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坂東玉三郎「今の若手は稽古の量すら足りない」と苦言〈週刊朝日〉
(2014/9/10、dot)
「私なりに後進の育成には力を注いでいます。でも今の若手は稽古の量すら足りないのは事実。このままでは歌舞伎がお客様から見捨てられるという危機感をもっと共有すべきでしょう」
稽古の量が足りないことは、スポーツで言えば練習量、勉強で言えば勉強時間(量)になると思います。
ところで、稽古の量(練習量・勉強時間)は成功の要因のどれくらいの割合を占めるのでしょうか?
■稽古の量(練習量・勉強時間)は成功の要因のどれくらいの割合を占めるのか?
以前、10000時間の法則であなたも「本物」になれる?やIQの高さより自己鍛錬が大事で「天才!成功する人々の法則」(著:マルコム・グラッドウェル)で「一万時間の法則」を紹介しました。
簡単に言うと、「一万時間の法則」とは、現在活躍している人々は、生まれつきの才能だけで成功を収めたのではなく、練習に1万時間を費やしたことにより、さらにその才能が開花しているという内容です。
しかし、「1万時間の法則」が揺らいでいる!?によれば、成功の要因のうち練習が占める割合は音楽で30%、チェスで34%にすぎないという結論に達したそうです。
「1万時間の法則」が揺らいでいる!?で紹介した「心を上手に透視する方法 」(著:トルステン・ハーフェナー)の中でドイツ人バイオリニストのアンネ=ゾフィー・ムターが練習時間の長さよりも重要にしていることが語られています。
練習時間の長短よりも、私が大切にしていることがあります。
音や演奏技術のことでつまづいたら、そこから距離を置いて冷静に解決する方が良いということです。
つまり、単調な動きをひたすら繰り返して練習するよりも、分析を行なうことで解決するのです。
単調な動きは短時間やってみてしっくりこなければ、いくら繰り返しても無駄なのです。
ひたすら繰り返せば引けるようになるというのは大きな勘違いです。
ひたすら繰り返せばできるようになるわけではないということです。
武井壮が語る「スポーツが上達するには自分の身体を思ったように動かす技術を上げることが必要」によれば、スポーツ(技術練習)をやる前にまずやっておくことは、自分の身体を思ったように動かす練習をしておくことなのだそうです。
それは、イメージした動きと実際の動きが一致していないと思ったとおりの成果が出ないということだと思います。
また、錦織圭選手のコンディショニング戦略(栄養管理・ピリオダイゼーション・ケガの予防)によれば、良い姿勢で、正しい動きを行ない、それを維持することができれば、ケガをしないそうです。
一部の筋力が弱かったり、使うことが意識できないと、動きの癖となって、筋肉や関節に負担がかかり、ケガを起こしやすくなるそうです。
つまり、練習の量も大事ですが、その基本の動き・姿勢をイメージ通りに動かすことがもっとも重要なのではないでしょうか。
■重要なのは、努力する方向性を示してくれた指導者の存在
どんなに努力しても努力する方向性が違っていたら才能は開花しません。
「Psychology of Sport and Exercise」誌に3日付で掲載された論文によれば、プロのサッカー選手になった人とならなかった人を比較した場合、子供のころの練習時間に違いはなかったという。両者の大きな違いは、良い指導を受けた量だった。
この論文において、才能が花開いた人にとって重要だったのは、努力する方向性を示してくれた指導者の存在だったのです。
もちろん自分で努力の方向性を気づくことが出来ればよいのですが、自分のことは見えづらいもの。
それをコーチや先生といった指導者が努力の方向性をしっかりと示してあげられれば、努力は結果として現れるのだと思います。
今の段階の結論としては、努力の方向性をしっかりと分析・判断して、努力することが大事ということになります。
■長い間同じ姿勢で同じ情熱を傾けられる力も才能の一つ
天才チェスプレーヤー ボビー・フィッシャーが持っていた能力とは?|完全なるチェックメイト PAWN SACRIFICEで紹介しましたが、天才チェスプレイヤーボビー・フィッシャーは知能はIQ187と普通の人にとってはそれだけで「天才」といってしまいそうですが、本を読む限り、ボビー・フィッシャーという人物は、努力の天才でもあるのです。
完全なるチェス 天才ボビー・フィッシャーの生涯(著:フランク・ブレイディ―)
彼は、風呂の中でもチェス盤を離さないほど四六時中、チェスの研究に励んでいたのです。
「才能」とは長い間同じ姿勢で同じ情熱を傾けられる力|羽生善治さんの言葉よりで紹介した棋士・羽生善治さんの著書「決断力」では「才能」についてこう書かれています。
