【目次】
■世帯年収の中央値が20年間で大幅に下がっている!?
by U.S. Department of Agriculture(画像:Creative Commons)
(2017/9/25、NHK)
共働きの世帯は年々増え、1992年に専業主婦世帯を上回り、今は1100万世帯を超えています。専業主婦世帯のおよそ1.7倍です。高齢化が進み、年金生活などで収入が低い「高齢者世帯」が増えているという事情はもちろんありますが、グラフからは、共働きが増えているのに、中間層の世帯年収は下がっている、という姿が浮かび上がってきます。
世帯年収の中央値が1995年と2015年を比較すると20年間で大幅に下がっているということが話題になりました。
参考画像:いざなぎ超え データで探る中間層の実像(2017/9/25、NHK)|スクリーンショット
このデータをそのまま受け取れば、共働き世帯は増えているにもかかわらず、世帯年収は下がっていると考えてしまいますよね。
そして、このことには、非正規雇用が増えていることや年齢を重ねても所得が増えていないことなどが関係しているのだろうと推測することでしょう。
しかし、グラフで見る世帯の状況|国民生活基礎調査(平成25年)の結果から(平成26年、厚生労働省)のデータを併せて見ると、もう少し違った視点で見ることができます。
■世帯構造がどう変化しているのかを併せて見てみよう!
参考画像:世帯構造別にみた65歳以上の者のいる世帯数の構成割合の年次推移|グラフで見る世帯の状況|国民生活基礎調査(平成25年)の結果から(平成26年、厚生労働省)
このデータを見ると、先ほどのNHKの記事にもある通り、高齢化が進み、年金生活などの収入の低い「高齢者世帯」が増えていることが要因の一つであることが関係しているのがうかがえます。
参考画像:世帯数と平均世帯人員の年次推移|グラフで見る世帯の状況|国民生活基礎調査(平成25年)の結果から(平成26年、厚生労働省)
参考画像:世帯構造別にみた世帯数の構成割合の年次推移|グラフで見る世帯の状況|国民生活基礎調査(平成25年)の結果から(平成26年、厚生労働省)
2つのグラフを見ると、世帯数が増加傾向にあり、また、「単独世帯」「夫婦のみ世帯」が増加傾向にあることがわかります。
このことから、収入が高かったシニア世代が定年で所得が減ったことや親世代との同居が減ったことによって世帯年収が低くなっていることが考えられます。
つまり、先ほどの世帯年収の中央値のデータは、社会の構造が大きく変化しているため単純に比較するのは難しいのです。
例えば、世帯年収の中央値を増加させるアイデアを考えてみると、「単独世帯」「夫婦のみ世帯」が親世代と同居をすると優遇する政策を出したり、企業が「単独世帯」「夫婦のみ世帯」の収入を高めると税金を低くするという政策を出すと、もしかすると、変わっていくかもしれません。
ただ、こうしたアイデアを出したとしても、「介護」という問題が加わったとき、また違ったことが起こるかもしれません。
アメリカのプライム世代の女性の36%が「介護」を理由に仕事に就けない!?|働き盛り世代が無償の介護をしなければならない問題を解決するアイデアで紹介した米ブルッキングス研究所(Brookings Institution)のハミルトン・プロジェクト(The Hamilton Project)が発表した報告書によれば、アメリカでは2016年、成人の3分の1(37.2%)以上が仕事に就いておらず、そのうち「働き盛り世代」(25~54歳)に当たる人たちの5分の1近くが就業していないそうです。
その理由としては、仕事に就いていないのではなくて、女性の36%が介護を理由に仕事に就けないというのが正確な理由であり、アメリカのベビーブーマー世代が高齢化するにつれて、介護の需要に供給が追い付かず、自宅で介護を受けており、親の介護をする結果、就労することができないというのが現状のようです。
就労できずに自宅で親の介護をしなければならない理由としては、必要な介護を受けるための経済的な仕組みが整っていないこと、介護を必要とする高齢者の増加、そして、介護を必要とする期間の長期化が挙げられています。
