先日生乾き臭への対策について調べたのですが、他の方の投稿で新たな疑問が生まれました。
→ 論文でわかる生乾き臭の正体と対策/科学が示す60℃洗浄・酸素系漂白剤・急速乾燥
その投稿を簡単にまとめると、その方の離れたところで一人暮らしをしているお子さんの部屋干ししている衣類があまり臭かったので、漂白剤など洗い方を教えたというものなのですが、部屋干しを続けている部屋への影響はないのでしょうか?
例えば、部屋干しを続けると室内の生乾き臭の原因菌が多くなるみたいなことが起きないのかな?などです。
調べた結果、「部屋干し(特に浴室干し)をすると室内が生乾き臭の原因菌だらけになる」という強い証拠は現時点の論文ではあまり見当たりませんでした。
部屋干しの主な影響は湿度の上昇です。
菌そのものが大量に空気中に飛散して部屋全体を汚染する、というよりは、湿った衣類上で菌が増え、ニオイが室内に広がると考えられます。
■生乾き臭の原因菌はもともと室内にいる
生乾き臭の主な原因は、Moraxella osloensis(モラクセラ・オスロエンシス)という細菌です。
この菌は皮脂などを分解して、4-メチル-3-ヘキセン酸(4M3H)という臭い物質を出します。
Kubotaら(2012)の研究では、この菌が日本の家庭のさまざまな場所から高頻度で検出されています。
- 浴室の排水口・壁
- 洗面台まわり
- キッチンのシンクやスポンジ
- 洗濯機のフィルター
- 玄関やトイレの床
つまり、部屋干しをしなくても、すでに室内(特に水回り)に普通にいる常在菌なのです。
部屋干しをしたからといって新たに生まれる、持ち込まれる菌ではないということです。
■部屋干しが室内に与える主な影響は「湿度」
研究によれば、1回の洗濯分を室内で干すと、約2リットルの水分が空気中に放出されることが報告されています(Glasgowの研究など)。
冬場などでは、室内乾燥が家庭内の水分発生の1/3近くを占めることもあるそうです。
湿度が上がると、カビ(AspergillusやPenicilliumなど)やダニが増えやすくなり、アレルギーや喘息のリスクが上がる可能性があります。
浴室干しは特に換気が悪く湿度がこもりやすいため、カビが発生しやすい環境になります。
これは「モラクセラ菌が空気中に大量に増える」というより、湿気そのものが問題です。
■菌が空気中に飛散して部屋を汚染する証拠は弱い
現時点で見つかった論文を見る限り、部屋干しした衣類からモラクセラ菌が大量にエアロゾル化して空気中を漂い、部屋全体を長期的に汚染する、という明確なデータは少ないです。
むしろ、衣類が湿った状態で長く置かれると、その衣類上で菌が増殖し、ニオイが室内に広がると考えられます。
高湿度の乾燥条件では、衣類上のグラム陰性菌(モラクセラを含む)が増えやすい、という報告があります(2025年のlaundry microbiome研究など)。
つまり、「部屋干し → 室内の空気がモラクセラだらけになる」というより、「部屋干し → 衣類が乾きにくい → 衣類上で菌が増えて臭う → ニオイが室内に広がる」という流れですね。
■まとめ
部屋干しすると湿度が上昇し、衣類の菌が増殖、においが発生し、カビやダニが増加しやすくなるので、できるだけ早く乾かす(除湿機・サーキュレーター・換気)、浴室干しは特に換気を徹底するようにしましょう。
【参考文献】
- Kubota H, Mitani A, Niwano Y, Takeuchi K, Tanaka A, Yamaguchi N, Kawamura Y, Hitomi J. Moraxella species are primarily responsible for generating malodor in laundry. Appl Environ Microbiol. 2012 May;78(9):3317-24. doi: 10.1128/AEM.07816-11. Epub 2012 Feb 24. PMID: 22367080; PMCID: PMC3346475.
(モラクセラが生乾き臭の主因であること、家庭内のさまざまな場所から検出されることを示した基本論文) - Porteous, C. et al. (関連するMEARU/Glasgow研究, 2012頃):室内干しによる水分放出量と湿度・カビ・ダニへの影響
- Díez López C, Van Herreweghen F, De Pessemier B, Minnebo Y, Taelman S, Judge K, Ransley K, Hammond C, Batson M, Stock M, Van Criekinge W, Van de Wiele T, Macmaster A, Callewaert C. Unravelling the hidden side of laundry: malodour, microbiome and pathogenome. BMC Biol. 2025 Feb 10;23(1):40. doi: 10.1186/s12915-025-02147-5. PMID: 39924526; PMCID: PMC11809074.
2025年頃の研究は「例:高湿度乾燥条件でグラム陰性菌が増えやすいことを示した近年のlaundry microbiome研究」
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