以前、私は、才能は一瞬のきらめきだと思っていた。しかし今は、十年とか二十年、三十年を同じ姿勢で、同じ情熱を傾けられることが才能だと思っている。(p170)
「決断力」(著:羽生善治)
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成功する人が共通して持つ「グリット」という能力とは?によれば、心理学者のAngela Lee Duckworth(アンジェラ・リー・ダックワース)氏が成功に必要なものとして提唱したのが、「グリット」という能力です。
「グリット」とは、物事に対する情熱であり、また何かの目的を達成するためにとてつもなく長い時間、継続的に粘り強く努力することによって、物事を最後までやり遂げる力のことです。
IQの高さより自己鍛錬が大事によれば、持って生まれた才能(IQの高さ)よりも継続して努力することの方が学業の成績が伸びるという結果が出たそうです。
どんなに才能に恵まれていても、その才能を伸ばすための長期的・継続的な努力が足りなければ成功するのは難しいということであり、その力も才能だといえるということでしょう。
■「グリット」という才能を育てる方法
それでは、どのようにすれば子供の時に「物事を最後までやり遂げる力」を育てることができるのでしょうか。
「グリット」の提唱者でもある心理学者のAngela Lee Duckworth(アンジェラ・リー・ダックワース)氏もその答えはまだ分かっていないようですが、グリットを持った子供を育てるために1番役立つと思われる考え方として「グロース・マインド・セット」を紹介しています。
「グロースマインド・セット」というのは、スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック博士が発展させた考えで、内容としては「知能は生まれつき固定されたものではなく、後天性のもの、努力を重ねることによって変えることができるものである」という考え方です。
ドゥエック博士の研究では、子供たちに脳と知能の発達について予め学習させ、知能は生まれつきのものではなく、挑戦し続けること、努力することによっていくらでも伸ばすことが可能であると教え込んだ後に難しい問題を解かせると、子供たちは難しい問題に対しても失敗を恐れず、自ら進んで挑戦しようとすることが分かりました。
つまり、才能は生まれつきのものではなく、挑戦し続けることによって伸ばすことができるという考えを教えると、子供は失敗を恐れず挑戦しようとするそうです。
「チェスの神童」と呼ばれ、映画化されたノンフィクション『ボビー・フィッシャーを探して』のモデルであり、太極拳推手の世界選手権覇者ともなったジョッシュ・ウェイツキンの「習得の情熱」(著:ジョッシュ・ウェイツキン)ではトップクラスの競技者になるためのart of learning(習得の技法)について書かれているのですが、この本の中でも、難しい課題に直面した時にはいろいろな方法を駆使しながら学習するタイプの方が自らのレベルを向上させる可能性が高いと書かれています。
習得への情熱―チェスから武術へ―:上達するための、僕の意識的学習法 新品価格 |
発達心理学という研究分野をリードするキャロル・ドゥエック博士は、人々が知能というものをどう捉えて解釈しているのかについて、その解釈の違いを、実態理論(entity theory)と増大理論(incremantal theory)に区分した。
「実態理論者」の子供たち(親や教師の影響でそういう考え方をするようになった子供たち)は、「自分はこれが得意だ」という言い回しをよく使い、成功や失敗の理由を、自分の中に深く根付いていて変えることのできない能力のレベルにあるとする傾向が強い。
つまり、ある特定の課題における知能や技術のレベルそのものを、進歩させることのできない固定された実体としてとらえているということだ。
一方で、いろいろな方法を駆使しながら学習する増大理論者(ここでは「習得理論者」と呼ぶことにする)は、結果が出た時に「頑張って取り組んだおかけだ」、または「もっと頑張るべきだった」というフレーズを使う傾向が強い。
このように、知能の在り方を習得理論で解釈する子供は、頑張って取り組めば難しい課題でも克服することができる。
すなわち、初心者でも一歩一歩進むことで漸次的に能力を増大させ、ついには達人になることだって可能だという感覚を持っている傾向がある。
結果も重要かもしれませんが、もし子供が失敗をしたとしても、失敗を恐れず新しいことにチャレンジしようという気持ちで失敗をしたのであれば、そのこと自体を褒めてあげることが大事なのだと思います。
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