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心理学から設計、ソーシャルアプリ『Path』サービス停止|あなたのSNSには「写真友達」の数は何人いましたか?




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by verkeorg(画像:Creative Commons)

心理学から設計、新ソーシャルアプリ『Path』

(2010/11/17、Wired)

米Facebook社の元幹部やNapsterの創設者が開始した新しいソーシャル・ネットワーク(iPhoneアプリ『Path』)は、心理学の知見による3つの発想に基づいている。

「Path」というソーシャルネットワークアプリは、心理学など3つの発想を基に作られているのだそうです。

1.ダンバー氏の研究に基づき、繋がりの数に制限を設ける

第1の発想は、進化人類学者であるRobin Dunbar(ロビン・ダンバー)氏の研究に基づくものだ。

霊長類の大脳新皮質に関するDunbar氏の研究は、「親密な繋がりの数」が脳のサイズに制約されることを示唆していた――グルーミングしあうサルのグループから、人間によるネット上のソーシャル・ネットワークまで。

Dunbar氏は最近、文化人類学的に見ると宝の山である『Facebook』を対象に研究を行なっている。

この研究によって同氏は、現実世界でも、デジタルの世界でも、人は150名を超える「親密なグループ」を管理できないという、初期段階の見解を明らかにしている。

脳の大きさで増減するこの数字は、「ダンバー数」として知られている。[平均約150人(100-230人)が「それぞれと安定した関係を維持できる個体数の認知的上限」であるとされている]

そんなわけでMorin氏は、新会社を設立するにあたって、利用者が「良質なネットワーク」を形成できるように、繋がりの数に制限をもうけることにした。

そして、ソーシャル・ネットワークの輪の広がりは3段階だという、Dunbar氏のもうひとつの学説にのっとり、Morin氏らは「パーソナル・ネットワーク」と呼ぶものを作った。

Morin氏は、「最も親密な輪」には家族や親友が5人、「定期的に連絡する人」の輪には約15人、そして、「信頼している人」の輪には45人くらいの人がいると計算している[段階ごとに3倍の数]。

そこで同氏は、相互承認の関係からなるPathのネットワークに、50人の制限を設けることにした。

つまり、Pathへの投稿は、「放送」や自己プロモーションではなく、自分をよく知っている人と経験を共有するということになる。

一つ目の発想は、ダンバーの研究に基づき、良質なネットワークを構築できるように繋がりの数に制限を設けることです。

つまり、Pathは個人メディアやプロモーションとしての活用ではなく、ごく親しい人同士との経験の共有を目的としているわけです。

2.カーネマン氏の研究に基づき、喜びを伝える日常の「瞬間」をとらえることを目的にする

第2の発想は、ノーベル賞を受賞した行動経済学者であるDaniel Kahneman氏に由来する。

Kahneman氏は、記憶の性質、特に記憶と幸福の関係を研究している。[ダニエル・カーネマンは、経済学と認知科学を統合した行動ファイナンス理論及びプロスペクト理論で有名な行動経済学者。あらゆる経験の快苦の記憶は、ほぼ完全にピーク時と終了時の快苦の度合いで決まるという法則(ピーク・エンドの法則)で有名]

Kahneman氏が今年TEDで行なった講演を聞いて、Morin氏はPathを、「取るネットワークではなく、与えるネットワーク」にすることにした。

Pathの目的は、専門的なネットワーキング等ではなく、喜びを伝える日常の「瞬間」をとらえることだ。

表現した当人にとってどんな投稿だったのかを受け手が理解している場合に、喜びはとりわけ伝わる。

第二の発想は、カーネマンの研究に基づき、喜びを伝える日常の瞬間をとらえることを目的とすることです。

人々に喜びを与えるネットワークということでしょうか。

3.撮影した瞬間の画像にタグ(場所・人・対象の情報)をつけてネットワークにフィードする

これは、Pathの第3の発想につながる。

Pathでは、iPhoneで撮影した瞬間の画像が、場所や対象や人のタグが付けられて、ネットワークの友人たちにフィードされる。

ユーザーは、iPhoneを指でスクロールして、これらを見ていく。

第三の発想は、撮影した瞬間の画像にタグ(場所・人・対象の情報)をつけて、友人たちにフィードすることです。

【まとめ】

「Path」というソーシャルネットワークツールは、あまりに広がりすぎたネットワークだとコントロールできず、楽しめるツールになりえないということから発想がきているのではないかと思います。

大事なことは、SNSはあくまでもツールであるということ。

SNSも社会的交流を補うツール・コミュニケーションを増やすツールとして考えると、自ずとそのネットワークの規模がダンバー数のような(150人が限界)な規模に定まってくるような気がします。

親密さを表すキーワードとして「写真友達」というものがあります。

誰と親しく、誰と親しくないかを見極めるため、私たちは、フェイスブックのページに掲示された写真を元に「写真友達」という方法を考案した。

ある大学のフェイスブックの前頁を調べ、学生たちの写真友達の数を数えたところ、親しい友達は平均するとわずか6.6人しかいないことがわかった。

(「つながり 社会的ネットワークの驚くべき力」著 ニコラス・A・クリスタキス ジェイムズ・H・ファウラー)

あなたのSNSページには、写真友達の数は何人いましたか?

【追記(2018/9/19)】

プライベートなソーシャルネットワークを提供するPath、ついにサービス停止

(2018/9/17、TechCrunch)

サービスはビジュアルと本当に親しい人とのつながりを重視して、50人までしか友達登録ができないという仕様になっていた。よりプライベートなつながりを求める人に向けたサービスを実現しようとしていたのだ。ただし、友人数の制限は後に緩められ、さらに撤廃されることにもなった。

「Path」のサービス終了のニュース。

SNSにおいて若い世代が利用するSNSに上の世代が入ってくると嫌がったり、出ていくことがあるので、ある世代向けのSNSというのは可能性があるような気がします。