拒否される心のケア…被災者、質問に辟易


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by Blondinrikard Fröberg(画像:Creative Commons)




拒否される心のケア…被災者、質問に辟易

(2011/6/22、読売新聞)

「心のケアが避難所で拒否されている」。こんな話を被災地の医師から聞いた。

5月半ば、突然の電話に、看護師の阿部幸子さん(53)は耳を疑った。

岩手県赤十字こころのケアセンター統括として、避難所に「日赤こころのケアチーム」を派遣しているが、現場の保健師が、「避難所では『心のケア』と名乗らないで」と言ってきたのだ。

「何かご迷惑でも……」。

心配して尋ねると、保健師はこう説明してくれた。

「心のケアと掲げる色々なチームが避難所を訪れ、被災者に質問するので、被災者が辟易(へきえき)して、他の避難所に移りたいと言うのです」

震災後は心のケアが重要だとこのブログ(自身の体と心の健康をチェックすることを忘れずに)でも取り上げましたが、そのやり方は慎重に行う必要がありそうです。

4月に宮城県南三陸町の避難所で会った79歳の女性を思い出した。

津波で娘を失ったつらさを私に、「誰でもいいから聞いて、という思いと、そっとしておいて、という気持ちが行き来するの」と訴えていたのだ。

岩手県内の避難所を歩いた看護師出身の衆議院議員、山崎摩耶さん(64)は「心と言えば、精神科と思う人も多い。でも、何より気になるのは、心のケア『してあげる』というおごった姿勢。ケアは傍らに寄って行うものです」と指摘する。

この記事に書かれていることは、すごく大事だと思います。

誰でもいいから聞いて、という思いと、そっとしておいて、という気持ちが行き来するの

つまり、「話を聞いてあげる」という姿勢でいるのではなく、相手が話したい時にそばに「寄り添う」ことが大事だと思います。

「心のケア」は、1995年の阪神大震災後、被災者の心理的支援の必要性を叫ぶ言葉として登場した。

復興過程では心的外傷後ストレス障害(PTSD)専門施設、「兵庫県こころのケアセンター」ができた。

初代所長の精神科医、中井久夫さんを神戸に訪ねた。

避難所の話に中井さんは「心のケアは、そううたって何かするというものではない」という。

「神戸では、被災者の心のケアを、一人にしない、体験を分かち合う、生活再建、の3段階で考えました。

今回『寄り添う』という言葉を聞くが、その通りです。

震災後、100日くらいで被災者の向き合う相手は自然から人間に移り、苦痛の質も変わってきます。

まさに今からです」

被災者が向き合うものも時間が経つに連れて変わってくる。

そのなかで、何かをするのではなく、寄り添うことが大事なんですね。