症の症状があらわれる

腸内環境が改善されれば、正確に言えば、乳糖分解を助ける腸内細菌叢が形成されれば、乳糖不耐症の症状が軽減されるにもかかわらず、このループによって乳糖不耐症の人は症状が軽減されないままになってしまうということなんですね。

乳糖不耐症の人が牛乳などの乳製品を避けるだけであれば何も問題がないように見えるのですが、ある調査によれば、乳糖不耐症を自覚する人はカルシウム摂取量が低いため骨密度も低いという結果が出ているそうです。

ここで問題になることは、乳糖不耐症を自覚する集団は、乳糖不耐症を自覚しない集団に比較して、カルシウム摂取量が低いため骨密度もまた低い、という疫学調査の結果が得られていることである。

そう考えると乳糖不耐症の症状を軽減するために腸内環境を改善=乳糖分解を助ける腸内細菌叢を作りたいところです。

そこで考えられる一つの方法が「毎日飲み続けること」!

乳糖は消化に時間のかかる難消化性オリゴ糖の一種であり、腸内細菌叢に影響します。毎日飲み続けることで、乳糖分解性の腸内細菌が増加して腸内環境が改善され、乳糖の分解や代謝を増進できることが期待できます。

牛乳を毎日飲み続けることで乳糖分解性の腸内細菌が増加して腸内環境が改善され、乳糖の分解や代謝を増進できることが期待できるそうです。

ただ牛乳を毎日飲み続けるには抵抗がある人も多いでしょうが、飲み方を工夫することで少しずつ腸内環境を変えていくことができるそうです。

●数回に分けてゆっくり飲む

一度にたくさん飲むことで乳糖不耐症の症状が出やすくなるので、乳糖が分解しやすくなるように少しずつ数回に分けて飲むとよいそうです。

●温めたり、混ぜたりして飲む

牛乳を温めると消化酵素ラクターゼの働きも盛んになるそうです。コーヒーや紅茶、ココアにして飲む、料理に加えるのもよいそうです。

●牛乳にこだわらずヨーグルトやチーズを食べる

ヨーグルトは乳酸菌の発行によって乳糖が分解され減少しており、またチーズは乳糖のほとんどが製造工程の中でホエーに移って取り除かれているので、乳糖不耐が起こりやすい食品です。

■まとめ

1)牛乳を毎日飲み続けることで乳糖分解性の腸内細菌が増加して腸内環境が改善され、乳糖の分解や代謝を増進できることが期待できる。

2)数回に分けてゆっくり飲む、温めたり混ぜたりして飲む、牛乳にこだわらずヨーグルトやチーズを食べるなど工夫する。

【参考文献】

■【追記】「乳糖を消化しにくい」=「牛乳でお腹を壊す」ではない

乳糖不耐症を考える上で大切なのは、小腸で乳糖を十分に消化・吸収できないこと(乳糖吸収不良)と、実際に腹痛やお腹の張り、下痢などの症状が出ること(乳糖不耐症)は、必ずしも同じではないという点です。

2005年に日本人女性43人を対象に行われた研究では、1回に摂取した乳糖をラクターゼによって消化できる量は10g未満と推定される一方、大腸の腸内細菌は約20~30gの乳糖を発酵できると報告されました。また、一過性の下痢を引き起こさない乳糖の最大許容量は、体重1kgあたり0.72gでした。

つまり、小腸で乳糖を十分に消化できなかったとしても、それだけで必ず症状が出るとは限らず、その後の大腸での腸内細菌による発酵も関係していると考えられます。

さらに2023年には、日本人を対象に、牛乳を少量から徐々に増やしていく研究が報告されています。

牛乳や乳製品を摂ると腹部症状が出る人を調べ、乳糖吸収不良と診断された人に対して、牛乳30mLから始め、4~7日ごとに量を増やし、最大200mLまで摂取する方法を行いました。

この方法を行った32人のうち、29人(90.6%)で症状の改善がみられました。

興味深いのは、症状が改善した人が多かった一方、乳糖吸収不良を調べる20g乳糖水素呼気試験の診断値が改善したのは10人(34.5%)で、16人(55.2%)では変化がみられなかったことです。

