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卵の白身から高強度ゲル材料の開発に成功|体内に残留せずに一定期間後に吸収されるような医療用素材の開発に期待




■卵の白身から高強度ゲル材料の開発に成功|体内に残留せずに一定期間後に吸収されるような医療用素材の開発に期待

卵白たんぱく質凝縮体の形成
鶏卵より作成した卵白たんぱく質水溶液に、2種類のイオン性界面活性剤を加えると、水相と分離した透明な液状物質である卵白たんぱく質凝縮体が形成される。

参考画像:卵の白身から高強度ゲル材料の開発に成功~卵白たんぱく質の機能性材料や新食感の食品開発に期待~(2018/1/10、JST)

卵の白身から高強度ゲル材料の開発に成功~卵白たんぱく質の機能性材料や新食感の食品開発に期待~

(2018/1/10、JST)

卵白たんぱく質に、これまでに本研究グループが開発した陰イオン性界面活性剤と陽イオン性界面活性剤を一定の割合で添加すると、ゲル化現象に関わるたんぱく質を含む透明液状物質(卵白たんぱく質凝縮体)が水相と分離して発生しました(図1)。その後、卵白たんぱく質凝縮体をX線小角散乱測定注5)で解析すると、散乱ピークを示したことから、その内部でたんぱく質が一定の間隔で集積していることが判明しました。

次に卵白たんぱく質凝縮体を70度で加熱すると、白く不透明に固まりました(図2)。この物質は内部に80パーセントの水を含むハイドロゲル注6)であることが確認されました(卵白たんぱく質凝縮体ゲル)。さらに卵白たんぱく質凝縮体ゲルは、たんぱく質分解酵素によって分解されたため、たんぱく質によってネットワーク構造が形成された生分解性物質であることが確認されました。

続いて、卵白たんぱく質凝縮体ゲルの強度を解析するために、圧縮強度を測定しました(図3)。通常のゆで卵の白身は0.2メガパスカルの圧縮強度を示す一方で、今回作製した卵白たんぱく質凝縮体ゲルは、荷重をかけると17分の1の厚みに薄くつぶれるほどの柔らかさを持ちつつも、最大で34.5メガパスカルと通常のゆで卵の白身の150倍以上の強度を示しました。34.5メガパスカルは、1円玉に1,000キログラムの圧力をかけている状態です。卵白より作製された物質の強度としては世界最高であり、化学的に合成された高強度ハイドロゲル材料とも遜色ない強度であることが確認されました。

東京工業大学 科学技術創成研究院 野島達也 特任助教(研究当時、現:中国・東南大学 生物電子学国家重点実験室 准教授)、彌田智一 教授(研究当時、現:同志社大学 ハリス理化学研究所 教授)らの研究グループは、鶏卵の卵白たんぱく質から高強度ゲル材料である「卵白たんぱく質凝縮体ゲル」を作製することに成功しました。

卵白を加熱すると固まる(ゲル化する)現象はよく知られていますが、その圧縮強度は低いため、これまで卵白は材料開発の素材として用いられてきませんでした。

本研究グループは、独自のイオン性界面活性剤をたんぱく質溶液に加えることで、水中のたんぱく質を一瞬で凝縮する技術を2016年に開発しており、このたんぱく質凝縮化技術を応用し、卵白に含まれる特定のたんぱく質を、一定間隔に集積させることができました。

この状態のたんぱく質を加熱したところ、通常のゆで卵の白身の150倍以上の圧縮強度を示す生分解性(物質が微生物によって分解される性質であること。)ゲル材料を作製することに成功しました。

今後たんぱく質を素材として、体内に残留せずに一定期間後に吸収されるような医療用素材や実用的な強度を持つ新たな機能性材料、新たな食感の食品の開発への応用が期待されるそうです。




■まとめ

アスリートの体の熱と汗に反応して微生物細胞が開閉する換気フラップ付きトレーニングスーツ・ランニングシューズをデザイン|MITでは、MITメディアラボの石井裕さんは、バイオロジーを活用して、ダンサーの体温上昇や発汗に合わせて開閉するウェアを開発したと紹介しました。

体内で溶ける外科手術向けクリップ開発|神戸大では、神戸大学大学院工学研究科の向井敏司教授は、体内で溶ける外科手術用金属製クリップを開発したと紹介しました。

バイオロジーの研究が進み、今回の研究のようにタンパク質を素材とした医療用素材になれば、度々目にしてきた手術に関するものが体内に置き忘れていたといった問題も、そもそも生体に置き忘れたとしても健康に影響がないものが使われれば問題がないわけですから、こうした開発はますます重要になってきそうです。







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