国民一人一日当たり魚介類と肉類の摂取量の推移|水産庁

「魚をよく食べる人は長生き」は本当?日本人16研究をまとめたメタアナリシスからわかったこと

「魚は体にいい」と昔からいわれていますが、実際のところ、魚をよく食べる人は長生きなのでしょうか?

2026年10月、株式会社ニッスイと国立健康・栄養研究所の共同研究により、日本人の魚の摂取量と死亡リスクとの関係を調べたシステマティックレビュー・メタアナリシスの結果が発表されました。

研究成果は2026年10月23日、European Journal of Clinical Nutritionに「Fish intake and mortality in Japan, a high fish-consuming country: a systematic review and dose–response meta-analysis of cohort studies」として掲載されています。

今回の研究で注目されるのは、魚の摂取量が最も多いグループでは、最も少ないグループと比較して、

全死因死亡リスクが6%低い
心血管疾患による死亡リスクが15%低い

という関連が確認されたことです。

ただし、ここで注意したいことがあります。

今回の結果は、「魚を食べれば6%長生きできる」「魚を食べれば心血管疾患を15%予防できる」ことを証明したものではありません。

研究の内容を詳しく見てみましょう。

■魚をよく食べる人は長生きする?

今回の研究を考えるうえで興味深いのが、日本人の食卓から魚が減ってきていることです。

■日本人の食卓では「魚」より「肉」が多くなっている

水産庁が紹介している国民1人1日当たりの魚介類と肉類の摂取量の推移を見ると、日本人の食生活が大きく変化してきたことがわかります。

過去の統計では、2006(平成18)年に初めて肉類の摂取量が魚介類を上回り、2008(平成20)年には一時的に魚介類が肉類を上回ったものの、2009(平成21)年以降は再び肉類が魚介類を上回り、その差が拡大していました。

国民一人一日当たり魚介類と肉類の摂取量の推移|水産庁
国民一人一日当たり魚介類と肉類の摂取量の推移|水産庁

参考画像:水産物の消費動向|水産庁(スクリーンショット)

そして、これは一時的な現象ではありません。

令和6年度 水産白書によると、日本人1人当たりの食用魚介類の年間消費量(純食料ベース)は、2001年度の40.2kgをピークに減少を続け、2023年度には21.4kg(概算値)となっています。

一方、肉類の1人当たり消費量は増加傾向にあり、2011年度以降、魚介類の消費量は肉類を下回った状態が続いています。

つまり今回の「魚を多く食べる日本人ほど死亡リスクが低い傾向がみられた」という研究結果は、日本人の魚離れが進んできた時代に発表された研究という点でも興味深いものです。

■昔の日本食には魚介類も取り入れられていた

日本人の食生活の変化を考えるうえでは、HAKURAIDOUで以前紹介した「1975年型日本食」の研究も興味深いです。1975年型日本食には、魚介類だけでなく、大豆製品、野菜、果物、海藻、きのこなど、多様な食品を取り入れる特徴があります。

→ 1975年型の日本食を食べると健康になる!ヒトの実験でも証明|その食事の特徴とは?|東北大

また、魚はEPA・DHAなどのオメガ3脂肪酸の供給源としても知られています。

HAKURAIDOUでは以前、オメガ3と肌について取り上げた記事の中でも、この魚介類と肉類の摂取量の逆転を紹介していました。

→ オメガ3の美肌効果|オメガ3を摂取するとなぜ美肌になるのか?

また、魚と長寿を考えるうえで興味深いのが、家森幸男教授が世界各地の食生活と健康について調べてきた研究です。

HAKURAIDOUで以前紹介した記事では、家森教授が行った尿を用いた調査から、長寿を考えるキーワードとして3つの「S」、Salt(塩)、Seafood(魚介類)、Soy(大豆)が紹介されています。

なお、Saltは「塩を多く摂るとよい」という意味ではなく、塩分と健康の関係に注意するという文脈で捉える必要があります。

→ 大豆たんぱく質で筋力アップ(二川健)&心疾患予防(家森幸男)!必要摂取量!

このように、魚介類と健康・長寿との関係は以前から注目されてきました。

ただし、これも「魚を食べれば長生きする」と単純に結論づけられるものではありません。食生活は魚だけで成り立っているわけではなく、塩分や大豆をはじめ、さまざまな食品や生活習慣が関係します。

