黄砂飛来の数日後に常位胎盤早期剥離が増加(2019年11月8日、国立環境研究所)によれば、東邦大学、九州大学と国立環境研究所の疫学研究グループは、妊婦が黄砂にさらされることが常位胎盤早期剥離のきっかけになる可能性を示しました。
具体的には黄砂が飛来した1~2日後に早期剥離をともなう出産が増えるという関連性が示されました。
■常位胎盤早期剥離とは?
常位胎盤早期剥離は、出産後に子宮壁からはがれてくるはずの胎盤が出産前に(子どもがお腹にいる時に)はがれてきてしまう状態で、全妊婦の1%ほどに発生するといわれています。
常位胎盤早期剥離になると、妊婦については出血が多くなる、胎児については胎盤を通した酸素や栄養供給が絶たれることなどにより、母と子と両方の命に関わってしまうのですが、その発生メカニズムについてはわかっていないそうです。
■なぜ「妊婦が黄砂にさらされると早期剥離を起こしやすくなる」という仮説に至ったのか?
1)もともと形成不全のある胎盤に炎症などの刺激が加わることで胎盤血管から出血が起こり、時間とともに大きくなる血のかたまりによって胎盤が子宮の壁からはがれてくるのではないかという学説がある
2)黄砂が全身性の炎症を引き起こして、心筋梗塞や脳梗塞などの急性疾患発生につながるのではないかと指摘されている
3)黄砂には微生物や大気汚染物質を巻き込んでおり、この微生物の中にははグラム陰性桿菌が含まれていると考えられ、グラム陰性桿菌の細胞壁の構成するリポ多糖は、妊婦に炎症を引き起こし早産の原因となることが知られている
4)黄砂とともに飛来した大気汚染物質による炎症が早期剥離につながった可能性がある
5)ぜん息は早期剥離の危険因子と言われており、黄砂によりぜん息症状が悪化し、それが早期剥離を引き起こしたとも考えられる
つまり、黄砂自体が直接早期剥離に関連しているのか、それとも黄砂と一緒に巻き込まれた微生物(グラム陰性桿菌)が関連しているのか、はたまた大気汚染物質が関連しているのか、黄砂の間接的影響によるぜんそく症状によるものなのかははっきりわかりませんが、黄砂が飛来した1~2日後に早期剥離をともなう出産が増えるということなので、妊婦の方は黄砂飛来のニュースがあるときにはできるだけ外に出ない方がいいのではないでしょうか?