コカ・コーラ ゼロを1日3本飲んで肝臓がE判定?人工甘味料と肝臓・夜のかゆみの関係を論文から調べてみた

Xを見ていると、気になる投稿がありました。

投稿者によると、夜になると体がかゆくなる症状があり、健康診断では肝臓について「E判定」だったそうです。

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お酒は基本的に金曜・土曜に飲む程度。一方で、コカ・コーラ ゼロを1日3本ほど飲んでいたことに気づき、飲むのをやめたところ、体のかゆみがほとんど出なくなってきたとのこと。

そこで気になった疑問がいくつか浮かびます。

・人工甘味料入り飲料を毎日飲むことと肝臓には関係があるのか?
・肝臓が悪くなると体がかゆくなることがあるのか?
・なぜ「夜」にかゆくなるのか?
・コカ・コーラ ゼロと皮膚のかゆみに直接的な関係はあるのか?
・お酒をそれほど飲まなくても肝臓は悪くなるのか?
・人工甘味料入り飲料を1日3本飲んでいたことが「肝臓E判定」に関係している可能性はあるのか?

こちらのギモンについて研究をもとに整理してみたいと思います。

最初に結論をいうと、人工甘味料入り飲料と肝疾患の「関連」を示す研究はあります。また、肝胆道系の病気によって夜に強いかゆみが起こることもあります。

ただし、この2つをつなげて、

「コカ・コーラ ゼロに含まれる人工甘味料が肝臓を悪くして、夜のかゆみを起こした」

とまで断定できる証拠は、現時点ではありません。

■人工甘味料入りのダイエット飲料と肝臓には関係がある?

2025年のUEG Weekで発表された研究では、肝疾患のないUK Biobank参加者123,788人を対象として、砂糖入り飲料と低糖・無糖甘味飲料の摂取と、MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)の発症との関連が調べられています。

その結果、1日250gを超えて低糖・無糖甘味飲料を摂取していた人ではMASLD発症リスクが約60%高く、砂糖入り飲料についても約50%高いという関連がみられました。追跡期間の中央値は10.3年でした。

HAKURAIDOUでも以前、

ダイエット飲料や砂糖入り飲料を飲む習慣がある人は、肝疾患(NAFLD/MASLD)の発症リスクが最大60%高まる可能性

で、この研究を紹介しました。

ここだけを見ると、

「やっぱりダイエット飲料は肝臓に悪いんじゃないか?」

と思ってしまいます。

ただし、この研究は観察研究であり、UEG Week 2025で発表された研究です。

つまり、

「低糖・無糖甘味飲料を多く飲んでいる人でMASLDの発症リスクが高かった」

ことと、

人工甘味料が直接肝臓を傷つけてMASLDを起こした

ことは同じ意味ではありません。

ここを分けて考える必要があります。

■「お酒は金土しか飲まないのに肝臓が悪い」はおかしくない?

「肝臓が悪い」と聞くと、まずアルコールを思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。

しかし、MASLDは、飲酒だけを原因とするものではなく、肥満や糖・脂質代謝などの代謝機能障害と関連して肝臓に脂肪が蓄積する病気です。

そして人工甘味料についても、以前から体重・肥満・メタボリックシンドローム・2型糖尿病などとの関連が研究されています。

HAKURAIDOUでも過去に、

人工甘味料を摂取すると、体重増加や肥満、メタボリックシンドローム、2型糖尿病、心臓疾患のような病気になる可能性がある!?|研究

で、37件の研究を対象とした2017年のシステマティックレビュー・メタ解析を紹介しています。

そこでは無栄養甘味料と体重減少との明確な関連は確認できず、長期の観察研究ではBMI増加や肥満、高血圧、メタボリックシンドローム、2型糖尿病などとの関連が報告されていました。

そのため、

「週末しかお酒を飲まない=肝臓が悪くなる理由がない」

とは限らないわけです。

逆に、

「お酒をあまり飲まない=ゼロコーラが原因」

とも言えません。

体重や腹囲、糖・脂質代謝、食生活、運動、薬剤など、肝機能に関係する別の要素も含めて考える必要があります。

■人工甘味料と腸内細菌・代謝の関係は?

もう一つ以前から研究されているのが、人工甘味料と腸内細菌との関係です。

HAKURAIDOUでは、

人工甘味料で糖尿病リスク増!?|人工甘味料は腸内細菌のバランスを崩して、血糖値が下がりにくい状態にする作用がある!?