つまり、乳糖を吸収する能力そのものが改善しなくても、少量から牛乳を摂取していくことで症状が軽減する可能性があることを示す結果といえます。

また、治療後に症状がなくなった7人では、腸内細菌の一種である「Blautia(ブラウティア)」が有意に増えていたことも報告されています。

これらの研究を見ると、「乳糖を消化しにくいから牛乳を完全に避ける」という単純な話ではなく、一度に摂る乳糖の量や、腸内細菌による発酵、牛乳を少量から徐々に摂取することなども、症状に関係している可能性がありそうです。

ただし、2023年の研究は32人を対象とした臨床試験であり、この方法がすべての乳糖不耐症の人に適しているとまでは言えません。症状が強い場合や、牛乳・乳製品を摂ることで体調を崩す場合には、無理に摂取量を増やすのではなく、医師や管理栄養士などに相談することが大切です。

【参考文献】

Oku T, Nakamura S, Ichinose M. Maximum Permissive Dosage of Lactose and Lactitol for Transitory Diarrhea, and Utilizable Capacity for Lactose in Japanese Female Adults. Journal of Nutritional Science and Vitaminology. 2005;51(2):51-57. doi:10.3177/jnsv.51.51. J-STAGEで論文を読む

Hasegawa M, Okada K, Nagata S, Sugihara S. Efficacy of incremental loads of cow’s milk as a treatment for lactose malabsorption in Japan. World Journal of Clinical Cases. 2023;11(4):797-808. doi:10.12998/wjcc.v11.i4.797. PubMedで論文情報を確認







「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

この街を初めて訪れた方へ

この記事は、例えるなら「ばあちゃんの料理教室(ハクライドウ)」という街の中の「ひとつの家」です。

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ここまで書いてきた内容は、
単発の健康情報やレシピの話ではありません。

この街では、
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もし、

なぜこういう考え方になるのか

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この記事は、
「人の生活を、断定せず、文脈ごと残す」
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投稿日: 2025年5月23日 10:52 編集

「ガリガリ」と「お腹ぽっこり」は正反対?実はどちらも「筋肉」が問題かもしれない

Xで興味深い動画を見かけました。

「サウナには2種類のおじさんがいる」

・ガリガリに痩せたおじさん
・お腹がぽっこり出たおじさん

というものです。

たしかにサウナでは体型がよくわかるので、「痩せている人」と「太っている人」という対比はわかりやすいですよね。

でも、この動画を見ていて、ふと疑問に思いました。

一見すると正反対の体型だけど、実はどちらも「筋肉が少ない」という共通点がある可能性はないのだろうか?

■「痩せている」と「太っている」だけではわからない

私たちは人の体型を見ると、

・痩せている
・普通
・太っている

と、つい体重や脂肪を中心に考えてしまいます。

しかし、ここにもう一つ、

「筋肉」

という軸を加えると、見え方が変わってきます。

ガリガリに見える人は脂肪が少ないだけではなく、筋肉も少ない可能性があります。

一方、お腹がぽっこり出ている人は体脂肪が多くても、必ずしも筋肉が十分にあるとは限りません。

つまり、

脂肪が少ない+筋肉も少ない

人と、

脂肪が多い+筋肉が少ない

人では、外見は正反対に見えても、「筋肉が少ない」という点では共通している可能性があるのです。

もちろん、見た目だけで筋肉量や筋力を判断することはできません。

そこが今回の話で一番大切なところです。

■太っていても筋肉が少ない「サルコペニア肥満」

「太っているのだから、体を支えるために筋肉もあるだろう」と考えてしまいそうですが、そうとは限りません。

肥満・過剰な脂肪の蓄積と、骨格筋量や筋機能の低下が併存する状態として、「サルコペニア肥満」という概念があります。

2022年にESPEN(欧州臨床栄養代謝学会)とEASO(欧州肥満学会)が発表したコンセンサスでは、サルコペニア肥満の診断にあたり、まず肥満やウエスト周囲径などとサルコペニアの疑いをスクリーニングし、筋機能と身体組成を評価する流れが示されています。筋機能には握力や椅子立ち上がりテスト、身体組成にはDXAやBIAなどが挙げられています。

