看護師・看護職員の離職理由とは|看護師の離職率を改善するための提案


【目次】




■看護職員の離職理由とは

看護職員の離職理由(複数回答・上位10位)

看護職員の離職理由
看護職員の離職理由

参考画像:多様な勤務形態の促進における 日本看護協会の取り組み|PDF

大きく分けると、2つの理由で離職する看護職員がいることがわかります。

1.妊娠・出産・結婚・子育て・配偶者の転勤といった人生の転機が理由

2.勤務時間が長い・超過勤務が多い・夜勤の負担が大きいといった労働条件が理由

つまり、看護師の離職率を改善するためには、ライフプランに合わせた働き方を検討していくことと一人一人への負担を軽くする働き方を検討していく必要があるということです。

1.妊娠・出産・結婚・子育て・配偶者の転勤といった人生の転機が理由

  • 復帰するに伴い、進歩している医療についていけるのかどうか不安に思っている看護師も多いと予想されるので、研修を行う
  • 不安解消のためのカウンセリング
  • 子育てしながらでも働けるための仕組みづくり(託児所)

子育てをしながら看護師を目指す30~40代の女性が少なくない!?によれば、子育てをしながら看護師を目指す30から40代の女性が少なくないそうです。

医療の現場はミスが許されない現場であり、一分一秒を争う現場であるため、時にきつい口調になってしまって、そのことが看護職に向いていないと思ってしまう理由となり、やめてしまうという人がいるようです。

ただ、社会人経験を積んできた30代から40代の人には人生経験が大きな強みとなります。

これまでの人生経験からいろんな人の気持ちに寄り添うことができるということは患者さんやそのご家族にとっては安心できる存在となってくれるはずです。

女性医師の治療を受けた患者は生存率が高い!?|医師の患者に対する共感・コミュニケーションが重要な役割を果たしている?で紹介した米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の研究によれば、女性医師による治療を受けた患者は、男性医師の治療を受けた患者に比べて、入院してから30日以内に死亡する確率や退院後の再入院する確率が低かったそうです。

今回の研究では、その違いの原因はつかめていないようですが、これまでの研究によれば女性医師が男性医師よりも臨床基準により詳細に沿うがあることやより患者中心のコミュニケーションをとることなどがあることから、その点にヒントが隠されているのかもしれません。

医療における患者さんとのコミュニケーションの重要性は高まっています。

まずは、患者がどのような悩み・苦労を抱えているのか、患者の声に耳を傾け、それを受け入れることによって、医師と患者間での信頼関係が生まれ、その後のケアやマネジメントが良好になると考えられます。

その中で、看護師の役割というのは大きいものがあると思います。




2.勤務時間が長い・超過勤務が多い・夜勤の負担が大きいといった労働条件が理由

看護職員、「慢性疲労」7割超える 医労連アンケートによれば、慢性疲労を訴える看護職員の割合が7割を超えているそうです。

責任が重い仕事であるにもかかわらず、労働条件が悪いと考えられるので、この点を改善しなければなりません。

  • 看護師という職業・資格にしかできない仕事に集中してもらう体制づくり(看護師という資格が必要ない仕事をフォローする人を雇う)
  • 健康状態をチェックする仕組み
    カウンセリング等を行い、疲労がたまっていることがわかったら、休ませるような仕組み

●看護師という職業・資格にしかできない仕事に集中してもらう体制づくり

そこで、看護師という資格が必要ない仕事をフォローする人を雇い、看護師という職業・資格にしかできない仕事に集中してもらう体制づくりを行うようにすることが必要になってくるのではないでしょうか。

新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会報告書(2017/4/6、厚生労働省)では、業務負担を最適化しつつ、医療の質を確保する方法の一つとして「タスク・シフティング(業務の移管)/タスク・シェアリング(業務の共同化)」が提案されています。

●テクノロジーを活用して支援・問題点の改善

テクノロジーによって、現場での悩みを改善してくことも役立つと思います。

学習機能搭載・排泄検知シート|介護の現場を助けるニオイで検知するシートによれば、このシートは排泄物のにおいで排泄物の検知するだけでなく、他のにおいと見分けができる学習機能も付いているそうです。

