睡眠時無呼吸症候群と認知症に関連する論文について調べてみました。
Andrade AG, Bubu OM, Varga AW, Osorio RS. The Relationship between Obstructive Sleep Apnea and Alzheimer’s Disease. J Alzheimers Dis. 2018;64(s1):S255-S270. doi: 10.3233/JAD-179936. PMID: 29782319; PMCID: PMC6542637.
■閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)とアルツハイマー病(AD)の関連性
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)とアルツハイマー病(AD)は互いに関連している可能性があります。
OSAは睡眠中の上気道閉塞による低酸素症や睡眠の断片化を引き起こし、認知障害(特に注意力や実行機能)や心血管合併症を伴います。
OSAが睡眠構造の乱れ(睡眠の断片化・低酸素症)、酸化ストレス、心血管リスクを通じてAD発症リスクを高める可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群の患者は正常眼圧緑内障のリスクが高い!SAS対策のやり方!によれば、無呼吸発作が起きると、血中酸素飽和度も下がることがわかっています。
AD患者の約50%がOSAを併発し、OSAがAD症状を悪化させる可能性があること、CPAP治療はOSA患者の認知機能低下を遅らせることから、睡眠時無呼吸症候群の人にCPAP治療をすることによって、アルツハイマー型認知症の予防につながる可能性があります。
Ooms S, Overeem S, Besse K, Rikkert MO, Verbeek M, Claassen JA. Effect of 1 night of total sleep deprivation on cerebrospinal fluid β-amyloid 42 in healthy middle-aged men: a randomized clinical trial. JAMA Neurol. 2014 Aug;71(8):971-7. doi: 10.1001/jamaneurol.2014.1173. PMID: 24887018.
■睡眠不足だとアルツハイマー病のリスクが上がる?
脳にあるβアミロイド(Aβ)というタンパク質に睡眠が影響することがわかってきており、睡眠が足りないと、アルツハイマー病になりやすくなるかもしれないと考えられています。
健康な中年男性が1晩寝ないと、脳の中のAβ42という物質がどうなるかを調べたところ、ちゃんと寝たグループではAβ42が6%(25.3 pg/mL)減ったが、寝なかったグループでは減らなかったそうです。
つまり、睡眠不足だと脳にAβ42がたまって、アルツハイマー病のリスクが上がる可能性があるそうです。
睡眠時無呼吸症候群が慢性的な睡眠不足だと捉えると、睡眠時無呼吸症候群はアルツハイマー型認知症のリスクを上げると考えられるのではないでしょうか?
Guay-Gagnon M, Vat S, Forget MF, Tremblay-Gravel M, Ducharme S, Nguyen QD, Desmarais P. Sleep apnea and the risk of dementia: A systematic review and meta-analysis. J Sleep Res. 2022 Oct;31(5):e13589. doi: 10.1111/jsr.13589. Epub 2022 Apr 2. PMID: 35366021.
■睡眠時無呼吸症候群と認知症のリスク
睡眠時無呼吸がアルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症とどう関係するか、過去の研究をまとめて分析したところ、睡眠時無呼吸がある人は、認知症全体(1.43倍)、アルツハイマー病(1.28倍)、パーキンソン病(1.54倍)になるリスクが高いことがわかりました。
レビー小体型認知症も1つの研究で2倍になる可能性が示されたが、血管性認知症とのつながりは弱かったそうです。
■まとめ
1)睡眠時無呼吸とアルツハイマー病のつながり
睡眠時無呼吸(OSA)は寝ているときに呼吸が止まり、酸素が減ったり睡眠が乱れたりする病気。これが注意力や心臓に影響を与え、アルツハイマー病(AD)のリスクを上げる可能性がある。AD患者の約半数がOSAを持っていて、CPAP治療で睡眠を改善するとAD予防に役立つかもしれない。
2)睡眠不足がアルツハイマー病を増やす?
睡眠が足りないと、脳にβアミロイド(Aβ42)という物質がたまりやすくなる。実験では、1晩寝なかった人はAβ42が減らず、ちゃんと寝た人は6%減った。睡眠時無呼吸による慢性的な睡眠不足も、同じようにADリスクを高める可能性がある。
3)睡眠時無呼吸と色々な認知症のリスク
睡眠時無呼吸がある人は、認知症全体(1.43倍)、アルツハイマー病(1.28倍)、パーキンソン病(1.54倍)になりやすい。レビー小体型認知症も2倍になる可能性があるけど、血管性認知症との関係は弱いことがわかった。
睡眠時無呼吸(OSA)はアルツハイマー病(AD)のリスクを高める可能性があること、また、AD患者の約半数がOSAを持ち、睡眠不足で脳にβアミロイド(Aβ42)がたまることから、慢性的な睡眠不足がADを増やすと考えられること、研究では、OSAがある人は認知症全体(1.43倍)、AD(1.28倍)、パーキンソン病(1.54倍)、レビー小体型認知症(2倍)のリスクが上がるが、血管性認知症とのつながりは弱いことから、睡眠時無呼吸症候群の治療をすることが認知症が全面的に役立つとは言えないものの、CPAP治療で睡眠を改善することが認知症予防に役立つ方法の一つと言えそうです。
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