by Dick Thomas Johnson(画像:Creative Commons)
(2014/6/18、WIRED)
なぜ人間は集団で行動すると、恐ろしい行為に走りやすいのだろうか。
集団になると、一人ではありえないような行動をしてしまうということがあります。
この疑問に答える説は大きく3つに分けられるそうです。
第1は、「われわれ」の利益のために「彼ら」を犠牲にして行動するのは「合理的」だから、という説明。
第2は、集団のなかに入ると、人間は匿名的な存在になり、個人の責任がごまかしやすいから、という説明。
第3は、集団になると、個としての自己意識や、自分なりの道徳観念が薄れるから、という説明だ。
<中略>
マサチューセッツ工科大学(MIT)、カリフォルニア大学バークレー校、カーネギーメロン大学のチームはこのほど、この第3の説についてもう少し詳しく見ることにした。その結果、われわれは集団になると、「倫理と関係する脳の領域」の活動が鈍るらしいことが明らかになった。
今回紹介した記事によれば、集団になると倫理と関係する脳領域の活動が鈍ってしまうそうです。
集団で行動すると、恐ろしい行為に走りやすいのはなぜかの説明には当たりませんが、「服従実験とは何だったのか スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産」(著: トーマス・ブラス)で書かれている有名な服従実験によれば、権力が社会的圧力を加えているような状況では、私達が持っている道徳概念などはたやすく踏みにじられてしまうということがわかります。
常日頃は、悪意もなく異常でもない人が、権威のある人に命じられたり、社会的圧力があるときには、非道徳的で非人間的な行為を行うことがありうるのです。
もう一つ、「服従実験とは何だったのか スタンレー・ミルグラムの生涯と遺産」(著: トーマス・ブラス)で書かれた実験の中には、集団という存在がどのようにして強力な社会的な磁石になっていくかという実験が紹介されています。
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何人かの人がビルの窓を見上げている。
すると通行人が真似して窓を見上げる。
そして、それは、刺激となる集団のメンバーが多くなるにつれて、真似する人も増える。
この実験は単純なものだが、人の本質や社会的生活とは何かということについての基本的な真実を明らかにしてくれている。
それは、複雑な私達の世界を切り抜けていくために、他者の行動が情報源となっているということである。
ここでミルグラムが行った屋外実験の目的は、人がレミングのように盲従して行動するということを示すところにあるのではない。
そうではなくて、こうした模倣が合理的なプロセスであり得るということを示すのが目的である。
この実験では、他者の行動を情報源にし、模倣をすることが合理的なプロセスであることを示しています。
こうした意見を参考にすれば、人は集団という社会的圧力により、または集団の行動を模倣してしまうことによって、非道徳的な行動をとってしまうことがあるのではないでしょうか。