> 健康・美容チェック > 更年期 > 更年期症状を改善するホルモン補充療法を実施した医師は48%!理由は知識不足や経験不足!
Stacey Gabrielle Koenitz|unsplash
更年期 症状改善へ“ホルモン補充療法” 実施の医師は半数以下(2022/4/11、NHK)で紹介されている医師479人を対象にしたインターネットによるアンケート調査によれば、ほてりや不眠、気分の落ち込みなど女性の閉経前後の時期にあらわれる更年期の症状を改善する効果が国際的に認められているホルモン補充療法を過去1年間に実施した医師が48%だったことがわかったそうです。
その理由は、「専門外で詳しくないため」61%、「処方した経験がない」28%、「管理が難しいため」25%、「がんのリスクがあるため」20%だったそうです。
今回のニュースのポイントは、知識不足や経験不足をあげた医師が多かったこと。
年齢が若い医師のほうが患者の死亡率が低い!|年長の医師のほうが経験年数の少ない医師に比べて医学的知識が少なく、ガイドラインに合わせた治療を行わない!?によれば、長年経験を積んだ医師のほうが知識も技能が蓄積されていると期待している人が多いと思いますが、60ほどの研究によれば、医師の技能は時間とともに劣化してしまうものであり、また年長の医師のほうが経験年数の少ない医師に比べて医学的知識が少なく、ガイドラインに合わせた治療を行わない傾向になるため、年長の医師の患者は質の低い医療を受けている可能性があるというものです。
以前もC型肝炎の治療薬は劇的に進歩し、今では90%近くの患者が治る!によれば、C型肝炎治療薬は劇的に進歩し、今では90%近くの患者が治るようになっているそうですが、その一方で、10年20年以上前の知識を持った医師たちによって、治療が勧められないというケースもあったことがありました。
【あさイチ】尿もれやニオイが気になる人に!正しい拭き方と排尿の仕方|簡略更年期指数(SMI)チェックの方法|女性ホルモンの治療(ホルモン補充療法・低用量ピル・漢方薬)のやり方によれば、ホルモン補充療法(HRT)には飲み薬・貼り薬・塗り薬があり、最新の産科婦人科学会のガイドラインによれば、乳がんリスクに及ぼす女性ホルモン剤の影響は小さいそうです。
病気を診断するにあたって、患者のデータと医学知識を組み合わせて適切なものを選択する必要がありますが、医師は、常に新しい知識をアップデートしていかなければ、患者にとって質の低い治療を行なってしまう恐れがあるので、更年期の専門医が医師に対する研修会などを行なって、新しい知識のアップデートをしてもらいたいものです。
→ 更年期障害の症状・原因・チェック|40代・50代の更年期の症状 について詳しくはこちら
【補足】
イギリス発・更年期ムーブメントに続け! 女性たちに沈黙を強いない社会づくりに必要なこと。(2022/3/14、Vogue)
「術後、医師はホルモン補充療法(HRT)について少し言及しましたが、メディアを通じて知るHRTに関する情報はネガティブなものが多かったため、私はすぐに『結構です』と断ってしまいました。そのため、医師からHRTについてのそれ以上の説明──HRTが必要な理由や副作用の発生率、治療の種類などの最新のエビデンス──がなされることはありませんでした」
<中略>
幸運なことに、診察した女性の医師はその場で更年期障害と診断し、エストロゲンの減少が精神状態にどのような影響を及ぼすかなどを説明してくれたという。そうして皮膚に貼るタイプの植物由来のHRTを試してみることにしたダイアンは、2週間後には真っ暗だった世界も晴れ、希望を感じられるようになった。
医師からエストロゲンの減少が身体的・精神的にどのような影響を及ぼすのか、ホルモン補充療法(HRT)とは?メリットとデメリット、治療の種類などを説明してもらい、納得したうえで、HRTを選択するかどうかを決められるようになるといいですね。
One person in four with menopause symptoms is concerned about their ability to cope with life.で紹介されているNuffieldの調査によると、イギリスでは、女性はうつ病と誤って診断され、抗うつ薬を投与されていたり、総合診療医(症状や治療に関する知識が不足している)を訪れた4分の1の女性が更年期障害に関連する症状の可能性を見落とされていたり、また、3分の1の女性がホルモン補充療法(HRT)について知らされなかったそうです。
イギリス発・更年期ムーブメントに続け! 女性たちに沈黙を強いない社会づくりに必要なこと。(2022/3/14、Vogue)によれば、現在ヨーロッパやアメリカでは更年期障害を抱える女性の4割がHRTを受けているが、日本は2%未満なのだそうです。
更年期障害に対する正しい治療アプローチがとられていないために、更年期障害の症状があるにもかかわらず、正しい治療を受けられない方が多いのではないでしょうか?
みんなの更年期|NHKスペシャルによれば、更年期症状を経験している8000人あまりのうち、ホルモン補充療法を受けていると答えたのは、わずか5%だったそうですが、なぜ日本では国際的な標準治療であるホルモン補充療法(HRT)が浸透していないのかについて調べてみると、もう一つの発見がありました。
それは経営的に採算が合わないこと。
ホルモン補充療法を行っていない医師にその理由を聞くと、知識や経験の不足をあげる声が ほとんどでした。さらに、更年期症状の診療について課題を問うと、目立ったのは「問診に時間がかかり診療報酬が見合わない」「経営的に採算が合わない」という声です。
例えば、同じようにホルモン剤を使った治療を行う月経困難症の場合、初診料と再診料は同じですが、2500円が上乗せされます。一方、更年期障害の場合は、上乗せはありません。
更年期障害に対しては症状を緩和する治療法があるのに、ホルモン補充療法を治療するには診療報酬が見合わないため、治療を行わないというのはすごい話ですよね。
予防医学・予防医療を早く進めるためには、医師・医療機関に対するインセンティブの仕組みを変える必要がある!で書きましたが、予防医療を進めていくためには重大な課題があります。
それは、病気の予防には医療費が支払われないことです。
郵便番号のほうが遺伝子よりも健康に影響する?|「病気の上流を診る医療」|TEDで紹介したTED Talkで話すリシ・マンチャンダは、医師の仕事は患者の症状を治療するだけでなく、病気の根本原因を突き止めることであり、現在の医療システムの考え方を変えて、医師たちに「上流で起こる」要因、例えば栄養価に乏しい食事、過酷な仕事、新鮮な空気の不足などといった私達が生活をして、働き、食事や睡眠を取り、学び、遊ぶ、私達の生活の大半を過ごす場所を改善することによって、病気を未然に防ぐことを呼びかけています。
多くの医師や医療機関も生活習慣・環境を見直して病気を予防することの重要性は十分承知のはずです。
しかし、病気の治療に比べて病気の予防に対する医師たちのインセンティブ(報酬)が足りないという問題があり、取り組むのが難しいのです。
どんなに病気の予防に取り組みことが大事だと思っても、医療従事者(医師や看護師など)を養い、医療機関も生活し、経営を行なっていかなくてはなりませんので、現状では予防ではなく治療を選択せざるを得ないのです。
つまり、「病気の上流を診る医療」を実現するためには、病気の予防につながる医療を行った医師や病院・医療機関にこれまでの医療費の代わりになるインセンティブ(例えば「予防医療費」)が得られる仕組みを作り上げる必要があります。
更年期障害の症状を緩和する治療が広まるためにも、予防医療にインセンティブが払われる仕組みに変わっていくといいですね。
【参考リンク】
- ホルモン補充療法ガイドライン 2017 年度版|日本産科婦人科学会