60℃前後の温水洗浄+酸素系漂白剤、または高温乾燥を組み合わせ、できるだけ早く完全に乾かすことなんだけど、日本で温水洗濯や高温乾燥が普及しにくい環境では、酸素系漂白剤のつけ置き+急速乾燥(除湿機・サーキュレーター・通気性確保)が現実的なのかな。https://t.co/0rCyjXH2pU
— ばあちゃんの料理教室|ばあちゃんの台所から学ぶ、食と健康の知恵 (@4050health) August 3, 2026
「香料で誤魔化すだけでは根本解決にならない」
生乾き臭(部屋干し臭)の主な原因は、洗濯後の衣類に残った皮脂汚れなどを栄養源に増殖するモラクセラ(Moraxella;ヒトや動物の粘膜にすむ常在菌のグループ)などの細菌が、4-methyl-3-hexenoic acid(4M3H)などの臭気成分を生成することで起きます。
花王と愛知学院大学などの共同研究(Kubota et al., 2012, Appl. Environ. Microbiol.)で、この菌が洗濯後の悪臭の主な原因と特定され、乾燥耐性・UV耐性が高く、通常の洗剤だけでは残りやすいことが示されています。
【参考文献】
- Kubota H, Mitani A, Niwano Y, Takeuchi K, Tanaka A, Yamaguchi N, Kawamura Y, Hitomi J. Moraxella species are primarily responsible for generating malodor in laundry. Appl Environ Microbiol. 2012 May;78(9):3317-24. doi: 10.1128/AEM.07816-11. Epub 2012 Feb 24. PMID: 22367080; PMCID: PMC3346475.
松永聡さんの論文「日常生活における洗濯衣料の部屋干し臭とその抑制」(2005, におい・かおり環境学会誌)でも、部屋干し臭のキー成分として中鎖脂肪酸などを分析し、湿度の高い環境での発生メカニズムを報告している。
■洗濯後の悪臭対策
1)高温洗浄(40–60℃以上)
レビュー(Abney et al., 2021, Appl. Environ. Microbiol.)によれば、病原菌・臭気菌の不活化に「温度」が最も重要で、40–60℃超が推奨されています。
低温(特に20℃以下)では洗剤だけでは不十分で、漂白剤添加が必要になります。
モラクセラ・オスロエンシス(M. osloensis)も30℃前後の洗濯では生き残りやすく、60℃前後で大幅に減少するのですが、日本の一般的な冷水・ぬるま湯洗濯では不十分なケースが多いです。
【参考文献】
- Abney SE, Ijaz MK, McKinney J, Gerba CP. Laundry Hygiene and Odor Control: State of the Science. Appl Environ Microbiol. 2021 Jun 25;87(14):e0300220. doi: 10.1128/AEM.03002-20. Epub 2021 Jun 25. PMID: 33962979; PMCID: PMC8231443.
2)酸素系漂白剤(activated oxygen bleach, AOB)などの酸化剤
低温洗濯時に特に有効で、塩素系や活性化酸素漂白剤を使うことで衣類に付いている菌数(微生物負荷)を大幅に減らすことができます。
低温でも洗剤+酸素系漂白剤で効果が上がり、粉末の過炭酸ナトリウム系(オキシクリーン等)を40–60℃程度のお湯でつけ置きする実用法はこの知見と合致します。
3)高温乾燥・急速乾燥
乾燥温度と時間が微生物を減らすことに重要で、湿った状態を長く保つと菌が増殖するため、できるだけ早く完全に乾かす(目安として数時間以内)が大切です。
コインランドリーの高温乾燥機や、家庭用でも高温設定が有効です。
松永らの研究でも、高湿度下での乾燥が臭気成分を増やすことが示されています。
4)その他の補助的なもの
〇汚れの十分な除去(詰め込みすぎず、適量洗剤でしっかり洗浄)。
〇洗濯機自体の衛生(バイオフィルム対策として時々高温サイクル)。
〇抗菌効果を謳う洗剤は「増殖抑制」には役立つが、すでに定着した菌や臭気成分の除去には限界がある場合が多いです。
■まとめ
60℃前後の温水洗浄+酸素系漂白剤、または高温乾燥を組み合わせ、できるだけ早く完全に乾かすのが、論文ベースで最も根拠のある対策なのですが、日本では温水洗濯や高温乾燥が普及しにくい環境であるため、酸素系漂白剤のつけ置き+急速乾燥(除湿機・サーキュレーター・通気性確保)が現実的な落としどころと言えます。
