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■糖尿病治療薬「メトホルミン」による制御性T細胞の抑制効果を発見
by United Soybean Board(画像:Creative Commons)
糖尿病治療薬メトホルミンによる制御性 T 細胞の抑制効果を発見
(2017/10/27、岡山大学プレスリリース)
がん局所に浸潤した制御性 T 細胞は免疫細胞の一種ですが、がん細胞を攻撃する細胞傷害性 T 細胞[2]の機能を抑制することが知られています。メトホルミンによる制御性 T 細胞の抑制効果は、がんに対する免疫作用を増強することにつながり、がんの免疫治療に貢献できる可能性が明らかになりました。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科免疫学分野の鵜殿平一郎教授、榮川伸吾助教と口腔顎顔面外科学分野の佐々木朗教授、國定勇希大学院生の共同研究グループは、メトホルミンが、がん局所に存在する制御性T細胞(免疫反応の抑制を行うT細胞の集団。過剰な免疫応答を抑制するためのブレーキ役を担い、自己免疫疾患などに罹患しないように全身に分布している。)の増殖と機能を抑制することを明らかにしました。
制御性T細胞の本来のエネルギー代謝[4]である脂肪酸に依存した酸化的リン酸化反応[5]が減少し、代わりに糖に依存した解糖系[6]が亢進することで、細胞死に至る経路を活性化していることがわかりました。
糖質代謝改善薬であるメトホルミンによって、酸化的リン酸化反応(細胞内で起こる呼吸に関連した現象で、ミトコンドリア内で高エネルギー化合物の ATP を産生する回路の一つ)が減少し、解糖系(グルコース(糖)をピルビン酸に分解(異化)する代謝過程)の促進を誘導することによって、それまで脂肪酸を取り入れて生存していた制御性T細胞の代謝バランスが崩壊し、続いて細胞死に至るということが明らかになりました。
メトホルミンは免疫細胞の代謝バランスを変化させることにより、今まで不可能であったがん局所だけの制御性T細胞の抑制をもたらす効果があるということによって、より有効で安全な治療法の開発につながることが期待されます。
【参考リンク】
- Yuki Kunisada, Shingo Eikawa, Nahoko Tomonobu, Shohei Domae, Takenori Uehara,Shohei Hori, Yukihiro Furusawa, Koji Hase, Akira Sasaki, and Heiichiro Udono Attenuation of CD4+CD25+ regulatory T cells in the tumor microenvironment by metformin, a type 2 diabetes drug 「2型糖尿病治療薬メトホルミンによる腫瘍微小環境内 CD4+CD25+制御性 T 細胞の抑制」 EBioMedicine. 2017 Oct 16. pii: S2352-3964(17)30405-X. doi:http://dx.doi.org/10.1016/j.ebiom.2017.10.009
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