ミャクミャクは「気持ち悪い」から「付いてたら売れる」へ ”爆売れ”にグッズ業者は「生きている間に2度とないレベル」 売り上げ推計は1日で5億6千万円(2025年9月2日、ABCニュース)では、ミャクミャクグッズの人気について書かれているのですが、なぜ人気なのか、心理学理論や効果を参考にその背景について考えてみます。
1. バンドワゴン効果(社会的証明の原理)
ミャクミャクグッズの売れ行きが好調な理由の一つは、バンドワゴン効果です。これは、他者が特定の行動を取っている(例:ミャクミャクグッズを買う)ことで、自分もその行動に追随したくなる心理現象です。万博会場や大阪の街中でミャクミャクグッズを身につける人が増えると、「みんなが持っているから自分も欲しい」という心理が働き、購買意欲が高まります。特に、万博会場のような高揚感のある環境では、集団心理がさらに強化され、グッズ購入が加速します。
2. 希少性原理(Scarcity Principle)
ミャクミャクグッズは「万博会場限定」や「期間限定」といった希少性が強調されており、これが購買意欲を刺激しています。心理学では、入手困難なものは価値が高いと認識される傾向があります(希少性原理)。例えば、サンリオとのコラボ商品や黒ミャクミャクぬいぐるみなど、すぐに売り切れる商品は「今買わないと二度と手に入らない」という焦りを生み、購入を後押しします。稲田義久氏のコメントにある「今買っとかないと」という心理は、まさにこの効果を反映しています。
3. 認知的不協和の解消と慣れ
ミャクミャクは発表当初、「気持ち悪い」「不気味」といった否定的な反応が多かったにも関わらず、現在は「かわいい」と感じる人が増えています。これは認知的不協和の解消と**単純接触効果(Mere Exposure Effect)**によるものです。最初は奇抜なデザインに違和感を覚えた人々が、街中やSNSで繰り返しミャクミャクに触れることで徐々に慣れ、親しみを感じるようになります。さらに、「万博のシンボル=ポジティブなもの」と認識することで、初期の否定的な印象を肯定的なものに置き換える心理的プロセスが働きます。来場者のコメントにある「だんだんかわいさが増してきた」は、この現象を象徴しています。
4. アイデンティティと自己表現
ミャクミャクグッズ、特に「なりきり系」(キーホルダーやぬいぐるみブレスレットなど)は、購入者が万博体験の一部として自己表現を楽しむ手段となっています。心理学では、特定のアイテムを身につけることで自己のアイデンティティや所属意識を強化する傾向があります(自己拡張理論)。万博会場でミャクミャクグッズを身につけることは、「私は万博に参加している」というステータスを示し、集団の一体感やイベントの特別感を高めます。赤と青のツートンファッションやサンリオコラボ商品を身につける人は、この自己表現を楽しんでいるといえます。
5. 感情の高揚と衝動買い
万博会場のようなイベント空間は、来場者の感情を高揚させ、衝動買いを誘発します。心理学の**情動的影響(Affective Influence)**によると、楽しい雰囲気や興奮状態は合理的な判断を弱め、購買行動を促進します。ミャクミャクグッズは、会場内の高揚感や「ここでしか買えない」という特別感と結びつき、朝から「なりきり系」グッズが売れる現象につながっています。ヘソプロダクション担当者の「朝一で買って楽しむ」というコメントは、この感情的高揚が購買を後押ししていることを示唆します。
6. ブランドコラボによる親和性と信頼感
ミャクミャクは、サンリオ、ジェラートピケ、エドウィンなどの人気ブランドとのコラボ商品を展開しており、これが人気をさらに押し上げています。心理学の**ハロー効果(Halo Effect)**により、信頼できるブランドとコラボすることで、ミャクミャク自体の魅力や価値が向上して見えます。特に、サンリオとのコラボキーホルダーが「1日何千個も売れる」のは、サンリオの「かわいい」イメージがミャクミャクの奇抜さを中和し、幅広い層に受け入れられやすくしているためです。
7. 経済効果と社会的影響
ミャクミャクグッズの売上は、1日約5.6億円、7月末までに620.9億円に達するなど、経済効果が顕著です。この背景には、社会的影響力と文化現象としてのミャクミャクの浸透があります。万博という国家的イベントのシンボルであるミャクミャクは、単なるキャラクターを超えて「大阪・関西の誇り」や「時代の象徴」としての意味合いを持ち、購買意欲をさらに刺激しています。稲田氏の「若い人を中心に大化けしている」という分析は、ミャクミャクが若者文化やSNSでトレンド化したことを示しています。
■まとめ
ミャクミャクグッズの人気は、バンドワゴン効果、希少性原理、認知的不協和の解消、単純接触効果、自己表現、感情の高揚、ハロー効果など、複数の心理的要因が絡み合って生まれています。
初期の「気持ち悪い」という反応から「付いてたら売れる」への変貌は、心理学的な適応とイベントの特別感が結びついた結果です。