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【ロマンチックな物理実験】20度の温度で保存したシャンパンの瓶のコルクを開けた直後に、「青みがかった雲」のようなものが放出される

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by Jan Mark Holzer(画像:Creative Commons)




■20度の温度で保存したシャンパンの瓶のコルクを開けた直後に、「青みがかった雲」のようなものが放出される

ぬるいシャンパン、開けると「青い雲」が出現 研究

(2017/9/15、AFPBB)

「CO2がドライアイスの微粒子になり、これが周囲の光を反射することで、青みがかった雲ができる」と、リジェべレール教授は説明する。「この青い雲は、空の青色と物理的成因が同じだ」

 地球の空が青いのは、大気中の微小な分子が、波長が短く周波数が高い青い光を他の色より強く散乱するからだ。

英オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載されたランス大学(University of Reims)のジェラール・リジェべレール(Gerard Liger-Belair)教授による論文によれば、20度の温度で保存したシャンパンの瓶のコルクを開けた直後に、「青みがかった雲」のようなものが放出されることが観察されたそうです。

【参考リンク】

なぜこのような現象が起こるのでしょうか?

リジェべレール教授は、AFPの取材に「20度の瓶は圧力が非常に高い状態(大気圧の8倍程度)になっているため、外に逃げるガスの温度が断熱膨張により、マイナス90度の極低温にまで急激に下がる」と語る。

20度で保存された瓶の中の圧力は非常に高い状態になっており、外に逃げるガスの温度が断熱膨張により急激に下がることで、CO2がドライアイスの微粒子となり、周囲の光を反射することで「青みがかった雲」のようなものができるそうです。

【補足】断熱膨張とは?

断熱膨張実験

雲のでき方(断熱圧縮・断熱膨張)|岩手県立総合教育センター

◎ 外からの熱を加えない状態で空気を圧縮すると温度が上がり,膨張させると温度が下がる。
→これを断熱圧縮・断熱膨張という。

◎ 断熱膨張が起こって露点温度に達した空気は,凝結核がある場合,雲を生成する。凝結核がないと雲はできない。

シャンパンの瓶を20度の温度で保存されることによって、雲ができる前に必要な状態を作り上げているのですね。

【参考リンク】




【補足】なぜ空は青いのか?

はてなぜサイエンス – 空はなぜ青いか? –

空はなぜ青いのですか?|国立科学博物館

地球の大気はこのうち青いほうの光を散乱する性質をもっています。つまり、空気中の分子は、太陽からやってきたうちの青い光だけをつかまえて、別の方向へ放り出す性質があるのです。大気中にはたくさんの分子がありますから、青い光は何回も何回もつかまっては放り出されを繰り返します。そうして青い光は、空じゅういっぱいにひろがり、最後に私たちの目に入ってくるのです。

小話(空はなぜ青くて、夕焼けはなぜ赤いのかな)|富士通研究所

波長の短い青い光は細かいチリにぶつかりやすいので、光があちこちに散らばってしまいます。
一方、波長の長い赤い光は細かいチリの間をス~イスイとすり抜けます。

「空はなぜ青いの?」という質問に対しては、様々な回答の仕方があるものですが、まとめると次のようになります。

太陽の光の色は、赤色、橙色(だいだいいろ)、黄色、緑色、青色、藍色(あいいろ)、紫色(むらさきいろ)の虹の色の7色が混ざり合ってできている。

この7色の光は大気中の空気の分子に当たって散乱し広がっていきます。

青色以外の波長の長い光は細かいチリにぶつかる前に私たちの目に届くために太陽の光として認識し、波長の短い青色は細かいチリにぶつかりやすいので光が散らばってしまい、空が青く見えるのです。

【参考リンク】

【追記(2017/9/18)】

●なぜ夕焼けは赤色なのか?

