■生後6か月の段階からゆで卵をごく少量ずつ食べさせると1歳になったとき、卵アレルギーの発症を80%抑えられる|国立成育医療研究センター
by vanessa lollipop(画像:Creative Commons)
(2016/12/9、NHK)
グループでは、生後まもなくアトピー性皮膚炎になった赤ちゃん121人を2つのグループに分け、生後6か月の段階で一方のグループの赤ちゃんには加熱した卵の粉末50ミリグラムを、もう一方のグループの赤ちゃんにはカボチャの粉末を毎日食べてもらいました。さらに生後9か月からは卵の量を250ミリグラムに増やし、1歳になった時点でゆで卵半分に相当する7000ミリグラムの卵の粉末を食べてもらいました。
その結果、卵をずっと食べていた赤ちゃん60人のうち、卵アレルギーを発症したのは5人だけでしたが、カボチャの粉末を食べた61人では23人が発症したということでグループでは、ごく少量の卵を食べることでアレルギーの発症を80%抑えることができたとしています。
国立成育医療研究センターの大矢幸弘医長らのグループの研究によれば、生後6か月の段階からゆで卵をごく少量ずつ食べさせると1歳になったとき、卵アレルギーの発症を80%抑えられることができたそうです。
生後4か月からピーナッツを食べさせるとアレルギー予防になる!?によれば、生後4~11カ月からピーナッツを含む食品を摂取した子供は、摂取しなかった子供に比べ、5歳の時点でピーナッツアレルギーを発症するリスクが低かったそうです。
(2015/2/24、日本経済新聞)
ロンドン大キングズ・カレッジのチームの追跡調査によれば、生後5~11カ月からピーナツを含む食品を取り続けた子供は、食べるのを避けていた子供に比べ、5歳の時点でピーナツアレルギーを発症するリスクが70~86%低かったという結果が出たそうです。
これまではアレルギーを心配して子供のころにアレルギーの原因となる食べ物を食べさせないような対策がとられていたそうです。
(2016/12/9、NHK)
グループによりますと国内ではアレルギーを懸念して幼いうちに卵を食べさせない傾向が強く、3歳児全体の6%近くが医師の指示で摂取を制限しているということです。
(2015/2/24、日本経済新聞)
これからはアレルギーの原因となる食物は子供のころから少量ずつ食べ始めた方がいいという考え方による予防法に変わっていくかもしれません。
【追記(2017/6/17)】
(2017/6/16、日本小児アレルギー学会)
日本小児アレルギー学会は、食物アレルギー診療ガイドライン2016や国立成育医療研究センターの研究に基づき、医療関係者を対象として「鶏卵アレルギー発症予防に関する提言」を発表しました。
今回の提言の重要性は、卵の摂取が遅いほど卵アレルギーのは発症リスクが高まるというエビデンスのもと、医師の管理のもと、生後6か月から微量の卵を摂取することで発症を予防していくことを目指すものであり、今後アレルギー予防対策が変わっていくかもしれないという点です。
ただし、この提言にもある通り、すでに卵アレルギーやアトピー性皮膚炎の発症が疑われる場合には危険であり、また医師による指導がないとコントロールすることが難しいので避けましょう。
【参考文献】
- Greer FR, Sicherer SH, Burks AW;American Academy of Pediatrics Committee on Nutrition;American Academy of Pediatrics Section on Allergy and Immunology. Effects of early nutritional interventions on the development of atopic disease in infants and children:the role of maternal dietary restriction, breastfeeding, timing of introduction of complementary foods, and hydrolyzed formulas. Pediatrics 2008;121:183—191.
- Du Toit G, et al. ピーナッツ摂取早期開始後の除去がピーナッツアレルギーに与える影響(Effect of Avoidance on Peanut Allergy after Early Peanut Consumption.) N Engl J Med 2016;374:1435—1443
P.S.
アトピー性皮膚炎は、保湿剤で乳児の発症率3割減少するによれば、アトピー性皮膚炎のある乳児は、食物アレルギーを持っていることが多く、また、アトピー性皮膚炎発症が卵アレルギーの発症と関連する(アトピー性皮膚炎あるいは湿疹を発症した乳児では卵白に対するIgE抗体が非常に高い値を示す)、そして、国内では未就学児の10~30%がアトピー性皮膚炎を患っているそうです。
皮膚のバリアーを高めてアトピー予防|アレルギーマーチを防ぐには?で紹介した<アレルギー>皮膚の弱さが原因? 英で研究報告(2014/12/18、毎日新聞)によれば、子供(乳児)の時に湿疹があるとアレルギーマーチを引き起こす恐れがあるので、子供の時にしっかりと治療することがアトピー性皮膚炎や食物アレルギー、ぜんそく、鼻炎の発症を抑えることにつながりそうです。
子どもの場合、成長とともに、アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、ぜんそく、鼻炎と進む傾向があるため、「アレルギーマーチ」と呼ばれる。同センター研究所の松本健治・免疫アレルギー研究部長は「乳児期に湿疹があると、さまざまな抗原が入りやすくなって、アレルギーマーチを引き起こすと考えている。湿疹を放置せずに早く治療することが食物アレルギーやぜんそく、花粉症などの発症予防につながる可能性がある」と推測。
国立成育医療研究センターのチームによれば、両親や兄弟にアトピー性皮膚炎の患者や経験者がいる乳児に、生後1週間から約8カ月間保湿剤を毎日塗ることでアトピー性皮膚炎の発症を3割減らすということがわかったそうです。
今回の記事と併せて考えると、ごく少量ずつ卵を摂取させながら、保湿剤を塗ることによって、アトピー性皮膚炎およびアレルギーを予防する可能性が高くなるということではないでしょうか。
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