だからこそ今回、日本人を対象とした複数のコホート研究をまとめて、魚の摂取量と死亡リスクとの関連そのものを検討したことに意味があります。

ここから今回の研究を詳しく見ていきましょう。

■日本人を対象にした研究をまとめて分析

今回行われたのは、新しく参加者を集めて魚を食べてもらう実験ではありません。

これまで発表された研究を網羅的に調べる「システマティックレビュー」と、複数の研究結果を統合して分析する「メタアナリシス」という方法が使われています。

最終的には、18歳以上の日本人を対象とした16研究がシステマティックレビューの対象となり、そのうち9研究のデータを使ってメタアナリシスが行われました。

つまり、これまで日本人を長期間追跡してきた複数の研究を集め、魚をよく食べる人とあまり食べない人の死亡リスクをまとめて検討したと考えるとわかりやすいでしょう。

■全死因死亡リスクは6%低かった

まず、「全死因死亡」について見てみましょう。

全死因死亡とは、特定の病気だけではなく、原因を問わず亡くなること全体を意味します。

今回のメタアナリシスでは、魚の摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループと比べ、

全死因死亡リスクが6%低い

という結果になりました。

ここで大切なのは、「6%長生きした」という意味ではないことです。

あくまで追跡期間中における死亡リスクの相対的な違いです。

これまでHAKURAIDOUでは、「魚を食べること」と個別の病気との関係を紹介してきました。

例えば日本人を対象とした研究では、

魚介類の摂取量と認知症リスク
魚介類と糖尿病発症リスク
魚介類の摂取量とうつ病発症リスク
オメガ3の多い魚と肝がんリスク

などについても調べられています。

→ 魚介類・オメガ3の摂取量が多いと認知症リスクが低下

→ 魚介類を多く食べる男性は糖尿病になるリスクが低い!最大でリスク3割減|国立がん研究センター

→ 魚介類を多く食べる人はうつ病の発症率が低くなる傾向|オメガ3(EPA・DHA)が多いと発症率が低くなる|国立がん研究センター・慶応義塾大学

→ <肝臓がん>DHAなどの不飽和脂肪酸を含む青魚やうなぎでリスクが約4割低下する!?|国立がん研究センター

もちろん、これらはそれぞれ対象者や研究方法、評価した病気が異なるため、ひとまとめにして「魚を食べればさまざまな病気を予防できる」と考えることはできません。

今回の研究は、こうした個別の病気ではなく、「死亡」という大きな健康指標と魚食との関連を日本人でまとめて検討したところに特徴があります。

■心血管疾患死亡は15%低かった

さらに注目したいのが心血管疾患です。

魚の摂取量が最も多いグループでは、最も少ないグループと比較して、心血管疾患による死亡リスクが15%低いという結果でした。

魚と心血管の健康を考えるときによく知られているのが、魚に含まれるEPAやDHAなどのn-3系多価不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸)です。

HAKURAIDOUでも、EPAと血管の関係について以前から取り上げています。

→ 魚うどん(EPA)で血管若返り|なぜEPAで血管若返りができるの?

また、青魚・EPAとHDL(善玉)コレステロールの機能について紹介した記事もあります。

→ 善玉コレステロールの吸う力をアップする方法!EPAを含む青魚(サバ缶)!ナッツ&緑茶!ウォーキング!

ただし、今回のメタアナリシスから、

「EPAやDHAによって心血管死亡が15%低下した」

とまで結論づけることはできません。

今回調べているのは基本的に「魚を食べる量」と死亡リスクとの関連だからです。

魚にはEPA・DHAだけでなく、たんぱく質やビタミン、ミネラルなどさまざまな栄養素が含まれます。また、魚をよく食べる人とあまり食べない人では、魚以外の食習慣や生活習慣が異なっている可能性もあります。

そのため、EPA・DHAは魚と心血管の健康を考えるうえで注目すべき要素の一つですが、今回の結果をEPA・DHAだけで説明することはできません。

■魚は1日100g食べればいい?

今回の研究でもう一つ興味深いのが、

「どのくらい魚を食べると死亡リスクとの関係が変化するのか」

という用量反応の分析です。

単純に「最も食べる人」と「最も食べない人」を比較するだけでなく、魚の摂取量が増えるにつれて死亡リスクがどのように変化するかも分析されています。

研究では、魚の摂取量が増えるにつれて死亡リスクが低くなる傾向が1日約100g付近までみられ、それ以上では低下が緩やかになる可能性が示されました。

※この「約100g」は健康のための推奨摂取量を示したものではありません。

ただし、「魚を毎日100g食べれば健康になる」と解釈するのは早計です。

今回の結果から「100g」をそのまま推奨量にすることはできず、ニッスイも今後、「日本人にとって魚をどれくらい食べれば健康に良いのか」という目安量を科学的に示す研究を続けるとしています。

ちなみに過去の日本人研究を見ると興味深い数字があります。

うつ病について調べた研究では、魚介類摂取量の中央値が111g/日だったグループで、57g/日のグループと比べて、うつ病リスクの低下がみられました。

→ 魚介類を多く食べる人はうつ病の発症率が低くなる傾向

認知症について調べた研究では、最も摂取量が少ないグループの中央値が56g/日、最も多いグループが82g/日で、摂取量が多いグループほど認知症リスクが低い関連がみられました。

