ヒトES細胞の自己組織化する能力を引き出すことでより高度で複雑な「小さい腸管(ミニ腸)」の創生に成功

ヒトのES細胞から腸管の機能を持つミニ腸を作り出すことに成功 世界初|国立成育医療研究センター


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参考画像:ES細胞から機能的で動きも伴う立体臓器(「ミニ腸」)を創り出すことに成功(2017/1/13、国立成育医療研究センターニュースリリース)|スクリーンショット




■ヒトのES細胞から腸管の機能を持つミニ腸を作り出すことに成功 世界初|国立成育医療研究センター

ES細胞から機能的で動きも伴う立体臓器(「ミニ腸」)を創り出すことに成功

(2017/1/13、国立成育医療研究センターニュースリリース)

●ヒト臓器の中でも複雑な構造、機能を有している腸管をヒトESおよびiPS細胞から試験管内で創り出すことに成功した(ミニ腸)。ミニ腸は生体腸管のように蠕動様運動をし、吸収能や分泌能を備えている。

●ミニ腸は試験管内で長期に維持することが可能であり、薬品の試験も繰り返し行うことが出来ることから、創薬開発では極めて革新的なバイオツールになり得る。

●先天性の小腸の病気や潰瘍性大腸炎、クローン病に代表される原因不明の慢性炎症性腸疾患などに対する画期的な治療法開発の手段として期待される。

国立成育医療研究センター 再生医療センター阿久津英憲生殖医療研究部長、梅澤明弘センター長のグループと臓器移植センター笠原群生センター長を中心とした研究グループは、ヒトのES細胞から、腸が食べ物を送り出すときに伸び縮みを行う蠕動(ぜんどう)運動や栄養などを吸収する能力、分泌する能力など腸管の機能を持つ立体腸管(ミニ腸)を試験管内で作り出すことに世界で初めて成功したそうです。




■なぜこの研究は画期的なのか?

ES細胞から創られた『ミニ腸』の蠕動様運動

今回の研究は画期的なものなのだそうですが、なぜ画期的なのでしょうか?

通常、服用された薬は、吸収・代謝をまず腸管で受け、肝臓へと移ります。ミニ腸は創薬開発において腸での吸収・代謝を評価する画期的な手段となり、薬の生体腸管に対する副作用(下痢など)を評価することも期待されます。近年、生体機能を生体外で再現し応用する”生体機能チップ“(Human/Organ‐On‐A‐Chip)”の開発が国際的に進んでいる。しかし、機能は限定的でありかつ類似した方法での国際間の競争は激しいことが予想されます。一方、ミニ腸のように生体臓器に極めて近似した立体臓器用いた評価系はなく、高い臓器機能性を有することからも生体機能チップ分野でもオリジナル性の高い優位性が発揮できます。

LUNG-ON-A-CHIP|肺の仕組みを簡略化してマイクロチップに表現によれば、化粧品メーカーによる動物実験の廃止が世界的な流れとなる中、今後は、医療の分野でも動物実験が廃止していく流れとなっていくのではないでしょうか。

しかし、医薬品の研究開発において、その薬の副作用がどのようなものかを調べることは欠かせないものです。

近年では、ハーバード大学のウィス研究所が発表した、肺の仕組みを簡略化してコンピューターチップに表現した「lung-on-a-chip」のようなものも出てきていますが、今回のニュースリリースを読む限り、ミニ腸のような生体臓器に極めて近い立体臓器で研究したほうが良いようです。







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