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■葉酸は妊婦の味方|日本での二分脊椎の発症は増えている
by Torsten Mangner(画像:Creative Commons)
妊婦の味方 葉酸…多く取って元気な赤ちゃんを
(2009/8/26、読売新聞)
葉酸は細胞の生産や再生を助け、体の発育を促す。
欧米では1990年代から、脊椎(せきつい)の一部が欠損した状態で産まれる「二分脊椎」の発症リスクを減らす効果が報告され、葉酸の摂取が勧奨されている。
葉酸は胎児の発達に欠かせない栄養素として、注目を集めていますが、日本での二分脊椎の発症は増えているそうです。
一方、日本での二分脊椎の発症は年間約500人で、ここ20年で約3倍に増えているという。
葉酸の研究者らは、妊婦の過剰なダイエットなど食生活に問題が見られ、葉酸奨励策が取られなかったことも一因としている。
妊婦の時(もしくはそれ以前)の過剰なダイエットによる食生活の乱れに問題があるのでしょうか。
(2017/7/11、毎日新聞)
しかし、同年以降、発症率は出産1万人当たり5~6人で推移している。年間500~600人が発症している計算になる。
厚生労働省の通知があったものの、年間500人から600人発症しており、発症率が減少していないそうです。
■神経管閉鎖障害(二分脊椎、無脳症、脳瘤)と葉酸の関係
日本先天異常学会からのメッセージ 葉酸サプリメントの摂取により神経管閉鎖障害の発症リスクを減らしましょう
神経管閉鎖障害は、妊娠前及び妊娠早期に水溶性ビタミンの1種である葉酸を摂取することにより発症リスクが低減することが疫学研究によって示されている先天異常です。(1)。
英国での臨床研究で、過去に神経管閉鎖障害を持つ児を妊娠したハイリスク群の女性に葉酸 4 mg/日を投与したところ、次の子どもでの再発防止効果が72%にのぼることが明らかになりました。1999 年には、初産婦が葉酸サプリメント0.4 mg/日を摂取することによって、同様の予防効果が見られたとの、中国での研究結果が報告されました(2)。
7つの国の33のセンターで、葉酸(B群のビタミンの1つ)または7つの他のビタミンの混合物(A、D、B1、 B2、B6、Cおよびニコチンアミド)は、神経管閉鎖障害(無症候性、二分脊椎、脳脊髄)を予防することができるという研究結果が発表されています。
また、英国のMedical Research Councilの研究では、4000μgの葉酸を毎日摂取した女性は、神経管閉鎖障害にかかるリスクが72%減少したそうです。
中国の研究でも、葉酸400μgを摂取することによって予防効果が見られたと報告されています。
【参考リンク】
- Lancet. 1991 Jul 20;338(8760):131-7. Prevention of neural tube defects: results of the Medical Research Council Vitamin Study. MRC Vitamin Study Research Group.
- Berry et al. New England Journal of Medicine 1999. 341: 1485-1490. Prevention of Neural-Tube Defects with Folic Acid in China
■厚生労働省・日本先天異常学会が葉酸摂取を推奨している
こうしたことを受け、厚生労働省も葉酸摂取を推奨しているそうです。
厚生労働省は2000年から、妊娠が予定される女性は葉酸を1日400マイクロ・グラム(マイクロは100万分の1)摂取するよう推奨し、02年からは母子健康手帳の記述に盛り込まれた。
日本先天異常学会も妊娠を計画している女性または妊娠中の女性は神経管閉鎖障害(脳や脊髄の生まれつきの障害)を防ぐために葉酸の摂取を推奨しています。
日本先天異常学会からのメッセージ 葉酸サプリメントの摂取により神経管閉鎖障害の発症リスクを減らしましょう
妊娠を計画している女性、または妊娠中と考えられる女性が、妊娠前4週から妊娠12週までの期間、葉酸サプリメントによって毎日葉酸を 400 マイクログラム = 0.4 mgを摂取すると、お子さんに神経管閉鎖障害が起きるリスクが低下します。また、ご家族の中に神経管閉鎖障害患者を持つ方、あるいは過去に神経管閉鎖障害を持つお子さんを妊娠した経験がある方は、ハイリスク群と判断されます(神経管閉鎖障害を持つ児を妊娠する可能性が比較的高い)。
2000年に厚生労働省から妊娠を計画する女性は葉酸400μgを摂取するように推奨しています。
【参考リンク】
- 神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について(平成12年12月28日、厚生省通達・児母第72号)
しかし、現状では葉酸サプリメントの摂取している妊娠を計画中の女性は少ないようで、神経管閉鎖障害の発生率は低下していないそうです。
しかし、現在わが国の妊娠女性の葉酸サプリメントの摂取率は10-20%に留まり(5、6)、神経管閉鎖障害の発生率は低下していません(3、7)。
葉酸の摂取率が少なく、その結果神経管閉鎖障害の発生率が低下していないのだとしたら、アメリカで行われている葉酸と鉄を強化した、強化小麦粉を義務付けるようなアプローチが必要なのかもしれません。
葉酸の摂取で子どもの先天病「神経管欠損症(NTD)」の予防に成功|アメリカによれば、アメリカでは子供の先天病「神経管欠損症」を予防するために、将来妊娠の可能性のあるすべての女性に対し、一日400μgの葉酸を摂取するよう推奨しており、1998年からはパンや穀類に100g当たり140μgの葉酸を強制的に加えるようにしたことで、年間約1300人の発症を未然に防いでいるそうです。
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【参考リンク】
- Kondo et al. Birth Defects Research (Part A) 2013. 97:610-615. Risk factors for the occurrence of spina bifida (a case–control study) and the prevalence rate of spina bifida in Japan
■まとめ
葉酸はできれば、妊娠に気づく前から摂取したほうがよいようです。
二分脊椎については、「胎内で赤ちゃんの脊椎ができるのは妊娠初期なので、妊娠に気づいてからの摂取では遅い。
妊娠の可能性がある女性は、日頃から摂取を意識してほしい」と指摘している。
葉酸は妊婦だけでなく、すべての世代に必要な栄養素なので、葉酸を含む食品をバランスよく摂取していきたいものです。
→ 妊娠中に摂取したい葉酸の多い食べ物・食品・サプリ について詳しくはこちら
PS.葉酸は、枝豆やホウレンソウに含まれる水溶性のビタミンB群の一種なのだそうです。
2010年6月29日 @ 07:43