イングランドのチェルシーからオファーを受けた武藤嘉紀選手についてランニングコーチ、横原和真さんの分析記事をご紹介します。
■武藤嘉紀選手の走り方
目下絶好調の武藤嘉紀 チェルシーが認めた22歳は「なにが凄いのか」 フィジカル的側面から解明する
(2015/4/20、soccer digest web)
上半身は基本的に崩れず、脊柱起立筋(背骨に沿って縦に走る筋肉)にほどよく緊張を入れ、股関節筋群も自然と締まっていて、小刻みに足を置くスタイル。脚が後ろに流れるところが全くない。いわゆる、後ろに蹴りあげる姿がない。意識的してやっているのか、あるいは無意識にやっているのか知りたいところですね。
この記事にも似ているタイプとしてクリスティアーノ・ロナウド選手が上げられていますが、背筋をピンと立てているのが特徴です。
クリスティアーノ・ロナウドの肉体(筋肉・腹筋・体幹)の作り方によれば、前傾になると足の前面の筋肉に無駄に力が入るので、スムーズに踏み出せない、まるでブレーキをかけているようなものなのですが、背筋が伸びていると、前面の筋肉に不必要に力が入らないので、足がなめらかに出るそうです。
この姿勢のメリットをまとめると次の通り。
- 足をスムーズに出せると、振りかぶらずにシュートを打てるため、ドリブルをしながら、そのまま同じ歩幅でシュートできる。
そのため、GKはいつボールが飛んでくるかタイミングをとりづらい。 - ドリブルのときに前傾すると視野が狭くなるが、姿勢がよいと、より広い範囲を見られる。
■長友佑都選手との走り方の比較
長友選手の場合は、かなり重心が低いですね。膝が曲がった状態で、姿勢が低く、地に足をつけて動いている印象です。かなり一生懸命に走っていると思います。この走り方で90分間持つのは、心肺機能の高さと身体能力の高さゆえでしょう。
長友選手が本田選手に教えた骨盤を意識した走り方・体幹トレとはによれば、長友選手の走り方の特徴は次の通りです。
- 走る歩幅が短くなり、重心は幾分、低くなっている。
- お尻に体重が乗っているイメージで走ること。
- 足をできるだけ真下に落としてから、地面をかくイメージ。
- この走法の基本にあるのは、効率の向上にある。無駄な力を使わないことで、スピードだけではなく、スタミナにも直結する。
両者の違いがあるのは2つ理由があるのではないでしょうか。
一つは、ポジションの違い、もう一つは、骨格の違い。
1.ポジションの違い
長友は、相手と接触する時に重心を低くすることを心がけている。「これにより、地面をける足の力(地面反力)を重心の方向に向けやすくなるなど、コントロールが容易になる。けりの力を、効率よく相手を押す力に変換できる」と分析する。
こちらは東京大の深代千之教授の分析なのですが、守備において相手とぶつかり合う時の動作をするのに、、重心を低くすることが必要であり、また、相手の動きを見て駆け引きする1対1の守備においては、重心を低くしたほうが対応しやすいのではないでしょうか。
武藤選手はフォワードであるため、ファーストディフェンダーとして重要なことはパスコースを絞ることであったり、簡単に抜かせないということであるため、重心を低くする必要があまりないと考えられます。
2.骨格の違い
侍ハードラーとして有名な為末大さんの著書「日本人の足を速くする」でも、日本人に合ったトレーニング法と正しい身体の動かし方をマスターする必要性を説いています。
日本人と欧米人では、生まれつき骨格が違う。
日本人が速く走るために必要なのは、筋力よりもむしろ、技術である。
体の前側に筋肉がついてしまうのが日本人。欧米、アフリカ系は逆。
実際の骨格を調べたわけではないので想像なのですが、おそらく武藤嘉紀選手はどちらかというとクリスティアーノ・ロナウド選手よりの骨格なのではないでしょうか。
そのため、自然とそのような走り方になったのではないかと思います。
もしかすると、意識してそのような走り方に変化していったかもしれませんが。
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