ロコモの要因となる3つの病気とは?|ロコモティブシンドロームチェック・ロコモにならないための運動のやり方によれば、ロコモティブシンドロームは日本整形外科学会が提唱した、骨や関節などの運動器の障害のため、要介護状態になる危険性が高いことを示す概念です。
ロコモティブシンドロームの要因となる病気は、骨粗鬆症・変形性関節症・脊柱管狭窄症の3つの病気で、こうした病気になることで、運動器の障害が生まれ、要介護状態になる危険性が高くなるため、注目を集めています。
しかし、このロコモが子供に現れているというニュースを見つけました。
「前屈」「雑巾がけ」できない…子どもの運動機能に異変「子どもロコモ」とは? 原因は「姿勢の悪さ」や「運動不足」に(2024/2/20、BSS山陰放送)を詳しく読んでいただくことにして、簡単にまとめてみます。
- 近年、子どもたちの間でも、バランス能力や柔軟性が低下した「子どもロコモ」が増加傾向にある
- 柔軟性の低下の例:しゃがみ込みができない、体前屈ができない、肩が垂直に上がってこない
- バランス能力低下の例:雑巾がけができない(体を支えられず顔面を打つ)
全国ストップ・ザ・ロコモ協議会 林承弘 理事長によれば、スマホによる姿勢の悪さ、運動不足によって体が硬くなっている、コロナや便利なモノで身体を動かさなくなったことによって、子供たちが全身を動かす機会が減ったことが子供ロコモにつながっているとあります。
園児の紐を結べない、箸が使えないといった日常生活の技能が低下|手を動かすことが、いかに脳を使うことにつながっているか(2016年)で紹介した全国国公立幼稚園・こども園長会が公表した調査によれば、幼稚園に通う子供たちに、紐(ひも)を結ぶ、箸(はし)を正しく持って使うといった日常生活の技能の低下が起きているそうです。
また、現代の幼児は、泳ぐことや靴紐を締めることよりも早く、ITスキルを覚える(2012/2/5)で紹介したセキュリティ・ソフトウェア・ベンダーの米AVG社が米国、カナダ、英国、フランス、イタリア、ドイツ、スペイン、日本、オーストラリア、ニュージーランドの、2歳から5歳の子供を持つ2200人の親たちを対象に調査を行ったところ、2歳から3歳の幼児のうち、自分で靴の紐を締められるのはわずか9%に過ぎなかったそうです。
なぜそのようになったのかの理由として紹介されていたのは、紐を結ばずに済む靴が普及したことや握る動作が必要なジャングルジムなどの遊具の減少によって、手足を使う遊びの機会が少なくなり、手先の器用な動かし方や力加減を学びにくくなっているからとありました。
つまり、全身を使って体を動かす遊び・運動をする機会が減ったことによって、体の柔軟性が低下し、バランス能力が低下した「子どもロコモ」が増え、また、紐(ひも)を結ぶ、箸(はし)を正しく持って使うといった日常生活の技能の低下が起きている可能性があるようです。
■子どもロコモのチェック方法
片足立ちで5秒間以上ふらつかずに立っていられるか。
途中で止まったり後ろに転んだりせずにしゃがむことができるか。
腕をまっすぐ上にあげることができるか。
前屈をして指が楽に床につくか。
ロコモの要因となる3つの病気とは?|ロコモティブシンドロームチェック・ロコモにならないための運動のやり方では、ロコモティブシンドロームかどうかを点検する「ロコチェック」を紹介しましたが、中高年・高齢者と子供との違いがあるようですね。
点検項目は、
(1)片脚立ちで靴下がはけない
(2)家の中でつまずいたり、滑ったりする
(3)階段を上るのに手すりが必要
(4)横断歩道を青信号の間に渡りきれない
(5)15分くらい続けて歩けない
-の5種類。上記の5種類のうち1つでも当てはまれば、「ロコモ」の可能性があるそうです。
中高年・高齢者と子供に共通するのはバランス能力であり、違う点は高齢者が運動能力の衰え、子供が柔軟性にあるようです。
■
子供ロコモを改善する方法として提案されているのが「子どもロコモ体操」。
意識するポイントは、肩甲骨、股関節、足の指の3つです。
