大腸がん患者の再発リスクを下げるのは「運動」!死亡リスクが37%低くなる!




ある研究によれば、運動が大腸がん患者の予後(病気経過や生存率)を改善できることを科学的に証明されました。

【参考リンク】

  • Courneya KS, Vardy JL, O’Callaghan CJ, Gill S, Friedenreich CM, Wong RKS, Dhillon HM, Coyle V, Chua NS, Jonker DJ, Beale PJ, Haider K, Tang PA, Bonaventura T, Wong R, Lim HJ, Burge ME, Hubay S, Sanatani M, Campbell KL, Arthuso FZ, Turner J, Meyer RM, Brundage M, O’Brien P, Tu D, Booth CM; CHALLENGE Investigators. Structured Exercise after Adjuvant Chemotherapy for Colon Cancer. N Engl J Med. 2025 Jun 1. doi: 10.1056/NEJMoa2502760. Epub ahead of print. PMID: 40450658.

まずはこの研究の理解を高めるためにこちらのストーリーをどうぞ。

大腸がんを乗り越えたアキラの物語:運動が変えた未来

第1章:診断と闘い

アキラは45歳の会社員。ある日、突然の腹痛で病院を訪れた彼は、大腸がんと診断された。ショックだったが、家族の支えと前向きな気持ちで治療に臨むことを決意。手術を受け、補助化学療法(再発を防ぐための薬物治療)を半年間続けた。化学療法の副作用で体は疲れ果て、未来への不安も募っていた。
「これからどうなるんだろう…再発したらどうしよう?」アキラは夜な夜なそんなことを考えていた。

第2章:二つの道

化学療法を終えたアキラは、病院で一つの提案を受けた。医師がこう言った。「アキラさん、研究に参加してみませんか?運動が大腸がんの再発や生存にどう影響するかを調べるものです。」
アキラは迷った。運動なんて、中学の体育以来ほとんどしていない。それでも、医師から詳しく話を聞くと、55の病院で889人の患者が参加する大規模な研究だとわかった。参加者はランダムに二つのグループに分けられる:
運動群:3年間、計画的な運動プログラムに参加する。

健康教育群:運動はせず、健康に関する資料を受け取るだけ。

アキラはくじ引きで「運動群」に選ばれた。「よし、やってみるか!」と自分を奮い立たせた。

第3章:新しい一歩

運動プログラムが始まった。最初は週に数回のウォーキングからスタート。トレーナーが「無理せず、でも継続が大事」と教えてくれた。アキラは最初、30分の散歩でも息が切れた。化学療法の影響で体力が落ちていたのだ。でも、仲間と一緒に歩くうちに、だんだん体が軽くなっていくのを感じた。
数か月後、ウォーキングに加えて軽い筋トレやストレッチも始めた。時には筋肉痛で「うっ」とうめいたが、トレーナーの励ましと、同じプログラムに参加する仲間たちの笑顔に支えられた。「みんなも頑張ってる。俺も負けないぞ!」アキラの心に火がついた。

第4章:7年後の奇跡

プログラムは3年間続いたが、アキラはその後も運動を習慣にしていた。7年後のある日、病院での定期検診で驚くべき結果を聞いた。医師が笑顔で言った。「アキラさん、素晴らしい結果です。病気の再発もなく、非常に健康な状態です。」
実は、この研究の結果がまとまったばかりだった。889人の参加者のデータを分析したところ、運動群にいたアキラのような人たちは、健康教育群に比べて病気再発や死亡のリスクが28%低く、5年後の無病生存率は80.3%(健康教育群は73.9%)。さらに、死亡リスクは37%低く、8年後の生存率は90.3%(健康教育群は83.2%)だった。
「運動のおかげかもしれないね」と医師が言うと、アキラは照れ笑いした。「あのとき、運動を始めてよかった…。」

第5章:小さな副作用と大きな希望

運動はアキラに多くの恩恵をもたらしたが、完璧ではなかった。筋トレのしすぎで肩を痛めたこともあったし、仲間の中には膝を痛めた人もいた。研究でも、運動群の18.5%が筋骨格系のトラブルを経験し、健康教育群(11.5%)より少し多かった。でも、アキラにとってその痛みは「生きている証」。運動を続けることで、体も心も強くなったと感じていた。

第6章:未来へのメッセージ

アキラは今、毎朝のウォーキングを欠かさない。公園で汗を流しながら、家族との時間や新しい趣味を楽しんでいる。研究に参加したことで、彼はただ生き延びただけでなく、人生をより豊かに生きる方法を見つけた。
「運動は大変だけど、やってみる価値はあるよ」とアキラは友人に語る。「がんを乗り越えただけじゃない。新しい自分に出会えたんだ。」

物語の教訓

この物語は、科学的な研究(PMID: 40450658)を基にしたフィクションですが、運動が大腸がん患者の再発リスクを下げ、生存期間を延ばす可能性を示した実際の研究結果を反映しています。

大腸がんの補助化学療法後の計画的運動

それでは改めて、この研究についてまとめます。

背景

この論文では、大腸がんの手術と補助化学療法(手術後の再発予防のための化学療法)を受けた患者に対して、運動が病気の再発や生存期間にどのような影響を与えるかを調べた研究を紹介します。過去の研究では、運動ががん患者の健康を改善する可能性が示唆されていましたが、確固たる科学的証拠(レベル1のエビデンス)は不足していました。この研究は、そのギャップを埋めるために行われました。

研究の方法

大腸がんの手術を受け、補助化学療法を終えた889人の患者を2つのグループにランダムに分けられました。

運動群(445人):3年間、計画的な運動プログラムに参加。

健康教育群(444人):運動プログラムは行わず、健康教育の資料のみ提供。

結果

無病生存率(病気再発、新たながんの発生、または死亡が起こらない期間):運動群は健康教育群に比べて、病気再発や死亡のリスクが28%低い(ハザード比0.72、P=0.02)。5年後の無病生存率は、運動群で80.3%、健康教育群で73.9%(差6.4%)。

全生存率:運動群は健康教育群に比べて死亡リスクが37%低い(ハザード比0.63)。8年後の全生存率は、運動群で90.3%、健康教育群で83.2%(差7.1%)。

副作用:運動群では筋骨格系(筋肉や骨)の問題が18.5%で発生し、健康教育群(11.5%)よりやや多かった。

結論

大腸がんの手術と化学療法を受けた患者が、3年間の計画的な運動プログラムに参加することで、病気の再発を抑え、生存期間を延ばす可能性があることがわかりました。

■まとめ

大腸がん予防方法・大腸がんの危険度チェック|たけしの健康エンターテイメント!みんなの家庭の医学によれば、大腸がんの危険度チェックの項目の一つに運動不足があり、毎日合計60分歩く程度の運動をしていない方が該当します。

→たとえば、ほとんど座って仕事をしている人なら、ほぼ毎日合計60分程度の歩行などの適度な身体活動に加えて、週に1回程度は活発な運動(60分程度の早歩きや30分程度のランニングなど)を加えましょう。

がんになっても長生きできる生活習慣|#たけしの家庭の医学では、がんリスクを下げる条件として、「週2回以上息がはずむ程度の運動をしている」が挙げられており、運動は大腸ガン・乳癌(閉経後)・子宮体がんのリスクを下げると紹介されています。

今回の研究によれば、大腸がんの再発を抑えるには運動が効果的ということで、大腸がんの予防のためにも、再発リスクを下げるために、きちんと運動をしていきましょう!

→ 大腸がんの症状(初期症状)チェック・原因・予防 について詳しくはこちら