> 健康・美容チェック > すい臓がん > 化学療法薬をすい臓がんの腫瘍に直接送ることができる小型で移植可能なデバイスを開発|MIT・マサチューセッツ総合病院
■すい臓がん治療のおける2つの問題とは?
1.すい臓がある位置が早期発見・治療を難しくしている
参考画像:ローラ・インドルフィ:膵臓がん患者への吉報(Feb 2016、TED)|TED Talkスクリーンショット
(Feb 2016、TED)
膵臓がんのまず最初の問題は 膵臓が まさに お腹の真ん中にあるという事です スライドでは膵臓は オレンジ色になっていますが その前にある他の臓器を どけないと よく見えません その前にある他の臓器を どけないと よく見えません また命に関わる重要な臓器— 肝臓、胃、胆管などに囲まれています それらの隣接した臓器に 転移しやすいことが 膵臓がんを 最も痛みの激しい 癌の1つにしているのです また手術で摘出し難い場所にあり また手術で摘出し難い場所にあり 乳がんの様に 日常的には 手術が行われていません
すい臓がんはなぜ「最悪のがん」だといわれるのか?|すい臓がんの5年生存率はあらゆるがんの中で最も低い!によれば、すい臓の位置が体の奥深く(肝臓や胃などの裏側の隠れた場所)にあり、またほかの臓器に囲まれているため、レントゲン検査や腹部超音波(エコー)検査では発見が難しいそうです。
すい臓がんの患者の4割が治療前の時点で「ステージ4」に達している|国立がん研究センターで紹介した国立がん研究センターが公表した国が指定する「がん診療連携拠点病院」の2014年の診療実績によれば、すい臓がんの患者の4割が治療前の時点で「ステージ4」(肝臓・腹膜・肺などの違う臓器に転移)に達しているそうです。
がん患者の「5年相対生存率」推計62.1%|国立がん研究センターによれば、男性におけるがんの種類ごとの生存率によれば、すい臓がんが最も低い7.9%、女性もすい臓がんが最も低い7.5%となっています。
2.すい臓がんの腫瘍そのものには薬がほとんど届かない
(Feb 2016、TED)
膵臓がんは血管が殆どないのです なぜ腫瘍の血管が 問題となるのでしょう? 化学療法の働きを 考えてみましょう 薬が血管に注入され 薬は体中を巡り 腫瘍に届きます それは目的地まで到着しようと 高速道路を運転するようなものです もしその高速道路に 目的地への出口がなかったらどうでしょう? 目的地へ到着する事はありません それと全く同じ問題が 膵臓がん治療の化学療法にあるのです 薬は体中を巡り 健康な臓器は 毒性の高い作用を受けるというのに 腫瘍そのものには薬は ほとんど届くことがなく 薬の効果はとても 限られたものになります
すい臓がんに対する化学療法を行なおうにも、すい臓がんの腫瘍には血管がほとんどないため、腫瘍そのものには薬がほとんど届くことはなく、効果は限定的なものとなってしまうそうです。
■化学療法薬をすい臓の腫瘍に直接送ることができる小型で移植可能なデバイスを開発
参考画像:ローラ・インドルフィ:膵臓がん患者への吉報(Feb 2016、TED)|TED Talkスクリーンショット
Implantable device targets pancreatic cancer
(2016/4/14、MIT NEWS)
To help overcome that obstacle, researchers from MIT and Massachusetts General Hospital have now developed a small, implantable device that delivers chemotherapy drugs directly to pancreatic tumors.In a study of mice, they found that this approach was up to 12 times more effective than giving chemotherapy drugs by intravenous injection, which is how most pancreatic cancer patients are treated.
すい臓がある位置が早期発見・治療を難しく、またすい臓がんの腫瘍そのものには薬がほとんど届かないという2つの問題を抱えているすい臓がんはアメリカにおけるがんによる死亡原因の3番目となっています。
そこで、MITとマサチューセッツ総合病院の研究者は、化学療法薬をすい臓の腫瘍に直接送達する小型で移植可能なデバイスを開発したそうです。
マウスの研究によれば、この治療法によるアプローチとほとんどのすい臓がん患者を治療する方法である静脈内注射による化学療法薬の投与と比べると、最大12倍効果的であることがわかったそうです。
このデバイスの特徴としては、主に2つ。
1.標的の腫瘍に効果的に薬の投与が可能になること
In hopes that getting drugs directly to the tumor site would improve treatment, the researchers engineered a flexible polymer film that is made from a polymer called PLGA, which is widely used for drug delivery and other medical applications.The film can be rolled into a narrow tube and inserted through a catheter, so surgically implanting it is relatively simple.Once the film reaches the pancreas, it unfolds and conforms to the shape of the tumor.
薬剤の送達やそのほかの医療用途に広く用いられているPLGAと呼ばれるポリマーから作られた柔軟なポリマーフィルムをカテーテルを通して挿入し移植します。
フィルムがすい臓に到達すると、広がり、非常に柔軟性があるため、腫瘍の大きさや形に適合し、腫瘍を閉じ込めるようにして、ガンが他の臓器に転移しないような働きをします。
Drugs are embedded into the film and then released over a preprogrammed period of time.The film is designed so that the drug is only secreted from the side in contact with the tumor, minimizing side effects on nearby organs.
このデバイスは生分解性があるので、体に入ると、分解され始め、フィルムに埋め込まれた薬剤がプログラミングされた期間にわたって放出されます。
フィルムは腫瘍と接する側からのみ分泌するように設計されているため、周りにある器官への副作用を最小限に抑えます。
2.低侵襲であること(「最小侵襲性(Minimally invasive)」)
“The greatest benefit of this device is the ability to implant it with minimally invasive procedures so we can give a tool to oncologists and surgeons to reach tumors that otherwise would be difficult to reach,” Indolfi says.
医療行為に当たっては患者にとって何らかの痛みや出血などを伴うものであり、そのことを「侵襲(しんしゅう)」と呼びます。
このデバイスを使った治療法はカテーテルを用いてフィルムを移植する治療法であるため、体にとって比較的侵襲度が低い治療法といえます。
While they began this project with a focus on pancreatic cancer, they expect that this approach could also be useful in treating other tumors that are difficult to reach, such as tumors of the gastrointestinal tract.
すい臓がんにフォーカスしてスタートした今回の研究ですが、このアプローチは到達することが難しい胃腸管の腫瘍といったほかの腫瘍の治療にも活用することも期待されます。
現在は臨床試験を行なっている段階ですが、将来的にすい臓がんも治療可能ながんになるといいですね。
→ すい臓がん について詳しくはこちら
■まとめ
今回紹介したアプローチは疾患部位にピンポイントで治療薬を届ける「ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)」というアイデアに含まれるものですね。
がん治療の場合、従来の抗がん剤だと正常な臓器・細胞も傷つけてしまいますが、がん細胞だけに薬を届けることができれば、治療効果が高く、副作用の少ない「患者に優しい治療」となることが期待できます。
DDSの考え方が広まることによって、「患者にとっての優しい治療」が実現していくといいですね。
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