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介護報酬での改善インセンティブで賛否分かれる|「要介護度の改善=自立支援の成果」には6割が否定的|『自立支援への改善インセンティブの導入』に対するケアマネジャーの意識調査結果

介護報酬の改定のポイントは「自立支援」強化|介護ロボット(夜間見守りシステム)を導入で加算!?脱おむつで介護報酬アップ!?では、厚生労働省が2018年4月に行われる介護報酬の改定で要介護度の改善に対するインセンティブを導入するということについて紹介しましたが、現場の介護事業者はどのように考えているのでしょうか?




【目次】

■介護報酬での改善インセンティブで賛否分かれる

Medicine and Management 14248

by Ted Eytan(画像:Creative Commons)

―ケアマネジメント・オンライン会員へのアンケート―“介護報酬での改善インセンティブ“に賛否分かれる『自立支援への改善インセンティブの導入』に対するケアマネジャーの意識調査結果

(2017/11/16、株式会社インターネットインフィニティープレスリリース)

“改善インセンティブ”の導入方針について賛否を尋ねたところ、「賛成」は11.0%、「どちらかといえば賛成」が33.5%、「どちらかといえば反対」が39.4%、「反対」が16.1%となりました。

導入に前向きな人(「賛成」と「どちらかといえば賛成」)は44.5%だったのに対し、導入に否定的な人(「反対」と「どちらかといえば反対」)は55.5%となりました。

ケアマネジャー向け業務支援サイト「ケアマネジメント・オンライン」を運営するインターネットインフィニティーが、会員ケアマネジャー(904人)に対して行ったアンケート調査によれば、自立支援の成果を上げた介護事業者に報酬を多く支払う“改善インセンティブ”について賛否が分かれる結果となりました。

要介護度の改善という自立支援の成果を上げた介護事業者に報酬を多く支払うという仕組みは良いアイデアであると思うのですが、なぜこのような結果になったのでしょうか?

賛成する理由・反対する理由をみると、その実態が見えてきます。

●主な賛成する理由(自由記述)

「努力した分、報酬が入るのはモチベーションアップにつながる」
「取組み内容を評価する基準が必要だと思うから」
「ターミナルの方や認知症の重度の方等適さない方もありますが、基本自立支援を目指すべきとの思いです」

●主な反対する理由(自由記述)

「評価の基準が曖昧な点が気になる」
「自立支援とは何かという定義や解釈が曖昧で、周知徹底できていないのに評価すると言われても。意味がわからない」

介護に携わる人の気持ちを考えると、自立支援を目指すという方向性はよかったとしても、「自立支援」の定義や評価の基準があいまいであるため、不安に感じる面が多いのではないでしょうか?




■「要介護度の改善=自立支援の成果」には6割が否定的

要介護度の改善を自立支援の成果と考えることについて賛否を尋ねた質問では、「賛成」が7.3%、「どちらかといえば賛成」が30.6%、「どちらかといえば反対」が41.3%、「反対」が20.8%となりました。

要介護度の改善を自立支援の成果ととらえることについては約6割が否定的という結果となりました。

主な反対する理由(自由記述)

「自立支援は要介護度に反映しないから」
「要介護認定というシステム自体が不完全で調査内容でいくらでも左右できるものである以上、そこにインセンティブを設けることには反対」
「要介護度では測れない背景や介護者の負担がある」
「改善の見込みがないかたの受け入れ先がなくなるので」
「現状維持がほとんどだから」

評価基準があいまいであり、調査の結果次第で評価が左右される可能性があったり、要介護度の改善の見込みがない人を受け入れない事業者が増える可能性があるという意見がありました。

■まとめ

今回の調査結果のポイントとなるのは、評価基準があいまいであることなど、介護事業者の実態と自立支援の評価制度・基準にギャップがあることではないでしょうか?

「HOLACRACY(ホラクラシー)」(著:ブライアン・J・ロバートソン)では「ひずみ」という言葉で表現されています。

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ひずみ-今の現実と感知されたポテンシャルとの間の明確なギャップを認識すること

介護事業者の人たちも自立支援という方向は間違っていないと考えていても、その評価基準があいまいであるため、その評価システムが導入されると、きちんと評価されなくなったり、そのシステムからはみ出てしまう人は見捨てられてしまうという懸念があるために、改善インセンティブに対して賛否が分かれる結果となっているのでしょう。

要介護度の改善以外の自立支援の成果を判定するための指標としての意見としては、結果(成果)だけの評価ではなくプロセスへの評価がないことや短期目標・中長期目標の達成度、QOLの向上を評価できる仕組みなどが挙げられています。

絶対評価として、要介護度を指標の基準として置くのではなく、相対評価として、個人個人の状態から改善されたという結果が得られたかどうかを指標の基準としておくというのもアイデアでしょう。

こうした意見が出ているというのは、組織として重要な機能である「ひずみを感知する能力」があるといえるのではないでしょうか?

「HOLACRACY(ホラクラシー)」(著:ブライアン・J・ロバートソン)

ヒューレットパッカードの創立者の一人、デビッド・パッカードもこう言っていた。「会社というのは飢えよりももっぱら消化不良で死ぬものだ」と。つまり、組織が感知し取り込んでいるものが多すぎて効果的に処理できず、消化しきれないのだ。p17

「進化し続ける有機体」とは、感知し適応し学び統合する能力を持つ組織である。バインホッカーの言葉を借りれば、「たゆまぬ改善の鍵は『進化を宿すこと』にあり、分化、淘汰、増幅の車輪を企業の内部で回し続けることである」
それを実現するための強力な方法の一つが、私たちの組織に備わっているとてつもない力-人間の意識が持つ、感知する能力-を活用することだ。p19

これからは、トップダウン式に「改善インセンティブ」を実行させるというのではなく、現場の人たちが持つ「ひずみを感知する能力」やクリエイティブな能力をフルに発揮できるOS(オペレーティングシステム)に切り替えていく必要があるのだと思います。







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