つまり、

「太っているか、痩せているか」だけでは、筋肉の状態はわからない

ということです。

■サルコペニアは「筋肉の量」だけを見るものでもない

ここでもう一つ重要なのが、「筋肉量」と「筋力」は同じではないということです。

EWGSOP2と呼ばれるサルコペニアの診断基準では、まず筋力を評価し、その後に筋量を測定してサルコペニアを確定し、さらに歩行速度などの身体機能によって重症度を判断するという流れになっています。

筋力の評価には、握力や5回椅子立ち上がりテストなどが使われます。

ですから、

「体重何kg」「BMIはいくつ」

だけを見ていても、身体の状態のすべてはわからないのです。

■昔の記事で紹介した「片足立ちで靴下を履ける?」というチェック

以前、HAKURAIDOUではテレビ番組をもとに、

炭水化物抜き・糖質制限ダイエットの正しい方法|サルコペニア肥満チェック|#林修の今でしょ講座

という記事を書いています。

そこで紹介したのが、

「片足立ちで靴下を履けるか?」

という簡易的なチェックでした。

ただし、これは当時テレビ番組で紹介されたチェック方法として捉えたほうがよいでしょう。

現在使われているEWGSOP2では、SARC-Fによるスクリーニング、握力または5回椅子立ち上がりによる筋力評価、DXAやBIAによる筋量評価、歩行速度などの身体機能評価という診断の流れが示されています。

つまり、片足立ちができる・できないだけでサルコペニア肥満と診断できるわけではありません。

■ダイエットも「何kg痩せたか」だけで考えない

ここまで考えると、ダイエットを見る目も少し変わってきます。

「10kg痩せた」

と聞くと、一般的には「ダイエット成功!」と思います。

でも本当に知りたいのは、

何が10kg減ったのか?

ではないでしょうか。

体重という一つの数字だけではなく、

体脂肪
筋肉量
筋力
身体機能

などを見る必要があります。

特に年齢を重ねてからは、「体重を減らす」ことだけを目標にするのではなく、筋肉や筋力を維持する視点も重要になってきます。

■正反対の体型に見えて、実は同じ問題を抱えているかもしれない

最初のサウナの話に戻ってみましょう。

「ガリガリのおじさん」と「お腹ぽっこりのおじさん」。

見た目だけなら、

痩せ vs 肥満

です。

ところが、筋肉という軸を加えると、

脂肪が少ない+筋肉が少ない可能性

と、

脂肪が多い+筋肉が少ない可能性

という別の見方ができます。

もちろん、サウナで人の体型を見ただけで、サルコペニアやサルコペニア肥満かどうかを判断することはできません。

ただ、この小さな疑問から見えてくることがあります。

健康を考えるとき、体重計の数字や「太っている・痩せている」という見た目だけではなく、「筋肉はどうなっているのか?」という視点を持つことが大切なのではないでしょうか。

「痩せる」という言葉を、

体重を減らすこと

だけではなく、

筋肉・脂肪・筋力を含めて身体をどう維持していくか

というところまで広げて考えてみると、ダイエットに対する見方も変わってきそうです。

【参考文献】

Cruz-Jentoft AJ, et al. Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis. Age Ageing. 2019;48(1):16-31. EWGSOP2では筋力を重視した診断アルゴリズムが示されています。
Donini LM, et al. Definition and diagnostic criteria for sarcopenic obesity: ESPEN and EASO consensus statement. Clin Nutr. 2022;41(4):990-1000.
日本サルコペニア・フレイル学会誌「サルコペニアの診断:現時点でどの診断基準を用いるべきか EWGSOP2基準」







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単発の健康情報やレシピの話ではありません。

この街では、
「何を食べるか」よりも
「どうやって暮らしの中で調整してきたか」を大切にしています。

もし、

なぜこういう考え方になるのか

他の記事はどんな視点で書かれているのか

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 気になったときに、いつでも戻ってきてください。

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『代謝年齢』が若い人は長生きする?1~96歳・18,476人の血液から老化を調べた研究

■「代謝年齢が若ければ長生きする?」

私たちには「実年齢」がありますが、同じ50歳でも、体の状態まで同じとは限りません。

2026年に『Science Translational Medicine』に掲載された研究では、1~96歳の18,476人を対象に血液中の代謝物を調べ、56種類の年齢に関連する代謝物を特定。さらに機械学習を使って「代謝年齢(metabolomic age)」を推定するモデルを開発しました。

