(2021/3/22、ネコリコ)
実証実験には 24 名の単身高齢者が参加し、事前にフレイル診断用のアンケートを用い、フレイルあるいはノンフレイル(健康)状態かを測定しました。実証実験参加者の自宅には、モーションセンサや CO2 センサなどの各種センサ、そして自宅のスマートメーターから電力データを収集するためのゲートウェイ機器を設置し、2020 年 8 月から6ヶ月間データを取得しました。このデータから学習した AI によって、フレイルあるいはノンフレイルを正しく判定できるかの検証を行いました。その結果、電力データのみでも、複数のモーションセンサを用いた先行研究の判定精度に迫る結果となりました。特別なセンサを設置することなく、電力データのみでフレイル検知が可能になると、スマートメーターの国内全世帯への設置が完了する 2024 年には、全国で単身高齢者のフレイル状態を非接触で検知し、適切な治療や予防に役立てることが可能になると期待されます。加えて、電力データをより高度に分析することで、フレイル検知だけでなく、生活リズムのモニタリングなど、高齢者見守り全般への活用も可能になると期待されます。
ネコリコ、JDSC、東京大学大学院、東京大学高齢社会総合研究機構、三重大学、三重県が参画する「介護予防に向けたAI・データ活用研究会」が行った実証実験によれば、は、電力データだけでフレイル検知が可能になるのではないかという結果が出たそうです。
スマートメーターが設置されるようになれば、高齢者のフレイル状態を検知し、フレイルの治療・予防に役立てられるだけでなく、さらには高齢者の見守り全般にも役立てることができるのではないかと考えられます。
■まとめ
「フレイル(高齢者の虚弱)」の段階で対策を行ない、要介護状態の高齢者を減らそう!で紹介した平成28年国民生活基礎調査によれば、要介護度別にみた介護が必要となった主な原因として「高齢による衰弱」(16.2%)になっています。
高齢者は健康な状態から急に要介護状態になるわけではなく、食欲の低下や活動量の低下(社会交流の減少)、筋力低下、認知機能低下、多くの病気をかかえるといった加齢に伴う変化があり、低栄養、転倒、サルコペニア、尿失禁、軽度認知障害(MCI)といった危険な加齢の兆候(老年症候群)が現れ、要介護状態になると考えられます。
しかし、フレイルの段階で、適切な介入・支援を行なうことができれば、要介護状態に至らず、生活機能の維持・向上が期待できると考えられます。
参考画像:新産業構造ビジョン(2017/5/30、経済産業省)
新産業構造ビジョン(2017/5/30、経済産業省)によれば、患者のQOLの最大化に向けて、高齢となっても自分らしく生きることの出来る「生涯現役社会」の実現に向けて、自立支援に向けた介護や質・生産性の⾼い介護の提供の実現が必要であるとして、できないことのお世話中心の介護から、自立支援に軸足を置いた介護への移行が必要であるとあります。
参考画像:要介護(要支援)認定者数の推移|平成28年版厚生白書|スクリーンショット
しかし、要介護(要支援)認定者数は2015年には約608万人|要介護者にならない段階(フレイル)で食い止める対策が重要で紹介した平成28年版厚生白書によれば、要介護(要支援)認定者数は、2000年の約218万人から2015年には約608万人と増加しています。
その理由としては、生活習慣病(慢性疾患)中心への疾病構造の変化や高齢化の進展が挙げられています。
実際に高齢者人口は増加しており、高齢化率(65歳以上人口割合)は1950年4.9%→1985年10.3%→2005年20.2%と上昇し、2015年には26.7%と過去最高となっており、今後の予測としては、2025年30.3%となるなど、2060年まで高齢化率はずっと上昇していくことが見込まれているそうです。
参考画像:年齢3区分別人口及び高齢化率の推移|平成28年版厚生白書|スクリーンショット
つまり、この予測をもとにして、現状のままの仕組みで行くとすれば、要介護者の数は増加していくでしょう。
だからこそ、今回の実証実験で行われたような電力データでフレイルを早期に発見する仕組みは未然に適切な治療を行なう上で重要になってきます。