運動すると体重が減るメカニズム

運動時の脂肪の燃えやすさを決めるタンパク質が見つかった!肥満を改善する薬に期待!




運動時の脂肪の燃えやすさを決めるタンパク質を同定

(2024/7/11、)

神戸大学の小川渉教授、徳島大学の野村和弘講師らによる研究グループは、運動した時にエネルギー消費を増加させるたんぱく質を同定しました。

マウスの実験によれば、このたんぱく質を増えないようにしたマウスは、運動時のエネルギー消費が落ち、太りやすいことがわかりました。

このたんぱく質の増えやすさによって、同じ運動をしても痩せやすい/痩せにくい人がいること(個人差がある)を説明できるというのが今回の研究のポイントです。

肥満を改善するアプローチとして、食欲を抑える抗肥満薬が使用され始めていますが、この研究が進み、このたんぱく質を増やせる物質を見つけることができればエネルギー消費を高めて肥満を改善する薬が開発できるかもしれません。

■運動すると体重が減るメカニズム

運動すると体重が減るメカニズム
運動すると体重が減るメカニズム

運動をすると筋肉がエネルギーを消費するため、脂肪が燃やされ、体重は減少します。

運動時には、筋肉でPGC-1αb及びPGC-1αcというタンパク質が増え、これによりエネルギー消費が高まり脂肪を燃焼させることがわかりました。

■まとめ

寒冷刺激による褐色脂肪組織でのPGC-1αの発現変化およびPGC-1αb及びPGC-1αcノックアウトマウスの体温の変化
寒冷刺激による褐色脂肪組織でのPGC-1αの発現変化およびPGC-1αb及びPGC-1αcノックアウトマウスの体温の変化

今回気になったのはこの部分です。

新規PGC-1αは褐色脂肪組織での脂肪燃焼や熱産生にも重要な働きをすることが分かりました。

マウスに寒冷刺激あり・なしの条件で褐色脂肪組織を採取し、PGC-1αの発現量を検討した。寒い環境(4°C)では褐色脂肪組織でPGC-1αbとPGC-1αcの発現が増えるが、PGC-1αaの発現は増えない(左)。また、新規PGC-1αノックアウトマウスは寒い環境で体温を保つことができない(右)。

痩せる脂肪!褐色脂肪組織BAT(褐色脂肪細胞・ベージュ脂肪細胞)を活性化させる方法・食べ物【美と若さの新常識~カラダのヒミツ~】【たけしの家庭の医学】で紹介した新潟大学の清水准教授によれば、寒冷刺激、つまり身体を冷やすことによって、褐色脂肪細胞とベージュ脂肪細胞を合わせた「褐色脂肪」が活性化するのだそうです。

北海道大学の実験によれば、継続的に寒冷刺激を与えることによって、褐色脂肪組織が増え、エネルギー消費能力が高まり、体脂肪も減ることがわかりました。

つまり、これまでは褐色脂肪は寒冷刺激(体を冷やす)ことによって活性化され、エネルギー消費能力が高まり、体脂肪が減ることを紹介していたのですが、なぜ寒冷刺激によって褐色脂肪が活性化するのか、寒冷刺激が何に影響を与えて褐色脂肪が活性化するのかはわかっていませんでした。

今回の研究を参考にすると、寒い環境では褐色脂肪組織でPGC-1αbとPGC-1αcの発現が増えることにより、エネルギー消費が高まり、脂肪を燃焼させるということがわかったわけですね。

骨格筋におけるPGC-1αの発現変化とエネルギー消費量の関係
骨格筋におけるPGC-1αの発現変化とエネルギー消費量の関係

そして、運動による新規PGC-1αの増え方には個人差があり、新規PGC-1αの増え方が大きい人はエネルギー消費が高く、増え方が小さい人はエネルギー消費が低いこともわかりました。

つまり、同じ量の運動をしても痩せやすい人と痩せにくい人がいるのは、新規PGC-1αの増えやすさが関わっており、これが個人の体質を決める要因の一つになっているわけですね。