研究チームは、推定された代謝年齢が実年齢からどのくらいずれているかを「代謝年齢の加速(metabolomic age acceleration:mAA)」として評価しました。

そして興味深いことに、代謝年齢の加速が大きいことは、健康状態の悪化や好ましくない生活習慣と関連していました。

さらに2019~2025年の追跡では、代謝年齢の加速がみられた人では、脂肪肝、高血圧、糖尿病などの慢性疾患の発症リスクだけでなく、全死亡リスクも高くなっていました。

では逆に、

「代謝年齢が若ければ、長生きできるのでは?」

と考えたくなります。

ただ、ここは注意が必要です。

今回の研究は、代謝年齢を若返らせることで寿命が延びることを証明した介入研究ではありません。

つまり、

代謝年齢が若い
↓
長生きする

という因果関係が証明されたわけではありません。

現時点では、

代謝年齢の進み方が、その人の現在の健康状態や将来の健康リスクを捉える指標になる可能性がある

と考えるのが適切でしょう。研究者らも、血漿メタボローム解析から得られる老化指標が、健康状態、慢性疾患リスク、死亡と関連する可能性を示した研究と位置づけています。

■「運動を増やす」「揚げ物を減らす」と代謝年齢は若くなる?

今回の研究では、生活習慣と代謝年齢との関係についても調べられています。

そのため、

「だったら運動を増やしたり、食生活を改善したりすれば、代謝年齢を若くできるのでは?」

という疑問が出てきます。

実際、今回の研究では、代謝年齢の加速(mAA)が大きいことと「好ましくない生活習慣」との関連が報告されています。

ただし、

「運動を増やす」「揚げ物を減らす」
↓
「代謝年齢が若返る」
↓
「長生きする」

という一連の因果関係まで、今回の研究によって証明されたわけではありません。

そのため、「運動を増やして揚げ物を減らせば老化を逆転できる」と結論づけるよりも、生活習慣と代謝年齢との関連が見つかり、さらに代謝年齢の加速と慢性疾患や死亡リスクとの関連も示されたと捉えるのがよさそうです。

■まとめ

今回の研究で特に興味深いのは、「何歳なのか」だけでは捉えきれない体の状態を、血液中の代謝物から評価できる可能性を示したことです。

同じ50歳でも、体の中では同じように年を重ねているとは限りません。

将来的には「実年齢」だけではなく、こうした生物学的な老化の違いから健康リスクを捉える研究がさらに進んでいくのかもしれません。

ただし現時点では、「代謝年齢を若返らせれば長生きできる」とまでは言えないことも押さえておきたいところです。

【参考文献・資料】
Cao L, Chen Y, Zhang W, et al. Metabolomic aging and mortality clocks based on ensemble learning identify systemic aging risk across the human life span in 18,476 individuals. Science Translational Medicine. 2026. DOI: 10.1126/scitranslmed.adz4815. Science Translational Medicine掲載論文
Huang H, Chen Y, Xu W, et al. Decoding aging clocks: New insights from metabolomics. Cell Metabolism. 2025;37(1):34-58. 代謝物を利用したaging clockの考え方、特徴、限界などをまとめたレビューです。
Metabolomic-based aging clocks. npj Metabolic Health and Disease. 2025. 分子老化時計にはエピジェネティック、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームなど複数のアプローチがあることを整理したレビューです。

■「体の年齢」を測る研究はいろいろある

今回紹介した「代謝年齢」は、血液中の代謝物から体の老化状態を捉えようとするものです。

一方で、これまでにもAGE(終末糖化産物)の蓄積から体の「糖化」を評価する研究や、血液中のタンパク質が年齢によってどのように変化するのかを調べる研究が行われています。

つまり、「実年齢は50歳」というひとつの数字だけではなく、代謝、糖化、タンパク質など、さまざまな角度から「体がどのように年を重ねているのか」を捉えようとしているわけです。

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「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」

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ここまで書いてきた内容は、
単発の健康情報やレシピの話ではありません。

この街では、
「何を食べるか」よりも
「どうやって暮らしの中で調整してきたか」を大切にしています。

もし、

なぜこういう考え方になるのか

他の記事はどんな視点で書かれているのか

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プロテインの摂取は腎臓に悪い!?プロテインについて改めて調べてみた!




