今回紹介する記事では、「出会い系のシングルマザーたち」(著:鈴木大介、子どもを抱えながら生活費の不足に悩みながらも、生活保護を拒み、「出会い系」で個人としてセックスワークを営む人たちに取材を重ねたルポ)を取り上げています。
(2012/5/30、BLOGOS)
■シングルマザーの現状
●養育費がない
ほとんどのシングルマザーは養育費を手にしていない。
<中略>
平成18年度全国母子家庭世帯等調査結果報告で養育費を父親と取り決めている母子家庭世帯は、全体の3~4割だ。そして、実際に受給している世帯は19%に過ぎない。16%は養育費を受けたことがあるが途絶えており、59パーセントは受けたことがない。その理由の上位として挙げられるのは、「相手に支払う意思や能力がないと思った」(47%)、「相手と関わりたくない」(23%)である。
ほとんどのシングルマザーが、「相手に支払う意思や能力がない」、「相手と関わりたくない」という理由から養育費を受け取っていないそうです。
●働ける職場がない
求人誌を見て電話をかけても「子どもがいます」と言った時点で面接にも残れない。
子供がいるという時点で面接にも残れないことが多いそうです。
また、ヘルパーなどの仕事が見つかっても、体力がいる仕事であるため、体を壊してしまってやめてしまったり、また年齢によって働けないところもあるようです。
■経済的に追い詰められているのに、生活保護を受給しないのはなぜ?
養育費もなく、働く場もない、シングルマザーは経済的に追い詰められているのに、なぜセーフティーネットである生活保護を受給しないのでしょうか?
それは、生活保護受給者への偏見・差別であり、その目は子供にまで及んでしまうということから。
そこで、あるシングルマザーは子どもが偏見の目に晒されるのが怖くて、水商売を避け、匿名性が守れる出会い系でのセックスワークを始めてしまうのだそうです。
ここまで見る限り、様々なこと(貧困、偏見、社会)がシングルマザーを追い詰めているというのがわかります。
しかし、出会い系でのセックスワークをはじめてしまう理由は別にもあるようです。
たとえば、鈴木さんの取材対象者の2割強は、出会い系でのセックスワークを始めたきっかけが「だって、寂しかったから」である。経済的困窮の中で「仕方なく身売り」ではなく、寂しさを埋めるためにセックスワークをする。
寂しさを埋めるために、出会い系でのセックスワークをする人も取材対象者の2割にいたそうです。
シングルマザーが抱える問題は、お金だけでなく、頼れる人がいないこともあるのです。
もう一つ、社会には児童養護施設のような公共福祉施設に預けるといったセーフティネットがありますが、本の中で紹介されている人は子供を預けることを恐れています。
なぜこれほどあたりまえのことに思い至らなかったのか、僕は自分で自分が嫌になった。シングルマザーがシングルマザーである所以は唯ひとつ、「子どもを手放さないこと」なのだ。思えば、子どもを手放してしまえば、どれほど身軽になるだろう。彼女らにとって合理的な生活・経済の再建を考えるなら、子どもを養護施設等の公的福祉機関に預けるのもひとつの手段なのだ。少なくとも彼女らには帰属すべき実家や頼れる親族もいないのだから。
それでも彼女らは、手放さない。その手に握った小さな手を、決して手放さない。
本来であれば、生活・経済を再建するために、一度養護施設などの公的機関に預けることも手段の一つなのですが、子供が自分自身にとっての宝物であるため、離れ離れになることで寂しい思いをさせたくないという思いから、出会い系でのセックスワークを選択しているそうです。
■こうしたシングルマザーの共通点
相手との距離感がわからず、自己肯定感を失い、恋愛依存で、子どもを溺愛している。
鈴木さんはこうしたやりとりの中で、かれらが女性集団に対する強い不信感を持っていることに気づく。女性集団の中で孤立したり、いじめられたりした経験を持ち、女性の友人の存在は薄い。そのぶん、かれらは男性に救いを求めようとする。
女性集団の中で孤立したりいじめられたりした経験を持つことから、男性に救いを求めようとする、そのことが出会い系でのセックスワークへとつながるのかもしれません。
【感想】
この記事で紹介されている本に出てくる女性たちに共感できないという人も多いでしょう。
大事なことは共感することでなく、こうした人達がいるということを受け入れるということであり、こうしたシングルマザーの声は小さいため届いていないという現状を知ることではないでしょうか。
元記事をぜひ一度読んでみてください ⇒ 生活保護とシングルマザー