まずは手を頭の後ろで組み、足を肩幅に開きます。息を吸いながら腕を後ろへ、息を吐きながら前に戻し、肩甲骨を動かします。
続いて、大きく伸びの運動。背伸びをして身体を大きく前に倒します。背中が丸まらないように気を付けましょう。
そして、スクワット。手を前に突き出し、肩甲骨を伸ばすようにして腰を下ろします。この時、足の親指が浮かないよう注意が必要です。
肩甲骨に関してはスマホ巻き肩を意識していると考えられます。
スマホ巻き肩とは?|肩こり・偏頭痛・耳鳴りの原因にもで紹介たスマホ巻き肩に詳しい首都大学東京の竹井仁教授(理学療法士)によれば、スマホ巻き肩とは「頭が前に出て肩を丸めた姿勢でやっているので、猫背になり肩が内側に丸まった状態」なのだそうで、スマホ巻き肩を長時間続けると、筋肉が硬直して血流が悪くなり、肩こりの原因になるそうです。
もう一つ気になったのは「足の親指が浮かないよう注意が必要」というところ。
子どもの肩こりを解消する方法|猫背と肩こり・猫背の子どもが増えている理由(浮き指)によれば、「浮き指」というのは、足の指先が地面に着かないことをいいますが、この浮き指がある子どもは約8割を超えているそうです。
「浮き指」があると、足の前方に力が入らないため、かかとに重心がかかり、バランスを取るために、体は膝を曲げ、腰が落ち、肩が前に出る猫背になりがちなのだそうです。
浮き指の原因としては次のようなことが挙げられています。
浮き指になる原因は、赤ちゃんのときに、つかまり立ちや、つたい歩きをしない、幼児期や学童期に歩く距離が短い、足の指を使う雑巾がけなどの運動をしなくなったなどが原因として考えられるそうです。
子どもロコモになって雑巾がけの姿勢がとれなくなったのではなく、雑巾がけなどの足の指を使う運動をしなくなったことで浮き指になり、体のバランスが変わってしまって、足の前方に力が入らず、かかとに重心がかかり、バランスを取るために、体は膝を曲げ、腰が落ち、肩が前に出る猫背になりがちになっていると考えられます。
そう考えると、足の指を意識した運動「タオルギャザートレーニング(足の指を使ってタオルをつかむ)」をするのも子どもロコモ解消に役立つかもしれませんね。
■まとめ
■手を動かすことが、いかにたくさん脳を使うことにつながっているか
手先を使う動作が減ったことで、生活技能が低下していることが心配されていますが、もう一つ心配されるのは手や指を動かすことが脳の発達とも関係している点です。
こちらの画像は有名なホムンクルス人形です。
by Mike(画像:Creative Commons)
「海馬 脳は疲れない」(著:池谷裕二・糸井重里)によれば、ホムンクルス人形(体のそれぞれの部分を支配している「神経細胞の量」の割合を身体の面積で示した図)によれば、手や舌に関係した神経細胞が非常に多いそうです。
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また、「愛撫・人の心に触れる力」(著:山口創)でも同様の説明がなされています。
解剖学者のワイルダー・ペンフィールドによる有名なホムンクルスの図である。様々な身体部位を司る脳の部位は異なっており、その大きさも異なる。そこで、それぞれの身体部位に占める脳の割合の大きさから逆算して、体の大きさを描いたものである。これをみると、脳の中で背や腹よりもいかに手と口の周辺が占める割合が大きいかがよくわかるだろう。
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「海馬 脳は疲れない」(著:池谷裕二・糸井重里)によれば、指をたくさん使えば使うほど、指先の豊富な神経細胞と脳とが連動して、脳の神経細胞もたくさん働かせる結果になるそうです。
現代の幼児はスマホやタブレットなどを簡単に使いこなしているため、手先が器用なように見えるかもしれません。
しかし、同じような動作ばかりではなく、さまざまな手先を使う動作を繰り返し、器用な動かし方や力加減を覚えていくことが重要なのではないでしょうか?
「手を動かすことが、いかにたくさん脳を使うことにつながっているか」
大人が一度考える問題なのではないでしょうか。