フィットネスクラブで怖い腎臓病が増加中…健康と美容のために摂取するとかえって”死を早める粉”の正体(2024/6/8、プレジデントオンライン)では、簡単にまとめると、プロテインの摂取が腎臓に悪いということでしたので、プロテインについて改めて調べてみることにしました。

間違いだらけの“プロテイン”摂取!?(2023/10/11、NHK)で解説されている鈴木志保子さん(神奈川県立保健福祉大学大学院 研究科長)の意見をまとめてみます。

1)たんぱく質が重要だという情報が広まったことにより、必要のない人が、必要以上に摂っていることにより、プロテインの摂り過ぎ(過剰摂取)が問題になっている

2)たんぱく質がないと人は生きていけないが、私たちの体に必要な栄養素には適正な摂取量があり、少なくても多くても困るという特性を持っている。(多すぎると過剰摂取、少なすぎると低栄養)

3)たんぱく質の処理は肝臓で行われる。摂取したたんぱく質は消化されてアミノ酸となり、体内で利用される。一方、余分なアミノ酸はそのまま体内に貯蔵されるわけではなく代謝されるため、必要以上に摂ればよいというものではない。

4)たんぱく質(プロテイン)を摂るからマッチョになるのではなく、いいトレーニングを前提に、足りない栄養素がある際に補充するという考え方

5)たんぱく質を含む食事をきちんと食べれば運動後にプロテインは必要ない(昔は言われていたが今はエビデンス上なくなっている)

※これは「運動後のたんぱく質摂取に意味がない」という意味ではありません。運動前後を含め、1日を通して必要なたんぱく質を十分に摂れているか、次の食事をいつ摂れるかなどによって考え方は変わります。

例:体重1kgあたり1gのたんぱく質が必要で、体重60㎏の人の場合一日60gのたんぱく質が必要となり、3食で割ると1食20gとなる。

朝ごはんの場合、食パン6枚切り1枚(たんぱく質6.2g)、卵1個(たんぱく質7.3g)、牛乳1杯(たんぱく質6.6g)→合計20.1g

■補足|たんぱく質と肝臓・腎臓はどう関係する?

ここで、「たんぱく質の処理」と肝臓・腎臓の関係について整理しておきます。

食事から摂取したたんぱく質は消化によってアミノ酸となり、体内で新しいたんぱく質の合成などに利用されます。余ったたんぱく質をそのまま「たんぱく質」として蓄えておく仕組みはないため、余剰分は代謝されます。

この過程で肝臓はアミノ酸やアンモニアの代謝に重要な役割を果たしています。

つまり、たんぱく質の代謝を考えるときには肝臓、最終的な窒素代謝産物の排泄を考えるときには腎臓という、両方の臓器の働きを考える必要があります。

そのため「プロテインを摂ると腎臓に悪いのか?」を考える場合にも、単純に「プロテイン→腎臓」という話ではなく、摂取したたんぱく質が体内でどのように利用・代謝・排泄されるのかという一連の流れから考えることが大切です。

この知識をベースに先ほどの記事に戻ってみます。

おそらく反感を買いやすいのは「プロテインによい効果は一切ありません」「プロテイン由来のタンパク質が筋トレの効果向上に寄与することはない」というところではないでしょうか?

適切な言葉に置き換えると、3食の食事ですでに必要なたんぱく質を摂取できている人が、さらにプロテインを追加する必要があるのか、まず普段の食事から見直してみようということではないでしょうか。

たんぱく質の代謝には肝臓が関わり、その窒素代謝産物の排泄には腎臓が関わります。ただし、こうした生理的な働きが増えることと、それによって健康な人の肝臓や腎臓が障害されることは同じではありません。健康な成人を対象にした研究では、高たんぱく食による明確な腎機能への悪影響が確認されていない報告もあります。

そのため、「プロテインは腎臓に悪い」と一律に考えるのではなく、自分の健康状態や運動量、普段の食事を踏まえて、本当に追加のたんぱく質が必要なのかを考えることが大切です。

たんぱく質を摂ることは重要なんだけれども、3食の食事の中にたんぱく質を含む食べ物が入っていれば、決してプロテインを摂る必要がないのに、たんぱく質を摂らないとよくないよーということを過剰に宣伝してしまって、誤ってプロテインを摂ってしまうことには注意が必要ということなんだと思います。

