エストロゲンの抗炎症作用と閉経(更年期)による慢性炎症の広がりについてまとめました。
2020年に学術誌 Journal of Neuroinflammation に掲載された論文によれば、周閉経期(peri-menopause:閉経前後の移行期)を「全身的な炎症性のフェーズ」や「炎症イベント」と位置づけ、エストロゲン低下が慢性低度炎症を引き起こし、後の神経変性疾患リスクを高めるメカニズムを解説しています。
■エストロゲンって、どんなホルモン?
エストロゲンは女性ホルモンの代表格です。
実は「女性らしさを作る」だけでなく、体の中で炎症を抑えるブレーキのような役割も果たしています。
・けがや感染で体が炎症を起こしたとき、過剰に広がらないようコントロールする
・免疫細胞の働きを整え、体を守る
閉経前の女性では、周期的なエストロゲン分泌がこれらの保護作用を維持し、このブレーキがしっかり効いている状態で、炎症を適度にコントロールしています。
■閉経になると何が起こる?
閉経(更年期)になると、卵巣からのエストロゲンが急に減ります。
すると、これまで効いていた炎症を抑えるブレーキが外れてしまうのです。
その結果、
・体のあちこちで「弱いけれど続く炎症」が起きやすくなる
・この状態を「低度慢性炎症」と呼びます
周閉経期は「炎症イベント」として、急性の強い炎症ではなく、持続的な軽度炎症が特徴です。
これが卵巣自体のさらなる機能低下を加速させる悪循環を生む可能性も指摘されています。
結果として、閉経後に心血管疾患、骨粗鬆症、代謝異常、脳卒中、アルツハイマー病などのリスクが急増する一因となります。
炎症が血液脳関門を弱め、脳内の神経炎症を促進するためです。
■この慢性炎症がもたらす影響
弱い炎症が長く続くと、体に負担がかかりやすくなります。
たとえば、
・心臓や血管の病気
・骨がもろくなる
・脳の働きが落ちやすくなる(アルツハイマー病などのリスク)
・関節の痛みや疲れやすさ
などと関係があると考えられています。
■まとめ
簡単に言うと、「エストロゲンは体の炎症を抑え続ける『天然の抗炎症薬』のような存在。
閉経でそれが失われると、体が低度の慢性炎症状態にシフトし、いろいろな病気のリスクが高まる」ということです。
この概念は「inflammaging(炎症加齢)」の女性特有の側面として重要です。
研究はまだ進行中で、すべての女性に同じように当てはまるわけではなく、肥満・生活習慣・遺伝・ストレスなども影響します。
しかし、「閉経=ただホルモンが減るだけ」ではなく「体の炎症のバランスが変わる大きな転換点」だと知っておくと、体調の変化を理解しやすくなります。
気になる症状がある場合は、自己判断せず医師に相談するのがおすすめです。
【参考文献】
- McCarthy M, Raval AP. The peri-menopause in a woman’s life: a systemic inflammatory phase that enables later neurodegenerative disease. J Neuroinflammation. 2020 Oct 23;17(1):317. doi: 10.1186/s12974-020-01998-9. PMID: 33097048; PMCID: PMC7585188.
→ 更年期障害の症状・原因・チェック について詳しくはこちら
■補足1
川端輝江教授(女子栄養大学)によれば、オメガ3脂肪酸が脳梗塞、心筋梗塞、骨粗鬆症の元となる炎症を抑制してくれるので、青魚を積極的に食べることがお勧めなのだそうです。
→ オメガ3脂肪酸|オメガ3の効果・効能・食べ物(オイル)・ダイエット について詳しくはこちら
■オメガ3の抗炎症効果
EPAの筋損傷・筋肉痛緩和効果https://t.co/3O9vGPUKGx
”EPAを摂取することで、運動負荷による筋肉の損傷そのものを防ぐこと、また筋肉の損傷によって引き起こされる炎症反応を抑える抗炎症効果がみられました。”#EPAhttps://t.co/EfLKZyjO4g#オメガ3https://t.co/HwEDAW6JtY
— 40代・50代のためのライフスタイル(健康・美容・お金) (@4050health) January 18, 2020
肝臓がん予防によい食事・食べ物で紹介した国立がん研究センターの多目的コホート研究(魚、n-3不飽和脂肪酸摂取量と肝がんとの関連について)によれば、オメガ3脂肪酸の多い魚およびオメガ3脂肪酸摂取量が多いグループの肝がん(肝臓がん)リスクは低いと報告されています。
なぜオメガ3は肝がんのリスクを下げるのでしょうか?
それは、オメガ3の抗炎症作用とインスリン抵抗性の改善作用です。
オメガ3には抗炎症作用があると報告されており、肝臓がんの多くは慢性肝炎を経て発症するため、オメガ3による抗炎症作用を通して肝がんの発生を抑えているのではないかというのが一つ。
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■補足2
加齢は特定の年齢(34歳、60歳、78歳)で急激に変化する!
スタンフォード大学が行った研究によれば、加齢は「少しずつゆっくり進む」ものではなく、特定の年齢で急激に変化する「急変点」があることがわかりました。
具体的には、34歳、60歳、78歳頃に、血液中のタンパク質の量が一気に変わる波が観察されました。
つまり、加齢とは単なる時間の積み重ねではなく、段階的に「シフト」しているのではないかという考え方です。
この考えを参考にすると、34歳、60歳、78歳ごろに加えて、女性の場合は閉経の時期(45歳ごろ)を「体の炎症のバランスが変わる大きな転換点」と捉えて、健康管理の仕方を調節していくのがいいのではないでしょうか?
■補足3
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