東京科学大学などの研究チームによれば、これまで高カロリーの食事を続けていると、脳の認知機能(記憶や学習など)が低下することが知られていましたが、今回「なぜそうなるのか」という詳しい仕組みが初めて明らかになりました。
■主な仕組み(3ステップ)
1)高カロリー食を続けるとインスリンの信号が強くなる
これが「PPARγ」という因子の働きを抑えてしまう。
2)PPARγの働きが弱まると、「PQBP1」という大事なタンパク質が減る
PQBP1は、知的障害やアルツハイマー病とも関係がある遺伝子(から作られるタンパク質)です。
3)PQBP1が減ると、神経細胞同士のつなぎ目(シナプス)に異常が起きる
シナプスを作る部品の「組み立て(RNAスプライシング)」がうまくいかなくなり、シナプスが減ったり機能が落ちたりします。その結果、脳の働きが低下します。
■まとめ
マウスの実験によれば、糖尿病の治療薬(PPARγの働きを高めるもの)やPQBP1を増やす遺伝子治療によって、シナプスの異常や認知機能の低下を改善できたことから、今後ヒトへの治療法の応用も期待されます。
【参考文献】
Huang, Y., Homma, H., Yoshioka, Y. et al. PQBP1-dependent alternative RNA splicing underlies high calorie diet-induced cognitive impairment. Mol Psychiatry (2026). https://doi.org/10.1038/s41380-026-03868-x
【補足】
■高カロリー食と炎症との関係について
これまで「高カロリー食 → 炎症が起きて脳に悪い」という説明がよくされてきました。
しかし、今回のこの研究の仕組みは、炎症とは別の新しい経路です。
今回明らかになったのは、
インスリン信号 → PPARγ抑制 → PQBP1減少 → シナプスの異常
という、神経細胞の中で直接起きる分子レベルの変化です。
炎症は高カロリー食の別の悪影響として確かに存在しますが、この研究では「炎症を介さなくても認知機能が低下する経路がある」ことを示しています。
つまり「炎症だけを抑えれば大丈夫」というわけではなく、インスリンの過剰や高カロリー状態そのものも避けた方がよい、ということになります。
■家庭の食事からできること
この研究では、1週間という比較的短い期間でも影響が出始めることが示されています。
「肥満になってから」ではなく、「高カロリー状態そのもの」が問題になりやすい、という点が新しいポイントです。
実践的には
・揚げ物・ジャンクフード・砂糖たっぷりの飲み物などを控えめにする
・野菜・魚・全粒穀物を意識してバランスを取る
・食べる量を「満腹まで」ではなく「腹八分目」にする
・体重や血糖値が気になる人は、早めに生活習慣を見直す
高カロリーな食事を続けると、炎症以外の仕組みでも脳のシナプスが傷つき、認知機能が低下しやすくなります。日常の食事のカロリーや脂質を意識することが、将来の脳の健康につながります。
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