ただもう一つの見方として、フレイル・サルコペニアの人にとってのたんぱく質摂取の重要性の話があります。

高齢者は健康な状態から急に要介護状態になるわけではなく、食欲の低下や活動量の低下(社会交流の減少)、筋力低下、認知機能低下、多くの病気をかかえるといった加齢に伴う変化があり、低栄養、転倒、サルコペニア、尿失禁、軽度認知障害(MCI)といった危険な加齢の兆候(老年症候群)が現れ、要介護状態になると考えられます。

しかし、フレイルの段階で、適切な介入・支援を行なうことができれば、要介護状態に至らず、生活機能の維持・向上が期待できると考えられます。

ここで1つ考えなければならないことがあります。

それは、中高年における生活習慣病対策・メタボ対策とフレイル対策ではぶつかってしまうところがある点です。

例えば、これまでにも要介護者の中にはたんぱく質が不足する「低栄養」の人が多いということを紹介してきました。

適切な食物摂取ができず、栄養状態が悪化していることを「低栄養」と呼びます。

低栄養になると、免疫が低下したり、筋肉が減少したり、骨が弱くなったりすることで、感染症に掛かりやすくなったり、骨折するおそれが高くなるようです。

たんぱく質摂取と骨格筋|たんぱく質の関与|フレイルティ及びサルコペニアと栄養の関連|高齢者|厚生労働省によれば、高齢者はたんぱく質の摂取量が少ないと、フレイルティの出現リスクが増加するそうです。

なぜ高齢者になるとタンパク質が不足しがちなのでしょうか?

それは、肉料理が苦手だったり、以前は、家族のために栄養を考えて、肉や卵などを使って料理をしていた人が、一人暮らしになってから、自分が好きなものだけを食べることで食が偏るようになって、肉や卵を使った料理を食べなくなってしまったり、食事の量自体が減ってしまったり、中高年の頃からのメタボ対策のための粗食を継続してしまったりすることで、たんぱく質が不足してしまうということがあるからです。

つまりは、中高年(メタボ対策)から高齢者(フレイル対応)への食習慣の移行ができていないことが低栄養の原因の一つになってしまっているのです。

【ガッテン】大豆たんぱく質で筋力アップ(二川健)&心疾患予防(家森幸雄)!必要摂取量!によれば、筋委縮(サルコペニア)が進む寝たきりの方たちに「大豆たんぱく質8g」を30日間摂取してもらう実験を行ったところ、約7割の方に筋力改善(筋力が約40%アップ)の傾向が見られたそうです。

年代や性別で食事のやり方を変えていく必要があるという視点が大事であり、「たんぱく質は大事な栄養素」といっても、誰に言うかによって全然意味合いが違ってきます。

読者側(メッセージの受け取り手)も自身の健康状態を把握した上でこうした健康に関する記事を正しく読む姿勢が必要なのではないでしょうか?

■健康な人が高たんぱく食を続けると腎臓は悪くなる?

「たんぱく質を多く摂ると腎臓に負担がかかる」という表現をよく見かけますが、ここでは「腎臓の仕事量が増えること」と「腎臓が障害されること」を分けて考える必要があります。

2018年に発表されたシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、腎疾患のない成人を対象とした28研究、1,358人のデータが解析されています。

高たんぱく食では介入後のGFR(糸球体濾過量)がわずかに高くなっていましたが、介入前から介入後までのGFRの変化を比較すると、通常・低たんぱく食との有意な差は認められませんでした。研究者らは、健康な成人では高たんぱく摂取がGFRに悪影響を与えなかったと結論づけています。

また、2026年のメタ解析を紹介する資料でも、CKD(慢性腎臓病)のない成人を対象とした22件のRCTで、高たんぱく食による腎障害を示す一貫した所見はみられなかったとされています。一方、この解析に含まれる研究期間は7日~2年であり、長期間にわたる安全性まで証明したものではありません。

つまり現在の研究からは、「健康な成人が高たんぱく食をすると腎臓が悪くなる」と単純に言うことは難しいようです。

ただし、これを反対方向に広げて、「健康なら2g/kg、3g/kgといった大量のたんぱく質を何十年摂り続けても安全」とまで言うこともできません。

「悪影響が確認されていない」と「長期間の安全性が証明された」は同じ意味ではないからです。

【参考文献】

■では、子どもにプロテインを飲ませるのは危険なの?

