■英、ピザにカロリーの上限を検討 子供の肥満対策のため
by Tom Ipri(画像:Creative Commons)
Pizzas must shrink or lose their toppings under Government anti-obesity plan
(2018/10/11、テレグラフ)
Under the draft proposals, a standard pizza for one should contain no more than 928 calories – far less than many sold by takeaways, restaurants and shops. And the recommendations suggest that a savoury pie should contain no more than 695 calories.
英国政府は子どもの肥満対策のために、レストランやスーパーマーケットで販売されている食事のカロリーに上限を設ける規制を検討しているそうです。
英保健省(Public Health England:PHE) は、テイクアウトやレストランなどで提供されるピザに928キロカロリー、パイに695キロカロリーの上限を設ける方向で検討しているそうです。
国を挙げてダイエット呼びかけ、20%のカロリー削減要請 英(2018/3/7、CNN)によれば、英保健省が国民の肥満対策として、食品業界に対し、主な食品のカロリーを2024年までに20%削減するよう要請しています。
【参考リンク】
- Calorie reduction: the scope and ambition for action(2018/3/5、Public Health England)
すでにこうした取り組みが行われており、「所得」「地域」「雇用形態」「家族構成」の4つが「#健康格差」の要因|#NHKスペシャルによれば、イギリス食品基準庁が塩分を減らすように食品の塩分量の目標値を設定したことによって、イギリスでは脳卒中や虚血性心疾患の死亡者数を8年間で4割減らすことに成功しています。
2006年に85品目の食品に塩分量の目標値を設定し、メーカーに自主的達成を求めた。その理由は、主食であるパンが国民の最大の塩分摂取源となっていたためだが、メーカー側は売れ行き減を懸念。見かねた医学や栄養学などを専門とする科学者団体「CASH(塩と健康国民運動)」がメーカー側に徐々に塩分を下げるように提言した。
この提言に大手パンメーカーによる業界団体も納得し、7年でパンを20%も減塩。こういった取り組みの結果、国民1人当たりの塩分摂取量を15%減らすことにつながり、年間で2,000億円の医療費削減につながったと考えられている。
食文化に与える影響を考えると、食事にカロリー制限を設けるというのは難しい問題ですが、一人一人に健康への意識の高さに任せてしまうよりも、レストランやスーパーマーケット、食品メーカーが健康的な食品づくりに取り組みことによって、人々の健康を守っていくというのは良い取り組みだと思います。
■まとめ
日本でも、一生涯のうち、認知症や寝たきりにならないで、健康で自立して生活できる期間を示す「健康寿命」を伸ばそうという取り組みが行われています。
→ 健康寿命を延ばすにはどうしたらいいの?|2030年代には健康寿命を5歳延伸|新産業構造ビジョン についてくわしくはこちら
肥満が世界的に問題になる中、個人個人の取り組みに任せてしまうのには限界があります。
そこで、行なわれているのは大きく分けるとアメとムチの戦略です。
「肥満税」というムチを使って肥満を減らそうという取り組みが行われていたり、保険会社や企業は健康増進活動をしたユーザーに対して特典を付けるアメを使って健康な人を増やそうという取り組みが行われています。
こうした取り組みが増えているのも、国民医療費の増大が問題になっていることが考えられます。
アマゾン、バークシャー、JPモルガンが新しいヘルスケア企業を設立 医療費削減を目指すによれば、アメリカでも医療費が膨らんでいることが問題となっており、多額の医療費(医療保険料)を企業が負担しているそうで、高齢化や医療の進歩に伴い、企業への負担が大きくなってきています。
日本でも同様で、2016年度(平成28年度)の医療費は41.3兆円|診療報酬改定で薬価が引き下げられたことやジェネリック医薬品の使用割合が増えたことが医療費減少の要因によれば、国民医療費は増加傾向が続いています。
参考画像:医療費の動向|平成28年版厚生白書|スクリーンショット
国民医療費とは、医療機関等における保険診療の対象となり得る傷病の治療に要した費用を推計したものであり、具体的には、医療保険制度等による給付、後期高齢者医療制度や公費負担医療制度による給付、これに伴う患者の一部負担などによって支払われた医療費を合算したものである。
国民皆保険による医療、医師の半数「持続不能」|「#健康格差」を広げないために私たちができることで紹介した日本経済新聞社などが実施したアンケート調査によれば、医師の半数が国民皆保険による医療が「持続不能」と答えているそうです。
参考画像:不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~|経済産業省PDF
厚生労働省「人口動態調査」, 「医療給付実態調査報告」, OECD Health Data 2014 OECD Stat Extractsによれば、国全体医療費の23%(9.2兆円)が80歳以上の医療費であり、その多くを入院費用が占めているそうです。
健康保険組合の4分の1超が2025年度に解散危機を迎える試算ー健保連|改善するために必要な2つのプランによれば、健康保険組合連合会(健保連)は、2025年度に団塊の世代が全て75歳以上となり、健保組合が高齢者医療に拠出するお金が急増するため、健康保険組合の4分の1超が解散危機を迎えるという試算を発表しました。
一つの企業だけ、一つの自治体だけ、ある業界だけ、ある国だけが医療費の減少のために取り組むのではなく、社会全体で医療費の減少に取り組む時が来ていると思います。
『サードウェーブ 世界経済を変える「第三の波」が来る』(著:スティーブ・ケース)では、第三の波(あらゆるモノのインターネット)によって、あらゆるモノ・ヒト・場所が接続可能となり、従来の基幹産業を変革していく中で、企業や政府とのパートナーシップが重要になると書かれています。
第二の波では、インターネットとスマートフォンの急速な普及によってソーシャルメディアが激増し、盛況なアプリ経済が誕生した。その中でもっとも成功を収めたスナップチャットやツイッターのような企業は、小規模なエンジニアリング・チームからスタートして一夜にして有名になり、第一の波の特徴であったパートナーシップをまったく必要としなかった。しかし、こうしたモデルは現在がピークであり、新たな時代は第二の波とはまったく違う―そして最初の波とよく似た―ものになることを示す証拠が増えている
この第三の波には「インパクト投資」も含まれているそうです。
社会的インパクト投資(ソーシャルインパクトボンド)とヘルスケア分野(認知症・がん)の可能性|#サキドリ↑(NHK)によれば、「社会的インパクト投資(ソーシャルインパクトボンド、SIB)」とは、障がい者支援や低所得者(貧困)支援、難民、失業、引きこもりの人の就労支援などの社会問題の解決と収益の両立を目指す社会貢献型の投資のことです。
「IoT」や「インパクト投資」といった「第三の波」で社会は大きく変化をしていきますが、社会問題を解決する手段として、一人の力ではなく、これからますますいろんな人たちとのパートナーシップが重要になってくるでしょう。