帯状疱疹ワクチンで認知症の発症率が20%低下!考えられる可能性とは?




学術誌「Nature」に発表された研究によれば、帯状疱疹ワクチンを接種した成人は、接種していない成人に比べ、認知症の発症率が20%低いことがわかったそうです。

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近年、帯状疱疹ワクチンと認知症リスク低下の関連性を示唆する研究が発表されています。

しかし、帯状疱疹ワクチン自体に認知症予防に役立つ何らかの効果があるのか?、それとも帯状疱疹ワクチンを接種するタイプの人は認知症にそもそもなりにくいタイプの人ではないのか?を見分けることが難しかったのです。

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積極的に計画・実行する人はがん・脳卒中・心筋梗塞の死亡リスクが低い|国立がん研究センターで紹介した国立がん研究センターによれば、日常的な出来事に対して、積極的に解決するための計画を立て、実行する「対処型」の行動をとる人は、そうでない人に比べて、がんで死亡するリスクが15%低く、また、脳卒中リスクが15%低く、脳卒中心筋梗塞などで死亡するリスクが26%低いという結果が出たそうです。

その理由としては、日常的な出来事に対して、積極的に解決するための計画を立て、実行する「対処型」の人は、がん検診や健康診断を受診するため、病気の早期発見につながり、病気による死亡リスクが低下している可能性があるようです。

つまり、ワクチン接種を自らの意志で選ぶタイプの人は、医療に対して肯定的で、なおかつ健康意識も高いと考えられるため、認知症予防につながる行動をしているために認知症になりづらい可能性が高いので、帯状疱疹ワクチンが認知症リスクの低下と直接関連があるのか、それとも直接関係はないが相関的に関連があるのかがわからなかったわけです。

しかし、今回の研究では帯状疱疹ワクチンの接種資格が生年月日が決まるウェールズのデータを利用することで比較することができました。

ウェールズのデータを使用:ウェールズでは、帯状疱疹ワクチンの接種資格が生年月日(1933年9月2日)で決まっていました。この日より前に生まれた人はワクチンを受けられず、後に生まれた人は受けられる、というルールです。

自然実験:誕生日が数日違うだけでワクチンを受けられる人と受けられない人がいるので、両者を比較しました。誕生日が近い人は生活習慣や健康状態がほぼ同じはずなので、ワクチンの効果だけを調べるのに最適です。

■結果:何がわかったの?

ワクチン接種率の急上昇:1933年9月2日以降に生まれた人は、ワクチン接種率が0.01%から47.2%に跳ね上がりました。

認知症の減少:ワクチンを受けた人は、7年間で認知症と診断される確率が3.5%減少し、相対的に20%も下がりました。

性差:特に女性で効果が強く、男性では効果が弱かったです。

他の病気への影響:ワクチンは帯状疱疹を減らすだけでなく、認知症以外の病気や死亡率には影響を与えませんでした。

検証の確かさ:イングランドや死亡診断書データでも同じ結果が出て、結果が信頼できることが確認されました。

■ワクチンが認知症を減らす理由を3つの可能性(メカニズムの可能性)

帯状疱疹の減少:ワクチンが帯状疱疹を防ぐことで、医療機関への受診が減り、認知症診断の機会が減った可能性。ただし、これだけで結果を説明するのは難しい。

ウイルスの再活性化防止:帯状疱疹ウイルス(VZV)が脳に悪影響を与えるのをワクチンが抑えた可能性。抗ウイルス薬を使った分析でも、ウイルスを抑えると認知症が減ることが示唆されました。

免疫系の強化:ワクチンが免疫系を広く活性化し、特に女性で認知症を防ぐ効果があった可能性。インフルエンザワクチンを受けていない人や自己免疫疾患がない人で効果が強いこともわかりました。

■まとめ

なぜ帯状疱疹ワクチンが認知症リスクを下げるのか、そのメカニズムはわかっていないものの、帯状疱疹ワクチンを接種した方が認知症の発症率を下げることがわかったので、帯状疱疹と認知症のどちらのリスクも下げたい方は接種を検討した方がいいのではないでしょうか?