最近、Xで「子どもにプロテインを飲ませること」について議論になっています。

「成長期だからたんぱく質はしっかり摂ったほうがいい」「スポーツをしている子どもならプロテインを飲ませてもいいのでは?」という意見がある一方で、「子どものうちから必要以上にプロテインを摂取すると、腎臓への負担が心配」という意見もあります。

では、実際のところ、子どものプロテイン摂取について何がわかっているのでしょうか?

ここで大事なのは、

「プロテインを飲むと腎臓が悪くなるのか?」

という問いと、

「そもそも、その子に追加のたんぱく質が必要なのか?」

という問いを分けて考えることです。

■子どもにもたんぱく質は必要。でも「多ければ多いほどいい」わけではない

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、子どものたんぱく質の推奨量が年齢・性別ごとに設定されています。

例えば1日の推奨量は、

3~5歳:男女とも25g
6~7歳:男女とも30g
8~9歳:男女とも40g
10~11歳:男子45g・女子50g
12~14歳:男子60g・女子55g
15~17歳:男子65g・女子55g

となっています。

さらに小児期では、1歳以降のたんぱく質について総エネルギー摂取量に占める割合として13~20%という目標量も示されています。

つまり、成長期の子どもにとってたんぱく質が重要なのは間違いありません。

ただ、

「成長期だからたんぱく質をできるだけ多く摂ったほうがいい」

という話ではないことにも注意が必要です。

■「○g以上摂ったら腎臓を壊す」という基準があるわけではない

ここが今回の議論で誤解されやすいポイントではないでしょうか。

「たんぱく質の摂りすぎが危険というなら、いったい何gから腎臓に悪いの?」

という疑問が出てきます。

しかし、「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、たんぱく質について推定平均必要量、推奨量、目標量は設定されていますが、耐容上限量は設定されていません。

ここで注意したいのは、

「上限量が設定されていない」=「どれだけ摂っても安全」

という意味ではないことです。

反対に、

「推奨量を少し超えたら危険」

という意味でもありません。

食事摂取基準における「推奨量」は、対象となるほとんどの人が必要量を満たす量として設定されている指標です。

そのため、推奨量を「ここを超えたら危険になる上限値」として扱うのは適切ではありません。

■健康な大人の研究結果を、そのまま子どもに当てはめていいの?

もう一つ考えておきたいのがここです。

高たんぱく食と腎臓については成人を対象とした研究が数多くあります。しかし、「健康な成人で明らかな腎機能障害が確認されなかった」という研究結果があったとしても、それだけで、

「成長期の子どもが長期間、必要量を超える量のプロテインを摂っても安全」

と結論づけることはできません。

子どもについて調べた研究もあります。

「Generation R Study」では、2,968人の子どもを対象に、1歳時点のたんぱく質摂取量と6歳時点の腎臓の大きさや腎機能との関連が調べられました。

その結果、食事や生活習慣などの要因まで調整すると、幼児期のたんぱく質摂取量と6歳時点の腎臓の大きさや腎機能との間に独立した関連は認められませんでした。

これは少なくとも「子どもがたんぱく質を多く摂ると腎臓が悪くなる」と単純に言える研究結果ではありません。

一方で、この研究は「子どもがプロテインを長期間、多量に摂取しても安全か」を検証した臨床試験ではありません。したがって、この結果から「子どもはいくらプロテインを摂っても安全」と結論づけることもできません。

つまり、

「子どもの高たんぱく摂取が腎臓を壊すことが証明されている」

と言い切るのも慎重になる必要がありますし、その反対に、

「腎臓を壊すという証拠がないのだから、子どももたくさん摂って大丈夫」

と考えるのも飛躍があります。

「危険性が証明されていないこと」と「長期的な安全性が十分に証明されていること」は同じではないからです。

「プロテインが悪い」ではなく「食事+プロテイン」で考える

そしてもう一つ重要なのは、プロテインだけを切り離して考えないことではないでしょうか。

例えば、

朝食、学校給食、夕食、おやつなどからすでに十分なたんぱく質を摂っている子どもが、さらにプロテインを追加している場合、

「プロテインを何g飲んでいるか」

だけを見るのではなく、

「食事とプロテインを合わせて、1日を通してどれくらいのたんぱく質を摂っているのか」

を見る必要があります。

反対に、食が細い、偏食がある、競技スポーツをしているなど、個人によって食生活や必要性は違います。

また、腎臓病など疾患がある場合には、健康な子どもとは同じようには考えられません。厚生労働省の食事摂取基準自体も、疾患を持つ人の治療を目的とする場合には、関連する治療ガイドラインなどの栄養管理指針を用いるという考え方を示しています。

