「インクルージョン」という考え方を知れば、あなたの周りの世界はやさしくなる!?





【目次】

■「インクルージョン」という考え方を知れば、あなたの周りの世界はやさしくなる!?

「インクルージョン(Inclusion)」とは、包含・含有・包括性・包摂・受け入れるといった意味を持ち、誰も排除せず、様々な人を受け入れるという、「ブロックチェーン・レボリューション」(著:ドン・タプスコット+アレックス・タプスコット)で初めて知った考え方です。

Apple — Inclusion & Diversity — Open

Appleの「Inclusion & Diversity」では、インクルージョンと多様性の方針と取り組みについて公開しています。

この考え方を意識しだしたきっかけとして2つのことがあります。

1つは、最近のインターネットビジネスにおいて、若者向け金融サービスが生まれていること。

もう一つは、評価経済となったときにインターネットにつながっていない人の評価はどうなるのかという疑問に対して、返ってきたツイートには「死ぬんだよ、きっと」というリツイートがあったことです。

■多くの人が金融の仕組みからはじき出されている!?

CASH・ZOZOツケ払い・メルカリ月イチ払い・スコアレンディング・給料前払いサービス・・・今やりたい・買いたいことを我慢せずにお金を前借り、モノを現金化するサービスを利用してもいいの?|マシュマロ実験と多動性の視点からでは、最近のインターネットビジネスでは、「ZOZOツケ払い」(2カ月間内で都合の良い時に支払いができる決済手段)や「メルカリ月イチ払い」(月次で購入した商品の代金をまとめて翌月に支払うことのできる)、「CASH」(モノをスマホで撮影し、食事入金される質屋アプリ)、「Payday」(給料を前借りして、後払いするサービス)のような今やりたい・買いたいことを我慢することなく、将来入ってくるであろうお金を前借りしたり、モノを現金化する仕組みが増えてきていると感じると紹介しました。

【atone】サービス紹介映像

日経FinTechがイベント開催、給与前払いサービスやアルゴリズムトレードなどが登壇

(2017/6/29、TechCrunch)

現在スマホの普及で個人間取引や小規模事業者と個人との間での決済が増えているが、同時に売手には未回収リスクがある。そこで独自の与信データ・アルゴリズムにより数万円から数十万円のクレジットを買い手に与えるのがatoneの狙い。

ネットプロテクションズの「atone(アトネ)」は、個人向け審査不要、クレジットカードなし、コンビニ後払いサービスです。

スマホで買い物をする際に、atone(アトネ)によるコンビニ後払いを利用すると、ポイントがたまり、そのポイントがお買い物で活用できるメリットがあるそうです。

AIスコア・レンディング編

日本でも中国の芝麻信用のようなサービスが始まっているようで、J.Scoreが提供するAIスコア・レンディングサービス『スコアレンディング』は、個人に関するさまざまなデータをAIで分析、スコア化し、そのスコアをもとに適正金利で融資をするサービスなのだそうです。

みずほ銀行やソフトバンクとの取引情報などさまざまな情報法を提供すればするほど可能性や信頼性が反映される仕組みになっています。

このように、スピードが重視される変化の速い現代では、今やりたいことや買いたいことを優先するために、お金を融通することも必要ではないかという考えが生まれていて、こうした仕組みを提供するところが増えています。

株式会社CAMPFIREが、融資サービス「CAMPFIRE レンディング」開始。 日本初となる「クラウドファンディングの支援者評価」による与信モデルを実装

(2017/7/28、CAMPFIRE PRTIMES)

この度の融資は、決算書などの評価だけではなく、CAMPFIRE独自の支援者による評価を軸とした「評価型与信モデル」を日本で初めて採用。評価型与信モデルとは、クラウドファンディングにおける支援(総額・人数)をスコアリングしたものを与信材料の一つとし、融資対象者へ信用供与するモデルを指します。

株式会社CAMPFIREは、クラウドファンディングで資金調達に成功したプロジェクト実行者を対象とした融資「CAMPFIRE レンディング」を始めるそうです。

ポイントはクラウドファンディングにおける支援(総額・人数)をスコアリングしたものを与信材料の一つとしている点です。

ロボアドバイザー(投資・資産運用アドバイスサービス)とは?|IT・金融の活用度が低い日本はフィンテックの手前!?|#Fintechでは、日本のフィンテックは「貧テック」だと呼び、弱者から搾取する仕組みだと表現する人もいると紹介しました。

ただこれを逆に考えると、それだけ多くの人が金融の仕組みからはじき出されているということではないでしょうか?