香料でニオイを覆い隠す方法は、根本解決にならないだけでなく、周囲への「香害」を招く可能性もあります。
論文が示すように、菌を減らしてニオイの発生自体を抑えることが、長期的にも健全な対策と言えるでしょう。
こちらのページを参考にしました。
排水系に塩ビ管が多用される(耐熱温度60度程度)、高温で洗う文化がない、軟水で低温でも洗剤の効力が発揮されること、体臭や皮脂がキツい人も少ない、高温に耐える衣類は少ない、電力を多く使うことに罪悪感。https://t.co/CpkKRLMj1e— ばあちゃんの料理教室|ばあちゃんの台所から学ぶ、食と健康の知恵 (@4050health) August 5, 2026
■補足
気になる論文を見つけました。
Díez López C, Van Herreweghen F, De Pessemier B, Minnebo Y, Taelman S, Judge K, Ransley K, Hammond C, Batson M, Stock M, Van Criekinge W, Van de Wiele T, Macmaster A, Callewaert C. Unravelling the hidden side of laundry: malodour, microbiome and pathogenome. BMC Biol. 2025 Feb 10;23(1):40. doi: 10.1186/s12915-025-02147-5. PMID: 39924526; PMCID: PMC11809074.
その論文によれば、洗濯温度の低下や漂白剤使用量の削減は、確かにエネルギー消費や化学物質負荷を減らし、環境に有益。
しかし、それによって衣類上の微生物除去が不十分になるケースがある。
特に高湿度での乾燥条件では、グラム陰性菌(モラクセラを含む)が増えやすく、特徴的な悪臭が発生しやすい。
結果として、悪臭の発生や消費者のウェルビーイングへの悪影響(ニオイによる不快感、場合によっては健康面)につながる、と指摘しています。
この知見は、以前のAbney et al. (2021) のレビューとも整合的です。
温度が微生物不活化の最も重要な因子であり、40–60℃以上(特に60℃前後)が効果的で、低温では酸素系漂白剤などの酸化剤が必要、という点です。
日本の状況を踏まえた私の考え日本は高温多湿で部屋干しが一般的なため、このトレードオフが特に顕著に現れやすい環境です。
環境面:確かに低温洗濯+漂白剤控えめの方がエネルギー消費は少なく、CO₂排出や洗剤負荷を抑えられます。日本の家庭用洗濯機の多くが温水機能を持たない(または使いにくい)現状も、この流れを後押ししています。
ニオイ・衛生・健康面:しかし、日本の高湿度環境では衣類が乾きにくく、菌が増殖しやすい。生乾き臭の原因菌(モラクセラなど)は乾燥やUVにも比較的強く、低温洗濯だけでは残りやすい。
ニオイは単なる不快感にとどまらず、敏感な人にとってはストレス・アレルギー関連のリスクにもつながり得ます。
健康な人にとって重大な感染症リスクは低いものの、「衣類が清潔に保たれない」ことによる二次的な影響は無視できません。
総合的な判断としては、「環境に配慮しつつも、ニオイと衛生を優先して必要に応じて60℃前後の温水洗浄や酸素系漂白剤を使う方が、日本の気候では望ましい」と考えます。
生乾き臭は一度発生すると落としにくく、結果として洗い直しや衣類の買い替えが増え、トータルの環境負荷が高まる可能性があります。
酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム系)は比較的環境負荷が低く、低温でも酸化作用で菌を減らせます。
すべてを毎回60℃にする必要はなく、「タオル・下着・ニオイが気になるもの」「梅雨や高湿度期」に重点的に使う、という選択的アプローチが現実的です。
急速乾燥(除湿機・サーキュレーター)を組み合わせれば、高温洗浄をしなくても菌増殖をかなり抑えられます。
つまり、「環境か衛生か」の二択ではなく、「環境に優しい基本洗濯+必要なときだけ衛生を強化する」と考える方がバランスがよいですね。
「本記事は医療行為の代替ではなく、テレビ・論文・公的資料を一般の生活者向けに噛み砕いたものです」
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