Technology use may be associated with a lower risk for dementia, study finds(2025年4月14日、CNN)では、テクノロジーの使用が高齢者の認知機能低下リスクに与える影響について、テキサス州の2大学の研究者が行ったメタ分析(Nature Human Behavior, 2024年)は、「デジタル認知症仮説」(テクノロジー依存が認知能力を弱める)を検証し、以下の主要な発見を報告しています。
【参考リンク】
- Benge JF, Scullin MK. A meta-analysis of technology use and cognitive aging. Nat Hum Behav. 2025 Apr 14. doi: 10.1038/s41562-025-02159-9. Epub ahead of print. PMID: 40229575.
●認知機能低下リスクの低下
411,430人を対象とした57の研究を分析した結果、テクノロジー使用(コンピューター、スマホ、インターネット、メール、SNSなど)は、認知障害(軽度認知障害や認知症)のリスクを42%低下させる関連が示されました。
●テクノロジー使用が認知障害リスクを増加させるという報告は1件もない
●ソーシャルメディアの使用に関しては、認知機能への影響が一貫せず、結論が不明確
●現在の高齢者世代(研究開始時の平均年齢68歳)は、テクノロジーを使いこなすために努力が必要だった時代に育ち、脳がすでに形成されていたため、若い世代への適用可能性は不確実。
●認知的予備力理論
デジタル認知症仮説とは対照的に、テクノロジー使用が複雑な精神活動を通じて「認知的予備力」を高め、加齢に伴う脳の変化に対する耐性を強化する可能性が示唆されました。
テクノロジーは神経活動を刺激し、社会的つながりを促進することで認知症リスクを軽減する可能性があり、社会的孤立が認知症リスクを高めることが知られています。
●過度な使用(例:無意識なスクロール)は推奨されず、適度な使用が有益
【補足】
脳の病理と実際の認知機能の水準が必ずしも一致しないことの説明として,認知予備力(cognitive reserve)という概念が近年提唱されてきた。認知予備力とは,脳の病理や加齢の影響を受けても認知機能の低下を抑える個人の潜在的な能力を意味する。認知予備力の高い人は低い人より,脳に損傷を受けても機能障害が生じにくく,また,健常加齢でみても認知機能の低下の程度が異なることが予測されてきた。
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若かったり、健康である人は身体を守る力に予備力(健康を守る余力)があるため、無理ができるのですが、加齢や生活習慣病などの持病などによって、この予備力が低下すると、ちょっとした不調で寝込んでしまったりします。だからこそ、若いうちからこの予備力を保つようにしておくことや生活習慣病対策をすることが重要になってくるわけですが、この「予備力」の考え方は若い人にも活かせますよね。
若い時によく勉強した人はアルツハイマー型認知症になりにくい?認知機能の予備力を鍛えて認知症が予防できる?
認知症の予防につながる9つのリスク要因|中年期の聴力低下・中等教育の未修了・喫煙・うつ・運動不足・社会的孤立・高血圧・肥満・2型糖尿病
■まとめ
20代でも物忘れ!?スマホ認知症(デジタル認知症)とは|症状・原因・予防法では、デジタル認知症とは、スマホやタブレットに依存しすぎることによって、書けたはずの字が書けない、昨日食べたものを忘れる、自宅の電話番号、人の名前が思い出せないなど物忘れがひどくなる、という症状が出ることを言います。
デジタル認知症が現れる理由として、さまざまな情報は前頭前野で処理されますが、スマホのヘビーユーザーはこの前頭前野が過剰な情報のために疲弊した状態「脳疲労」を起こしてしまい、集中しにくくなったり、もの忘れの症状が現れると考えられるそうです。
しかし、今回の研究によれば、適度なテクノロジー使用が認知機能低下のリスクを軽減する可能性を強く示唆し、デジタル認知症仮説を否定しています。
ただ、具体的な使用方法や世代間での影響の違いについてはさらなる研究が必要となります。
万博、高齢者に冷たい?予約も地図もスマホ頼み(2025年4月29日、時事通信)によれば、スマホ予約ができない、紙の地図がいいというように、テクノロジーに否定的な意見も多いですが、今回の研究を参考にすると、決してテクノロジーを活用することが認知症を進めるわけではなく、高齢者がテクノロジーを学んでいくことはプラスに働く可能性があるので、テクノロジーに触れていきたいですね。
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