で、Natureに掲載されたサッカリンなどの人工甘味料、腸内細菌、耐糖能との関係を調べた研究を紹介しています。

人工甘味料については単純に、

「砂糖が入っていない→カロリーが少ない→健康的」

とだけ考えるのではなく、代謝や腸内細菌なども含めて研究が続けられているわけです。

ただし、これについても、

人工甘味料→腸内細菌の変化→代謝異常→脂肪肝

という一連の流れが、今回のX投稿者の体内で起きたと証明されたわけではありません。

考えられるメカニズムと、その人の病気の原因は分けて考える必要があります。

■では「夜になると体がかゆい」と肝臓には関係がある?

実は、ここが今回調べていて特に興味深かったところです。

肝臓・胆道系の病気では「かゆみ」が起こることがあります。

米国肝臓学会(AASLD)は、胆汁うっ滞性肝疾患でよくみられる症状の一つが「掻痒(かゆみ)」であると解説しています。

手のひらや足の裏に特徴的に現れることがありますが、全身にかゆみが生じる場合もあります。

そして非常に興味深いことに、

かゆみは夜に最も強くなることがある

とされています。

2023年に発表されたシステマティックレビューでも、掻痒は複数の胆汁うっ滞性肝疾患でみられる症状として扱われています。

ですから、

「夜になると体がかゆいから、肝臓が関係している可能性もあるのでは?」

という考えそのものは、医学的にあり得ない話ではありません。

ただし、これは大事なので強調しておきます。

「夜に体がかゆい=肝臓が悪い」という意味ではありません。

皮膚疾患など、かゆみには肝臓以外にもさまざまな原因があるため、かゆみだけから肝臓が原因とは判断できません。

今回の投稿の場合も、肝臓由来の症状だったかどうかは、投稿内容だけでは判断できません。

■コカ・コーラ ゼロをやめたらかゆみが消えた。人工甘味料が原因?

では、コカ・コーラ ゼロをやめる→かゆみがほぼ出なくなったという部分はどう考えればいいのでしょうか?

人工甘味料の一つであるアスパルテームについては、蕁麻疹・血管性浮腫などとの関係が過去に研究されています。

興味深いのは、その結果です。

1993年に行われた多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験では、アスパルテーム含有食品による蕁麻疹・血管性浮腫を経験したと訴えていた人を対象として調べました。

研究に参加できたのは21人と小規模でしたが、確認された反応はアスパルテーム摂取後が2件、プラセボ後も2件で、有意差はありませんでした。研究者らは、アスパルテームがプラセボより蕁麻疹・血管性浮腫を起こしやすいことを示す結果ではなかったと結論づけています。

さらに2015年の二重盲検ランダム化クロスオーバー研究では、「アスパルテームに敏感」と自己申告した48人と対照48人を比較しましたが、評価した症状についてアスパルテームと対照食品との違いは認められませんでした。

ただし、この2015年の研究は「かゆみ」そのものを検証した試験ではありません。

つまり、少なくともアスパルテームについて、「摂取すると一般的に蕁麻疹やかゆみを起こす」とする十分な根拠は、今回確認したヒトの比較試験からは得られませんでした。

もちろん以前に症状を経験した一個人について「絶対に人工甘味料とは関係ない」とも言えません。

しかし少なくとも、コカ・コーラ ゼロ→人工甘味料→皮膚のかゆみという単純な関係が確立しているわけではなさそうです。

■「1日3本」は肝臓E判定と関係している?

ここで最初のX投稿に戻ります。

今回分かっている情報を並べてみます。

コカ・コーラ ゼロを1日3本ほど飲んでいた
健康診断で肝臓が「E判定」
アルコールは基本的に金曜・土曜
夜になると体がかゆい
コカ・コーラ ゼロをやめたところ、かゆみがほぼなくなった

一見すると、きれいにつながっているように見えます。

ゼロコーラを毎日飲む
→ 肝臓が悪くなる
→ 肝臓が原因で夜かゆくなる
→ ゼロコーラをやめる
→ かゆみが改善

しかし本当にこの一本道なのでしょうか?

