「低酸素」タグアーカイブ

高地トレーニングの効果と高地順化の効果の違いとは?

Brazil Apr day 7 - Wed 7th (49)

by CMRF Crumlin(画像:Creative Commons)




サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の特徴は、高地での試合があること。

そこで今回は、高地順化に関する記事をご紹介します。

標高差とサッカー:南アW杯を前に/1 低酸素、1500メートルでの戦い

(2010/3/17、毎日新聞)

09年からサッカー日本代表の標高対策に協力している国立スポーツ科学センター(JISS)の鈴木康弘研究員(35)によると、高地トレーニングにおける「高地」の目安は2000メートル程度で、1500メートルは準高地に分類される。

空気中の酸素の構成比率(約21%)は標高0メートルでも2000メートルでも変わらないが、気圧が低くなると肺で摂取できる酸素量が減り、標高2000メートルでは平地の8割程度、エベレスト山頂では3割程度になるという。

酸素は血液中のヘモグロビンと結合して体内の組織や器官に運ばれ、エネルギー生成に使われる。

摂取酸素量が少なければ血液中の酸素飽和度も低くなる。

鈴木研究員は「酸素飽和度が下がることでエネルギーを作れなくなり、長時間行う運動に影響が出る。個人差はあるが、安静時に変化がなくても運動すると走れなかったりすることもある」と説明する。

高地では、気圧が低くなるため、肺で摂取できる酸素量が減ってしまいます。

酸素は、ヘモグロビンと結合して、エネルギー生成に使われるのですが、酸素の摂取量が少なくなり、血液中の酸素飽和度が下がると、エネルギーが作れなくなり、長時間行う運動に影響が出るそうです。

そのために、日本だけでなく世界各国の代表チームは高地での合宿を行なったようです。

 

高地でより良いパフォーマンスを行うにはどのようにしたら良いのでしょうか。

標高差とサッカー:南アW杯を前に/2 「高地順化」なら1週間

(2010/3/18、毎日新聞)

高地での低酸素環境に適応するには何が必要か。日本陸上競技連盟の科学委員会で副委員長を務める杉田正明・三重大准教授(44)は「その標高、またはそれ以上の標高で寝泊まりし、トレーニングすること」と話す。

今回行われる南アフリカでの試合は0mから1500mの標高差で行われるため、標高1800メートルのスイスで事前合宿を行いました。

 

マラソンなど陸上長距離競技でも高地トレーニングが行われていますが、高地トレーニングによって、どのような効果が出てくるのでしょうか。

陸上長距離の合宿地として知られる米国コロラド州のボルダー(標高約1650メートル)や中国の昆明(約1890メートル)で「高地トレーニング」を行う主な目的は二つ。

低酸素環境は負荷が高くトレーニング効率が期待できることと、高地に慣れて「酸素を運べる体」にするためだ。

●高地トレーニングの目的

1.低酸素環境は負荷が高くトレーニング効率が期待できる

2.高地に慣れて「酸素を運べる体」にする

今回各チームが行った高地での事前合宿によって、高地トレーニングの効果が出ているのでしょうか。

低酸素の刺激を受けると、赤血球生成を促すホルモン「エリスロポエチン」が増え、徐々に赤血球量とヘモグロビン濃度が増して酸素を運べるようになる。その適応には約3週間を要し、元に戻る期間を含め個人差があるとされている。

血液より短期間で適応するのが筋肉だ。肺から摂取した酸素は血液によって体内の組織や器官に運ばれ、筋肉の毛細血管で放出されてエネルギー生成に使われる。低酸素の刺激は筋肉における毛細血管を増やすなどの影響も与え、結果として酸素を取り込む能力が向上する。スポーツ医科学的にはこれを「骨格筋の適応」と呼ぶ。

杉田准教授は「マラソンとは違い、サッカーはダッシュを繰り返す運動形態。こちらは『骨格筋の適応』でいい」と話す。杉田准教授のデータによると、標高1300メートルでは3日、1650メートル(ボルダー)では5日で「筋肉が酸素を受け取れる状態になった」例があり、1800メートルでは1週間程度になる見通しという。「赤血球を増やすことが高地トレーニングとすれば、骨格筋の適応は高地順化」と説明する。国立スポーツ科学センター(JISS)の鈴木康弘研究員(35)もサッカー選手の場合、シーズンオフなどで心肺機能の向上を目的とするものでなければ「高地順化でいい」と言う。

高地トレーニングと高地順化は同じような意味と思っていたのですが、違うようです。

●高地トレーニング

→ 赤血球を増やすことによって、酸素をより運べるようになる。

●高地順化

→ 骨格筋の適応

低酸素の刺激は筋肉における毛細血管を増やすなどの影響も与え、結果として酸素を取り込む能力が向上する。

ワールドカップ(W杯)の1次リーグで最高1500メートルの会場で試合をする日本代表は、南アフリカに入る直前の5月下旬から約2週間、標高1800メートルのスイスで事前合宿を行う予定だ。杉田准教授は「高地順化を狙いとするならば効果的であり、理にかなっているのではないか」と話している。

今回のスイスでの事前合宿は約2週間行われており、高地トレーニングではなく、高地順化=骨格筋の適応を目的としていたようです。

 

ニュースによれば、日本代表メンバーにも高地に適応出来ていない選手がいるといわれていましたが、高地順化できない場合どんな影響が出るのでしょうか。

標高差とサッカー:南アW杯を前に/3 適応性に個人差生じ

(2010/3/18、毎日新聞)

鈴木研究員は個人差の境界線を「眠れるかどうか」とし、「眠れないと疲労回復ができない。W杯登録選手23人中、何人かは(低酸素環境に)弱い人がいると思う」と指摘する。事前の高地順化合宿は適応性を見極める場にもなる。

人間の体は普段と同様の酸素を摂取しようとするため、高地入りした最初の数日間は呼吸が増えて水分を多く失う。ホルモンバランスの変化で尿量も増える。エネルギー源では糖質が使われやすくなり、筋肉の損傷などに直接影響する酸化ストレスも大きくなる。

低酸素環境に弱い人、また低酸素環境ですぐに平地と同じ強度で練習をすると、肉体に負荷がかかりすぎるようです。

そうなると、これまでのようなパフォーマンスを見せることができないと考えられます。

 

高地対策に成功した選手はよい影響が出ているようです。

高地順化の成功で初戦勝利の日本。低地のオランダ戦に新たな課題。-Number(6月18日)

高地対策大成功!森本が驚異の進化

(2010/6/23、デイリースポーツ)

高地対策に成功したことで、うれしい副産物が生まれた。デンマーク戦が行われるルステンブルクは標高1500メートルの高地。三重大の杉田准教授の助言を受け、完全休養日の21日にも低酸素ボンベを使用した。

岡田監督は「先生にも問題ないといわれた。(高地適応指数は)相当上がっているようだ」と手ごたえ。22日の練習後にはルステンブルク入りすることで「試合日までには(高地適応力が)戻るだろう」と見通しを示した。

5月下旬のスイス合宿から行った高地順化トレーニングの効果で心肺能力も向上しているようで、指揮官は「森本なんて、プールで潜水して40メートルもいった」と打ち明けた。ヘモグロビンの増大がいい影響を与えているようで、森本も「やったらできちゃいました」と目を丸くした。肺活量アップは運動量増加にも直結しそうだ。