「ブロックチェーン・レボリューション」(著:ドン・タプスコット+アレックス・タプスコット)

貧しい地域の人たちにとって、銀行口座を持つための最低残高や、決済の最低支払い額、システム手数料といった壁はあまりに高すぎる。金融機関のインフラにコストがかかりすぎるせいで、貧しい人たちのささやかな経済活動は犠牲になっているのだ。p66

今の仕組みではある程度のまとまった金額を貸さないと企業としては合わない計算であるため、貧しい人々向けに少額の貸し出しなどをするマイクロファイナンス(小規模金融)の分野は手つかずのままでいるのではないでしょうか。

技術の最先端にいる人たちだけを考慮していたのでは、分散ネットワークの力を十分に活用できない。もっと厳しい利用環境も考慮してあらゆる側面をデザインすることが必要だ。インフラが十分に整っていない地域の人たちをも含めて設計する時、初めて本当の意味でのインクルージョンが可能になる。p69

解決しなければ問題を抱えているかもしれませんが、金融の仕組みから外れた人が一定層いて、その人たちがさらに悪い状況にならないための手段として何らかのテクノロジーで解決するというのは考えるべきではないでしょうか。

そして、そうした問題を解決するための根底にある考えとして「インクルージョン」があればサービスのあり方が変わってくると思います。

■自分の周りにいる弱い人を守れる仕組みが大事

もう一つは、評価経済となったときにインターネットにつながっていない人の評価はどうなるのかという疑問に対して、返ってきたツイートには「死ぬんだよ、きっと」というリツイートがあったことです。

人の信頼度を評価するシステムによって信頼自体がお金(通貨)のような価値をもつ時代になる!?で紹介したRachel Botsman(レイチェル・ボッツマン)は、Amazonの星の評価のように、AirBnBやUBERのような取引での評価・評判のデータをリアルタイムで収集し、そのデータを集約する評価ダッシュボードのような形で表示されることによって、評価資本が一目で見れるようになることを想像し、「信頼」されるという評価自体が価値を持つ、つまりは21世紀の通貨となると考えています。

ただ、この方法にはいくつか問題があって、全ての行動を監視されているように感じてしまうようなプライバシーの問題があったり、評価システムの透明性の問題、どんなに信頼できる人であってもネットとつながっていない人は評価される仕組みに組み込まれていないというような問題を抱えています。

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個人やメディアが発信する情報が信頼に値するかは、リツイートの数やいいね!の数、フォロワーの数や友達の数で判断されるのではなく、評価資本によって判断されるようになるかもしれないと書いたのですが、その時に感じたのは、インターネットにつながっていないけどものすごく信用できる人はどう評価されるのかという疑問です。

あなたの周りにも、人としてものすごく信頼できるけど、SNSにはつながっていなかったり、そもそもインターネットを利用していないという人がいるのではないでしょうか?

評価経済に注目が集まる中、その評価基準をどうするかに関心があるのですが、クレジットカードを利用していない人が信用履歴(クレジットヒストリー)がないのと同様に、現在の仕組みでは、インターネットやSNSにつながっていない人は評価経済において信用ゼロと評価されてしまう可能性があると思うのです。

そこで先ほどの「インターネットにつながっていない人の評価ってどうしていくのだろう?」というツイートをしたのですが、返ってきたリツイートには「死ぬんだよ、きっと」という言葉がありました。

どういう言葉の意味かわかりませんが、仮に言葉のままの意味だととらえると、寂しい考え方のように感じます。

自分にとって大事なおじいちゃんやおばあちゃん、お父さんやお母さんに対して、そうした伝え方をするのはあまりにも厳しすぎる世界です。

そこで、思い出したのが「インクルージョン」という考え方です。

「ブロックチェーン・レボリューション」(著:ドン・タプスコット+アレックス・タプスコット)

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インクルージョンには様々な側面がある。社会的、経済的、人種的な強者による支配を終わらせること。体の状態や性別、ジェンダーアイデンティティー、性的嗜好によって差別されないということ。生まれた場所や逮捕歴、支持政党などによって参加を阻まれないこと。p69

自分にはどうすることもできない状態で弱者となってしまったと想像してみてほしいのです。

健康で、若く、経済的にも苦境に立たされることなく、性別における差別もなく、生まれた場所も平和で、家族に逮捕歴などもないというような恵まれた状況にあると、見えてこない世界があるかもしれません。

「フライ、ダディ、フライ」(著:金城一紀)の中でこんな台詞があります。

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こんなことが人生に起こるとはおもわなかったろ?せいぜい自分の半径1メートルぐらいのことだけ考えて、のうのうと死んでいけたら幸せだったのにな。

どんなに自分は大丈夫だと思っていても、ある日突然、事故や病気に合ったり、日本円が使えなくなったり、戦争状態に陥ったりしてしまうと、弱者の側に立たされてしまうかもしれません。

ちょっと想像をしてみて、自分の考えの半径5メートルぐらいを考えると、また違った考え方ができるようになるのではないでしょうか?

その時に「インクルージョン」という考え方が役に立つと思います。

■まとめ

もっと世界はカラーで溢れていてほしいのだ。

大きな夢を描きたい人は、たくさんの絵の具が必要だ。

それも1色ではなく、たくさんのいろんな色の絵の具のチューブが。

そうしないと、どんなに大きな夢を描こうにも、さびしい色づかいになってしまうかもしれないからね。

インクルージョンとはたくさんの絵の具を持つようなもの。

絵の具とは、いろんな人の思い。

「インクルージョン」という考え方を知れば、どんな人でも評価経済に自然と溶け込めるような仕組みづくりを考えることで、評価経済がセーフティネットとなるような時代が来るのではないかと思うのです。

「インクルージョン」という考え方を知れば、あなたが見ている世界は少しはやさしいものになるのではないでしょうか?

世界を変えたいという人は、いろんな人の思いをひっくるめて、大きな夢を描いてほしいものです。







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