■東レ、ネコの慢性腎臓病治療薬ラプロス®を発売
by ivva(画像:Creative Commons)
(2017/1/23、東レ)
ラプロス®は、ベラプロストナトリウムを有効成分とする経口プロスタサイクリン(PGI2)製剤であり、血管内皮細胞保護作用、血管拡張作用、炎症性サイトカイン産生抑制作用及び抗血小板作用を有しています。これらの薬理作用によって腎臓の虚血および低酸素状態を改善させると考えられており、腎機能の低下を抑制し臨床症状を改善させます。
東レ株式会社は、猫の慢性腎臓病治療薬ラプロス®の製造販売承認を取得し、2017年4月より共立製薬株式会社より発売が開始されます。
【背景】10歳齢以上の猫における慢性腎臓病の有病率は30~40%にのぼる
慢性腎臓病は、腎臓の機能が徐々に低下していくことで、食欲不振や体重減少、多飲多尿、嘔吐など様々な症状が現れます。特に高齢の猫においてよく認められ、10歳齢以上の猫における有病率は30~40%にのぼると報告されています。しかし、猫の慢性腎臓病は、病態が解明されていないことも多く、治療の選択肢は限られていました。
猫のかかりやすい病気の一つに慢性腎臓病が挙げられ、10歳齢以上の猫における慢性腎臓病の有病率は30~40%にのぼるそうです。
しかし、これまで猫の慢性腎臓病についてはわかっていないことも多く、治療法は限られていたそうです。
ところが近年研究が進み、猫の慢性腎臓病は病理組織学的に間質の線維化と炎症が主体であり間質の線維化が腎機能低下と最もよく相関することが分かってきました。腎臓の線維化は、炎症や虚血、低酸素状態、線維化によるさらなる虚血と低酸素状態…という風に悪循環を形成して進行していきます。つまりこの腎線維化プロセスを抑制することができれば、腎機能の低下を抑制できると考え、開発に着手しました。
猫の慢性腎臓病においては、間質の線維化が腎機能低下と最も相関することがわかっており、腎臓の線維化を抑制することができれば、腎機能低下を抑制すると考えたそうです。
【参考リンク】
猫の慢性腎疾患における糸球体濾過値の低下と間質の線維化程度の相関|J-Stage
猫の慢性腎疾患自然発生例において腎機能の指標となりうる組織学的所見を検討した.血清クレアチニン (sCr) 値と尿細管障害および間質線維化の間には強い相関が観察された
ラプロス®の効能又は効果
猫:IRISステージ2~3の慢性腎臓病における腎機能低下の抑制及び臨床症状の改善
慢性腎臓病の栄養管理|J-Stageによれば、IRISとは、国際獣医腎臓病研究グループ(the International Renal Interest Society: IRIS)は、犬および猫における慢性腎臓病の病気分類システムです。
猫におけるIRIS分類によれば、2期は、血清クレアチニン値1.6-2.8mg/dLで軽度の腎性高窒素血症、3期は、2.9-5.0mg/dLで中等度の腎性高窒素血症となります。
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P.S.
人間にとっても「慢性腎臓病」は新国民病ともいわれるほど、注目されている病気です。
■成人の8人に1人の新国民病「慢性腎臓病」
【主治医が見つかる診療所】新国民病!慢性腎臓病|高血圧が慢性腎臓病の引き金になる!によれば、慢性腎臓病とは、慢性的にかかる腎臓病の総称のことで、糖尿病の合併症の一つである糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎(IgA腎症)、腎硬化症、膜性腎症など様々な病気が含まれています。
慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)とは、簡単に言うと、腎臓の機能が60%未満に低下することを言います。
腎臓の機能が低下し、血液中の水分や老廃物のろ過機能が低下してしまい、症状が悪化すると、人工透析が必要となります。
慢性腎臓病は、自覚症状がほとんどなく、気付いた時には重症化してしまい、「サイレントキラー」とも呼ばれています。
慢性腎臓病の患者数は推定1330万人で、日本人の成人の実に8人に1人が患っていることから新国民病の一つともなっています。
慢性腎臓病を発症すると人工透析が必要になってしまうケースもあり、重症化する前に発見することが重要です。
→ 慢性腎臓病 について詳しくはこちら
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