by Toshiyuki IMAI(画像:Creative Commons)
ResearchKit、50の医療機関が1年がかりで行うタスクを24時間で達成
(2015/3/13、iphone mania)
スタンフォード大学のAlan YeungメディカルディレクターはBloombergに対し、ResearchKitが公開されてから24時間で、すでに1万1,000人もの人々が心臓血管研究にサインアップした、と語っています。
ResearchKitは、医学・医療研究用のiPhoneアプリを開発するためのオープンソースのソフトウェアフレームワークですが、ResearchKit公開後24時間で1万人以上が心臓血管研究にサインしたということです。
このことは、どのくらいすごいことなのでしょうか?
同氏によれば、通常医療研究への参加者を1万人集めるには、全米中の50の医療機関が協力しても1年はかかるそうです。
通常の方法で医学研究の協力者を1万人集めるには、50以上の医療機関が協力しても1年以上はかかるという規模のことを24時間で達成したのですからすごいことですよね。
そして、この研究方法にはもう一つのメリットがあります。
またiPhoneを利用した研究参加には、データ報告の精度が向上するという長所もあります。こうした医療研究に参加する人々は、通常自分で記録を採り、それを医療機関に報告することになりますが、時にはエクササイズをした時間が正確でないなど、報告内容に間違いが含まれている場合があります。
しかしiPhoneを使うと、iPhoneがエクササイズ時間や歩数、心拍数などを自動的に記録するため、こうした間違いが減少します。
自動的に記録するため、データをとるタイミングが一定となり、データの精度が向上することが期待されます。
また、人によっては意図的でもそうでなくても間違いを記入するということもありますが、そういったことも排除することができ、データの精度がより正確になると考えられます。
ただ、この研究方法には2点ほど気になることがあります。
1.データの偏り
世論調査のCivicScienceによれば、平均的なAndroidユーザーと比べ、iPhoneユーザーは大学院卒や博士号取得者が多いという結果が出ています。
iPhoneユーザーには大学院卒や博士号取得者が多いそうです。
「所得と生活習慣等に関する状況」のグラフから見えてくるものー厚生労働省調査によれば、男女問わず、年収が高い人ほど野菜摂取量が多い、もしくは、野菜摂取量が多い人ほど年収が高いといえます。
低収入ほど野菜不足-厚労省栄養調査で紹介した厚生労働省が発表した2011年の国民健康・栄養調査によれば、低収入ほど野菜の摂取量が不足しているという結果が出たそうです。
また、低所得者ほど生活習慣に問題=野菜食べず、運動しないという記事によれば、低所得者ほど野菜を食べる量が少なかったり、運動の習慣がなかったりと、生活習慣に問題がある傾向があることがわかったそうです。
健康格差とはや健康格差は、収入・学歴などが要因?でも取り上げましたが、社会的・経済的な格差が健康の格差を生んでいるということがWHOでも一つの問題として注目されているようです。
つまり、所得の格差が健康の格差を生むことによって、データに偏りが出てくるのではないかと考えられるのです。
2.誤操作などによってデータが正確でなくなる
また間違ってボタンを押してしまう、ほかの人がiPhoneを持ち歩くといったケースにより、データが正確でなくなることも考えられます
この問題は外れ値として排除できると思われるのでそれほど大きな問題とはならないかと思います。
■まとめ
医学・医療研究に「ResearchKit」が役立つことを期待したいですね。
健康データを集めれば健康になれるわけではないでも書きましたが、10年以上健康について携わっていますが、人は、楽しい時(遊びに出かける週末)は健康について考えないものなのです。
つまり、本当は健康について考えない日の方が健康でいられるのではないかということです。
ストレスのかからないライフスタイルになれば、結果健康でいられる(健康に対する不安を感じない)のであって、健康データを集めれば健康になれるわけではないのです。
物事の本質はそこにあります。