排泄のタイミングをお知らせするウェアラブルデバイス「DFree」によれば、排泄を予知するウェアラブルデバイスの「DFree」は、超音波センサーで分析して排泄のタイミングを検知するというものですが、排泄がコントロールできない高齢者の方やトイレへの移動が困難な車いすの利用者、介護が必要な方にとって役立つデバイスであり、病院で活用されるようになれば、現場での悩みが解消されるのではないでしょうか。

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看護師という資格を持っていないとできない仕事に集中してもらうためにも、それ以外の仕事をロボットに支援してもらうということが必要になるのではないでしょうか。

例えば、服薬支援ロボ+介護健診ネットワークの連携で高齢者の服薬管理の改善が期待されるによれば、服薬支援ロボにより自発的に薬を服用できるようになったり、飲み忘れを防ぐことができたり、薬剤師は要介護者の服薬状況が確認できるようになったそうです。

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遠隔医療の活用にも可能性がありそうです。

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また、厚生労働省、個人の医療データの一元管理で医療の効率化目指す 2020年度からによれば、厚生労働省は、過去の病院での治療歴や薬の使用状況、健診結果など様々な情報を一元化したデータベース「PeOPLe(ピープル)」を2020年度からの運用を目指すそうです。

ICT医療においては、ICTを活用した個人の健康管理がスタートであり、カギとなります。

医療・健康分野におけるICT化の今後の方向性(平成25年12月、厚生労働省)によれば、

健康寿命を延伸するためには、ICTを利用した個人による日常的な健康管理が重要

だと書かれています。

ICTとは、Information and Communication Technology(インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー:情報通信技術)の略です。

ICTを活用した医療分野への活用の例としては次の通り。

  • 電子版お薬手帳や生活習慣病の個人疾病管理など患者・個人が自らの医療・健康情報を一元的、継続的に管理し活用する仕組み
  • 地域包括ケアシステム(電子カルテ情報を地域の診療所が参照する)
  • ICTを活用してレセプト等データを分析し全国規模の患者データベースを構築し、疾病予防を促進
健康・医療・介護データを経年的に把握できるリアルデータプラットフォームの構築|新産業構造ビジョン|経済産業省
健康・医療・介護データを経年的に把握できるリアルデータプラットフォームの構築|新産業構造ビジョン|経済産業省

参考画像:「新産業構造ビジョン」(2017/5/29、経済産業省)|スクリーンショット

経済産業省の「新産業構造ビジョン」によれば、個人が自らの生涯の健康・医療データを経年的に把握するため、また、最適な健康管理・医療を提供するための基盤として、健康・医療・介護のリアルデータプラットフォーム(PHR:Personal Health Record)を構築し、2020年度には本格稼働させていくことが必要と提案されています。

●医師・看護師の力を借りる前に重症化を防ぐ対策

「フレイル(高齢者の虚弱)」の段階で対策を行ない、要介護状態の高齢者を減らそう!によれば、「フレイル」とは加齢とともに、心身の活力(例えば筋力や認知機能等)が低下し、生活機能障害、要介護状態、そして死亡などの危険性が高くなった状態のことで、厚生労働省によれば、多くの高齢者が中間的な段階(フレイル)を経て、徐々に要介護状態に陥るそうです。

高齢者は健康な状態から急に要介護状態になるわけではなく、食欲の低下や活動量の低下(社会交流の減少)、筋力低下、認知機能低下、多くの病気をかかえるといった加齢に伴う変化があり、低栄養、転倒、サルコペニア、尿失禁、軽度認知障害(MCI)といった危険な加齢の兆候(老年症候群)が現れ、要介護状態になると考えられます。

しかし、フレイルの段階で、リハビリや食事(食事の仕方や食習慣)の改善などの適切な介入・支援を行なうことができれば、要介護状態に至らず、生活機能の維持・向上が期待できます。