■「必要なのか?」を最初に考えてみよう

今回改めて調べてみると、「子どもにプロテインを飲ませていいか?」という議論は、

プロテインは安全か危険か

という二択だけではうまく整理できないように思います。

考える順番としては、

その子が普段の食事からどれくらいたんぱく質を摂っているのか
年齢や性別、体格、活動量などを考えると不足しているのか
食事で補うことができるのか
それでも不足する場合にプロテインなどで補う必要性があるのか

という順番で考えたほうがわかりやすいのではないでしょうか。

これはこの記事の最初に紹介した、

「プロテインを摂ればよいのではなく、食事を基本として、足りない栄養素がある場合に補う」

という考え方ともつながります。

■まとめ|「たんぱく質は大事」と「たくさん摂ればいい」は違う

今回の子どものプロテイン論争を見ていると、健康情報を読むときには、

「科学的にわかっていること」と「まだ十分にわかっていないこと」を分けて考えることが大切

なのだと思います。

現時点では、健康な子どもについて「プロテインを飲めば腎臓を壊す」と単純に断定するのは難しい一方、「健康なら必要以上にたんぱく質を摂取しても問題ない」と断定できるわけでもありません。

そして何より、たんぱく質は子どもの成長に必要な栄養素です。

大切なのは、

「プロテインは危険か、安全か?」

だけを見るのではなく、

「この子に必要なたんぱく質はどれくらいで、普段の食事からどれくらい摂れていて、追加する必要があるのか?」

という視点ではないでしょうか。

この記事で紹介したように、高齢者では逆にたんぱく質不足による低栄養やフレイルが問題になることがあります。

子ども、成人、高齢者、運動をする人、腎機能が低下している人。

同じ「たんぱく質は大切」というメッセージでも、誰に向けて言っているのかによって、その意味は変わります。

だからこそ、「たんぱく質は腎臓に悪い」「プロテインはいくら摂っても大丈夫」といった一言だけで判断するのではなく、自分の年齢や健康状態、食生活まで含めて考えることが大切なのではないでしょうか。

■なぜ「プロテイン論争」は噛み合わないのか?

今回、Xでの議論を見ていて感じたのは、プロテインを肯定する側と慎重な側では、そもそも答えようとしている質問が違うのではないかということです。

「健康な人が高たんぱく食をすると腎臓が悪くなるのか?」という問いと、「必要量を食事から摂れている人が、さらにプロテインを摂る必要があるのか?」という問いは別です。

前者については、健康な成人を対象とした研究では、高たんぱく食による明確な腎機能への悪影響が確認されていない研究があります。

しかし、それは「必要量を超えて摂取することを積極的に勧めるべき」という意味ではありません。

反対に、「必要以上に摂る必要はない」という栄養学的な考え方も、「一定量を超えたら健康な人の腎臓が壊れる」という証明ではありません。

さらに子どものプロテインについて考えるのであれば、健康な成人の研究結果をそのまま当てはめられるのかという問題もあります。

「害があるのか」「必要なのか」「どこまで安全なのか」「その研究結果を誰に当てはめられるのか」。

これらを分けて考えないと、同じ「プロテイン」について話していても、議論はなかなか噛み合わないのではないでしょうか?







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この街では、
「何を食べるか」よりも
「どうやって暮らしの中で調整してきたか」を大切にしています。

もし、

なぜこういう考え方になるのか

他の記事はどんな視点で書かれているのか

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この街の歩き方をまとめたページがあります。

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※ 無理に読まなくて大丈夫です。
 気になったときに、いつでも戻ってきてください。

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という この街の憲法 に基づいて書かれています。

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投稿日: 2024年6月10日 11:36