→ 魚介類・オメガ3の摂取量が多いと認知症リスクが低下

ただし、これらはそれぞれ別の研究であり、調べている健康アウトカムも異なります。

「80~111g食べれば健康になる」という意味ではありません。

これらの数値を単純に比較して、適切な魚の摂取量を導き出すことはできません。

今回の研究も含め、「魚は結局、1日に何g食べるのが最適なのか?」については、これからさらに研究が必要です。

■「魚を食べれば長生き」とはまだ言えない

今回の記事で最も注意したい点です。

研究結果だけを見ると、

魚を食べる
↓
病気になりにくくなる
↓
長生きする

と考えたくなります。

しかし、今回のメタアナリシスは、コホート研究をまとめたものです。

研究者が参加者をランダムに「魚を食べるグループ」「魚を食べないグループ」に分けて何十年も追跡したわけではありません。

そのため、

魚をよく食べていた人ほど死亡リスクが低かった

という「関連」は示せても、

魚を食べたことが原因となって死亡リスクを下げた

という「因果関係」まで証明することはできません。

魚をよく食べる人には、食生活全体や運動など、魚以外の生活習慣にも違いがあるかもしれません。

したがって今回の結果は、

魚をよく食べる日本人では、あまり食べない人に比べて死亡リスクが低い傾向がみられた

と理解するのがよいでしょう。

■エビデンスの確実性は「低い」

もう一つ、プレスリリースだけでは見落としやすい重要なポイントがあります。

今回の研究では、エビデンスの確実性も評価されています。

そして、その確実性は「low(低い)」と評価されています。

これは、

「この研究には意味がない」

ということではありません。

今回の研究が観察研究を統合したものであり、さまざまな交絡因子などの影響を完全に排除できないことを踏まえ、結果をどこまで確実なものとして受け止められるかを慎重に評価する必要があるということです。

健康情報では、

「メタアナリシスだから絶対に正しい」

と考えないことも大切です。

「どのような研究をまとめたメタアナリシスなのか」まで見る必要があります。

■それでも日本人で確認されたことに意味がある

それでは今回の研究に意味がないのかというと、もちろんそうではありません。

海外では魚食と健康について多くの研究が行われてきましたが、日本はもともと魚の摂取量が比較的多い食文化を持っています。

その日本人を対象とした複数のコホート研究を集めて検討した結果、

魚の摂取量が多い人ほど全死因死亡や心血管疾患死亡のリスクが低いという関連が確認された

ことには意味があります。

またHAKURAIDOUでこれまで紹介してきた研究でも、日本人を対象に、

認知症では魚介類やn-3系多価不飽和脂肪酸の摂取量との関連、

うつ病では魚介類やEPAなどの摂取量との関連、

糖尿病では男性における魚介類摂取との関連、

肝がんではオメガ3の多い魚やオメガ3摂取量との関連が研究されてきました。

それぞれの研究を単独で見れば、「魚を食べればこの病気を予防できる」とはいえません。

しかし、今回のメタアナリシスを入口に過去の研究を振り返ると、魚を食べる習慣と日本人の健康の関係は、さまざまな角度から長年研究されてきたテーマであることが見えてきます。

今回の研究は、その中に「全死因死亡・心血管疾患死亡」という新しい視点を加えた研究だと考えるとよいのではないでしょうか。

■まとめ

今回の研究を一般の私たちの目線でまとめると、

日本人を対象とした16研究をシステマティックレビュー
そのうち9研究をメタアナリシス
魚の摂取量が最も多いグループでは、最も少ないグループより全死因死亡リスクが6%低かった
心血管疾患死亡リスクは15%低かった
魚の摂取量と死亡リスクとの関係をみると、約100g/日付近までリスクが低下する傾向がみられた
ただし「1日100g」が健康のための推奨量と確定したわけではない
観察研究をまとめた研究なので「魚を食べたから長生きした」という因果関係までは証明できない
エビデンスの確実性は「低い」と評価されている

ということになります。

つまり今回の研究から、「魚を食べれば長生きできる」と断定するのではなく、「魚をよく食べる日本人では、死亡リスクが低いという関連がみられた」と理解するのが適切でしょう。

一方、日本では魚介類の消費量そのものが長期的に減っています。

「健康のために魚を何g食べなければ」と数字だけを追いかけるよりも、まずは普段の食生活を振り返って、

「最近、魚を食べているかな?」

と考えるきっかけにするのが、今回の研究とのちょうどよい付き合い方なのかもしれません。

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【参考資料】
Fish intake and mortality in Japan, a high fish-consuming country: a systematic review and dose–response meta-analysis of cohort studies(European Journal of Clinical Nutrition、2026年10月23日)
日本人対象「魚食が多い人は全死因での死亡リスクが低い」 メタアナリシスで初報告(ニッスイ、2026年10月26日)
水産物の消費動向|水産庁
令和6年度 水産白書







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