そして、そのことが、医師・看護師の負担を軽くするためにも効果的なのではないでしょうか。

介護施設で「パワーリハビリ」を導入 約8割に介護度を改善したり重症化を防ぐ効果|弘前によれば、弘前市内の介護施設が専用マシンで筋力アップのトレーニングを行う「パワーリハビリ」を取り入れたところ、約8割の人に介護度を改善したり重症化を防ぐ効果があったそうです。

介護をする必要があっても、介護度が改善されれば、それだけ負担は軽くなると考えられます。

そのためにも、ロコモティブシンドロームにならないように予防のためのトレーニングを行なったり、誤嚥性肺炎を予防するためにも嚥下障害対策を行なったり、低栄養による病気を予防するために食生活の改善を行うなど、できる範囲での予防を行っていくことが重要だと思います。

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●医科歯科の連携

新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会報告書

(2017/4/6、厚生労働省)

近年、周術期28に口腔管理を行うことで入院日数が減少することや、口腔ケアが誤嚥性肺炎の発症予防になること、歯周病患者に糖尿病の発症リスクが高いことなど、口腔の健康が全身の健康と深い関係を有することについて広く指摘されており、医科歯科連携の重要性は増している。このため、例えばがん治療における周術期の口腔管理や、入院・在宅における誤嚥性肺炎予防のための口腔ケア、歯周病が重症化しやすい糖尿病患者に対する歯科受診の勧奨などにより、医科歯科連携を更に推進していく必要がある。

最近では、口腔の健康と全身の健康との関係に関する新しい発見が増えています。

オーラルフレイルを知って健康寿命を延ばそう|自分の歯が多く保たれている人は、健康寿命が長く、要介護期間が短い|東北大学で紹介した東北大学の松山祐輔歯科医師が行なった研究によれば、自分の歯が多く保たれている人は、寿命が長いだけではなく、健康寿命(日常生活に制限のない期間)が長く、要介護でいる期間が短いことがわかったそうです。

要介護者の約6割に咀嚼や嚥下に問題がある|嚥下障害チェックテスト・嚥下障害対策(健口体操・嚥下体操)で紹介した日清オイリオグループが60歳以上の要介護者(要介護度1~3)を在宅で介護しており、介護食を作っている100名を対象に実施した「低栄養に関する実態調査」によれば、要介護者の約6割に咀嚼(そしゃく。かむこと)や嚥下(えんげ。飲み込むこと)に問題があるそうです。

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また、糖尿病歯周病には関連があり、糖尿病患者は歯周病にかかりやすく、歯周病が糖尿病を悪化させるということがわかってきています。

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口腔の健康と全身の健康について深い関係があることがわかってきており、医科歯科の連携を行ない、子どもから高齢者まで歯科保健対策を行なえば、病気の予防・早期発見につながることが期待されます。

●薬剤師との連携

新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会報告書

(2017/4/6、厚生労働省)

薬剤師の本質がもっぱら調剤業務のみに止まることなく、6年間の教育を経て培われた専門的知見を生かし、人材不足に対応しうる効率的で生産性の高い業務にシフトしていくべきである。

高齢者への不要な薬を減らすためには、かかりつけ薬剤師・薬局の役割が重要になるによれば、複数の医療機関や薬局にかかることで、多くの薬を服用していることも指摘されています。

高齢者宅には年475億円分の残薬(飲み残し・飲み忘れの薬)がある!?|解決する4つの方法によれば、処方された薬を適切に服用できずに、その結果、症状が悪化して薬が増えてしまうようなことがあるそうです。

そこで、「かかりつけ薬剤師・薬局」が地域の患者・住民へのケアをする重要な役割を担うことができれば、チーム医療を発展させた形になり、それぞれの負担が軽減されるのではないでしょうか。

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■まとめ

Nursing Books

by Walt Stoneburner(画像:Creative Commons)

現在働いている看護師・看護職員の労働条件を改善しながら、潜在看護師をいかに現場復帰できる体制を整えるか、テクノロジーの活用や医師・看護師・薬剤師・歯科など総合的に働き方を見直し、チーム医療を発展させた形ができるか、が重要です。







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