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■甲状腺ホルモンが慢性腎臓病(CKD)の悪化を防ぐメカニズムを解明|山梨大学
参考画像:甲状腺ホルモンが慢性腎臓病の悪化を防ぐメカニズムを解明(2017/3/7、山梨大学プレスリリース)|スクリーンショット
(2017/3/7、山梨大学プレスリリース)
CKDの腎臓では、尿細管間質で活性化した組織障害マクロファージが炎症性サイトカインを産生し続ける、慢性炎症の状態にあると考えられます。
慢性炎症は、マクロファージの転写因子の制御異常によって引き起こされ、その転写因子の制御には甲状腺ホルモンと甲状腺ホルモン受容体が関与していることがわかりました。
山梨大学の古屋文彦講師、北村健一郎教授らの研究グループが慢性腎臓病モデルマウスを用いて行った研究によれば、甲状腺ホルモンが腎障害進行の抑制に重要な役割を担っていることを解明したそうです。
【補足】慢性腎臓病(CKD)とは?
【主治医が見つかる診療所】新国民病!慢性腎臓病|高血圧が慢性腎臓病の引き金になる!によれば、慢性腎臓病とは、慢性的にかかる腎臓病の総称のことで、糖尿病の合併症の一つである糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎(IgA腎症)、腎硬化症、膜性腎症など様々な病気が含まれています。
慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)とは、簡単に言うと、腎臓の機能が60%未満に低下することを言います。
国民のほぼ1割、1,300万人の腎機能が60%以下に低下していると言われ、慢性腎臓病は、“新たな国民病”として注目されています。
腎臓の機能が低下し、血液中の水分や老廃物のろ過機能が低下してしまい、症状が悪化すると、人工透析が必要となります。
慢性腎臓病は、自覚症状がほとんどなく、気付いた時には重症化してしまい、「サイレントキラー」とも呼ばれています。
「慢性腎臓病」が悪化すると、老廃物が血管の内皮細胞を傷つけることによって、脳卒中、心筋梗塞など血管の病気になるリスクが高くなります。
生活習慣を改善することなくそのままの生活を続けてしまうと、さらに腎臓機能が低下して、慢性腎臓病から慢性腎不全・脳卒中・心筋梗塞を引き起こす可能性があります。
→ 慢性腎臓病とは|慢性腎臓病(CKD)の症状・原因・チェック について詳しくはこちら
■背景
甲状腺ホルモンが低下した患者さんでは、その作用が弱くなり動脈硬化やメタボリックシンドロームのリスクが高いことが指摘されています。
CKD患者さんの腎臓や、メタボリックシンドロームの患者さんの血管では炎症細胞としてのマクロファージによる「慢性的な炎症」が、尿細管間質の線維化や動脈硬化の原因となっています。
甲状腺ホルモンが低下すると、動脈硬化やメタボリックシンドロームのリスクが高くなり、また、CKDやメタボリックシンドロームの患者の血管では、マクロファージによる慢性炎症が尿細管間質の線維化や動脈硬化の原因となっていることから、甲状腺ホルモンと腎障害進行に何らかの関係があるのではないかと考えられます。
■研究結果
骨髄の甲状腺ホルモン受容体が欠損したマウスの腎臓では、炎症性サイトカインを産生して慢性的な炎症を進めて組織の破壊を起こす組織障害性マクロファージが集まり、尿細管間質の線維化や腎障害を引き起こすことが分かりました。
通常の状態では、甲状腺ホルモン受容体はマクロファージの転写因子の働きを調節して、炎症性サイトカインの産生を抑制し、炎症を収束させるのですが、甲状腺ホルモンの働きがなくなると、マクロファージで転写因子の働きが活性化し続けることによって、炎症性サイトカインの産生が続き、慢性炎症の状態となり、腎障害が進行することが分かりました。
■まとめ
透析人口は32万448人|糖尿病腎症・慢性糸球体腎炎で全体の7割を占める|日本透析医学会で紹介した日本透析医学会によれば、2014年末現在の日本の透析人口は32万448人で、このうち透析の原因となる病気は糖尿病腎症が11万8,081人と最も多く、その次に慢性糸球体腎炎が9万6,970人と続き、糖尿病腎症と慢性糸球体腎炎の2つの疾患で透析人口の全体の7割を占める結果となっています。
慢性腎臓病の治療は、生活習慣の改善や高血圧・糖尿病に対する治療が行われてきましたが、甲状腺ホルモンが腎障害進行の抑制に重要な役割をになっていることが分かったことにより、別のアプローチによる新しいCKDに対する治療法が期待されます。
→ 慢性腎臓病とは|慢性腎臓病(CKD)の症状・原因・チェック について詳しくはこちら
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