若年大腸がんと子宮体がんの罹患・死亡の増加を確認 若年発症がんの病態解明の基盤となる国際共同研究成果(2025年12月25日、国立がん研究センター)によれば、若年層(20歳以上50歳未満)での子宮体がんと大腸がんは、複数の国で罹患率、死亡率ともに増加していることがわかりました。
また、女性では大腸がん、子宮頸がん、膵臓がん、多発性骨髄腫が増加し、男性では前立腺がん、大腸がん、腎臓がんなどの罹患率が顕著に増加しています。
一つの理由として挙げられていたのが、若年発症がんと肥満との関連で、肥満率の高い国や地域では、若年発症がんの罹患率も上昇しているそうです。
■若年者の大腸がんの増加
以前世界的に若年者の大腸がんが増加しているという記事を紹介しました。
日本人の大腸がん患者の5割に腸内細菌のコリバクチン毒素が関与か/若年者の大腸がん発症増との関連もによれば、近年、「コリバクチン」という大腸がんの発生リスク因子に注目が集まっています。
「コリバクチン」は大腸がん患者の7割が保持する、腸内細菌由来の毒性成分です。
国立がん研究センターによれば、コリバクチン毒素による変異パターンは、高齢者症例(70歳以上)と比べて若年者症例(50歳未満、大腸がん全体の約10%を占める)に3倍多い傾向がみられ、日本をはじめ世界的に問題視されている若年者大腸がんの重要な発症要因である可能性が示唆されました。
→ 大腸がんの症状(初期症状)チェック はこちら
コリバクチンが大腸がんの新たな発生リスク因子として注目されているのですが、なぜこの菌が大腸がんに影響しているのか、そしてなぜ世界中の若者の大腸がんの発症が増えているのか、についてはわかっていません。
ただ現時点では、食生活の欧米化と大腸がんの関連がある可能性があり、具体的に言えば高脂肪・低繊維食が何か関連があるとすれば、大腸がん予防には低脂肪・高繊維食が大事ではないかという仮説が立てられます。
また、大腸がんはもはや高齢者の病気ではない!若い世代で大腸がんの発生率が高まっている理由とは?によれば、貧困によって砂糖入りの飲料や加工食品を選択するなど食事の質が低くなる傾向にあり、そのことが腸内細菌に影響を与えて、大腸がんのリスクを高めているのではないかという説が紹介されていました。
米国で発生したがんによる死亡者のほぼ半数は生活習慣の改善で予防できる可能性がある!で紹介した米国がん協会の研究によれば、がんと生活習慣の関係を調べたところ、2019年に米国で発生したがんによる死亡者のほぼ半数は生活習慣が要因になっている可能性があるそうです。
もし世界中の若者の食習慣に共通するものがあり、例えば、砂糖入りの飲料や加工食品を多く摂取している、野菜(食物繊維を含む)が不足しているという共通項があるのだとしたら、大腸がんを減らす方法になりうるかもしれませんね。
子どもの頃に腸内細菌叢に起きたことが大腸がんの発症時期を早めている可能性がありますが、その原因は何かはわかっていないようです。
またコリバクチン産生菌は健康な人にも存在し、全員が大腸がんを発症するわけではなく、若い世代の大腸がんの発症の増加をコリバクチンだけに範囲を狭めて研究するのは時期尚早で、健康的な生活習慣を心掛け、早期発見・早期治療が重要なので、大腸がんの症状のサインを見逃さないことを心掛けたほうが良いようです。
ただ世界的に若年層の大腸がんと子宮体がんの罹患率、脂肪率が増加していることは今後問題になっていきそうです。
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■若年者の子宮体ガンの増加
成人期の体格と子宮体がん罹患との関連についてによれば、肥満度と子宮体がんとの関連性については、すでに欧米諸国から多数報告され、肥満度が高いと子宮体がんに罹患するリスクが高いことが確立されています。
また、これまでの研究では、肥満度が高い閉経後の女性では、I型子宮体がんのリスクが高いという関連性は一致しており、閉経後女性では主にエストロゲンが脂肪細胞から合成されるため、肥満度とエストロゲン依存性の子宮体がんとの関連性は、想定されるメカニズムと矛盾しない結果と言えるそうです。
日本人に関する研究を行ったところ、BMI23.0-24.9のグループと比較してBMI27.0以上のグループで、統計学的有意に子宮体がん全体のリスクが上昇していました。
ただ、欧米人と比較して日本人の肥満度が30.0 kg/m2を超える割合が少ないため、肥満と子宮体がんの関連について明確に影響しているとは現時点では言えないようです。
■まとめ
大腸がんになりにくい体質にするための方法|#ガッテン(#NHK)によれば、肥満が大腸がんリスクとされています。
がんになっても長生きできる生活習慣|#たけしの家庭の医学では、がんリスクを下げる条件として、「週2回以上息がはずむ程度の運動をしている」が挙げられており、運動は大腸ガン・乳癌(閉経後)・子宮体がんのリスクを下げると紹介されています。
子宮体がん(子宮内膜がん) 予防・検診(がん情報サービス)によれば、1)子宮体がんはエストロゲンにさらされている期間が長いほど発症リスクが高くなる(原因として出産経験がない、閉経が遅い、肥満(脂肪細胞がエストロゲンを産生する)など)、2)糖尿病、3)遺伝性の腫瘍であるリンチ症候群などで子宮体がんのリスクが高くなることが分かっています。
糖尿病の人の大腸がんになるリスクは1.4倍、肝臓がんは1.97倍、膵臓がんは1.85倍も高いによれば、糖尿病の人はそうでない人に比べて、大腸がんになるリスクは1.4倍高いそうです。
ここでいくつか仮説を立てます。
●何らかの原因で、例えば超加工食品によって腸内細菌叢に変化が起きて、コリバクチンが大腸がんのリスク要因となっている。
●肥満によって、具体的に言えば、食事や運動不足によって、大腸がん・子宮体がんのリスクが上がっている。
●糖尿病によって大腸がん・子宮体がんのリスクが上がっている。
食事の質に問題があるのか、食事の量に問題があるのか、運動不足が影響しているのかはわかりませんが、この原因がわかることで世界的に若者の大腸がん・子宮体がんの罹患率・死亡率が改善されるので、研究が進むといいですね。
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