食べ物でお腹が痛くなる謎はストレスではなかった!?実は免疫システムと神経に関係があった!過敏性腸症候群の新たな治療法につながる研究




【ストーリー】

ある日、マサキさんは大好きなピザを食べた後、なぜかお腹がキリキリと痛みました。「またか…」とため息。実は、世界中の多くの人(最大20%!)が、マサキさんと同じように、食後に腹痛や不快感を感じているんです。これ、放っておくと生活が楽しくなくなったり、病院代もかさんで大変な問題なんです。

科学者のチームは、「なぜ食べ物でお腹が痛くなるの?」という謎を解くために、研究を始めました。マウスくんたちを借りて、実験スタート!

まず、マウスくんのお腹に、細菌やその毒素をちょっとだけ入れてみました。すると、マウスくんの腸がビックリ! 特定の食べ物(たとえば小麦や牛乳)に対する「IgE抗体」という免疫の武器を作り始めたんです。このIgE抗体、まるで「この食べ物、要注意!」と体に教える目印みたい。

次に、マウスくんにその食べ物を食べさせると…お腹の中で大変なことが! IgE抗体が「敵発見!」と反応し、肥満細胞(体の警備員みたいな細胞)が騒ぎ出します。すると、ヒスタミンという物質が出てきて、お腹の神経が「ピリピリ!」と過敏に。結果、マウスくんはお腹の痛みを強く感じちゃうんです。

「これ、人間でも同じことが起きてるんじゃない?」と科学者たちは考えました。そこで、過敏性腸症候群(IBS)というお腹のトラブルを抱える人たちの腸を調べてみることに。グルテンや小麦、大豆、牛乳などの食べ物の成分を少しだけ腸に入れてみると…やっぱり! 腸がむくんだり、肥満細胞が「わーっ!」と反応して、痛みの原因を作り出しているのがわかりました。

この発見は、まるで「食べ物による腹痛の犯人」を突き止めた探偵のストーリー! 科学者たちは、「IgE抗体や肥満細胞が、腹痛の裏でこんなふうに動いていたんだ!」と興奮。この仕組みがわかったおかげで、過敏性腸症候群や似たようなお腹のトラブルを治す新しい方法が見つかるかもしれないんです。

■食べ物でお腹が痛くなる謎はストレスではなかった!?実は免疫システムと神経に関係があった!過敏性腸症候群の新たな治療法につながる研究

Nature誌に掲載された論文によれば、食べ物が引き起こす腹痛の原因が、免疫システム(特にIgEと肥満細胞)や神経の過敏性にあることを明らかになり、過敏性腸症候群の治療に新しい道が開かれる可能性があります。

【参考リンク】

  • Aguilera-Lizarraga J, Florens MV, Viola MF, Jain P, Decraecker L, Appeltans I, Cuende-Estevez M, Fabre N, Van Beek K, Perna E, Balemans D, Stakenborg N, Theofanous S, Bosmans G, Mondelaers SU, Matteoli G, Ibiza Martínez S, Lopez-Lopez C, Jaramillo-Polanco J, Talavera K, Alpizar YA, Feyerabend TB, Rodewald HR, Farre R, Redegeld FA, Si J, Raes J, Breynaert C, Schrijvers R, Bosteels C, Lambrecht BN, Boyd SD, Hoh RA, Cabooter D, Nelis M, Augustijns P, Hendrix S, Strid J, Bisschops R, Reed DE, Vanner SJ, Denadai-Souza A, Wouters MM, Boeckxstaens GE. Local immune response to food antigens drives meal-induced abdominal pain. Nature. 2021 Feb;590(7844):151-156. doi: 10.1038/s41586-020-03118-2. Epub 2021 Jan 13. PMID: 33442055; PMCID: PMC7610810.

■背景

世界の最大20%の人が、食後に腹痛や不快感などの胃腸症状を経験。

これにより、生活の質が下がったり、医療費が増えたりする問題がある。

グルテンフリー食などが注目されているが、なぜこれらの症状が起きるのか、その仕組みはあまりわかっていない。

■研究の主な発見

〇マウスでの実験:
細菌感染や細菌毒素が、特定の食べ物(食事性抗原)に対する「IgE抗体」を腸で作る免疫反応を引き起こす。

その後、同じ食べ物を食べると、IgE抗体と肥満細胞(免疫系の細胞)が反応し、腹痛が強くなる。

この痛みは、ヒスタミン受容体(H1)を通じて内臓の神経が過敏になることで発生。

〇人間での観察:
過敏性腸症候群(IBS)の患者の腸(直腸S状結腸)に、食べ物の成分(グルテン、小麦、大豆、牛乳)を注入。

すると、局所的なむくみ(浮腫)や肥満細胞の活性化が確認された。

■結論

この研究は、食べ物が引き起こす腹痛の原因が、免疫システム(細菌やその毒素が腸でIgE抗体の産生を引き起こし、食べ物を摂取するたびに肥満細胞が反応して痛みを増幅させている)や神経の過敏性にあることを明らかにしたことにより、過敏性腸症候群や類似の腹痛疾患の新しい治療法の可能性が示されました。

■まとめ

IBS(過敏性腸症候群)(IBS)は、大腸や小腸に原因となる異常が見られないのですが、腹痛などの腹部症状に下痢や便秘といった便通異常を伴う病気です。

過敏性腸症候群(IBS)は脳に原因があるストレス性の病気!?によれば、IBSは、大腸や小腸に原因となる異常がないため、ストレスが主な原因と考えられています。

セロトニンの97〜98%は消化管の中にあるそうで、腸のセロトニンはストレスがかかると働きが活発になるそうです。

そのことによって、内臓の知覚過敏と消化管の運動異常を引き起こし、内臓の知覚過敏からは腹痛や腹部膨満感、運動異常からは便秘や下痢などの便通異常が起こってしまうそうです。

しかし、今回の研究によれば、免疫システムにあることがわかったことから、過敏性腸症候群の治療法に新しい道が切り開かれそうです。