Nature誌に掲載された論文によれば、一度太った人がまたリバウンドする(ダイエットでよく見られる「ヨーヨー」効果)のは、脂肪細胞にエピジェネティックな太っていた時の記憶が残ってしまうので、減量手術や食事療法でやせてもリバウンドしやすいそうです。
【参考リンク】
- Hinte, L.C., Castellano-Castillo, D., Ghosh, A. et al. Adipose tissue retains an epigenetic memory of obesity after weight loss. Nature (2024). https://doi.org/10.1038/s41586-024-08165-7
■まとめ
つまり、今回の論文によれば、一度太ったことがある人は太りやすいので気を付けようということには意味があるということですね。
エピジェネティクスとは?意味で紹介したマウスの実験では次のようなことがわかっているそうです。
- アグーティ遺伝子(マウスを太らせ黄色にする、がんや糖尿病のような病気を引き起こすのではないかといわれている)の特徴はDNAを介して世代から世代へと遺伝していくので、アグーティ遺伝子を持つ母親はその子が同じアグーティ遺伝子を持っているなら太った黄色の病気になる傾向のある子どものマウスを生むことになると考えられる。
- しかし、アグーティ遺伝子は不活性化エピジェネティック・マークが周囲に蓄積するとオフになる。
- アグーティ遺伝子を持っている母親がエピジェネティック・マークを不活性化する食事を与えられたなら、それらのマークは化学的に胎児のDNAに伝えられて、アグーティ遺伝子の周りに蓄積し、アグーティ遺伝子をオフにする。
- 胎児はその状態を保ち、そのマウスは成長しても、やせて茶色で健康
つまり、このことは、母親がDNAの全く同じ子供たちを持ったとしても、妊娠中に食べた食事や喫煙といった行動によって、子供たちの健康に違いが現れる可能性を示唆しています。
もう一つ、エピジェネティクスにおいて重要なポイントは、エピジェネティック・マークが伝搬するのは妊娠中の母親から胎児へだけでなく、マークが卵子/精子の遺伝子に定着すると、孫、ひ孫というように世代から世代へと遺伝することです。
つまり、このことはライフスタイルが数世代先の子孫に影響するかもしれないと考えられます。
スウェーデンとイギリスで長期にわたって行われた研究では、若い男性が精子の発育する思春期よりも以前に食べ過ぎたり、タバコを吸い始めると、息子や孫(息子)の寿命が短いという結果があるそうです。