ここまで見てきた研究からは、そう断定することはできません。

人工甘味料入り飲料の摂取とMASLDとの「関連」を示す研究はあります。

胆汁うっ滞性肝疾患でかゆみがみられ、とくに夜間に強くなることがあることも知られています。

一方で、アスパルテームそのものが蕁麻疹・血管性浮腫を起こしやすいという仮説は、少なくとも確認した小規模ランダム化比較試験では支持されませんでした。

つまり、それぞれについて研究はあるのですが、このX投稿の出来事をすべて一本につなぐ証拠がないのです。

■実は一番知りたいのは「E判定」ではなく具体的な検査値

今回の投稿を読むうえで、一番重要なのに分からない情報があります。

それが、

「肝臓の何の検査値が悪かったのか?」

です。

AST・ALTが高かったのか、γ-GTPが高かったのか、ALPなど胆道系に関連する数値に異常があったのかによって、話は大きく変わります。

また「かゆみ」と肝胆道系疾患の関連を考える場合には、胆汁うっ滞の有無など医療機関での評価が重要になります。

AASLDが紹介する胆汁うっ滞性肝疾患の症例でも、掻痒とともにALPなどの検査値が示されています。

したがって、

「肝臓E判定」だけでは、脂肪肝なのか、別の肝胆道系の問題なのか、あるいはどのような異常だったのかまでは分かりません。

もし再検査を受けて具体的な検査値が分かれば、この話の解像度はかなり上がります。

■「やめたら治った」は原因の証明になる?

そして、今回の話にはもう一つ大事なポイントがあります。

「AをやめたらBが改善した」という経験だけでは、「AがBの原因だった」とまでは証明できません。

今回の場合、

「コカ・コーラ ゼロをやめたらかゆみが改善した」

という本人の観察には意味があります。

しかし、それだけで、

「人工甘味料によって肝臓が悪くなっていたから、人工甘味料をやめたことで肝臓が改善し、かゆみが消えた」

とまでは言えません。

そもそも、かゆみが肝臓由来だったのかも確認されていません。

また「コカ・コーラ ゼロをやめる」という行動では人工甘味料だけではなく、その飲料自体の摂取習慣も同時に変わっています。

だからこそ、再検査の結果が重要になります。

■まとめ:人工甘味料→肝臓→かゆみ、と単純には結論づけられない

今回のX投稿をきっかけに調べてみると、低糖・無糖甘味飲料の摂取とMASLD発症リスクの上昇との「関連」を示す研究はありました。また、胆汁うっ滞性肝疾患では、夜間に強くなるかゆみがみられることもあります。

しかし、

ゼロコーラを毎日飲む
→ 人工甘味料で肝臓が悪くなる
→ 肝臓が原因で夜にかゆくなる

という一連の因果関係が証明されているわけではありません。

むしろ今回の投稿で一番気になるのは、「肝臓E判定」の中身です。

AST、ALT、γ-GTP、ALPなど、どの検査値に異常があったのか。

そこが分からなければ、MASLDなのか、飲酒や別の原因なのか、胆道系の問題とかゆみが関係していたのかを判断することはできません。

「コカ・コーラ ゼロをやめたらかゆみが改善した」という本人の経験は興味深い観察です。しかし、それは原因を特定したこととは別です。

健康診断で肝機能異常を指摘され、かゆみなどの症状も出ている場合は、「人工甘味料が原因だった」と自己判断して終わらせるのではなく、医療機関で再検査を受け、具体的にどの検査値が異常なのかを確認することが重要です。

→ 皮膚がかゆくなる|なぜ肝機能が低下するとかゆみの症状が出るのか? について詳しくはこちら

→ 肝臓の数値(肝機能数値)|ALT(GPT)・AST(GOT)・γ-GTP について詳しくはこちら

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【参考資料】
United European Gastroenterology, UEG Week 2025: artificially sweetened and sugary drinks and MASLD.
リンクはこちら

AASLD, “Management of pruritus in cholestatic liver disease.”
リンクはこちら

Ebhohon E, Chung RT. Systematic review: efficacy of therapies for cholestatic pruritus. 2023.
リンクはこちら

Geha RS, et al. Aspartame is no more likely than placebo to cause urticaria/angioedema: Results of a multicenter, randomized, double-blind, placebo-controlled, crossover study. J Allergy Clin Immunol. 1993.
リンクはこちら

Sathyapalan T, et al. Aspartame Sensitivity? A Double Blind Randomised Crossover Study. PLOS ONE. 2015.
リンクはこちら







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