ダーツの下手な人を見ると自分も下手になる?|情報通信研究機構(NICT)とフランス国立科学研究センター

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by zolakoma(画像:Creative Commons)




情報通信研究機構、下手な人を見ると自分も下手になることを発見

(2014/11/12、ASCII)

情報通信研究機構(NICT)は11月11日、ダーツが下手な人を見ていると名人でも上手く投げられなくなるという研究結果を発表した。

情報通信研究機構(NICT)とフランス国立科学研究センターとが共同で進めている研究によれば、ダーツの下手な人の動作を観察すると、エキスパートの人はうまく投げられなくなるそうです。

人の脳が他者の動作をどのように理解し、予測するかという脳内プロセスを解明するために、ダーツのエキスパートが素人のダーツ結果を予測する実験と、その実験の後エキスパートのダーツパフォーマンスにどのような影響が出るかの実験を行ったところ、次のような結果が出ました。

下手な人を見たら、自分も下手になったエキスパート

(2014/11/11、情報通信研究機構)

エキスパートは、素人の動作を繰り返し観察することによって、ダーツの命中場所を予測できるようになりました。これは、他者動作の予測に関わるエキスパートの脳内プロセスに変化が生じたことを意味しています。そして、驚くべきことに、予測能力向上後は、エキスパートのダーツパフォーマンスが悪化するという結果が得られました(図2 実験1参照)。一方、同じ素人の動作を観察したとしても、その動作に対する予測能力が向上しない場合は、エキスパートのダーツパフォーマンスには変化は見られませんでした(図2 実験2参照)。

エキスパートによるダーツの命中場所の予測能力向上後にはエキスパートのダーツパフォーマンスが悪化しましたが、予測能力が向上しない場合にはダーツパフォーマンスには変化がないという結果が出ました。

つまり、他者の動作を予測できるように学習してしまうと、脳内プロセスが変化したことで、自分の動作に影響するということになります。

今回の実験により、我々は、他者動作の予測能力と自己の運動能力の変化の間の因果関係を初めて明らかにし、両者には共通した脳内プロセスが関与しているという仮説を支持する行動学的証拠を示しました。

この実験結果によって、「他者の動作を予測する場合には、自分が同じ動作を行う場合と同じ共通した脳内プロセスが使われる」という仮説を立証するためのひとつの材料となる結果が得られたことになるそうです。

この実験結果を参考にすると、スポーツにおける能力の向上には「下手な人の動きを見ない」というアドバイスが重要になるかもしれません。

下手な人を見たら、自分も下手になったエキスパート

(2014/11/11、情報通信研究機構)

下手な人の運動を見ることによって自分の運動が下手になるという結果は、スポーツやリハビリテーション分野に対して実践的な示唆を与えます。プロ野球選手のイチロー選手は以前、「自分のバッティングに影響するため、下手な人のバッティングは見たくない」と発言しましたが(2007年6月19日(火)夕刊フジ 参照)、イチロー選手は以前からこのことに気付いていたのかもしれません。

私たちは知らず知らずのうちに他者が行なった動作から影響を受けていることから、スポーツにおけるコーチングとしては下手な人の運動を見せないようにするということが重要なのかもしれません。

武井壮が語る「スポーツが上達するには自分の身体を思ったように動かす技術を上げることが必要」によれば、頭の中にある身体を動かすイメージと実際に動いたものとが一致することがスポーツが上達する上で重要だと語っていましたが、今回の研究と近いものがあるのではないでしょうか。