小話(空はなぜ青くて、夕焼けはなぜ赤いのかな)|富士通研究所

これは、太陽光の空気層を通る距離に関係があります。太陽は沈むにつれて、太陽の位置が私達の真上から横に移動します。そうすると、太陽光の空気層を通る距離は、真上に比べて横の方が距離が長い為、いままで細かいチリの間をすり抜けてきた波長の長い赤い光も、細かいチリにぶつかり散らばり始めます。青い光は波長が短い為、遠くまで光は届かず、私達には赤い光のみが散らばった空が目にうつるので、夕焼けの空が赤く見えるのです。

太陽の位置が移動することによって、太陽光の空気層を通る距離が変わってくることに大きく関係しています。

昼間は、太陽の光が通ってくる空気層の距離が短いため、紫や一部の青い光が散った状態で目に届いています。

太陽が沈むにつれて、太陽の位置が移動し、太陽光の空気層を通る距離が長くなるため、波長の長い赤い光もチリにぶつかり散らばってしまい、また紫や青い光は波長が短いため、遠くまで光が届かず、私たちの目に届くのは赤い光になってしまうため、夕焼け空が赤く見えるのです。

【参考リンク】

●なぜ空は紫色ではなく青色なのか?

赤色、橙色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色が波長の長い順ならば、なぜ空は青色ではないのという質問がありました。

夏の白山と青空(2006/8/24)

この散乱の理論は、イギリスの物理学者 J.W.S レイリーが解明したもので、空気分子による散乱の場合、散乱の量は光の波長の4乗に反比例します。

赤い光と青い光の波長の比は約2:1なので散乱の量は1:16となり、私たちに空が青く見えるのはこのためです(レイリー散乱)。

更に、なぜ空は青より波長の短い紫でないのかと疑問が出てきます。

これは、私たちの目の紫に対する感度が、青の10分の1しかないことや、紫の光は飛び散り過ぎて私たちの目に届かず弱まってしまうことが、原因と言われています。

1.私たちの目の紫色に対する感度が青の10分の1しかないこと、2.紫の光は私たちの目の届く前に弱まってしまうこと、が原因として考えられます。

その他にも関連した質問として、「夕焼けの赤い色が見える前になぜ緑色にならないの?」もありました。

【参考リンク】

■まとめ

記事の中でも、

身近な製品を使ってできるすてきな物理実験

と書かれていますが、青空と同じ原理をシャンパンでできるなんてロマンチックですよね。

実際にはハイスピードカメラで撮影していて肉眼で見ることはできませんが、こういう実験をすると科学に対する関心が高まるのではないでしょうか?

アイデアやテクノロジーの中には「遊び」から生まれたものがある!?|スティーブン・ジョンソン(Steven Johnson)では、楽しむこと、つまり「遊び心」から生まれるアイデアがいくつもあることを紹介しました。

Steven Johnson スティーヴン・ジョンソン:音楽がもたらしたコンピューターの発明

(Oct 2016、TED Studio)

遊び心というのは本質的に探索的であり身の回りの世界に新たな可能性を見つけようとします。この見つけようとするということが単なる愉しみや娯楽として始まったものが大いなる発明に繋がる理由なんです。

大隈氏「役に立つかどうかで科学を捉えると社会はダメになる」ノーベル生理学・医学賞受賞の大隅良典氏が会見

(2016/10/4、日経Gooday)

役に立つかどうかという観点でばかり科学を捉えると、社会をダメにすると思う。科学の世界では、『役に立つ』を、『数年後に実用化できる』と同義語に使うことがあるが、大いに問題だ。その科学が本当に役に立つのは、10年後、20年後かもしれないし、100年後かもしれない。将来を見据え、科学を文化として認めてくれるような社会にならないかと思っている。

ノーベル生理学・医学賞受賞の大隅良典さんが行なっている研究を遊び心というのが正しいのかどうかはわかりませんが、身の回りの世界に新たな可能性を見つけようとするという考え方は一致していると思います。

「役立つから」と考えるのではなく、純粋に楽しみたい・楽しませたいというような「遊び心」を大事にすると、それが数十年後、数百年後にみんなを驚かせるようなアイデアの種になるかもしれません。

もっとワクワクするもの、ロマンチックなものが世界中に広がっていくといいですね。

私たちの上に広がる「青い空」のように(照)。







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