米国退役軍人を対象に、うつ病が心不全(心臓が十分に血液を送り出せなくなる病気)の発症リスクにどう影響するかを調べた研究によれば、うつ病がある退役軍人は、そうでない人に比べて心不全を発症するリスクが高いことがわかりました。
■研究の結果
参加者の特徴: 約8%(約22.6万人)がうつ病と診断されていた。
心不全の発症率:
うつ病がある人:10,000人年あたり136.9人が心不全を発症。
うつ病がない人:10,000人年あたり114.6人が心不全を発症。
うつ病がある人は、うつ病がない人に比べて心不全のリスクが14%高い(ハザード比1.14)。
特に、他の病気がない人では、うつ病による心不全リスクが58%も高かった(ハザード比1.58)。
■まとめ
うつ病がある退役軍人は、そうでない人に比べて心不全を発症するリスクが高いこと、特に他の病気が少ない人では、うつ病の影響がより強く出ることが示されたことから、うつ病の治療をすることが心不全の予防につながること、うつ病患者には心臓のケアも重要であるということですね。
【参考リンク】
- Pfaff JL, Eden SK, Kundu S, Alcorn CW, Garry J, Greevy RA, Stewart JC, Freiberg MS, Brittain EL. Depression and Heart Failure in US Veterans. JAMA Netw Open. 2025 May 1;8(5):e259246. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2025.9246. PMID: 40338547; PMCID: PMC12062911.
最近の研究では、食べ物によって腸内細菌叢が変化し健康(体も心も)に影響を与えることがわかってきていています。
魚介類を多く食べる人はうつ病の発症率が低くなる傾向|オメガ3(EPA・DHA)が多いと発症率が低くなる|国立がん研究センター・慶応義塾大学で紹介した国立がん研究センターと慶応義塾大学のチームが「トランスレーショナル・サイカイアトリー」に発表した疫学調査によれば、魚介類を多く食べるグループは、そうでないグループに比べてうつ病の発症率が低くなる傾向にあることがわかっています。
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これを考えると、うつ病によって心不全リスクが上がるという説と、うつ病になりやすい人は心不全リスクが上がりやすい生活習慣(食習慣)をしている可能性もあるということも考えられます。
心不全が増加しているのは、動脈硬化の増加→心臓病(心筋梗塞・狭心症など)の増加であり、超高齢化社会においては心不全の患者は急激に増えることから「心不全パンデミック」といわれています。
心不全による入院患者数は、2012年の約21万人から2016年には約26万人と、毎年1万人ずつ増加しているそうです。
ニュースを見ていると心不全で亡くなった有名人の方のニュースをよく見かけるため、新型コロナウイルスの後遺症やワクチンの副作用によるものを疑う声も多いのですが、実は大きなトレンドとして超高齢化社会においては心不全の患者が増えるというものがありました。
今回の件を合わせて考えると、うつ病と心不全の関係もあわせてみていくことで、うつ病と心不全を防ぐ生活習慣というのも見えてくるかもしれませんね。