閉経が早い女性の特徴とは?

閉経が早い女性の特徴とは?




これまで閉経後の病気のリスクや閉経が早い女性の病気のリスクに関して取り上げてきました。

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今回は閉経が早い女性(早期閉経、通常40歳未満での閉経、または卵巣機能不全を指す)の特徴があるのかということについて、論文ベースで簡潔にまとめます。

1. 遺伝的要因

家族歴: 早期閉経の女性は、母親や姉妹など近親者に同様の病歴を持つことが多い。特定の遺伝子変異(例: BRCA1/2、FMR1遺伝子のプレミューテーション)が関連している(Venturella et al., 2016; Qin et al., 2015)。

遺伝性疾患: ターナー症候群や脆弱X症候群など、染色体異常や遺伝子変異が早期閉経のリスクを高める(Sullivan et al., 2011)。

BRCA1/2やFMR1遺伝子のプレミューテーションと早期閉経の関連は広く知られていて、ターナー症候群や脆弱X症候群といった染色体異常や遺伝性疾患も重要な要因です。

2. 生活習慣

喫煙: 喫煙は卵巣機能の低下を早め、閉経年齢を1~2年早める可能性がある(Sun et al., 2012)。これはタバコに含まれる化学物質が卵胞の損傷を引き起こすため。

低体重・BMI: 低いBMI(18.5未満)の女性は、ホルモン分泌の乱れにより早期閉経のリスクが高まる(Mishra et al., 2017)。

生喫煙が閉経を早めるというエビデンスは確立されています。

低BMIとの関連も指摘されていますが、BMIと閉経年齢の関係は複雑で、高BMIとの関連を指摘する研究もあります(ただし、早期閉経との関連で低BMIが強調されることが多いのは確かです)。

3. 医療的要因

化学療法・放射線治療: がん治療による卵巣へのダメージは、早期閉経の主要な原因(Chemaitilly et al., 2015)。

手術: 子宮摘出や卵巣摘出術を受けた女性は、閉経が早まる(Farquhar et al., 2005)。

化学療法や放射線治療による卵巣機能への影響は深刻です。

子宮摘出のみの場合、卵巣が残っていれば直ちに閉経するわけではありませんが、血流の変化などにより卵巣機能が早期に低下する可能性が示唆されています。

卵巣摘出術は当然ながら閉経を引き起こします。

4. 自己免疫疾患

甲状腺疾患や関節リウマチなどの自己免疫疾患が卵巣機能を損なう可能性があり、早期閉経と関連(Goswami & Conway, 2005)。

甲状腺疾患との関連はよく知られています。他の自己免疫疾患との関連も研究が進んでいます。

5. 環境要因

環境中の内分泌かく乱物質(例: フタル酸エステル類、ビスフェノールA)への暴露が卵巣機能を低下させ、閉経を早める可能性がある(Vabre et al., 2017)。

6. 社会経済的要因

低い教育水準や経済的困窮は、ストレスや栄養不良を通じて間接的に早期閉経のリスクを高める可能性がある(Gold et al., 2001)。

■注意点

診断には血中FSH(卵胞刺激ホルモン)やAMH(抗ミュラー管ホルモン)の測定が用いられることが多い(Nelson, 2009)。

■まとめ

早期閉経は多因子性であり、個人差が大きく、すべての女性に当てはまる特徴は存在しないのですが、生活習慣、特に喫煙が閉経を早めるというエビデンスは確立されていますので、気を付けましょう。







【参考文献】

Venturella, R., et al. (2016). Human Reproduction Update.

Qin, Y., et al. (2015). Nature Reviews Endocrinology.

Sullivan, S. D., et al. (2011). Fertility and Sterility.

Sun, L., et al. (2012). Menopause.

Mishra, G. D., et al. (2017). Human Reproduction.

Chemaitilly, W., et al. (2015). Journal of Clinical Oncology.

Farquhar, C. M., et al. (2005). BJOG.

Goswami, D., & Conway, G. S. (2005). Human Reproduction Update.

Vabre, P., et al. (2017). Environmental Health Perspectives.

Gold, E. B., et al. (2001). American Journal of Epidemiology.

Nelson, L. M. (2009). New England Journal of Medicine.