肥満はなぜ「伝染」するのか:実験結果|無意識のうちに影響を受けてしまう!?

Four People

by CGP Grey(画像:Creative Commons)




肥満はなぜ「伝染」するのか:実験結果

(2011/6/9、WIRED VISION)

数年前、研究者のニコラス・クリスタキスとジェームズ・ファウラーは、肥満に関する驚くべき発見(日本語版過去記事)を行った。

肥満は、まるで伝染病のように、人から人へ伝播するというのだ。

彼らはこの伝播について、『フラミンガム心臓研究』(FHS)のデータセットによって実証した。

FHSとは、マサチューセッツ州フラミンガムで行われた、心血管疾患の危険因子の多くを明らかにした長期の疫学研究だ。[12,000人以上を対象に、32年にわたって計測を行なった]

FHSでは、各参加者の親しい友人、同僚、家族の情報が示されているため、研究者たちはそれをもとに、フラミンガムの町の社会的ネットワークを再現し、誰と誰がどのようにつながっているのか調べた。

そのデータが示していたのは、ある人が太ると、その友人が同じ道をたどる可能性は57%高くなるということだった(肥満の予測因子としては、肥満遺伝子の有無よりも、その人が持つネットワークのほうが、はるかに優れているということになる)。

きょうだい間では、ひとりが太ると別のきょうだいも太る可能性は40%高くなり、配偶者間では37%高くなるという。

以前の記事でも、「肥満は伝染する」という記事を紹介しました。

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■肥満は伝染する?

アメリカ・ハーバード大の研究によれば、肥満は伝染する!?そうなのです。

その研究によれば、配偶者が太ってきた場合、同居する相手も太る確率は37%上昇するそうです。

また、友人が太っている場合、太る確率は57%上昇するそうです。

そして、これは近くにいることは関係なく、遠くに離れていても、親しい人がいれば、肥満は伝染するそうです。

友人や家族が肥満であることが、どのように食生活に影響をあたえるのでしょうか。

しかし、われわれの食生活にほかの人がどうやって影響を与えるのだろうか。

コロラド大学ボールダー校の研究者たちによる新しい研究は、この疑問に答えようとするものだ。

ルーシーという名前の友人が、最近の休暇で撮影した写真を送ってきた。彼女は標準体重より11kgほど体重が多い。

その写真を見たあと後で、オフィスの秘書が、クッキーがたくさん載ったお皿を持ってきた。

体重が多すぎる誰かの姿を見たことは、これから食べるクッキーの数に影響するだろうか?

こう質問された人の大多数が、太った友人の写真を見たあと後では、食べるクッキーの量を減らすと答えた(31%の人は、減らすどころか、まったく手をつけない、とまで言った)。

われわれは、自分のことをそういうふうに考えたがる。

独立した精神を持ち、他者のひどい姿を写真で見て教訓にできる人間だと。

太った友人の写真を見た後では、食べる量を減らすと答えたそうです。

他者の姿を教訓に「太らないようにしないと」と考えたからであるようです。

しかし、実際には、過体重の人を見た後には、それまでの考えと反対の行動をとってしまうようです。

しかし残念なことに、われわれの美しい自己イメージは現実とは異なる。

コロラド大学の研究者たちは、いくつかの実験を通して、実際には正反対のことが起こることを示した。

体重が多すぎる誰かの写真を見た後では、われわれはより多くのカロリーを取るようになるのだ。

実験のひとつとして、研究チームは、大学のロビーを偶然通りかかった人を無作為につかまえ、簡単な調査に参加してほしいと頼んだ。

この「調査」では、過体重の人、標準体重の人、またはランプのいずれかが写っている写真を見せた。

調査後、被験者にキャンディの入ったボウルから好きなだけ取ってもらったところ、過体重の人の写真を見せられた被験者は、対照群に比べて平均30%多くキャンディを取った。

過体重の人の写真を見た後では、より多くのカロリーを取ってしまうという結果が出たそうです。

2番目の実験では、被験者にクッキーの試食をさせた。

事前に過体重の人の写真を見せられた被験者たちは、樹木や金魚鉢、標準体重の人の写真を見せられた被験者と比べて2倍のクッキーを食べた。

この傾向は、健康的な体重の維持を目指しているという被験者にも同様に見られた。

「ネガティブなステレオタイプに接すること[この場合は過体重の人を見ること]は、ステレオタイプに誘導された行動(stereotype conductive behavior)を引き起こす場合がある」と、研究チームは記している。

今回の研究は、ノースウエスタン大学の心理学者チームが行った2010年の先行研究(PDFファイル)を踏まえたものだ。

先行研究では、人は、周囲の食べる量に合わせて自分の食べる量を決める傾向があることが明らかになった。

すなわち、ビッグマックの特大セットを食べる人たちに囲まれていたら、われわれも同じものを食べる可能性がはるかに高くなるのだ。

ネガティブなステレオタイプに接するとステレオタイプに誘導された行動を引き起こす場合がある、つまり今回のケースでは、過体重の人に接すると、より多くのカロリーを摂ってしまうということですね。

これらの研究は、肥満が社会的ネットワークを通じてどのように広まっていくかを知る手がかりとなっている。

われわれは他者の食習慣や空腹度に影響を受け、無意識のうちに周囲の人々の基準に引きずられているのだ。

今回は、肥満がテーマですが、社会的ネットワークを通じて、無意識のうちにいろんな影響を受けてしまっているのかもしれません。

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【感想】

ヒスチジンを含む食品をよく噛んで脳内ヒスタミンを増やし食欲を抑える|ためしてガッテン 6月8日でも紹介されていましたが、食欲を意思の力で押さえ込むのはもともと無理なのだそうです。

食欲が大きくなる(お腹が減ってしまう)要素としては、甘み・油脂・だし・グルメ情報・見た目・香り・ストレス・アルコール・睡眠不足があるそうですが、この中に、社会的ネットワークも新たに加えていいのかもしれませんね。

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