高齢者との同居をすると考え、家族が無償の介護をした場合、家族内で主介護者役割を担う人が無償の介護を行なわずに就労していた場合の収入や年金を考えると、大きな損失を生むことが予想されます。
「単独世帯」「夫婦のみ世帯」が親世代と同居をすると優遇するというアイデアを仮に出したとしても、親の介護をしなければならない問題が出てきた場合には、世帯年収が下がるとも考えられ、物事はそう簡単には解決できないことがわかります。
大事なことは、予めこうなることが予想ができたであろうことを対策できていなかったことが問題であるということであり、少子高齢化社会に突入している現在において少子高齢化社会をチャンスに変えるアイデアと実行が必要になってくるということです。
「少子高齢化による高齢化社会は日本にとってのビジネスチャンス(医療・介護など)になる!」と発想を転換してみない?でも紹介しましたが、少子高齢化社会をチャンスととらえようという動きも出ています。
例えば、大人用紙オムツの売上が子供用オムツの売上を追い抜いた!?|日本の紙おむつが国際規格化|高齢化社会がビジネスチャンスに変わる!?によれば、大人用紙おむつの評価方法に関する規格「ISO15621尿吸収用具―評価に関する一般的指針」が改訂し、欧米の「テープ止め型(体にテープで固定するタイプ)」ではなく、日本が提案する装着車の症状や生活環境に合わせたきめ細かい高齢者介護学科脳になるパンツ型やテープ止め型のおむつに吸着パッドを挿入するタイプなどを規格化されました。
つまり、世界に先行して高齢化社会に突入している日本は、医療費削減のアイデアやよりよい介護の方法を実行できる立場にあり、それらのやり方をスタンダードにすることができるというビジネスチャンスがあるのではないでしょうか?
また、こうした考え方を発展させれば、人間と機械(人工知能・ロボット)と一体化して、人間の能力を強化・拡張していくことによって、未来の社会基盤を構築していくことにもつながると思います。
高齢化社会をベースにすると発想を転換すると、それに合わせたテクノロジーが生まれることによって、もしかすると、若者にとっても過ごしやすい社会になるかもしれませんし、すでにそうした兆しも見えています。
すでに大きく社会構造は変化しているのですから、昔のような方法で世帯年収を増やそうと考えるのは難しいと思います。
昔の古い考え方に合わせるのではなく、新しい時代の考え方に適応して、少子高齢化こそ新しいものを生み出すチャンスととらえると、また違った世界が見えてくるかもしれませんね。
The reasonable man adapts himself to the world; the unreasonable one persists in trying to adapt the world to himself. Therefore all progress depends on the unreasonable man.
- George Bernard Shaw (バーナード・ショー) -
理性的な人間(物わかりのいい人)は自分自身を世界に適応させる。
非理性的な人間(わからず屋)は世界を自分自身に適応させようと固執する。
それゆえに、すべての進歩は非理性的な人間のおかげである。
【関連記事】
- 要介護者の排泄の自立支援、介助者の負荷軽減の目的で作られた『ベッドサイド水洗トイレ』|トイレに自分が行くのではなく、トイレの方が自分のところに来るというアイデア
- 膝や足首への負担を軽減!階段の上り下りをアシストするエネルギーリサイクル階段|ジョージア工科大学・エモリー大学
- SUPERFLEX社、高齢者の動きをサポートして衣服の下から着ることができるパワードスーツ「AURA(オーラ)」を開発
- アメリカのプライム世代の女性の36%が「介護」を理由に仕事に就けない!?|働き盛り世代が無償の介護をしなければならない問題を解決するアイデア
- リハビリや高齢者のフレイル対策に!体重の負担を減らして有酸素運動を行なう反重力(空気圧・水中)トレッドミル
【関連記事】