■エポキシ化オメガ3脂肪酸によるマスト細胞の活性化促進作用でアレルギー反応を促進する働きがあることを発見|東京大学
参考画像:体に優しいオメガ3脂肪酸の意外な側面:オメガ3脂肪酸を動かしてアレルギーを促す酵素の発見(201710/10、国立研究開発法人日本医療研究開発機構)|スクリーンショット
体に優しいオメガ3脂肪酸の意外な側面:オメガ3脂肪酸を動かしてアレルギーを促す酵素の発見
(2017/10/10、国立研究開発法人日本医療研究開発機構)
1.マスト細胞では、PAF-AH2という脂質を分解する酵素により、酸化されたオメガ3脂肪酸(エポキシ化オメガ3脂肪酸)が作られていることを明らかにしました。
2.エポキシ化オメガ3脂肪酸は、マスト細胞の応答性を促進してアレルギー反応を促す働きがあることを明らかにしました。
東京大学大学院薬学系研究科の新井洋由教授・河野望講師のグループと、同大学院医学系研究科の村上誠教授のグループは、マスト細胞(気管支、鼻粘膜、皮膚など外界と接触する組織の粘膜や結合組織に存在し、IgEを介した即時型アレルギー反応において中心的な役割を担う免疫細胞)がEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などのオメガ3脂肪酸が酸化されて生じた「エポキシ化オメガ3脂肪酸(17,18-EpETEと19,20-EpDPE)」を豊富に生み出していること、マスト細胞に発現しているPAF-AH2(リン脂質分解酵素ホスホリパーゼA2の一種)がエポキシ化オメガ3脂肪酸を産生しており、マスト細胞の活性化に重要であること、PAF-AH2の働きを止める薬剤により、アナフィラキシー反応が抑制されたことから、PAF-AH2の阻害剤が抗アレルギー薬となる可能性が示唆されました。
オメガ3脂肪酸は「体に優しい脂肪酸」として一般に知られていますが、今回の発見はオメガ3脂肪酸がアレルギーを悪くするという意外な顔を初めて提示したものです。マスト細胞の活性化は本来、寄生虫や毒素を排除するための生体防御応答です。この視点からすると、エポキシ化オメガ3脂肪酸は生体防御応答を高めている(良いことをしている)と解釈できます。ところが先進国では、寄生虫や毒素に対する脅威が減る一方で、アレルゲンに対する過剰応答(アレルギー反応)を示す患者の増加が社会問題化しています。こうなると、エポキシ化オメガ3脂肪酸によるマスト細胞の活性化促進作用はまさに諸刃の剣であり、むしろ悪い側面が顕在化したものと言えます。
本来、マスト細胞の活性化は寄生虫や毒素を排出するための生体防御反応であり、エポキシ化オメガ3脂肪酸はその生体防御反応を高めているといえるのですが、寄生虫や毒素に対する脅威が減り、アレルギー反応を示す患者が増えている現代においては、エポキシ化オメガ3脂肪酸によるマスト細胞の活性化促進作用は、悪い面が出ているといえそうです。
■まとめ
子どもを花粉症にしないための9か条|理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターで紹介した理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの谷口克センター長が「花粉症にならないための9か条」によれば、ある程度不衛生な環境で育つと花粉症を発症しにくくなるということをいっていましたが、このことに関係しているのではないでしょうか。
体を清潔にすることは重要でも、皮膚のバリアーを高めてアトピー予防|アレルギーマーチを防ぐには?によれば、洗いすぎも角質層のバリアーを失わせるため、体をごしごし洗いすぎることはないように、何ごとも適度に、バランスよくやることが重要です。
不衛生な環境の時代には役立っていた機能が、清潔な時代には悪い作用をもたらすことになっていて、いかにそのバランスをとれるか、その方法を見つけることが今後重要になってくるのではないでしょうか。
【参考リンク】
続きを読む エポキシ化オメガ3脂肪酸によるマスト細胞の活性化促進作用でアレルギー反応を促進する働きがあることを発見|東京大学